
日本警察では、長年にわたりリボルバー(回転式拳銃)が広く使用されてきました。
国産のニューナンブM60をはじめ、S&Wやコルト製のさまざまなモデルが配備され、各部門や任務に応じた運用が行われています。
この記事では、ミネベアミツミ ニューナンブM60、S&W SAKURA M360J、M36、M37エアウェイト、M1917など、日本警察で使用されたリボルバー各種を解説します。
※各モデルのタイトルには製造期間(運用期間ではない)を掲載しています。
日本警察が使用する銃器の一覧解説した総括ページはこちら
S&W系リボルバー
日本警察で採用されるスミス&ウェッソン(S&W)系リボルバーは、主に小型フレーム設計に基づき、信頼性と扱いやすさが重視されています。
代表的なモデルには、S&Wの設計思想を受け継いだ国産モデルの「ニューナンブM60」や、軽量合金製の「SAKURA M360J」があり、いずれも.38スペシャル口径で5発装填が基本です。
これらはダブルアクション/シングルアクション方式を採用し、携帯性と操作の容易さを両立しています。
安全性や耐久性も高く、ランヤードリングや専用グリップ装備など警察向けの工夫も施されています。
フレームとは?

リボルバーのフレームは、銃本体の構造部分で、シリンダーや銃身、ハンマー、トリガーを支える骨格となる部分です。
フレームサイズにより使用できる弾薬や銃全体の強度、携行性が変わります。
シングルアクションとダブルアクションとは?
S&W M1917(1917年~1940年代)

項目 | 内容 |
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モデル名 | Smith & Wesson M1917 |
分類 | リボルバー |
口径 | .45 ACP弾 (ハーフムーンクリップまたはフルムーンクリップ使用) |
装弾数 | 6発 |
銃身長 | 5.5インチ(約139.7mm) |
構造 | スチールフレーム スチールシリンダー |
開発背景 | 第一次世界大戦中の拳銃不足を補うため、M1911ピストルと同じ.45 ACP弾を使用できるよう開発されました。 |
製造期間 | 1917年〜1940年代 (主に第二次世界大戦終結まで) |
主な使用者 | アメリカ軍(陸軍)、民間、戦後の日本警察 |
特徴 | 米軍に正式採用された最初期の.45 ACP弾リボルバーであり、第一次・第二次世界大戦で広く使用されました。 |
S&W M1917は、第一次世界大戦中に米軍のM1911ピストルの生産が需要に追いつかないという問題を解決するために開発された、大型フレームのダブルアクションリボルバーです。
S&Wはコルト社とともに、M1911と同じ.45ACP弾を使用する拳銃を製造する契約を結び、わずか3年間で約15万丁を生産しました。
特徴と技術
S&W .44 ハンドイジェクター2ndモデルをベースに開発されており、シリンダーの段差やグリップ下部のランヤードリングにその特徴が見られます。
S&W M1917の特徴と技術は以下の通りです。
ムーンクリップとは?

これらは本来オートピストル用のリムレス弾をリボルバーで使用するために考案されました。
競技や護身用途で利便性が高く、フルムーンクリップはスピードローダーのように機能します。
著名なガンライターのエルマー・キースは、コルトM1917を「仕上げが粗い」と評価し、S&W製の方が高品質であると述べています。
運用史と年表
M1917は、第一次世界大戦だけでなく、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争でも使用され、ベトナム戦争では、「トンネルラット」と呼ばれる地下戦闘部隊にM1917が使用されました。これは狭いトンネル内での信頼性とストッピングパワーが評価されたためです。
第一次世界大戦中にイギリス軍でも採用され、第二次世界大戦ではホームガードや王立海軍によって使用されました。
M1917は戦車兵、砲兵、憲兵など、オートマチックピストルが不足する部隊に配備されることが多かったモデルです。
S&W M1917の運用史と年表は以下の通りです。
S&W M1917が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
S&W M1917が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
S&W レギュレーションポリス(1917年~1950年代)

