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日本警察のリボルバー解説|ニューナンブM60からS&W・コルト各種モデルまで主要拳銃一覧

要人警護訓練画像
首相官邸ホームページ, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

日本警察では、長年にわたりリボルバー(回転式拳銃)が広く使用されてきました。

国産のニューナンブM60をはじめ、S&Wやコルト製のさまざまなモデルが配備され、各部門や任務に応じた運用が行われています。

この記事では、ミネベアミツミ ニューナンブM60、S&W SAKURA M360J、M36、M37エアウェイト、M1917など、日本警察で使用されたリボルバー各種を解説します。

※各モデルのタイトルには製造期間(運用期間ではない)を掲載しています。

S&W系リボルバー

日本警察で採用されるスミス&ウェッソン(S&W)系リボルバーは、主に小型フレーム設計に基づき、信頼性と扱いやすさが重視されています。

代表的なモデルには、S&Wの設計思想を受け継いだ国産モデルの「ニューナンブM60」や、軽量合金製の「SAKURA M360J」があり、いずれも.38スペシャル口径で5発装填が基本です。

これらはダブルアクション/シングルアクション方式を採用し、携帯性と操作の容易さを両立しています。

安全性や耐久性も高く、ランヤードリングや専用グリップ装備など警察向けの工夫も施されています。

フレームとは?

リボルバーのフレームは、銃本体の構造部分で、シリンダーや銃身、ハンマー、トリガーを支える骨格となる部分です。

フレームサイズにより使用できる弾薬や銃全体の強度、携行性が変わります。

  • S&W Jフレーム
    • 小型フレーム。
    • 主に.38スペシャル弾のコンパクトリボルバーに使用され、携帯性に優れます。
  • S&W Kフレーム
    • 中型フレーム。
    • .38スペシャル弾や.357マグナム弾のリボルバーに使用され、警察用として広く採用されています。
  • S&W Nフレーム
    • 大型フレーム。
    • .44マグナム弾などの大口径リボルバーに使用され、強度が高いですが重量も増します。

シングルアクションとダブルアクションとは?

  • シングルアクション
    • ハンマーを手動で起こしてから引き金(トリガー)を引く方式。
    • 引き金が軽く、精密射撃に向いています。
  • ダブルアクション
    • 引き金を引くだけでハンマーが起き上がり撃発できる方式。
    • 素早く撃てる利点がありますが、引き金の重さ(トリガープル)が重くなる傾向があります。

S&W M1917(1917年~1940年代)

銃の画像
S&W 1917 画像出典:Wikipedia
項目内容
モデル名Smith & Wesson M1917
分類リボルバー
口径.45 ACP弾
(ハーフムーンクリップまたはフルムーンクリップ使用)
装弾数6発
銃身長5.5インチ(約139.7mm)
構造スチールフレーム
スチールシリンダー
開発背景第一次世界大戦中の拳銃不足を補うため、M1911ピストルと同じ.45 ACP弾を使用できるよう開発されました。
製造期間1917年〜1940年代
(主に第二次世界大戦終結まで)
主な使用者アメリカ軍(陸軍)、民間、戦後の日本警察
特徴米軍に正式採用された最初期の.45 ACP弾リボルバーであり、第一次・第二次世界大戦で広く使用されました。

S&W M1917は、第一次世界大戦中に米軍のM1911ピストルの生産が需要に追いつかないという問題を解決するために開発された、大型フレームのダブルアクションリボルバーです。

S&Wはコルト社とともに、M1911と同じ.45ACP弾を使用する拳銃を製造する契約を結び、わずか3年間で約15万丁を生産しました。

特徴と技術

S&W .44 ハンドイジェクター2ndモデルをベースに開発されており、シリンダーの段差やグリップ下部のランヤードリングにその特徴が見られます。

S&W M1917の特徴と技術は以下の通りです。

  • 使用弾薬:
    • .45ACP弾を使用するために、リムレス弾を確実に装填・排莢するためのハーフムーンクリップやフルムーンクリップが考案されました。
    • S&Wの設計は、クリップがなくても発射は可能ですが、手動で排莢する必要がありました。
  • サイズ:
    • 銃身長は5.5インチ(140mm)、全長は10.8インチ(274mm)で、未装填時の重量は約1.0kgです。
  • 構造:
    • ブレード式のフロントサイトとノッチ式のリアサイトを装備し、堅牢なスチール構造と薄型の木製グリップが特徴です。

ムーンクリップとは?

ムーンクリップ画像
フルムーンクリップとハーフムーンクリップKrd, Public domain, via Wikimedia Commons
  • ハーフムーンクリップ
    • 半月型のクリップで、主にリボルバーでリムレス弾を使用する際に用いられます。
    • 3発分の弾薬を保持し、装填や排莢を容易にします。
  • フルムーンクリップ
    • 円形のクリップで、6発(または5発)分のリムレス弾を一括保持できます。
    • リボルバーへの素早い装填と排莢が可能です。

これらは本来オートピストル用のリムレス弾をリボルバーで使用するために考案されました。

競技や護身用途で利便性が高く、フルムーンクリップはスピードローダーのように機能します。

著名なガンライターのエルマー・キースは、コルトM1917を「仕上げが粗い」と評価し、S&W製の方が高品質であると述べています。

運用史と年表

M1917は、第一次世界大戦だけでなく、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争でも使用され、ベトナム戦争では、「トンネルラット」と呼ばれる地下戦闘部隊にM1917が使用されました。これは狭いトンネル内での信頼性とストッピングパワーが評価されたためです。

第一次世界大戦中にイギリス軍でも採用され、第二次世界大戦ではホームガードや王立海軍によって使用されました。

M1917は戦車兵、砲兵、憲兵など、オートマチックピストルが不足する部隊に配備されることが多かったモデルです。

S&W M1917の運用史と年表は以下の通りです。

  • ブラジル向け生産:
    • 1937年にはブラジル向けに25,000丁が製造され、ブラジル国章の刻印が施されました。
  • 民間市場と後継モデル:
    • 戦後、ムーンクリップなしで使用できる.45オートリム弾が登場し、民間市場でも人気を博しました。
    • S&Wはその後も本モデルの系譜を継承し、1950年モデル(後のモデル22、モデル25)として発展させました。
  • 1917年 S&W M1917がM1911不足を補うため米陸軍に採用。
  • 1917–1920年 戦時生産、約15万丁を製造。
  • 1937年 ブラジル向けに25,000丁を製造、ブラジル国章入り。
  • 1941–1945年 第二次世界大戦で米軍および同盟国が再配備・使用。
  • 1950年 S&Wがモデル22、25へと発展するモデル1950を発表。
  • 1994年 米軍から正式退役。ただし一部は長期使用が継続。
  • 2000年代〜2020年代 コレクターズアイテムとして人気が続き、S&Wから記念モデルやクラシックラインとして再販。

S&W M1917が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

S&W M1917が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • 『突撃』(1957年): スタンリー・キューブリック監督による反戦映画。
  • 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年): ハリソン・フォード主演、スティーヴン・スピルバーグ監督による冒険映画。
  • 『バットマン』(1989年): ティム・バートン監督、ジャック・ニコルソンがジョーカーを演じたヒーロー映画。
  • 『フューリー』(2014年): 第二次世界大戦末期のドイツを舞台にした、ブラッド・ピット主演の戦争映画。
  • 『ハイウェイマン』(2019年): ケビン・コスナーとウディ・ハレルソンが主演を務めたクライムドラマ。

S&W レギュレーションポリス(1917年~1950年代)

銃の画像
S&W レギュレーションポリス 画像出典:rockislandauction
項目内容
モデル名Smith & Wesson Regulation Police
分類リボルバー
口径.32 S&W Long弾
.38 S&W弾
装弾数5発
銃身長3.25インチ(約82.5mm)
4.25インチ(約108mm)
構造スチールフレーム
スチールシリンダー
開発背景20世紀初頭、警察官や一般市民の護身用として設計されたIフレームリボルバーです。
製造期間1917年〜1950年代
(主に1917年から1940年代後半まで)
主な使用者米国内外の警察機関、民間人、戦後の日本警察
特徴Iフレームを基にした小型リボルバーで、警察官の制服着用時や私服時の携行に適していました。

