
アサルトライフルは現代歩兵にとって欠かせない主力武器であり、世界各国で広く採用されています。
この記事では、アサルトライフルの定義や特徴、誕生の歴史、有名なモデルから最新モデルまでを詳しく解説します。
アサルトライフルの定義と基本的構造
定義と特徴

アサルトライフルとは、セレクティブファイア機能を持ち、中間弾薬を使用し、着脱式マガジンを装備し、概ね300メートル以上の実用射程を持つ軍用小銃を指します。
これらの要素を兼ね備えることで、近距離から中距離まで幅広い交戦に対応できる汎用性が生まれ、現代歩兵戦闘に最適化された武器として各国軍で広く採用されています。
アサルトライフルの4条件
- セミオート、フルオート、あるいはバーストを切り替え可能なセレクティブファイア機構を装備
- 5.56×45mm NATOや7.62×39mmといった中間弾薬を使用
- 着脱式マガジンの採用により弾薬の再装填が迅速に行える
- 有効射程距離300メートル以上
アサルトライフルは、セミオートライフルのように射撃方式が限定された銃や、バトルライフルのようにフルパワー弾を使用する銃と明確に区別されます。(バトルライフルについては後述します)
アメリカでは「アサルトライフル」が軍用のセレクティブファイアライフルを指すのに対し、「アサルトウェポン」という用語は法的・社会的にセミオートライフル全般を含むことがあり、混同されやすい点には注意が必要です。
アサルトライフルの代表例としては、AK-47、AK-74、M16、M4カービン、H&K G36、ステアーAUG、FAMAS、SIG SG 550、QBZ-95、ガリル、OTs-14 Groza、AN-94、HK33、F2000などが挙げられます。
中間弾薬とは?

中間弾薬(インターミディエイトカートリッジ)とは、拳銃弾よりは強力である一方、従来のフルパワーカートリッジ / フルサイズカートリッジ(例:.30-06や7.62×54mmR、7.62×51mmなど)ほどの初速・威力を持たない「中間的」なライフル弾を指します。
反動が抑えられるためフルオート射撃時でもコントロールしやすく、同じ負担で兵士が携行できる弾数を増やせる一方、弾道性能は300~600メートル程度の実戦距離で十分に機能するよう設計されています。
中間弾薬例 | フルパワー弾薬例 |
---|---|
5.56×45mm NATO(.223レミントン) 7.62×39mm 5.45×39mm 5.8×42mm 7.92×33mm クルツ 7.62×45mm 7.62×37mm 7.62×33mm(.30カービン) 6.5mm グレンデル 6.8mm SPC 6mm ARC .300 AAC ブラックアウト .350 レジェンド | 7.62×51mm NATO 7.62×54mmR .30-06 スプリングフィールド 7.92×57mm マウザー .303 ブリティッシュ 7×57mm マウザー 7.5×55mm スイス 7.5×54mm フレンチ 6.5×52mm カルカノ 6.5×50mmSR 有坂 6.5×55mm スウェディッシュ 8×50mmR ルベル 8×56mmR |
中間弾薬の要点
歴史的には、第二次大戦末期の7.92×33mmクルツ(StG44)や米国の.30カービンが中間弾薬と自動小銃の概念を確立しました。その後、ソ連の7.62×39mmや米国の5.56×45mm、さらに5.45×39mmや中国の5.8×42mmなどが主流となり、アサルトライフルの標準弾薬として広く採用されました。
近年は、中間弾薬の利点を保ちつつ汎用性を高めるため、.277 Furyのような「ユニバーサル」や高性能新口径の導入が検討されるなど、弾薬設計の潮流が進行しています。
ユニバーサル・サービス・カートリッジ(Universal Service Cartridge)とは、従来の小口径高速中間弾とフルパワー弾を一本化する考え方で、6~7mm級の口径帯でライフルと汎用機関銃の双方に適した性能(外的・終末弾道が7.62×51mmや7.62×54mmRに近いか同等)を目指す軍用弾薬を指します。
米軍は新弾薬の候補としてテレスコープ弾、ポリマーケース弾、ケースレス弾などを試験し、アメリカ陸軍の次世代分隊火器プログラム(NGSW)では.277 Fury(6.8×51mm)弾が選ばれており、これは7.62×51mm NATOよりも高い初速・エネルギーを持ちます。
アサルトライフルと他種小銃(バトルライフル等)の相違点
アサルトライフルに類似した軍用ライフルに、「バトルライフル」や「DMR」があります。
これらは主に役割、使用弾薬、運用特性によって区別されます。
以下にそれぞれの特徴を整理します。
バトルライフル