項目 | 内容 |
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モデル名 | Smith & Wesson Regulation Police |
分類 | リボルバー |
口径 | .32 S&W Long弾 .38 S&W弾 |
装弾数 | 5発 |
銃身長 | 3.25インチ(約82.5mm) 4.25インチ(約108mm) |
構造 | スチールフレーム スチールシリンダー |
開発背景 | 20世紀初頭、警察官や一般市民の護身用として設計されたIフレームリボルバーです。 |
製造期間 | 1917年〜1950年代 (主に1917年から1940年代後半まで) |
主な使用者 | 米国内外の警察機関、民間人、戦後の日本警察 |
特徴 | Iフレームを基にした小型リボルバーで、警察官の制服着用時や私服時の携行に適していました。 |
S&W レギュレーションポリスは、アメリカのS&Wが製造した、ダブルアクション/シングルアクションの小型リボルバーシリーズです。
都市部の警察官や刑事、民間の護身用として、携帯性と信頼性の両立を目指して開発されました。
製造は1917年に始まり、1960年代まで続きました。
特徴と技術
このシリーズは、大型のKフレームではなく、コンパクトなIフレームをベースとしています。
S&W レギュレーションポリスの特徴と技術は以下の通りです。
運用史と年表
S&W レギュレーションポリスは、アメリカ東部を中心に多くの警察署で採用。.38スペシャル弾が標準となる以前は、小口径が主流であった都市警備において、ニューヨーク市警察(NYPD)などでも使用されていました。
日本を含む諸外国にも輸出され、戦後の国産拳銃が登場するまで日本の警察でも使用されていました。
S&W レギュレーションポリスの年表は以下の通りです。
S&W ビクトリー(1942~1945年)

項目 | 内容 |
---|---|
モデル名 | Smith & Wesson Victory Model |
分類 | リボルバー(Kフレーム) |
口径 | .38 S&W弾(英連邦向け) .38スペシャル弾(米国向け) |
装弾数 | 6発 |
銃身長 | 2インチ(約50.8mm) 4インチ(約101.6mm) 5インチ(約127mm) 6インチ(約152.4mm) |
構造 | スチールフレーム スチールシリンダー 多くはパーカライズド(パーカー処理)仕上げ |
開発背景 | 第二次世界大戦中の連合国軍の拳銃需要を満たすため、S&W Military & Police(M&P)を基に量産されました。 |
製造期間 | 1942年〜1945年 |
主な使用者 | アメリカ軍、イギリス軍、オーストラリア軍などの連合国軍、戦後の日本警察、日本の海上保安庁 |
特徴 | グリップフレームに「V」のシリアル番号接頭辞が刻印されているのが特徴です。戦時中の大量生産モデルとして、信頼性と堅牢性に優れていました。 |
S&W ビクトリーモデルは、第二次世界大戦中の連合国の拳銃不足を補うために、S&Wが迅速な大量生産体制で製造した軍用リボルバーです。
正式名称はミリタリー&ポリスであり、「ビクトリーモデル」は製造された個体に「V」のシリアル番号が振られたことに由来します。
特徴と技術
ビクトリーモデルは、信頼性が高く、大量生産が容易な点が重視されています。
S&W ビクトリーの特徴と技術は以下の通りです。
パーカライズドフィニッシュ(parkerized finish)とは、リボルバーの鋼製部分に施されるリン酸塩被膜処理の一種で、耐腐食性と耐久性を高める目的で使われます。
リン酸を含む溶液に鋼部品を浸漬し、化学反応でマットな質感の保護膜を形成します。
第二次世界大戦中に米軍で広く採用され、現在もヴィンテージから現代銃まで多く用いられています。
なお、パーカライズドは一般的に炭素鋼にのみ施され、ステンレス鋼や非鉄金属には適用されません。
運用史と年表
ビクトリーモデルは、レンドリース法※に基づき、約59万丁がイギリス、カナダ、オーストラリアなど英連邦軍に供給。アメリカ軍でも約35万丁が使用され、主に海軍・海兵隊の航空要員や国内の警備要員に支給されました。
レンドリース法とは?
レンドリース法は、第二次世界大戦中のアメリカの支援政策であり、1941年3月11日に制定されました。
アメリカは公式に参戦する前から、イギリス、ソ連、中国、フランスなど連合国に対して、武器、車両、航空機、船舶、食料、工業製品、原材料といった軍需物資や資源を無償または後払いで供給しました。
【主なポイント】
【歴史的背景】
【影響】
OSS(戦略情報局)によってヨーロッパのレジスタンスにも配布されるなど、幅広く活用されました。
第二次世界大戦中にも一部が軍や警備用途で使われ、ハンマーブロック欠陥による水兵の死亡事故で、米海軍は一時的にコルト製リボルバーを要求しましたが、S&Wが迅速に改良を行い、調達は継続されました。
第二次大戦中、S&Wはビクトリーモデルを1日約1,000丁生産しており、59万丁以上が英連邦へ、35万丁以上が米軍へ供給されました。
戦後、余剰となった個体は外国軍や日本の警察にも供与されています。
日本においては、国産拳銃が登場するまで使用されていました。
英連邦軍では1960年代初頭までにブローニング・ハイパワーに更新され、多くが民間市場に放出されています。
S&W ビクトリーの年表は以下の通りです。
S&W ビクトリーが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
S&W ビクトリーが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
S&W M36(1950年~現在)