S&W レギュレーションポリスは、アメリカのS&Wが製造した、ダブルアクション/シングルアクションの小型リボルバーシリーズです。

都市部の警察官や刑事、民間の護身用として、携帯性と信頼性の両立を目指して開発されました。

製造は1917年に始まり、1960年代まで続きました。

特徴と技術

このシリーズは、大型のKフレームではなく、コンパクトなIフレームをベースとしています。

S&W レギュレーションポリスの特徴と技術は以下の通りです。

  • 口径と装弾数:
    • .32 S&Wロングと.38 S&Wの2種類があり、装弾数はそれぞれ6発と5発です。
  • 設計:
    • グリップは、従来のモデルよりも大型の手でも扱いやすいスクエアバット形状を採用しています。
    • 銃身長は通常3.25〜6インチでしたが、後には2インチのショートバレルモデルも登場しました。
  • 機構:
    • ハンマーは露出式で、シングルアクションとダブルアクションの両方に対応しています。
    • サイトは固定式ですが、一部のターゲットモデルには調整式サイトが装備されました。
  • 素材:
    • フィニッシュはブルーとニッケルの両方が用意され、.38口径モデルでは強度を高めるためにシリンダーに熱処理が施されました。

運用史と年表

S&W レギュレーションポリスは、アメリカ東部を中心に多くの警察署で採用。.38スペシャル弾が標準となる以前は、小口径が主流であった都市警備において、ニューヨーク市警察(NYPD)などでも使用されていました。

日本を含む諸外国にも輸出され、戦後の国産拳銃が登場するまで日本の警察でも使用されていました。

S&W レギュレーションポリスの年表は以下の通りです。

  • 1917年 32口径および.38口径のS&Wレギュレーションポリスが登場。
  • 1920~1930年代 アメリカ国内の警察や民間市場で広く採用。
  • 1940年代 第二次世界大戦中に生産と使用が継続され、軍や警備用途でも使用。
  • 1950年代 より隠し持ちやすい短銃身・ラウンドバットモデルが登場。
  • 1958年 .32レギュレーションポリスはS&Wモデル31に更新。
  • 1960年代 警察がより大型口径や近代的リボルバーへ移行し、段階的に廃止。
  • 2000~2020年代 コレクターズアイテムとして人気があり、警察装備と護身用銃の歴史的意義が評価。

S&W ビクトリー(1942~1945年)

銃の画像
S&W ビクトリー  画像出典:rockislandauction.com
項目内容
モデル名Smith & Wesson Victory Model
分類リボルバー(Kフレーム)
口径.38 S&W弾(英連邦向け)
.38スペシャル弾(米国向け)
装弾数6発
銃身長2インチ(約50.8mm)
4インチ(約101.6mm)
5インチ(約127mm)
6インチ(約152.4mm)
構造スチールフレーム
スチールシリンダー
多くはパーカライズド(パーカー処理)仕上げ
開発背景第二次世界大戦中の連合国軍の拳銃需要を満たすため、S&W Military & Police(M&P)を基に量産されました。
製造期間1942年〜1945年
主な使用者アメリカ軍、イギリス軍、オーストラリア軍などの連合国軍、戦後の日本警察、日本の海上保安庁
特徴グリップフレームに「V」のシリアル番号接頭辞が刻印されているのが特徴です。戦時中の大量生産モデルとして、信頼性と堅牢性に優れていました。

S&W ビクトリーモデルは、第二次世界大戦中の連合国の拳銃不足を補うために、S&Wが迅速な大量生産体制で製造した軍用リボルバーです。

正式名称はミリタリー&ポリスであり、「ビクトリーモデル」は製造された個体に「V」のシリアル番号が振られたことに由来します。

特徴と技術

ビクトリーモデルは、信頼性が高く、大量生産が容易な点が重視されています。

S&W ビクトリーの特徴と技術は以下の通りです。

  • 口径と装弾数:
    • 6連発のダブルアクション/シングルアクションリボルバーで、口径は主に2種類ありました。
    • イギリス・英連邦向けには.38 S&W弾(通称.38/200または.380 Mk IIz)、アメリカ軍向けには.38スペシャル弾が用いられました。
  • 製造:
    • 1942年から1945年の戦時中に90万丁以上が製造されました。
    • コストと耐久性を考慮し、戦前のブルーイングに代わり「ブラックマジック」と呼ばれるリン酸塩皮膜(パーカライズド)仕上げが採用されました。
    • 「ブラックマジック」は、S&W独自の処理により灰色がかった外観を持ちます。
  • 設計:
    • グリップは簡素なウォールナット材で、底部には軍用のランヤードループが装備されています。
    • サイトは固定式です。
    • 1945年には誤射事故を受けて、改良されたハンマーブロックセーフティが追加されました。
    • Kフレームリボルバーであるため、HKS-10やサファリランドComp II/IIIなど標準スピードローダーが使用可能で、現代の射撃用途でも利便性があります。
  • サイズと重量:
    • アメリカ向けモデルの銃身長は4インチが標準で、重量は約737グラム、全長は約247〜254ミリです。

パーカライズドフィニッシュ(parkerized finish)とは、リボルバーの鋼製部分に施されるリン酸塩被膜処理の一種で、耐腐食性と耐久性を高める目的で使われます。

リン酸を含む溶液に鋼部品を浸漬し、化学反応でマットな質感の保護膜を形成します。

  • 主な特徴
    • 伝統的なブルーイングに比べて優れた耐錆性があり、過酷な環境やハードな使用に最適。
    • 光沢のない灰色や黒色のマットな外観で、反射を抑え軍用や警察用銃に好まれる。
    • 多孔質の表面が油分を保持し、さらなる防錆効果と潤滑性を提供。
    • 耐擦傷性が高く、頻繁な取り扱いや悪条件下でも耐久性を発揮。

第二次世界大戦中に米軍で広く採用され、現在もヴィンテージから現代銃まで多く用いられています。

なお、パーカライズドは一般的に炭素鋼にのみ施され、ステンレス鋼や非鉄金属には適用されません。

運用史と年表

ビクトリーモデルは、レンドリース法※に基づき、約59万丁がイギリス、カナダ、オーストラリアなど英連邦軍に供給。アメリカ軍でも約35万丁が使用され、主に海軍・海兵隊の航空要員や国内の警備要員に支給されました。

レンドリース法とは?

レンドリース法は、第二次世界大戦中のアメリカの支援政策であり、1941年3月11日に制定されました。

アメリカは公式に参戦する前から、イギリス、ソ連、中国、フランスなど連合国に対して、武器、車両、航空機、船舶、食料、工業製品、原材料といった軍需物資や資源を無償または後払いで供給しました。

【主なポイント】

  • 制定日:1941年3月11日
  • 目的:大統領が、アメリカ防衛に重要と判断する国に対して、武器や物資を販売、貸与、譲渡できる権限を与えること
  • 総供給額:501億ドル(現代換算で約6700億ドル)
  • 最大受給国:イギリス(314億ドル)、ソ連(113億ドル)、フランス、中国など
  • 支援内容:戦車、小銃、航空機、艦船、食料、工業機械、原材料

【歴史的背景】

  • イギリスのチャーチル首相が、従来の現金即払い(キャッシュ・アンド・キャリー)政策では支払いが不可能とアメリカに訴えたことがきっかけ。
  • アメリカの孤立主義から、連合国支援による積極外交への大転換となった。

【影響】

  • 連合国の戦力強化を支えた。
  • 戦後、返却されなかった物資は、長期ローンや割引価格で購入される形で整理された。
  • 1945年9月20日に終了。

OSS(戦略情報局)によってヨーロッパのレジスタンスにも配布されるなど、幅広く活用されました。

第二次世界大戦中にも一部が軍や警備用途で使われ、ハンマーブロック欠陥による水兵の死亡事故で、米海軍は一時的にコルト製リボルバーを要求しましたが、S&Wが迅速に改良を行い、調達は継続されました。

