ホローポイント弾についての質問です。
ホローポイント弾にも、SPEER ゴールドドット、FEDERALハイドラショック、RIP、などいろいろありますが、どの弾が一番強力、相手を無力化するのに特化していますか
これは議論が分かれており、恐らく誰にも分からない永遠のテーマだと思います。その理由は、当該ホローポイント弾(以下:HP弾)が想定するターゲットの条件がメーカーやブランドによってそれぞれ異なるためです。
HP弾で重要視されるのは主に、
- 瞬間空洞 (テンポラリーキャビティー)
- 永久空洞 (パーマネントキャビティー)
- 貫通力 (ペネトレーション)
・・・の3つです。HP弾が着弾し体内に侵入すると、臓器や血液といった流体を押しのけて進み、瞬間的に大きな空洞を形成します。これを瞬間空洞といいます。その後、弾が停止し、瞬間空洞が失われて弾の直径に近い空洞が残ります。これを永久空洞といいます。
ほとんどのHP弾は必要な瞬間空洞と永久空洞を着弾後早期に形成できますが、貫通深度をどの程度に設定すれば最も効果的かは想定するターゲットの状態によります。着弾時のHP弾は大きく展開して直径が拡大されますが、体内の奥深くまで進入できなければ効果が得られません。HP弾の設計をする際、仮に皮製ジャケットを着た太ったターゲットを想定して設計すると、この条件に当てはまるターゲットに対しては最大限の効果を発揮しますが、逆に同じ弾でTシャツを着た痩せ型のターゲットに対して使用した場合、貫通力が強すぎて弾が十分展開しきらないうちに貫通しかねません。すると弾が持つエナジーが体内で消費できず無駄となってしまいます。
そこで、FBIでは要求する貫通深度をおおむね12インチ(30.48cm)から18インチ(45.72cm)と定義しました。しかし、当然ながらこれは目安であって、実際の現場ではターゲットとなる人間の服装や体格は千差万別なので、そのHP弾の効果が100%発揮されるとは限りません。ほとんどのHP弾は停弾するまで展開し続けるため、同じ弾でもターゲット次第で発揮される性能が異なります。また、人間の体は液体や空洞、硬い骨、筋肉など複雑な構造であるため、実射テストで使用されるバリスティックゼラチンと同じ結果は得られません。(実際に人間を撃ってテストするわけにはいかず、検死結果や現場の警官の体験などから新製品に活かされるケースが多々あります。)
重要な点は、可能な限り大きな瞬間空洞と永久空洞が得られ、貫通力が十分であることです。頭部に命中した場合でも、硬い頭蓋骨を破壊し脳幹まで到達できる性能が必要です。一定の水準に達していれば、それは実用的といえるでしょう。単純にパワーを得ようとすれば、パウダー(装薬)を増量したり、口径を大きなサイズに変更するなど方法がありますが、それは同時に速射性能や総弾数を犠牲にしがちで、総合的なバランスを崩すことになるかもしれません。
現在流通している大手弾薬メーカーのHP弾はバランスを考慮され、FBIの要求に応えられるスペックを持っているのがほとんどです。それぞれ展開のタイミングや貫通力などの設定が微妙に異なるので、何がベストかは消費者の考え方次第ともいえます。(私の個人的な考えは、大手メーカー製なら性能はどれでも一緒です。大きな差はデータから得られていません。)
アメリカの警察やFBIは、様々なメーカーの弾薬を採用した経緯があり、フェデラル・ハイドラショック、スピア・ゴールドドット、レミトン・ゴールデンセイバー、ウィンチェスター・レンジャー・・・等々がよく使用されており、口径は9mmが最も多く、次に.40S&Wがメジャーな存在です。
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