項目 | 内容 |
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モデル名 | Smith & Wesson Model 36 |
分類 | リボルバー(S&W Jフレーム) |
口径 | .38スペシャル弾 |
装弾数 | 5発 |
銃身長 | 2インチ(約50.8mm) 3インチ(約77mm) |
構造 | スチールフレーム、スチールシリンダー |
開発背景 | 1950年に「チーフスペシャル Chiefs Special」として発表され、隠匿携帯を目的とした小型リボルバーとして開発されました。 |
製造期間 | 1950年〜現在 (ただし、現在の製造は限定的または派生モデルが主) |
主な使用者 | 米国の法執行機関(警察官、捜査官)、私服警官、民間人、日本警察(警視庁SATなど) |
特徴 | 非常に小型で携帯性に優れ、バックアップ用や私服捜査官の護身用として広く普及しました。 |
S&W モデル36は、第二次世界大戦後に法執行機関や民間市場のニーズに応える形で開発された、小型で携帯性に優れたリボルバーです。
1950年に国際警察署長協会(IACP)大会で「チーフスペシャル」という名で発表され、大きな注目を集めました。
国際警察署長協会(IACP)大会は、世界最大級の警察指導者向け年次総会・展示会であり、毎年約16,000人の法執行関係者が参加します。
目的は最新の訓練や知識の提供、ネットワーク構築、装備や技術の展示で、数百の教育セッションと600以上の企業展示が行われます。
期間は4日間で、アメリカの主要都市で開催。警察幹部だけでなく、あらゆる階級の法執行職員や関連団体も参加可能であり、警察業務の発展や製品発表の重要な場となっています。
特徴と技術
モデル36は、.38スペシャル弾に対応するために設計されたJフレームをベースとしています。
従来のIフレームが対応できなかった.38 S&W弾の制約を克服し、信頼性と扱いやすさを両立しています。
S&W M36の特徴と技術は以下の通りです。
運用史と年表
モデル36はアメリカの法執行機関や私服捜査官のほか、日本の警察庁などでも使用されました。
小型で隠匿性が高く、多くの映画や文学作品にも登場しています。
アメリカの多くの警察署では、モデル36は階級を示す象徴的存在となり、巡査ではなく署長や幹部職員が携行することが多かったとされています。
1950年の発表以降、世界中で広く使われました。
1957年にモデル番号制度が採用されて「モデル36」と正式に命名され、現在も「クラシック」モデルとして入手可能です。
S&W M36の年表は以下の通りです。
S&W M36が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
S&W M36が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
S&W M37 エアウェイト(1951~2006年)

項目 | 内容 |
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モデル名 | Smith & Wesson Model 37 Airweight |
分類 | リボルバー(S&W Jフレーム) |
口径 | .38スペシャル弾 |
装弾数 | 5発 |
銃身長 | 2インチ(約50.8mm) 3インチ(約77mm) |
構造 | アルミニウム合金フレーム スチールシリンダー |
開発背景 | 1950年に発表されたModel 36(Chiefs Special)の軽量版として、1951年に開発されました。 |
製造期間 | 1951年〜2006年 |
主な使用者 | 米国の法執行機関(私服警官など)、民間、日本の警察官の一部 |
特徴 | Model 36をベースにフレームをアルミ合金製とすることで軽量化を実現し、携帯性を高めたモデルです。 |
S&W モデル37 エアウェイトは、モデル36の軽量版として開発された、コンパクトなダブルアクション/シングルアクションリボルバーです。
1951年に「チーフスペシャル エアウェイト」として登場し、私服警官や民間での護身用として広く普及しました。
日本警察による採用は日本国内での派生モデル開発にも影響を与え、その後の日本製拳銃設計に大きな影響を残しました。
特徴と技術
モデル37はJフレームを基礎とし、モデル36とほぼ同じサイズと設計ですが、アルミ合金製のフレームとシリンダーを採用することで大幅な軽量化を実現しました。
S&W M37 エアウェイトの特徴と技術は以下の通りです。
運用史と年表
モデル37は、軽量性と秘匿性の高さから、一日中携行する警察官や探偵に広く採用されました。
また、アメリカ空軍のパイロット用拳銃としても検討されましたが、採用には至りませんでした。
S&W M37 エアウェイトの運用史と年表は以下の通りです。
S&W M37 エアウェイトが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
S&W M37 エアウェイトが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
ミネベアミツミ ニューナンブ M60(1960年~1990年代)