第二次大戦中、S&Wはビクトリーモデルを1日約1,000丁生産しており、59万丁以上が英連邦へ、35万丁以上が米軍へ供給されました。

戦後、余剰となった個体は外国軍や日本の警察にも供与されています。

日本においては、国産拳銃が登場するまで使用されていました。

英連邦軍では1960年代初頭までにブローニング・ハイパワーに更新され、多くが民間市場に放出されています。

S&W ビクトリーの年表は以下の通りです。

  • 1940~1942年:S&Wは英連邦向けにM&Pリボルバーを供給し、戦時生産へと移行。
  • 1942年:シリアル番号が100万に達し、「V」接頭辞が採用され、正式にビクトリーモデルとされる。
  • 1942~1945年:戦時生産のピークで、90万丁以上が製造。
  • 1945年:海軍の要望によりハンマーブロック安全装置が改良。
  • 1940年代後半~1950年代:ビクトリーモデルはアメリカ及び連合国軍で引き続き使用され、一部は日本の警察や警備に輸出。
  • 1960年代初頭:英連邦軍では半自動拳銃への切り替えが進み、リボルバーは段階的に退役。
  • 1960年代以降:大量に民間市場に流れ、世界中のコレクターや射撃愛好家に支持。

S&W ビクトリーが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

S&W ビクトリーが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • ゴッドファーザー』 (1972年公開): フランシス・F・コッポラ監督によるマフィア一家の血と裏切りを描いた傑作。
  • ネバダ・スミス』 (1966年公開): 父母を殺された青年が復讐に燃えるスティーブ・マックイーン主演の西部劇。
  • キリング・ケネディ』 (2013年放送): JFK暗殺事件をリー・ハーヴェイ・オズワルド視点で描いたテレビ映画。
  • オールド・ヘンリー』 (2021年公開): 隠遁生活を送る農夫が銃撃戦に巻き込まれる現代西部劇。
  • ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』 (2010年放送開始): 禁酒法時代のアトランティックシティを舞台に権力と犯罪を描いたHBOドラマ。

S&W M36(1950年~現在)

銃の画像
S&W 36 画像出典:invaluable.com
項目内容
モデル名Smith & Wesson Model 36
分類リボルバー(S&W Jフレーム)
口径.38スペシャル弾
装弾数5発
銃身長2インチ(約50.8mm)
3インチ(約77mm)
構造スチールフレーム、スチールシリンダー
開発背景1950年に「チーフスペシャル Chiefs Special」として発表され、隠匿携帯を目的とした小型リボルバーとして開発されました。
製造期間1950年〜現在
(ただし、現在の製造は限定的または派生モデルが主)
主な使用者米国の法執行機関(警察官、捜査官)、私服警官、民間人、日本警察(警視庁SATなど)
特徴非常に小型で携帯性に優れ、バックアップ用や私服捜査官の護身用として広く普及しました。

S&W モデル36は、第二次世界大戦後に法執行機関や民間市場のニーズに応える形で開発された、小型で携帯性に優れたリボルバーです。

1950年に国際警察署長協会(IACP)大会で「チーフスペシャル」という名で発表され、大きな注目を集めました。

国際警察署長協会(IACP)大会は、世界最大級の警察指導者向け年次総会・展示会であり、毎年約16,000人の法執行関係者が参加します。

目的は最新の訓練や知識の提供、ネットワーク構築、装備や技術の展示で、数百の教育セッションと600以上の企業展示が行われます。

期間は4日間で、アメリカの主要都市で開催。警察幹部だけでなく、あらゆる階級の法執行職員や関連団体も参加可能であり、警察業務の発展や製品発表の重要な場となっています。

特徴と技術

モデル36は、.38スペシャル弾に対応するために設計されたJフレームをベースとしています。

従来のIフレームが対応できなかった.38 S&W弾の制約を克服し、信頼性と扱いやすさを両立しています。

S&W M36の特徴と技術は以下の通りです。

  • 基本仕様:
    • ダブルアクション/シングルアクションの両用で、装弾数は5発。
    • 最も一般的な銃身長は1.88インチですが、3インチモデルも生産されました。
    • フレーム、バレル、シリンダーはブルードカーボンスチール製が標準で、ニッケルメッキモデルも存在します。
  • サイトとグリップ:
    • サイトは固定式で、ハンマーが露出しているのが特徴です。
    • グリップは木製またはゴム製で、ラウンドバットとスクエアバットの両方のバリエーションがあります。

運用史と年表

モデル36はアメリカの法執行機関や私服捜査官のほか、日本の警察庁などでも使用されました。

小型で隠匿性が高く、多くの映画や文学作品にも登場しています。

アメリカの多くの警察署では、モデル36は階級を示す象徴的存在となり、巡査ではなく署長や幹部職員が携行することが多かったとされています。

1950年の発表以降、世界中で広く使われました。

1957年にモデル番号制度が採用されて「モデル36」と正式に命名され、現在も「クラシック」モデルとして入手可能です。

  • 影響:
    • モデル36の成功により、JフレームはS&W社の多くの小型リボルバーの基礎となりました。
  • 派生モデル:
    • 「エアウェイトモデル37」や「レディースミス」など、用途に応じた多くの派生モデルも生み出されました。
    • 金色装飾の36ゴールドなど希少バリエーションが存在します。
    • アジャスタブルサイト付きのモデル50も少数製造されました。
  • 歴史的事件:
    • 1978年のサンフランシスコ市長暗殺事件や、1979年の韓国・朴正煕大統領暗殺事件など、いくつかの歴史的な事件にも使用されたことで知られています。

S&W M36の年表は以下の通りです。

  • 1940年代:.38スペシャル弾対応の小型リボルバー設計開始。
  • 1950年:「チーフスペシャル」モデル36がIACP大会で発表。
  • 1951年:エアウェイトモデル37登場。
  • 1957年:モデル番号制度採用、「チーフスペシャル」はモデル36に。
  • 1960年代〜1980年代:ヘビーバレルやグリップ改良、ヨーク保持システムなど多数の設計変更。
  • 1989年:レディースミスおよび特別ターゲットモデル発売。
  • 1999年:モデル36生産終了。2007年に「クラシック」ラインで復活。
  • 2000年代〜2020年代:限定生産継続、コレクター人気も高いバックアップおよびコンシールドキャリー用リボルバーとして認知。

S&W M36が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

S&W M36が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • 『タクシードライバー』 (1976年):ロバート・デ・ニーロ主演、マーティン・スコセッシ監督によるサイコスリラー。
  • 『セルピコ』 (1973年):アル・パチーノ主演、シドニー・ルメット監督による伝記犯罪ドラマ。
  • 『フレンチ・コネクション』 (1971年):ジーン・ハックマン主演、ウィリアム・フリードキン監督によるポリスアクション。
  • 『ヒート』 (1995年):アル・パチーノとロバート・デ・ニーロが共演したマイケル・マン監督の犯罪映画。
  • 東のエデン』(2009年):記憶を失った青年・滝沢朗が12人の「セレソン」の一人として日本を救うゲームに挑む物語。

S&W M37 エアウェイト(1951~2006年)

銃の画像
S&W M37エアウェイト 画像出典:line.17qq.com
項目内容
モデル名Smith & Wesson Model 37 Airweight
分類リボルバー(S&W Jフレーム)
口径.38スペシャル弾
装弾数5発
銃身長2インチ(約50.8mm)
3インチ(約77mm)
構造アルミニウム合金フレーム
スチールシリンダー
開発背景1950年に発表されたModel 36(Chiefs Special)の軽量版として、1951年に開発されました。
製造期間1951年〜2006年
主な使用者米国の法執行機関(私服警官など)、民間、日本の警察官の一部
特徴Model 36をベースにフレームをアルミ合金製とすることで軽量化を実現し、携帯性を高めたモデルです。

