H&K MP5シリーズについて解説します。
MP5とは?
MP5は9x19mm弾を使用するサブマシンガンです。
1977年にソマリアで起こったルフトハンザ航空機ハイジャック事件でMP5を装備した特殊部隊(GSG9)が成功をおさめて以来注目を集め、操作性の良さ、射撃時のコントロールのしやすさ、高い命中精度など、様々な点で優秀なサブマシンガンとして評価され、ギリシャ、パキスタン、サウジアラビアなど中東諸国をはじめとする14か国でライセンス生産されています。
MP5の数字の意味
ネーミング、ナンバリングについてですが、これはH&K社独自の規格があり、MP5の“5”はサブマシンガンを意味しており、その後ろに続く数字はストックの形状や機能面などモデル名を意味します。
また、「A」はドイツ語で「バージョン(Ausfuehrung)」を意味します。
このMP5(マシーネン・ピストール・5)とは当時のテスト名であり、そのまま引き継がれています。
MP5が生まれた当初は”MP5″のみでしたが、その後テレスコピックストック(伸縮式メタルストック)付きが登場し、これはMP5A1と名づけられています。(試作MP5はMP54 / HK54)。
A1はストック無しのレシーバーバットキャップのみ、A2は固定ストック付き、A3はスライド式伸縮ストック付き、A4は固定ストック付きで3点バーストモデル、A5はスライド式伸縮ストック付きで3点バーストモデルです。
そしてさらに発展を続け、MP5K(ショートモデル)、HK94(輸出用セミオート民間モデル)、MP5SD(サプレッサーモデル)、SP89(民間用ピストルモデル)など多数登場しています。
MP5シリーズの種類
H&K社製MP5シリーズ
モデル | 概要 |
HK54 | 固定ストック 伸縮式ストック フリップアップリアサイト |
MP5A1 | バットキャップ |
MP5A1(NT) | バットキャップ ネイビートリガーグループ |
MP5A1(3RB) | バットキャップ 3点バーストトリガーグループ |
MP5A2 | 固定ストック |
MP5A2(NT) | 固定ストック ネイビートリガーグループ |
MP5A3 | 伸縮式ストック |
MP5A3(NT) | 伸縮式ストック ネイビートリガーグループ |
MP5A4 MP5A2(3RB) | 固定ストック 3点バーストトリガーグループ |
MP5A5 MP5A3(3RB) | 伸縮式ストック 3点バーストトリガーグループ |
MP5SFA2 | 固定ストック セミオートオンリー |
MP5SFA3 | 伸縮式ストック セミオートオンリー |
MP5-N | 伸縮式ストック ネイビートリガーグループ ステンレスサプレッサー用スレッデッドバレル トリチウムフロントサイト |
MP5PT2 | トレーニング弾用(実弾使用不可) 固定ストック |
MP5PT3 | トレーニング弾用(実弾使用不可) 伸縮式ストック |
MP5PT4 | トレーニング弾用(実弾使用不可) 固定ストック 3点バーストトリガーグループ |
MP5PT5 | トレーニング弾用(実弾使用不可) 伸縮式ストック 3点バーストトリガーグループ |
MP5SD1 | バットキャップ サプレッサー |
MP5SD1(NT) | バットキャップ サプレッサー ネイビートリガーグループ |
MP5SD2 | 固定ストック サプレッサー |
MP5SD2(NT) | 固定ストック サプレッサー ネイビートリガーグループ |
MP5SD3 | 伸縮式ストック サプレッサー |
MP5SD3(NT) | 伸縮式ストック サプレッサー ネイビートリガーグループ |
MP5SD4 MP5SD1(3RB) | バットキャップ サプレッサー 3点バーストトリガーグループ |
MP5SD5 MP5SD2(3RB) | 固定ストック サプレッサー 3点バーストトリガーグループ |
MP5SD6 MP5SD3(3RB) | 伸縮式ストック サプレッサー 3点バーストトリガーグループ |
MP5SD-N | 伸縮式ストック ネイビートリガーグループ ステンレスサプレッサー用スレッデッドバレル トリチウムフロントサイト |
MP5F | ラバーパッド伸縮式ストック アンビスリングループ 高圧弾対応 3点バーストトリガーグループ |
MP5K | ショートバージョン |
MP5K(BC) | ショートバージョン ブリーフケースモデル |
MP5K(NT) | ショートバージョン ネイビートリガーグループ |
MP5KA1 | ショートバージョン 固定サイト |
MP5KA4 MP5K(3RB) | ショートバージョン 3点バーストトリガーグループ |
MP5KA5 | ショートバージョン ロープロファイルアイアンサイト 3点バーストトリガーグループ |
MP5K-N | ショートバージョン ネイビートリガーグループ ステンレスサプレッサー用5.5インチスレッデッドバレル トリチウムフロントサイト |
MP5K-PDW | ショートバージョン サイドフォールディングストック |
MP5/10 | 10mmオート |
MP5/40 | .40S&W |
SP89 SP5K | ピストルバージョン セミオートオンリー |
HK94 | ライフルバージョン セミオートオンリー |
SP5 | バットキャップ セミオートオンリー |
コピー/ライセンス生産品
モデル | 概要 |
---|---|
T94 ZSG T94P T94A T94K T94SD | トルコ製MP5 |