項目 | 内容 |
---|---|
モデル名 | ニューナンブM60 |
分類 | リボルバー |
口径 | .38スペシャル弾 |
装弾数 | 5発 |
銃身長 | 2インチ(約50.8mm)、3インチ(約77mm) |
全長 | 約173mm(2インチバレル)、約198mm(3インチバレル) |
重量 | 約670g |
発射機構 | シングルアクション、ダブルアクション |
安全装置 | ハンマーブロック式安全装置 |
フレーム材質 | スチール |
照準 | 固定式(フロントブレード/リアノッチ) |
調達開始年 | 1960年 |
開発背景 | 戦後日本で米国製リボルバーに代わる警察用拳銃として開発。 S&W M38などを参考にしています。 |
製造元 | 新中央工業(現ミネベアミツミ) |
主な使用者 | 日本警察、皇宮護衛官、海上保安官、麻薬取締官、刑務官など |
特徴 | 小型軽量で携行性に優れ、日本警察の標準拳銃として長期使用されています。 |
ニューナンブM60は、戦後日本の警察が抱えていた老朽化した米国製拳銃の問題を解決するために開発された、国産のリボルバーです。
小型軽量で信頼性が高い拳銃を求める声に応え、1956年に設置された「拳銃研究会」の指導のもと、新中央工業(現・ミネベアミツミ)が1957年から開発を開始しました。
特徴と技術
アメリカのS&W(スミス&ウェッソン社)のJフレームおよびKフレームリボルバーをベースにしたダブルアクションリボルバーで、堅牢性と扱いやすさを両立しています。
S&W J/Kフレームに似ていますがシリンダーがわずかに大きく、S&W用スピードローダーは適合しません。
シングルアクション時の精度が高く、25メートルで50ミリ以内に集弾可能と言われています。
設計はS&W社製リボルバーを参考にしつつ、グリップ形状やシリンダーラッチは日本人警察官向けに改良されました。
ニューナンブ M60の特徴と技術は以下の通りです。
運用史と年表
1960年から警察への納入が開始され、1964年以降は警察の制式拳銃として一本化されました。
生産は1990年代に終了しましたが、現在も多くの警察官に配備されています。
ニューナンブ M60の年表は以下の通りです。
ニューナンブM60が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
ニューナンブ M60が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
S&W SAKURA M360J(2006年~現在)

項目 | 内容 |
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モデル名 | S&W SAKURA M360J |
分類 | リボルバー(S&W Jフレーム) |
口径 | .38スペシャル弾 |
装弾数 | 5発 |
銃身長 | 2インチ(約50.8mm) |
構造 | スカンジウム合金フレーム、ステンレススチールシリンダー |
照準 | 固定式(フロントブレード/リアノッチ) |
開発背景 | ニューナンブM60の後継として、日本警察向けに特別に設計・開発されたリボルバーです。 |
製造元 | Smith & Wesson |
調達開始年 | 2006年 |
主な使用者 | 日本警察、皇宮護衛官、海上保安官、麻薬取締官、入国警備官、刑務官 |
特徴 | 非常に軽量で携行性に優れ、現在も日本警察の主力拳銃の一つとして使用されています。 |
S&W SAKURA M360Jは、S&Wが日本の警察向けに特別に設計・製造したリボルバーです。
正式名称は「S&W SAKURA M360J」といい、日本ではニューナンブM60の後継として、2006年から調達が始まりました。
特徴と技術
S&W社のJフレームリボルバーをベースにしており、特に軽量化されたM360PDを元に開発されました。
しかし、日本の警察の要請に合わせて様々な変更が加えられています。
S&W M360Jの特徴と技術は以下の通りです。