バトルライフルとは、フルパワーライフル弾を使用する小銃を指します。代表的な弾薬には7.62×51mm NATOがあり、拳銃弾や中間弾薬よりも強力で、射程とストッピングパワーに優れています。その一方で反動が大きく、射撃時のコントロールは難しくなります。
射撃方式にはセミオートとセレクティブファイアがありますが、フルオート射撃では反動の影響が大きいため、現代ではセミオート運用が主流です。これにより精密射撃能力を活かしつつ、兵士の負担を軽減しています。
バトルライフルはおおよそ500〜800メートルの長距離交戦に対応可能で、射程と火力の点で高い性能を持ちます。しかし、その分銃本体や弾薬の重量が増し、携行性や取り回しやすさはアサルトライフルに劣ります。
代表的なモデルとして、M1ガーランド、FN FAL、H&K G3、M14、SVT-40、Gewehr 43、MAS-49、FN-49などが挙げられます。これらはいずれも各国軍の主力小銃として採用され、20世紀中盤から後半にかけて広く運用されました。
DMR

DMR(Designated marksman rifle / 指定射手用ライフル / 選抜射手用ライフル)は、歩兵分隊において通常の小銃と狙撃銃の中間を埋める役割を持つ精密射撃用ライフルです。射程はおおよそ300〜800メートルで、アサルトライフルでは届かない距離を正確に狙撃できる一方、狙撃銃ほどの遠距離特化ではなく、分隊行動に適した機動性と速射性を兼ね備えています。
特徴としては、主にセミオートを採用し、迅速な追撃射撃が可能です。マガジン装弾数は10〜30発程度と比較的多めで、戦術的柔軟性を確保しています。
使用弾薬は7.62×51mm NATOや7.62×54mmRなどが使用され、一部では6.5 Creedmoorのような高精度弾薬も用いられます。また、特殊な例として5.56mm弾を使用するMk12プラットフォームも存在します。
照準器は中倍率から高倍率のスコープが標準で、通常の歩兵用ライフルより強力な観測・照準能力を持ちます。さらに、安定性を高めるためにバイポッドや調整式ストックを装備する場合もあります。
役割として、指定射手は分隊の一員として行動し、遠距離の目標を正確に射撃することで分隊の射程を拡張します。優先度の高い敵、例えば敵の狙撃手や指揮官を排除することで部隊の優位性を確保しつつ、必要に応じて近距離戦闘にも対応できます。この点で、独立して行動するスナイパーとは異なり、あくまで分隊支援の一環として精密火力を提供するのがDMRの特徴です。
DMRは「分隊レベルでの精密火力を担うライフル」であり、アサルトライフルより長距離、スナイパーライフルより機動的という中間的な性能を持ちます。その結果、現代の歩兵戦闘において分隊の戦闘能力を大きく引き上げる役割を果たしています。
代表的なDMRモデルとして、SR-25/Mk 11、M110、M14 EBR/Mk 14、SVDドラグノフ、Mk 12 SPR、HK417、L129A1、FN SCAR-Hなどが挙げられます。これらはいずれも各国軍や法執行機関、特殊部隊で採用され、分隊支援や指定射手任務を目的に20世紀後半から現代にかけて運用されています。
デジグネイテッド・マークスマン(DM)とは、小隊や分隊に配属される精密射撃を行う射手で、普通の小銃手より遠距離を効果的に狙う役割を担います。
要点は以下のとおりです。
アサルトライフル、バトルライフル、DMRの比較