AT94 Z5Rs Z5K | トルコ製MP5 アメリカ民間市場モデル |
MP10 | フィリピン製セミオートMP5 |
POF SMG-PK SMG-PK1 POF4ピストル POF5ピストル | パキスタン製MP5K |
OFB Anamika 9mm | インド製MP5 |
LDT HSG-94 LDT HSG-94K | ルクセンブルク製セミオートMP5 |
製造年の表記
MP5に刻印には独自の規則があり、数字の0~9はA~Kで表示されています。
例:1987年製は「87」ではなく「IH」と刻印されます。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
A | B | C | D | E | F | G | H | I | K |
モデル名と略称の意味
H&Kで使用される略称には以下の意味があります。
- A = Ausführung (バージョン)
- G = Gewehr (ライフル)
- K = Kurz (ショート、またはカービン)
- AG = Anbau-Gerät (アタッチメント・デバイス) またはAnbaugranatwerfer (マウンテッド・グレネードランチャー)
- GMG = グレネードマシンガン
- GMW = Granatmaschinenwaffe (オートマチックグレネードランチャー)
- MG = マシンガン
- MP = マシンピストル
- PSG = Präzisionsschützengewehr (精密射撃ライフル)
- PSP = Polizei-Selbstlade-Pistole (ポリス・セルフローディング・ピストル)
- SD = Schalldämpfer (サプレッサー)
- SG = Scharfschützengewehr (スナイパーライフル)
- SK = Subkompakt (サブコンパクト)
- SL = Selbstlader (オートローダー)
- UMP = ユニバーサル・マシン・ピストル
- UCP = ユニバーサル・コンバット・ピストル
- USC = ユニバーサル・セルフローディング・カービン
- USP = ユニバーサル・セルフローディング・ピストル
- VP = Volkspistole (国民ピストル)
- ZF = Zielfernrohr (ライフルスコープ)
- S = Sicher(セイフティ)
- E = Einzelfeuer(セミオート)
- F = Feuerstoß(バースト、またはフルオート)
MP5の歴史年表
1948年 | エドモンドヘッケラーとセオドアコックによりH&K(ヘッケラー&コック)社創設。 |
1959年 | G3ライフル製造開始。 |
1964年 | MP5開発に至る「プロジェクト64」始動。 |
1966年 | 12月、MP5完成。ドイツ警察とスイス警察に採用される。 |
1968年 | MP5用ブランクアダプターが開発される。 |
1971年 | MP5改良。 ボルトのセレーション廃止、トリガープル軽量化、ボルトキャリア短縮、エジェクションポート大型化。 |
1972年 | 薬室サイズ変更。 リコイルスプリングガイドロッド大型化。 ストック素材にグラスファイバー追加。 |
1973年 | トリガーハウジング素材にグラスファイバー追加。 グリップを空洞化。 湾曲バットプレート廃止。 レシーバーにスコープマウンティングポイントを追加。 |
1974年 | MP5SD試作。 |
1975年 | 新型コッキングレバー追加。 |
1976年 | 湾曲マガジン(バナナマガジン)開発。 HKの南アフリカ地域セールス担当者の要請によりMP5K(クルツ)を開発。 |
1977年 | 輸出向けにラッカーコーティング開発。 |
1978年 | ブリーフケースMP5K開発。 伸縮式ストックにラバーバットプレート追加。 新型エキストラクタースプリングテスト完了。 輸出向けにトロピカルフォアアーム開発。 |
1979年 | 新型エキストラクタースプリング(銅色)に変更。 |
1980年 | 溶接方法変さらによりレシーバー強化。 |
1982年 | 3点バースト開発。 |
1983年 | ロックドボルトMP5SDをテスト。 アメリカでHK94販売開始。 |
1984年 | ダイナマイトノベル社のトレーニング用弾を使用するMP5PT開発。 MP5用グレネードランチャーがテストされる。 |
1988年 | 塩水に対応したコーティング済みマリタイムMP5開発。 |
1989年 | エジェクターの高さを0.5mm上げる。 SP89開発。 伸縮式ストックのバットプレートを鋳造化。 |
1990年 | スペシャルSEFセレクター開発。(右側のセレクターシャフトを押すとフルオートに切り替わる) |
1991年 | ボルトヘッドとブリーチの仕様を変更。 ローラーホルダーをプレート型からスプリング型へ変更。 MP5K-Nを開発。 |
1992年 | 米国FBIの要請によりMP5/10(10mm)とMP5/40(.40S&W)を開発。 |
1999年 | フランス軍向けにMP5F開発。 |
2000年 | MP5/10、MP5/40製造終了。 |
2013年 | MLI(Mid Life Improvement)バージョン開発。 |
2016年 | SP89の発展版であるSP5Kを開発。 |
2019年 | SP5を開発。 |
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