ランヤードリング(lanyard ring)とは、銃に取り付けられた金属製の輪で、銃本体とランヤード(紐やストラップ)を繋ぐための部品です。
主な目的は、銃を落下や紛失から防ぐことにあり、特に軍用銃や警察用銃に多く装備されています。
運用史と年表
S&W SAKURA M360Jは、2006年に日本警察に採用され、S&W M37およびニューナンブM60を更新する形で本格的な配備が始まりました。
2011年までに約25,000丁以上が納入されており、現在も日本の法執行機関で標準拳銃として運用が続けられています。
S&W M360Jの年表は以下の通りです。
S&W M360が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
S&W M360が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
コルト系リボルバー
日本警察で採用されたコルト製リボルバーは、主に戦後の占領期から1960年代まで広く使用されました。
代表的なモデルには中型フレームのコルト・オフィシャルポリス(.38スペシャル、6発装填、4インチバレル)と、小型のコルト・ディテクティブスペシャル(.38スペシャル、2インチバレル)があり、いずれもダブルアクション/シングルアクション方式を採用しています。
これらは耐久性と操作性に優れ、警察官の標準装備として多用されました。
ランヤードリング装備や固定照準器など警察仕様の改良も施されており、携帯性や安全性が重視されています。
国内製リボルバーへの更新後も、これらコルトの設計は日本の警察用拳銃の性能基準として影響を与え続けました。
コルト ポリスポジティブ(1907~1947年)

項目 | 内容 |
---|---|
モデル名 | Colt Police Positive |
分類 | リボルバー(Colt D/Eフレーム) |
口径 | .32 Colt Police弾、.38 S&W弾、.22 LR弾、.38 Colt New Police弾など |
装弾数 | 6発 |
銃身長 | 2.5インチ(約63.5mm)、4インチ(約101.6mm)、5インチ(約127mm)、6インチ(約152.4mm) |
構造 | スチールフレーム、スチールシリンダー |
開発背景 | 1907年にColt New Policeの改良型として登場。コルト独自の「ポジティブロック」安全機構を搭載し、安全性を高めた警察・民間向けモデルです。 |
安全機構 | コルト・ポジティブロック(ハンマーブロック方式) |
製造期間 | 1907年〜1947年 |
主な使用者 | 20世紀初頭のアメリカの法執行機関(警察、保安官)、民間人、戦後の日本警察 |
特徴 | 独自の安全機構「ポジティブロック」により、落下の衝撃による暴発を防ぐ高い安全性を実現しました。小型ながら6発装填可能で、信頼性の高い警察用リボルバーとして広く普及しました。 |
コルト・ポリス・ポジティブは、1907年から1947年にかけてコルト社が製造した小型フレームのリボルバーです。
安全性を高めた「ポジティブロック」セーフティシステムを搭載し、従来のモデルから信頼性を大幅に向上させたことで、アメリカの警察市場で大きな成功を収めました。
特徴と技術
ポリス・ポジティブは、その名の通り警察や法執行機関向けに設計されました。
コルト ポリスポジティブの特徴と技術は以下の通りです。
コルトのポジティブロック(Colt Positive Lock)は、1905年にコルト社が開発した安全機構で、主にコルト・ポリス・ポジティブやポリス・ポジティブ・スペシャルに搭載されました。
トリガーを引かない限り撃針(ファイアリングピン)がカートリッジの雷管に当たらないように設計されており、誤射の防止に貢献しています。
従来のリボルバーでは、ハンマーが衝撃を受けたり銃が落下した際に暴発する危険がありましたが、ポジティブロックにより6発すべて装填したまま安全に携帯可能となりました。
機械的には初期の「トランスファーバーセーフティ」の一種であり、当時としては画期的な安全対策でした。
この安全機構の採用により、「ポリス・ポジティブ」という名称に変更され、コルトの大きなセールスポイントとなりました。

