拳銃ながらにフルオート機能を持ったソビエトのスチェッキン。 『フェイス/オフ』でトラボルタが撃っていたので印象に残っているのですが、この拳銃、フルオートの弱点である命中度の悪さを補うレート・リデューサーという機構があると聞きました。 これはどんな機構なのでしょうか?
レート・リデューサー(Rate Reducer)とは、日本語では、”回転抑制器”や”発射速度抑制器”と訳せます。
これは、銃の回転速度(発射速度)を抑制する働きを持ち、フルオート射撃時に銃をよりコントロールしやすくします。
連射機能を持つハンドガン(マシンピストル)は多く存在しますが、これらの多くは連射スピードが非常に速く、毎分1,000発を越えることは珍しくありません。
特に、ハンドガンのような小さく軽い銃はフルオートの激しい反動を受けて暴れるため、レート・リデューサーはマシンピストルで非常に有効です。
スチェッキンAPSのレートリデューサー
スチェッキン(Stechkin APS)は、1951年にロシアで開発され1975年まで軍で使用された、スライドのセレクター操作によってフルオート射撃が可能なハンドガンです。
任務上小銃を装備できない工兵、車両要員、戦闘機パイロットの他、一部の一般兵にも支給されました。
また、スチェッキンはAPSモデルの他、サイレンサーとワイヤー・ストックを装備した、APBモデルも誕生しています。
スチェッキンは、レートリデューサーによって毎分700~850発まで連射速度を抑えることに成功しました。
マガジンの後方にリデューサー(緑のパーツ)が位置しています。
発射時にスライドの前後移動によってリデューサーがトランスファーバー(黄色のパーツ)によって勢いよく押し下げされると、リデューサーが下がっている間はシアーがハンマーの動きを止めるという構造です。
下降したリデューサーが再び上昇するとリデューサーがトリガーバーに衝突し、これによりディスコネクターを持ち上げ、ディスコネクターはシアーを持ち上げてハンマーを解放し次弾が撃発されます。
つまり、リデューサーの上下運動による時間差が作動を遅らせて発射速度を下げています。
スチェッキンAPSにはチェコのVz61に見られるような外部からスピードを調整する機能はありません。
レート・リデューサーを持つコンパクトな銃には、スチェッキン以外に、チェコのVz61(通称:スコーピオン)や、スペインのアストラ M902などがありますが、レート・リデューサーという機能そのものは珍しいものではありません。
スライドやハンマーに抵抗をかけて動きを鈍くする(後退を遅らせる)という単純構造のため、特にAR15や、AK、イングラムといった、民間市場でも人気のある銃にはカスタムパーツとして流通しています。
また、今後も銃器メーカーからレート・リデューサーを内蔵した銃器が誕生する可能性もあります。
スコーピオンVz61のレートリデューサー
Vz61のレートリデューサーはグリップ内部に備わっています。スチェッキンAPSと同様にリデューサー(黄色のパーツ)の上下運動の時間差によって発射速度が抑えられています。
発射時にボルトが後退すると、ボルトはレートリデューサーレバー(黄色のパーツ)に衝突します。
レートリデューサーレバーはグリップ内のリデューサーを押し下げ、リデューサーが上昇するまでの間、フック(ボルトストップ)がボルトを引っ掛けてボルトを後退した状態で保持します。
そしてリデューサーが再び上昇するとフックがボルトを解放し、ボルトが前進して次弾が発射されます。
(上図では省略してますが、リデューサーには自由に上下するカウンターウェイトが備わっており、このウェイトの慣性力がボルトの解放を行っています)
このシステムがなければ毎分1000発を超える発射速度になるところを、毎分850発に抑えています。
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