S&W モデル37 エアウェイトは、モデル36の軽量版として開発された、コンパクトなダブルアクション/シングルアクションリボルバーです。

1951年に「チーフスペシャル エアウェイト」として登場し、私服警官や民間での護身用として広く普及しました。

日本警察による採用は日本国内での派生モデル開発にも影響を与え、その後の日本製拳銃設計に大きな影響を残しました。

特徴と技術

モデル37はJフレームを基礎とし、モデル36とほぼ同じサイズと設計ですが、アルミ合金製のフレームとシリンダーを採用することで大幅な軽量化を実現しました。

S&W M37 エアウェイトの特徴と技術は以下の通りです。

  • 重量と構造:
    • 未装填時の重量は約410〜425g(14.5〜15オンス)です。
    • 初期モデルはアルミ製シリンダーを装備していましたが、耐久性(強度不足)の問題から後にスチール製シリンダーへ変更されています。
  • 弾薬:
    • 装弾数は5発で、使用弾薬は.38スペシャル弾です。
    • アルミフレームのため、+P弾(高圧な弾薬)の多用はフレームの亀裂を引き起こす可能性があるため、限定的な使用にとどめるべきとされています。
  • サイトとグリップ:
    • サイトは固定式で、グリップは携帯性を考慮して木製、ゴム製、ポリマー製があり、ラウンドバットとスクエアバットの両方が存在します。
  • 製造:
    • アメリカのS&Wで製造され、1957年に「モデル37」と正式指定されました。
    • 2006年まで生産が続けられ、現在でも多くの個体が現役で流通しています。

運用史と年表

モデル37は、軽量性と秘匿性の高さから、一日中携行する警察官や探偵に広く採用されました。

また、アメリカ空軍のパイロット用拳銃としても検討されましたが、採用には至りませんでした。

S&W M37 エアウェイトの運用史と年表は以下の通りです。

  • 日本での採用:
    • 日本の警察庁でもランヤードリング付きの特別仕様が採用され、契約終了後に一部がアメリカの民間市場で販売されました。
  • 後継モデル:
    • 後継として、ロック機構とステンレスフィニッシュを採用したモデル637が開発されました。
  • 1951年 アルミフレームとシリンダーを持つ「チーフスペシャル エアウェイト」として登場。
  • 1952年 アルミシリンダーの生産終了、耐久性確保のためスチールシリンダーへ移行。
  • 1953年 スクエアバットモデルが2インチおよび3インチバレルで発売。
  • 1957年 S&Wのモデル番号制度採用により、モデル37として正式指定。
  • 1960年代〜1980年代 法執行機関や民間市場で広く採用、様々なグリップやフィニッシュバリエーションが登場。
  • 2001年 日本警察向け契約が解除され、余剰在庫が民間市場で販売。
  • 2006年 S&Wのカタログから生産終了、後継はモデル637。
  • 2020年代 コレクターズアイテムおよびクラシックな秘匿携行リボルバーとして人気継続。

S&W M37 エアウェイトが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

S&W M37 エアウェイトが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 2nd GIG』(2004-2005年放送):公安9課の活躍を描くSFアニメシリーズ。
  • 『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』(2007年放送):超能力者と公安警察の攻防を描くダークSFアニメ。
  • 『名探偵コナン 戦慄の楽譜(フルスコア)』(2008年公開):警察関係者が登場する人気推理アニメ映画。
  • 『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』(2010年放送):ゾンビ襲来の中で生き残る高校生たちを描いたホラーアニメ。
  • 『未来日記』(2011-2012年放送):公安警察が関与するサバイバルゲームを描いたサスペンスアニメ。

ミネベアミツミ ニューナンブ M60(1960年~1990年代)

銃の画像
画像出典:Wikipedia
項目内容
モデル名ニューナンブM60
分類リボルバー
口径.38スペシャル弾
装弾数5発
銃身長2インチ(約50.8mm)、3インチ(約77mm)
全長約173mm(2インチバレル)、約198mm(3インチバレル)
重量約670g
発射機構シングルアクション、ダブルアクション
安全装置ハンマーブロック式安全装置
フレーム材質スチール
照準固定式(フロントブレード/リアノッチ)
調達開始年1960年
開発背景戦後日本で米国製リボルバーに代わる警察用拳銃として開発。
S&W M38などを参考にしています。
製造元新中央工業(現ミネベアミツミ)
主な使用者日本警察、皇宮護衛官、海上保安官、麻薬取締官、刑務官など
特徴小型軽量で携行性に優れ、日本警察の標準拳銃として長期使用されています。

ニューナンブM60は、戦後日本の警察が抱えていた老朽化した米国製拳銃の問題を解決するために開発された、国産のリボルバーです。

小型軽量で信頼性が高い拳銃を求める声に応え、1956年に設置された「拳銃研究会」の指導のもと、新中央工業(現・ミネベアミツミ)が1957年から開発を開始しました。

特徴と技術

アメリカのS&W(スミス&ウェッソン社)のJフレームおよびKフレームリボルバーをベースにしたダブルアクションリボルバーで、堅牢性と扱いやすさを両立しています。

S&W J/Kフレームに似ていますがシリンダーがわずかに大きく、S&W用スピードローダーは適合しません。

シングルアクション時の精度が高く、25メートルで50ミリ以内に集弾可能と言われています。

設計はS&W社製リボルバーを参考にしつつ、グリップ形状やシリンダーラッチは日本人警察官向けに改良されました。

ニューナンブ M60の特徴と技術は以下の通りです。

  • 製造:
    • 新中央工業(現・ミネベアミツミ)が開発製造し、1961年から約13万3400丁が製造されました。
    • 延長された銃身と調整式のアジャスタブルサイトを持つ「さくら」スポーツモデルが試作されましたが、3丁のみで量産されませんでした。
    • ライフリングは右回り5条、1:15インチツイスト。
  • 改良:
    • 生産中に細かな改良が加えられており、例えばサイドプレートは1964年以降、3本スクリュータイプへ変更されています。

運用史と年表

1960年から警察への納入が開始され、1964年以降は警察の制式拳銃として一本化されました。

生産は1990年代に終了しましたが、現在も多くの警察官に配備されています。

ニューナンブ M60の年表は以下の通りです。

  • 戦後 日本警察は米国製老朽拳銃を使用
  • 1956年9月 通商産業省の指導で拳銃研究会が設置され、国産拳銃開発が開始
  • 1957年 新中央工業にてニューナンブM58(後のM60)の開発が開始
  • 1959年11月 M58が性能審査で優秀成績を収める
  • 1960年 ニューナンブM60として警察への納入が開始
  • 1961年 シリンダー破裂事故への対策後、量産を再開
  • 1964年 サイドプレートが4スクリューから3スクリュー仕様に改良
  • 1975年 製造元の新中央工業がミネベアに吸収合併
  • 1976年10月 沖縄県警と山口県警でシリンダー破裂事故が発生、全国で射撃訓練が一時中止
  • 1980年代 シリンダーラッチが長く厚い形状に改良、グリップパネルも改良
  • 1990年代中盤 生産終了
  • 1996年 アルミニウム合金採用の軽量型M60Aが提案されるが不採用
  • 2006年 後継としてS&W SAKURA M360Jが採用
  • 2025年 依然として多数が警察や海上保安庁などで運用中

ニューナンブM60が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

ニューナンブ M60が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • タイガー・オン・ザ・ビート』(1988年公開)チョウ・ユンファ演じるインスペクターが活躍する香港のアクション映画。
  • スモウ・ヴィクセンズ』(1996年公開)女性警察官たちの活躍を描いたアクション映画。
  • ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年公開)日本の警察官も登場する怪獣パニック映画。
  • デスノート』(2006年公開)警察も関わる緻密な心理戦を描いたサスペンス映画。
  • 名探偵コナン』(1996年~)警察キャラクターが多数登場する人気推理アニメシリーズ。

S&W SAKURA M360J(2006年~現在)

銃の画像
S&W M360J SAKURA 画像出典:Wikipedia
項目内容
モデル名S&W SAKURA M360J
分類リボルバー(S&W Jフレーム)
口径.38スペシャル弾
装弾数5発
銃身長2インチ(約50.8mm)
構造スカンジウム合金フレーム、ステンレススチールシリンダー
照準固定式(フロントブレード/リアノッチ)
開発背景ニューナンブM60の後継として、日本警察向けに特別に設計・開発されたリボルバーです。
製造元Smith & Wesson
調達開始年2006年
主な使用者日本警察、皇宮護衛官、海上保安官、麻薬取締官、入国警備官、刑務官
特徴非常に軽量で携行性に優れ、現在も日本警察の主力拳銃の一つとして使用されています。