運用史と年表
ポリス・ポジティブは、信頼性と安全性の高さから、20世紀初頭のアメリカ警察で広く採用されました。
ギャングのアル・カポネが使用したことでも知られており、アル・カポネ所有のニッケルモデルは10万ドル以上で落札されています。
1926年には、2インチバレルモデルが警察署長の要請で開発され、これが後に有名なコルト・ディテクティブ・スペシャルの原型となりました。
1926年から1940年に生産された「バンカーズスペシャル」は、2インチバレルで.22 LRまたは.38コルトニューポリス(.38 S&W)仕様があり、銀行員や鉄道職員に人気でした。
1990年代に短期間だけMK Vとして生産が再開され、フルシュラウデッドバレルや黒のラバーグリップなど現代的な仕様が加えられましたが、生産数はごく僅かで現在は希少価値があります。
アメリカ国外にも輸出され、オーストラリアの軍や警察で広く使用されたほか、日本でも戦前から戦後初期にかけて、国産拳銃が普及するまで警察や警備組織で使われた例が確認されています。
コルト ポリスポジティブの年表は以下の通りです。
コルト ポリスポジティブが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
コルト ポリスポジティブが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
コルト オフィシャルポリス(1907~1969年)

項目 | 内容 |
---|---|
モデル名 | Colt Official Police |
分類 | リボルバー(Colt E/Iフレーム) |
口径 | .38スペシャル弾、.22 LR弾、.32-20 WCF弾、.41 Colt弾など |
装弾数 | 6発 |
銃身長 | 4インチ(約101.6mm)、5インチ(約127mm)、6インチ(約152.4mm) |
構造 | スチールフレーム、スチールシリンダー |
開発背景 | 1927年にColt Army Specialの後継モデルとして登場しました。法執行機関向けに設計された堅牢なリボルバーです。 |
製造期間 | 1927年〜1969年 |
主な使用者 | 米国の法執行機関(警察、保安官)、軍隊、戦後の日本警察、その他世界各国の警察・軍隊 |
特徴 | 堅牢な造りと高い信頼性で知られ、長年にわたり米国の警察機関で標準的な装備として広く採用されました。 |
コルト・オフィシャルポリスは、アメリカのコルト社が製造した中型フレームのダブルアクション/シングルアクションリボルバーです。
元は1908年に「アーミースペシャル」として採用され、1927年に「オフィシャルポリス」と改称されました。
20世紀初頭のアメリカ法執行機関の近代化に伴う、堅牢で高精度なサイドアーム需要に応え、1969年までの長い期間にわたって40万丁以上が生産されました。
特徴と技術
コルト・オフィシャルポリスは、強度とサイズのバランスが取れたコルトの「Eフレーム」を使用しています。
コルト オフィシャルポリスの特徴と技術は以下の通りです。
運用史と年表
オフィシャルポリスは、20世紀中頃のアメリカ法執行機関を象徴するリボルバーであり、最も売れた警察用拳銃の一つとなりました。
コルト オフィシャルポリスの運用史と年表は以下の通りです。
キャンプペリー(Camp Perry)とは?
1907年以降、全米ライフル協会(NRA)および民間射撃団体が主催する全米最大規模の射撃競技会が毎年開催されています。ピストル、ライフル、長距離射撃など多種目にわたります。
コルト・オフィシャルポリスやそのターゲットモデルは、これらの大会におけるハンドガン部門(ピストル競技)で使用されました。
警察官や州兵、民間競技射手が参加するサービスリボルバー部門(Service Revolver Match)での使用例が多く、精度と操作性が評価されていました。
コルト オフィシャルポリスが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
コルト オフィシャルポリスが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
コルト M1917(1917年~1940年代)