S&W SAKURA M360Jは、S&Wが日本の警察向けに特別に設計・製造したリボルバーです。

正式名称は「S&W SAKURA M360J」といい、日本ではニューナンブM60の後継として、2006年から調達が始まりました。

特徴と技術

S&W社のJフレームリボルバーをベースにしており、特に軽量化されたM360PDを元に開発されました。

しかし、日本の警察の要請に合わせて様々な変更が加えられています。

S&W M360Jの特徴と技術は以下の通りです。

  • 構造:
    • フレームは軽量なスカンジウム合金製ですが、シリンダーはより安価で頑丈なステンレススチール製です。
    • 銃身はアルミ合金製のシュラウドとステンレス製のライナーを組み合わせた2ピース構造となっています。
  • 作動と弾薬:
    • ダブルアクション/シングルアクションの両用で、装弾数は5発です。
    • ベースモデルと異なり、日本の警察が使用する.38スペシャル弾にのみ対応しており、より強力な.357マグナム弾には対応していません。
  • 刻印とグリップ:
    • フレーム左側には「SAKURA M360J」と、カスタマイズを担当した「NMB(ミネベアミツミ)」の刻印があります。
    • グリップはニューナンブM60後期型などを参考に、フィンガースパーとランヤードリングが追加されています。
    • 「NMB」刻印があるものの、設計・製造はほぼ全てS&Wが担当しており、ミネベアの役割はグリップとランヤードリングの取り付けに限られています。
  • 運用機関:
    • 警察庁、海上保安庁、入国管理局などが主な使用者です。

運用史と年表

S&W SAKURA M360Jは、2006年に日本警察に採用され、S&W M37およびニューナンブM60を更新する形で本格的な配備が始まりました。

2011年までに約25,000丁以上が納入されており、現在も日本の法執行機関で標準拳銃として運用が続けられています。

S&W M360Jの年表は以下の通りです。

  • 2002年: 元となるS&W M360シリーズが国際市場で登場。
  • 2006年: S&W SAKURA M360Jが日本警察に採用。その後、海上保安庁や入国管理局でも採用されました。
  • 2009年: 複数県警からフレーム破損が報告され、全国的な点検の結果、約200丁に亀裂が確認されました。これらの個体はメーカーによって回収・改良されています。
  • 2010年代以降: 2011年までに25,000丁が納入された後も調達と配備は継続されています。

S&W M360が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

S&W M360が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • NCIS 〜ネイビー犯罪捜査班』(2003年)アメリカ海軍を舞台にした犯罪捜査ドラマ。
  • 仮面ライダーウィザード』(2012年)魔法使いの仮面ライダーが活躍する特撮テレビシリーズ。
  • ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(2021年)伝説の殺し屋が一般人として暮らす日常を描いたアクション映画。
  • ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』(2023年)女子高生殺し屋コンビの日常を描いたアクション映画の続編。
  • ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(2024年)女子高生殺し屋コンビの日常を描いたテレビドラマシリーズ。

コルト系リボルバー

日本警察で採用されたコルト製リボルバーは、主に戦後の占領期から1960年代まで広く使用されました。

代表的なモデルには中型フレームのコルト・オフィシャルポリス(.38スペシャル、6発装填、4インチバレル)と、小型のコルト・ディテクティブスペシャル(.38スペシャル、2インチバレル)があり、いずれもダブルアクション/シングルアクション方式を採用しています。

これらは耐久性と操作性に優れ、警察官の標準装備として多用されました。

ランヤードリング装備や固定照準器など警察仕様の改良も施されており、携帯性や安全性が重視されています。

国内製リボルバーへの更新後も、これらコルトの設計は日本の警察用拳銃の性能基準として影響を与え続けました。

コルト ポリスポジティブ(1907~1947年)

銃の画像
コルト ポリスポジティブ 画像出典:mjlmilitaria.com
項目内容
モデル名Colt Police Positive
分類リボルバー(Colt D/Eフレーム)
口径.32 Colt Police弾、.38 S&W弾、.22 LR弾、.38 Colt New Police弾など
装弾数6発
銃身長2.5インチ(約63.5mm)、4インチ(約101.6mm)、5インチ(約127mm)、6インチ(約152.4mm)
構造スチールフレーム、スチールシリンダー
開発背景1907年にColt New Policeの改良型として登場。コルト独自の「ポジティブロック」安全機構を搭載し、安全性を高めた警察・民間向けモデルです。
安全機構コルト・ポジティブロック(ハンマーブロック方式)
製造期間1907年〜1947年
主な使用者20世紀初頭のアメリカの法執行機関(警察、保安官)、民間人、戦後の日本警察
特徴独自の安全機構「ポジティブロック」により、落下の衝撃による暴発を防ぐ高い安全性を実現しました。小型ながら6発装填可能で、信頼性の高い警察用リボルバーとして広く普及しました。

コルト・ポリス・ポジティブは、1907年から1947年にかけてコルト社が製造した小型フレームのリボルバーです。

安全性を高めた「ポジティブロック」セーフティシステムを搭載し、従来のモデルから信頼性を大幅に向上させたことで、アメリカの警察市場で大きな成功を収めました。

特徴と技術

ポリス・ポジティブは、その名の通り警察や法執行機関向けに設計されました。

コルト ポリスポジティブの特徴と技術は以下の通りです。

  • 基本仕様:
    • ダブルアクション/シングルアクションの両方に対応しており、6発装填が可能です。
    • 使用弾薬は32ロングコルトや32コルトニューポリス、38コルトニューポリスが中心で、後期には.22 LRも追加されました。
  • 製造と仕上げ:
    • 炭素鋼製で、ポリッシュされたブルーまたはニッケルフィニッシュが標準でした。
    • 銃身長は4インチ、5インチ、6インチが主で、.32口径のみ2.5インチモデルも存在しました。
  • 安全機構:
    • 最大の特徴は「ポジティブロック」セーフティで、これによりトリガーを引かなければハンマーが撃針に触れないため、シリンダーに6発を装填した状態でも安全に携行できます。
  • 設計:
    • シリンダーはコルト特有の時計回りに回転します。
    • グリップは初期モデルがハードラバー製でしたが、1923年以降はチェッカリング加工されたウォールナット製が標準となりました。
    • 銃身には使用弾薬が明記される刻印が施されています。

コルトのポジティブロック(Colt Positive Lock)は、1905年にコルト社が開発した安全機構で、主にコルト・ポリス・ポジティブやポリス・ポジティブ・スペシャルに搭載されました。

トリガーを引かない限り撃針(ファイアリングピン)がカートリッジの雷管に当たらないように設計されており、誤射の防止に貢献しています。

従来のリボルバーでは、ハンマーが衝撃を受けたり銃が落下した際に暴発する危険がありましたが、ポジティブロックにより6発すべて装填したまま安全に携帯可能となりました。

機械的には初期の「トランスファーバーセーフティ」の一種であり、当時としては画期的な安全対策でした。

この安全機構の採用により、「ポリス・ポジティブ」という名称に変更され、コルトの大きなセールスポイントとなりました。

ルガー・スーパーレッドホークの内部構造

運用史と年表

ポリス・ポジティブは、信頼性と安全性の高さから、20世紀初頭のアメリカ警察で広く採用されました。

ギャングのアル・カポネが使用したことでも知られており、アル・カポネ所有のニッケルモデルは10万ドル以上で落札されています。

1926年には、2インチバレルモデルが警察署長の要請で開発され、これが後に有名なコルト・ディテクティブ・スペシャルの原型となりました。

1926年から1940年に生産された「バンカーズスペシャル」は、2インチバレルで.22 LRまたは.38コルトニューポリス(.38 S&W)仕様があり、銀行員や鉄道職員に人気でした。

1990年代に短期間だけMK Vとして生産が再開され、フルシュラウデッドバレルや黒のラバーグリップなど現代的な仕様が加えられましたが、生産数はごく僅かで現在は希少価値があります。