項目 | 内容 |
---|---|
モデル名 | Colt M1917 |
分類 | リボルバー |
口径 | .45 ACP弾 (ハーフムーンクリップまたはフルムーンクリップ使用) |
装弾数 | 6発 |
銃身長 | 5.5インチ (約139.7mm) |
構造 | スチールフレーム スチールシリンダー |
開発背景 | 第一次世界大戦中の拳銃不足を補うため、S&W M1917と共にアメリカ軍に採用されました。 ベースはColt New Serviceです。 |
製造期間 | 1917年〜1940年代 (主に第二次世界大戦終結まで) |
主な使用者 | アメリカ軍(陸軍)、民間、戦後の日本警察 |
特徴 | Colt New Serviceを基に.45 ACP弾を使用できるよう改設計され、第一次・第二次世界大戦で幅広く使用されました。 |
コルトM1917は、第一次世界大戦中にアメリカ軍が抱えていたM1911自動拳銃の生産不足を補うために、コルト社が製造した大型リボルバーです。
コルトとS&Wが同様の契約を結び、総計で約30万丁ものM1917が製造されました。
特徴と技術
コルトM1917は、同社のコルト・ニューサービスリボルバーをベースに、軍用制式弾薬である.45ACP弾を使用できるよう改修されました。
コルト M1917の特徴と技術は以下の通りです。
運用史と年表
M1917は、第一次世界大戦だけでなく、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争でも使用されました。
アメリカ軍以外でも、中国内戦、ラオス内戦、カンボジア内戦など各地の紛争で使用。ベトナム戦争では、「トンネルラット」部隊が愛用したことで知られています。
大戦後、余剰となったモデルは民間市場にも流通し、ムーンクリップなしでも使用できるリム付きの.45オートリム弾が開発されたことで人気を博しました。
コルトM1917は、S&W製に比べてフィニッシュが粗いと評されることもありましたが、その堅牢な設計は米軍制式リボルバーの代表例として、現在でも高い収集価値を持っています。
コルト M1917の年表は以下の通りです。
コルト M1917が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
コルト M1917が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
コルト ディテクティブ スペシャル(1927~1995年)

項目 | 内容 |
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モデル名 | Colt Detective Special |
分類 | リボルバー(Dフレーム) |
口径 | .38スペシャル弾 一部で.32 New Police弾 |
装弾数 | 6発 |
銃身長 | 2インチ(約50.8mm) 3インチ(約77mm) |
構造 | スチールフレーム スチールシリンダー |
開発背景 | 1927年に発表された、携行性を重視した小型リボルバーです。当時としては珍しい6発装填のスナブノーズ(短銃身)モデルとして人気を博しました。 |
製造期間 | 1927年〜1995年 |
主な使用者 | 米国の法執行機関(私服捜査官、潜入捜査官など)、民間人、日本の警察(銃器対策部隊など) |
特徴 | 小型ながら6発の装弾数を持ち、隠密携帯性に優れていました。多くの映画やフィクション作品にも登場し、アイコン的な存在です。 |
コルト・ディテクティブ・スペシャルは、アメリカのコルト社が開発した、コンパクトなダブルアクション/シングルアクションリボルバーです。
探偵や私服警官、市民の護身用として、携帯性と威力を両立させる目的で設計されました。
ディテクティブスペシャルはコルト ポリスポジティブスペシャルとシリアルナンバーを共有しており、正確な生産数は曖昧ですが、1927~1985年に40万丁以上が生産されたと推定されています。
特徴と技術
当時のスナブノーズリボルバーは5発装填が一般的でしたが、ディテクティブスペシャルは小型Dフレームに.38スペシャルを6発装填できる設計で、火力面で優位に立っていました。
全4世代を通じて、エジェクターロッドシュラウドの追加、グリップ形状・素材の変更、内部機構の改良など多くのアップデートが施されました。
コルト ディテクティブ スペシャルの特徴と技術は以下の通りです。
スナブノーズ(Snub-nose)とは、銃身長が非常に短いリボルバーのことを指します。
一般的に銃身長が2インチ前後の短縮型リボルバーを指し、携帯性や取り回しの良さが特徴です。
ただし、銃身長が短いため、命中精度や初速は長銃身のモデルに劣る傾向があります。
護身用やコンシールドキャリー(隠匿携帯)用として人気が高く、コンパクトながら十分な火力を保持しています。
代表的なモデルにS&Wのスナブノーズシリーズがあります。
運用史と年表
ディテクティブ・スペシャルは、1927年から1995年まで複数のシリーズにわたって生産され、総生産数は150万丁を超えます。
コルト ディテクティブ スペシャルの運用史と年表は以下の通りです。
ディテクティブスペシャルの設計は、後のSF-VI/DS-IIや短命に終わったコルト マグナムキャリーに影響を与え、2000年にコルトが小型フレームリボルバー生産を終了するまで系譜が続きました。
コルト ディテクティブ スペシャルが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ
コルト ディテクティブ スペシャルが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。
コルト コマンド(1942〜1945年)

項目 | 内容 |
---|---|
モデル名 | Colt Commando |
分類 | リボルバー(Colt E/Iフレーム) |
口径 | .38スペシャル弾 |
装弾数 | 6発 |
銃身長 | 2インチ(約50.8mm)、4インチ(約101.6mm) |
構造 | スチールフレーム、スチールシリンダー、多くはパーカライズド(パーカー処理)仕上げ |
開発背景 | 第二次世界大戦中のアメリカ軍および政府機関の需要に応えるため、Colt Official Policeをベースに簡素化・大量生産されたモデルです。 |
製造期間 | 1942年〜1945年 |
主な使用者 | アメリカ陸軍憲兵隊、情報機関(OSSなど)、政府機関、軍需工場警備員、戦後の日本警察 |
特徴 | 戦時中の資材節約と生産効率を重視して設計され、堅牢で信頼性の高いリボルバーとして運用されました。 |
コルト コマンドーは、第二次世界大戦中にアメリカ政府が大量のサイドアームを必要としたため、コルト社が軍・治安機関向けに製造した戦時支給リボルバーです。
民生用のコルト・オフィシャルポリスをベースに、製造時間とコストを削減するために簡略化されており、「オフィシャルポリスの簡易版」という位置づけです。
特徴と技術
コルトの「Eフレーム」を使用しており、頑丈さと信頼性、そして迅速な大量生産を重視して設計されました。
コルト コマンドの特徴と技術は以下の通りです。
運用史と年表
コマンドーは、主に軍警察、警備員、軍需工場の要員に支給されました。
2インチバレルの「ジュニア・コマンドー」は、OSS(戦略諜報局)などの諜報機関に配備され、秘密工作や隠密任務において携行性と信頼性が高く評価されました。
「ジュニアコマンドー」は、非常に限られた数量のみが生産。正式生産は1943年3月に始まり、現存数が少なくコレクター市場で高く評価されています。大半のコマンドーは4インチバレルであったため、2インチ仕様は極めて稀少です。
戦時中はほとんど商業販売が行われず、戦後に民間市場に出回ったショートバレルモデルの多くは、4インチモデルを改造したものでした。
コルト コマンドの年表は以下の通りです。
各弾薬の比較
弾薬名 | 弾速 | マズルエナジー | 説明 |
---|---|---|---|
.38スペシャル | 約880 fps | 約240 ft-lbf | 1898年にS&Wが警察・軍用として開発。 米国で最も普及したリボルバー弾薬の一つ。 護身用、射撃競技、法執行機関で使用。 モデル例:S&W M10、コルト ディテクティブスペシャル、ルガー SP101 |
.45 ACP | 約940 fps | 約400 ft-lbf | 1904年にジョン・ブローニングが米軍向けに開発。 M1911に採用。 高いストッピングパワーで軍用、護身用、競技用に使用。 モデル例:コルト M1911、グロック 21、SIG SAUER P220 |
.32 S&W ロング | 約760 fps | 約120 ft-lbf | 1896年登場。 射撃競技や警察用として使用。 反動が軽く精密射撃向き。 現在もターゲットピストルで使用。 モデル例:S&W M16、コルト ポリス ポジティブ、オリンピックターゲットピストル各種 |
.38 S&W | 約685–780 fps | 約150–200 ft-lbf | 1877年登場。 .38スペシャルより古く、初期警察用リボルバーや英軍(.38/200)で使用。 現在はほぼ廃止。 モデル例:S&W ビクトリーモデル、エンフィールド No.2、ウェブリー Mk IV |
.22 LR | 約1000–1200 fps | 約100 ft-lbf | 1887年登場。 世界で最も普及するリムファイアカートリッジ。 プリンキング、射撃訓練、小型猟に使用。 モデル例:ルガー マークシリーズ、S&W M17、ブローニング バックマーク |
.38 コルト ニューポリス | 約700–770 fps | 約150–200 ft-lbf | 19世紀後半にコルトが警察用に開発。 .38 S&Wと同等の性能。 モデル例:コルト ポリス ポジティブ、コルト ニューポリス |
.41 コルト | 約700–900 fps | 約200–300 ft-lbf | 1877年登場。 コルト製ダブルアクションリボルバー用に開発され、警察や護身用として使用されたが現在は廃止。 モデル例:コルト サンダラー、コルト ニューアーミー&ネイビー |
実際の性能は、銃身長、使用弾薬メーカー、装薬量、試験条件などにより変動します。
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