アメリカ国外にも輸出され、オーストラリアの軍や警察で広く使用されたほか、日本でも戦前から戦後初期にかけて、国産拳銃が普及するまで警察や警備組織で使われた例が確認されています。

コルト ポリスポジティブの年表は以下の通りです。

  • 1905年 コルトポリスポジティブがニューポリスモデルの改良型として発表される
  • 1907年 正式に市場投入され、法執行機関で急速に普及する
  • 1923年 チェッカリング加工ウォールナットグリップが標準化
  • 1926年 私服刑事向けに2インチバレルモデルが登場
  • 1928年 第二世代モデルが登場し、フレームが強化されトップストラップがセレーション加工される
  • 1947年 ポリスポジティブの生産終了、後継モデルに移行

コルト ポリスポジティブが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

コルト ポリスポジティブが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • キング・コング』 (1933年公開): 巨大な猿キングコングと人間たちの戦いを描いた特撮映画の金字塔。
  • シャーシャンクの空に』 (1994年公開): 冤罪で投獄された男が自由を求め続ける感動のヒューマンドラマ。
  • アンタッチャブル』 (1987年公開): アル・カポネ逮捕に挑む財務省捜査官たちを描いたギャング映画。
  • パブリック・エネミーズ』 (2009年公開): ジョン・デリンジャーとFBIの攻防を描いたクライムドラマ。
  • ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』 (2010年放送開始): 禁酒法時代のアトランティックシティを舞台に権力と犯罪を描いたHBOドラマ。

コルト オフィシャルポリス(1907~1969年)

銃の画像
コルト オフィシャルポリス 画像出典:invaluable.com
項目内容
モデル名Colt Official Police
分類リボルバー(Colt E/Iフレーム)
口径.38スペシャル弾、.22 LR弾、.32-20 WCF弾、.41 Colt弾など
装弾数6発
銃身長4インチ(約101.6mm)、5インチ(約127mm)、6インチ(約152.4mm)
構造スチールフレーム、スチールシリンダー
開発背景1927年にColt Army Specialの後継モデルとして登場しました。法執行機関向けに設計された堅牢なリボルバーです。
製造期間1927年〜1969年
主な使用者米国の法執行機関(警察、保安官)、軍隊、戦後の日本警察、その他世界各国の警察・軍隊
特徴堅牢な造りと高い信頼性で知られ、長年にわたり米国の警察機関で標準的な装備として広く採用されました。

コルト・オフィシャルポリスは、アメリカのコルト社が製造した中型フレームのダブルアクション/シングルアクションリボルバーです。

元は1908年に「アーミースペシャル」として採用され、1927年に「オフィシャルポリス」と改称されました。

20世紀初頭のアメリカ法執行機関の近代化に伴う、堅牢で高精度なサイドアーム需要に応え、1969年までの長い期間にわたって40万丁以上が生産されました。

特徴と技術

コルト・オフィシャルポリスは、強度とサイズのバランスが取れたコルトの「Eフレーム」を使用しています。

コルト オフィシャルポリスの特徴と技術は以下の通りです。

  • 口径と装弾数:
    • 主に.38スペシャル弾を使用し、6発装弾が可能です。
    • コルトは、オフィシャルポリスがS&W Nフレーム用の強装弾(.38-44S&Wスペシャル弾)を安全に使用できると広告し、当時のS&Wミディアムフレームでは対応できない装弾にも耐えうる堅牢性を誇っていました。
    • 他にも.22 LRや.38 S&Wなどのバリエーションが存在しました。
  • 設計とフィニッシュ:
    • 標準的な銃身長は4、5、6インチですが、希少な2インチバージョンも存在します。
    • 仕上げは通常、ハイポリッシュブルーまたはニッケルフィニッシュでしたが、第二次世界大戦中の「コマンドー」モデルでは、コストと生産速度を優先したパーカライズドフィニッシュが採用されました。
    • マットフィニッシュのトップストラップとチェッカリングトリガーが採用され、前身のアーミースペシャルから改良されました。
    • 戦前モデルはチェッカード・ウォルナット・グリップと「ハーフムーン」サイトを装備し、戦後モデルでは「コルトウッド」プラスチックグリップ(後にウォルナットへ回帰)、ランプ型セレーション付きフロントサイト、改良型ハンマーへと変更されました。
  • 機構:
    • コルト独自の「ポジティブロック」セーフティ機構により、トリガーを引かなければ発射しない設計です。
    • サイトは固定式で、上部ストラップは反射防止のためマット加工が施されています。
  • グリップ:
    • グリップはチェッカリング入りのウォルナット製で、第二次世界大戦中にはプラスチック製が使用されました。

運用史と年表

オフィシャルポリスは、20世紀中頃のアメリカ法執行機関を象徴するリボルバーであり、最も売れた警察用拳銃の一つとなりました。

コルト オフィシャルポリスの運用史と年表は以下の通りです。

  • 警察と軍での使用:
    • アメリカ国内の警察署、州警察、連邦機関で広く使用されました。
    • 第二次世界大戦中には、イギリスへ約49,000丁が供給され、またアメリカ政府によって軍需工場の警備員用にも調達されました。
    • 米陸軍憲兵隊、財務省、沿岸警備隊、郵便検査局などにも制式採用され、戦時中は政府施設警備にも配備されました。
  • 国際的な広がり:
    • 日本でも国産拳銃が普及する以前の時代に、警察や警備組織で使用された例があります。
    • オーストラリア軍や警察でも使用されていました。
    • 南米諸国でも軍や警察に広く輸出・採用されています。
  • 影響:
    • オフィシャルポリスの堅牢で滑らかなロックワークは、後の「パイソン」や「トルーパー」といったコルト製リボルバーの設計に大きな影響を与えました。
    • アジャスタブルサイトを装備したターゲットモデルは、キャンプペリー※などの射撃競技でも使用されました。

キャンプペリー(Camp Perry)とは?

1907年以降、全米ライフル協会(NRA)および民間射撃団体が主催する全米最大規模の射撃競技会が毎年開催されています。ピストル、ライフル、長距離射撃など多種目にわたります。

コルト・オフィシャルポリスやそのターゲットモデルは、これらの大会におけるハンドガン部門(ピストル競技)で使用されました。

警察官や州兵、民間競技射手が参加するサービスリボルバー部門(Service Revolver Match)での使用例が多く、精度と操作性が評価されていました。

  • 1908年 コルト・アーミースペシャルが採用され、オフィシャルポリスの前身となる。
  • 1927年 法執行機関市場を狙い「コルト・オフィシャルポリス」に改称。
  • 1930年代~1940年代 多くのアメリカ警察署で標準採用され、複数の海外機関にも採用される。
  • 1940~1941年 約49,000丁が第二次世界大戦で英国・英連邦軍へ供給される。
  • 1941~1945年 アメリカ軍および警備用途向けに「コマンドー」戦時モデルが生産される。
  • 1950年代 アメリカ警察用サイドアームの代表として広く使用され、射撃競技でも活躍。
  • 1969年 法執行機関がより近代的なリボルバーや自動拳銃へ移行したことで生産終了。
  • 2000年代~2020年代 コレクターズアイテムとして人気があり、クラシックアメリカンポリスの象徴として認知され続けている。

コルト オフィシャルポリスが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

コルト オフィシャルポリスが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年公開)ハリソン・フォード演じる考古学者インディ・ジョーンズが秘宝を巡る冒険を繰り広げるアクション映画。
  • アンタッチャブル』(1987年公開)ケビン・コスナー主演、禁酒法時代のシカゴでアル・カポネを追い詰める捜査官たちを描いたギャング映画。
  • グリーンマイル』(1999年公開)スティーヴン・キング原作、死刑囚と看守たちの奇跡と悲劇を描くヒューマンドラマ。
  • パブリック・エネミーズ』(2009年公開)ジョニー・デップ主演、銀行強盗ジョン・デリンジャーとFBI捜査官の攻防を描いた犯罪映画。
  • ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016年公開)J.K.ローリング原作、魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描くファンタジー映画。

コルト M1917(1917年~1940年代)

銃の画像
コルト1917 画像出典:Wikipedia
項目内容
モデル名Colt M1917
分類リボルバー
口径.45 ACP弾
(ハーフムーンクリップまたはフルムーンクリップ使用)
装弾数6発
銃身長5.5インチ
(約139.7mm)
構造スチールフレーム
スチールシリンダー
開発背景第一次世界大戦中の拳銃不足を補うため、S&W M1917と共にアメリカ軍に採用されました。
ベースはColt New Serviceです。
製造期間1917年〜1940年代
(主に第二次世界大戦終結まで)
主な使用者アメリカ軍(陸軍)、民間、戦後の日本警察
特徴Colt New Serviceを基に.45 ACP弾を使用できるよう改設計され、第一次・第二次世界大戦で幅広く使用されました。

コルトM1917は、第一次世界大戦中にアメリカ軍が抱えていたM1911自動拳銃の生産不足を補うために、コルト社が製造した大型リボルバーです。

コルトとS&Wが同様の契約を結び、総計で約30万丁ものM1917が製造されました。

特徴と技術

コルトM1917は、同社のコルト・ニューサービスリボルバーをベースに、軍用制式弾薬である.45ACP弾を使用できるよう改修されました。

コルト M1917の特徴と技術は以下の通りです。

  • 使用弾薬:
    • リムのない.45ACP弾を確実に装填・抽出するため、3発ずつ弾を保持するハーフムーンクリップが考案されました。
    • 初期モデルはクリップが必須でしたが、後期モデルにはヘッドスペースショルダーが追加され、クリップなしでも発射が可能になりました。ただし、その場合は手動での排莢が必要です。
  • サイズと重量:
    • 銃身長は5.5インチ、全長は10.8インチで、未装填時の重量は約1.1kgです。
  • 構造:
    • ブレード式フロントサイトとノッチ式リアサイトを装備し、グリップ後部には軍用のランヤードリングが装備されています。
    • 標準フィニッシュはミリタリーブルーで、グリップはスムースなウォルナット製です。

運用史と年表

M1917は、第一次世界大戦だけでなく、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争でも使用されました。

アメリカ軍以外でも、中国内戦、ラオス内戦、カンボジア内戦など各地の紛争で使用。ベトナム戦争では、「トンネルラット」部隊が愛用したことで知られています。

大戦後、余剰となったモデルは民間市場にも流通し、ムーンクリップなしでも使用できるリム付きの.45オートリム弾が開発されたことで人気を博しました。

コルトM1917は、S&W製に比べてフィニッシュが粗いと評されることもありましたが、その堅牢な設計は米軍制式リボルバーの代表例として、現在でも高い収集価値を持っています。

コルト M1917の年表は以下の通りです。

  • 1917年 第一次世界大戦のサイドアーム不足に対応するためコルトM1917が開発・採用。
  • 1917年~1920年 生産期間中に約150,000丁が製造。
  • 1918年 後期モデルにヘッドスペースショルダーが追加され、クリップなしでも発射可能に。
  • 1919年~1940年代 余剰品が民間市場に流通、.45オートリム弾が登場。
  • 1941年~1945年 第二次世界大戦で再配備。
  • 1950年代~1970年代 米軍や法執行機関で継続使用、最終的に退役。
  • 1975年 公式に米軍から退役、民間市場では継続流通。
  • 2000年代~2020年代 収集家向けや歴史的銃として人気が継続。

コルト M1917が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

コルト M1917が登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • 『エル・ドラド』(1967年):ハワード・ホークス監督、ジョン・ウェイン主演の西部劇。
  • 『仁義なき戦い』(1973年):深作欣二監督による日本のヤクザ映画。
  • 『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(1999年):スティーヴン・ソマーズ監督による冒険映画。
  • 『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年):マーベル・シネマティック・ユニバースのスーパーヒーロー映画。
  • 『ウエストワールド』(2016年〜):SF、西部劇、スリラーの要素を組み合わせたテレビドラマシリーズ。

コルト ディテクティブ スペシャル(1927~1995年)

銃の画像
コルト ディテクティブ 画像出典:gundigest.com
項目内容
モデル名Colt Detective Special
分類リボルバー(Dフレーム)
口径.38スペシャル弾
一部で.32 New Police弾
装弾数6発
銃身長2インチ(約50.8mm)
3インチ(約77mm)
構造スチールフレーム
スチールシリンダー
開発背景1927年に発表された、携行性を重視した小型リボルバーです。当時としては珍しい6発装填のスナブノーズ(短銃身)モデルとして人気を博しました。
製造期間1927年〜1995年
主な使用者米国の法執行機関(私服捜査官、潜入捜査官など)、民間人、日本の警察(銃器対策部隊など)
特徴小型ながら6発の装弾数を持ち、隠密携帯性に優れていました。多くの映画やフィクション作品にも登場し、アイコン的な存在です。

コルト・ディテクティブ・スペシャルは、アメリカのコルト社が開発した、コンパクトなダブルアクション/シングルアクションリボルバーです。

探偵や私服警官、市民の護身用として、携帯性と威力を両立させる目的で設計されました。

ディテクティブスペシャルはコルト ポリスポジティブスペシャルとシリアルナンバーを共有しており、正確な生産数は曖昧ですが、1927~1985年に40万丁以上が生産されたと推定されています。

特徴と技術

当時のスナブノーズリボルバーは5発装填が一般的でしたが、ディテクティブスペシャルは小型Dフレームに.38スペシャルを6発装填できる設計で、火力面で優位に立っていました。

全4世代を通じて、エジェクターロッドシュラウドの追加、グリップ形状・素材の変更、内部機構の改良など多くのアップデートが施されました。

コルト ディテクティブ スペシャルの特徴と技術は以下の通りです。

  • 口径と装弾数:
    • 主に.38スペシャル弾を使用し、装弾数は6発です。
    • 初期モデルでは.32ニュー・ポリスなどの口径も用意されました。
  • 設計と構造:
    • 標準的な銃身長は2インチで、稀に3インチモデルも存在します。
    • フレームは炭素鋼製で、ブルーまたはニッケル仕上げが施されました。
    • 第4シリーズではステンレススチールモデルも登場しました。
  • 機構:
    • シリンダーはコルト特有の時計回りに回転します。
    • ハンマーブロックによる安全機構を装備しており、落下時の暴発を防止します。
    • 第3シリーズからはエジェクターロッドにシュラウド(覆い)が追加され、衣服に引っかかりにくいハンマーシュラウドもオプションで提供されました。

スナブノーズ(Snub-nose)とは、銃身長が非常に短いリボルバーのことを指します。

一般的に銃身長が2インチ前後の短縮型リボルバーを指し、携帯性や取り回しの良さが特徴です。

ただし、銃身長が短いため、命中精度や初速は長銃身のモデルに劣る傾向があります。

護身用やコンシールドキャリー(隠匿携帯)用として人気が高く、コンパクトながら十分な火力を保持しています。

代表的なモデルにS&Wのスナブノーズシリーズがあります。

運用史と年表

ディテクティブ・スペシャルは、1927年から1995年まで複数のシリーズにわたって生産され、総生産数は150万丁を超えます。

コルト ディテクティブ スペシャルの運用史と年表は以下の通りです。

  • 軍と警察での使用:
    • 米国内の警察や探偵に広く採用されたほか、第二次世界大戦中には米陸軍でも使用されました。
    • 約3,000丁が戦略情報局(OSS)に送られ、特殊任務に用いられた記録が残っています。
    • 一部捜査機関は、ハンマーシュラウドや特殊仕上げなどのカスタム仕様を注文し、覆面捜査や事務職員用として運用していました。
  • 特殊なモデル:
    • J.H.フィッツジェラルドによるカスタムモデル「フィッツ・スペシャル」は、速射性を高めるための改良が施されたことで知られています。
    • 「レディ・コルト・ディテクティブスペシャル」という試作モデルが開発されましたが、量産には至りませんでした。女性射手向けに特化したデザインで、現存数は極めて少なくコレクター間で高値が付けられています。
    • 1984~1986年に生産された「コマンドスペシャル」はマット仕上げとラバーグリップを装備し、通常のポリッシュ仕上げ・木製グリップのディテクティブスペシャルと差別化されました。
  • 影響:
    • 設計は、後のコルトSF-VI、DS-II、そして現代のコルト・コブラへと受け継がれました。
    • 日本でも輸入され、国産拳銃が普及する以前に警察で使用された例があります。
    • 映画や犯罪ドラマ、探偵小説で頻繁に登場し、「探偵の銃」としてのイメージを確立しています。

ディテクティブスペシャルの設計は、後のSF-VI/DS-IIや短命に終わったコルト マグナムキャリーに影響を与え、2000年にコルトが小型フレームリボルバー生産を終了するまで系譜が続きました。

  • 1927年: コルト・ディテクティブ・スペシャルが探偵や私服警官向けのコンパクトリボルバーとして発表。
  • 1932年: 隠匿性と操作性向上のため、スクエアバットからラウンドバットフレームへ移行。
  • 1947年: 第2シリーズが登場し、フレームを深くするなど改良。
  • 1966年: 操作性向上のため、ラップアラウンドグリップを追加。
  • 1973年: 第3シリーズがシュラウド付きエジェクターロッドを装備して登場。
  • 1986年: 約60年の生産期間を経て、一旦生産終了。
  • 1993年〜1995年: 第4シリーズが製造され、ステンレススチールモデルや近代的な安全機構を搭載。
  • 1997年〜1998年: DS-IIおよびSF-VIモデルへと設計が発展。
  • 2017年: コルト・コブラが発売され、ディテクティブ・スペシャルの系譜を継承。

コルト ディテクティブ スペシャルが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメ

コルト ディテクティブ スペシャルが登場する代表的な映画・ドラマ・アニメは以下の通りです。

  • 遊星からの物体X』 (1982年公開): 南極基地を舞台に寄生生命体の恐怖を描いたSFホラー映画。
  • ビバリーヒルズ・コップ』 (1984年公開): エディ・マーフィ主演の刑事アクションコメディ。
  • アンタッチャブル』 (1987年公開): アル・カポネ逮捕に挑む財務省捜査官たちを描いたギャング映画。
  • L.A.コンフィデンシャル』 (1997年公開): 1950年代ロサンゼルスの汚職警察と殺人事件を描くサスペンス。
  • ザ・イコライザー』 (2014年公開): デンゼル・ワシントン演じる元CIA工作員が悪に立ち向かうアクション映画。

コルト コマンド(1942〜1945年)

銃の画像
コルト コマンド 画像出典:nationalinterest.org
項目内容
モデル名Colt Commando
分類リボルバー(Colt E/Iフレーム)
口径.38スペシャル弾
装弾数6発
銃身長2インチ(約50.8mm)、4インチ(約101.6mm)
構造スチールフレーム、スチールシリンダー、多くはパーカライズド(パーカー処理)仕上げ
開発背景第二次世界大戦中のアメリカ軍および政府機関の需要に応えるため、Colt Official Policeをベースに簡素化・大量生産されたモデルです。
製造期間1942年〜1945年
主な使用者アメリカ陸軍憲兵隊、情報機関(OSSなど)、政府機関、軍需工場警備員、戦後の日本警察
特徴戦時中の資材節約と生産効率を重視して設計され、堅牢で信頼性の高いリボルバーとして運用されました。

コルト コマンドーは、第二次世界大戦中にアメリカ政府が大量のサイドアームを必要としたため、コルト社が軍・治安機関向けに製造した戦時支給リボルバーです。

民生用のコルト・オフィシャルポリスをベースに、製造時間とコストを削減するために簡略化されており、「オフィシャルポリスの簡易版」という位置づけです。

特徴と技術

コルトの「Eフレーム」を使用しており、頑丈さと信頼性、そして迅速な大量生産を重視して設計されました。

コルト コマンドの特徴と技術は以下の通りです。

  • 基本仕様:
    • 6連発のスイングアウト式ダブルアクション/シングルアクションリボルバーで、使用弾薬は.38スペシャル弾です。
  • 製造:
    • 1942年から1945年の間に約49,000丁が製造されました。
    • 仕上げは戦時の量産と耐腐食性を重視した艶消しのパーカライズドフィニッシュで、トリガーやハンマーのチェッカリングは省略されました。
  • バリエーション:
    • 標準銃身長は4インチでしたが、約3,450丁が2インチバレルの「ジュニア・コマンドー」として製造されました。
  • 安全機構:
    • コルト独自の「ポジティブロック」セーフティシステムを搭載し、トリガーを完全に引かない限り撃針がブロックされ、暴発を防止します。

運用史と年表

コマンドーは、主に軍警察、警備員、軍需工場の要員に支給されました。

2インチバレルの「ジュニア・コマンドー」は、OSS(戦略諜報局)などの諜報機関に配備され、秘密工作や隠密任務において携行性と信頼性が高く評価されました。

「ジュニアコマンドー」は、非常に限られた数量のみが生産。正式生産は1943年3月に始まり、現存数が少なくコレクター市場で高く評価されています。大半のコマンドーは4インチバレルであったため、2インチ仕様は極めて稀少です。

戦時中はほとんど商業販売が行われず、戦後に民間市場に出回ったショートバレルモデルの多くは、4インチモデルを改造したものでした。

コルト コマンドの年表は以下の通りです。

  • 1942年 – コルト コマンドー リボルバーがオフィシャルポリスの簡略化戦時モデルとして生産開始。
  • 1943年 – 2インチバレル「ジュニア・コマンドー」モデルの通常生産が開始(3月)。
  • 1942–1945年 – 約49,000丁が生産され、米軍警察、警備、諜報機関に支給。
  • 1945年 – 第二次世界大戦終結に伴い生産終了。
  • 戦後 – 多くが政府機関で運用され続け、一部は民間市場向けに放出され、改造モデルも存在。

各弾薬の比較

弾薬名弾速マズルエナジー説明
.38スペシャル約880 fps約240 ft-lbf1898年にS&Wが警察・軍用として開発。
米国で最も普及したリボルバー弾薬の一つ。
護身用、射撃競技、法執行機関で使用。
モデル例:S&W M10、コルト ディテクティブスペシャル、ルガー SP101
.45 ACP約940 fps約400 ft-lbf1904年にジョン・ブローニングが米軍向けに開発。
M1911に採用。
高いストッピングパワーで軍用、護身用、競技用に使用。
モデル例:コルト M1911、グロック 21、SIG SAUER P220
.32 S&W ロング約760 fps約120 ft-lbf1896年登場。
射撃競技や警察用として使用。
反動が軽く精密射撃向き。
現在もターゲットピストルで使用。
モデル例:S&W M16、コルト ポリス ポジティブ、オリンピックターゲットピストル各種
.38 S&W約685–780 fps約150–200 ft-lbf1877年登場。
.38スペシャルより古く、初期警察用リボルバーや英軍(.38/200)で使用。
現在はほぼ廃止。
モデル例:S&W ビクトリーモデル、エンフィールド No.2、ウェブリー Mk IV
.22 LR約1000–1200 fps約100 ft-lbf1887年登場。
世界で最も普及するリムファイアカートリッジ。
プリンキング、射撃訓練、小型猟に使用。
モデル例:ルガー マークシリーズ、S&W M17、ブローニング バックマーク
.38 コルト ニューポリス約700–770 fps約150–200 ft-lbf19世紀後半にコルトが警察用に開発。
.38 S&Wと同等の性能。
モデル例:コルト ポリス ポジティブ、コルト ニューポリス
.41 コルト約700–900 fps約200–300 ft-lbf1877年登場。
コルト製ダブルアクションリボルバー用に開発され、警察や護身用として使用されたが現在は廃止。
モデル例:コルト サンダラー、コルト ニューアーミー&ネイビー
本表に記載している弾速およびマズルエナジーは、代表的な市販装弾を基準としたおおよその平均値です。
実際の性能は、銃身長、使用弾薬メーカー、装薬量、試験条件などにより変動します。

さらに詳しく知りたい方は以下のカテゴリー別解説をご覧ください。

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