画像出典:Armémuseum (The Swedish Army Museum)andHarald Hansen, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
アサルトライフル、バトルライフル、DMRは役割と設計が異なり、アサルトライフルは近〜中距離の汎用性、バトルライフルはフルパワー弾による中〜長距離の火力、DMRは分隊単位での中〜長距離精密支援を担います。
特徴 | アサルトライフル | バトルライフル | DMR |
---|---|---|---|
使用弾薬 | 中間弾薬 (例:5.56×45mm、7.62×39mm) | フルパワー弾 (例:7.62×51mm) | 主にフルパワー弾、一部中間弾薬 |
射撃方式 | セミ/フルオート | セミオート、場合によりセレクティブ | 主にセミオート、場合によりセレクティブ |
有効射程 | 約300〜600m | 約300〜800m | 約300〜800m |
重量・サイズ | 軽量・小型 | 重く長い | 中〜やや重め |
照準器 | アイアンサイト、低倍率光学 | アイアンサイト、任意でスコープ | 中〜高倍率スコープ |
役割 | 一般歩兵用、近〜中距離 | 中〜長距離火力用 | 分隊支援、精密射撃 |
マガジン容量 | 約30発 | 約20発 | 10〜30発 |
アサルトライフル誕生から現在までの変遷
第二次世界大戦で誕生したStG44
StG44は、火力・携行性・射程を兼ね備えた「歩兵に最適な銃」として設計され、現代のアサルトライフルの原点となりました。

StG44(Sturmgewehr 44)は、第二次世界大戦中にドイツで開発されたアサルトライフルであり、史上初めて実用化に成功したモデルとして知られています。設計を手掛けたのは銃技師のヒューゴ・シュマイザーで、7.92×33mmクルツ弾という中間弾を使用したことにより、サブマシンガンを超える射程と、従来のボルトアクションライフルより優れた携行性を兼ね備えていました。この設計思想は戦後のAK-47やM16といったアサルトライフルに大きな影響を与えています。
StG44には以下のような特徴が備わっていました。
StG44は主に東部戦線や市街戦で運用されました。サブマシンガンの近距離火力と、ボルトアクションライフルの長射程の間を埋める存在として、ドイツ歩兵に新しい戦術的柔軟性をもたらしました。登場時期が戦争後期であったため大規模な戦局転換には至りませんでしたが、小部隊戦術における役割は大きく、戦後の小火器設計に強い影響を与えました。
第二次世界大戦終結までに42万丁以上が生産され、アサルトライフルという兵器の標準を確立しました。中間弾薬の採用、セレクティブファイア、取り回しやすい設計といった要素は、以降のアサルトライフルにほぼ共通するベースとなり、ソ連のAK-47やアメリカのM16にも継承されました。
冷戦期のAK-47とM16

冷戦期、東側陣営(ソ連とその同盟国)を象徴したのがAK-47、西側陣営(アメリカとその同盟国)を代表したのがM16です。
両者は異なる設計思想を反映しつつも、20世紀を代表するアサルトライフルとして世界中で使用され、軍事史に大きな影響を与えました。
AK-47の誕生とソ連での普及(1949年~)

AK-47は正式名称を「7.62mmカラシニコフ自動小銃(7.62mm Avtomat Kalashnikova)」といい、ロシア人銃器設計者ミハイル・カラシニコフによって開発されたアサルトライフルです。使用弾薬は7.62×39mm弾で、カラシニコフ銃系列の原点となる存在です。1945年に設計作業が始まり、1947年には軍での公式試験に提出されました。1948年には固定銃床式のモデルがソ連軍の一部部隊で運用され、翌1949年に正式採用されました。その後、ワルシャワ条約機構加盟国を中心に普及し、冷戦期を通じてソ連軍の標準的火器として位置づけられました。
AK-47の開発には、第二次世界大戦中にドイツ軍が使用した「StG44(シュトゥルムゲヴェーア44)」の存在が影響を与えました。これを参考に、ソ連は独自の中間弾7.62×39mm M43弾を開発し、この弾薬を使用する新型小銃の設計を進めました。1946年には複数の設計者による試作が行われ、その中からカラシニコフの設計案が選ばれ、改良を重ねた結果、後にAK-47として完成しました。
初期の量産型ではレシーバーの製造工程に課題がありましたが、1950年代に改善が進められました。1959年には軽量化と生産性の向上を目的とした改良型「AKM」が登場し、以後の主力モデルとなりました。AKMは信頼性の高さと低コスト生産が特徴であり、ソ連および同盟国に広く供給されました。
AK-47とその派生型は、整備が容易で製造コストが低く、悪環境下でも作動する点が評価され、正規軍のみならず各国の非正規武装勢力にも使用が広がりました。2004年の推計では、世界に存在する約5億丁の銃のうち、約1億丁がカラシニコフ系列に属し、その大部分をAK-47が占めるとされています。
M16の開発とアメリカ軍での採用(1964年~)

M16は正式名称を「Rifle, Caliber 5.56 mm, M16」といい、アーマライト社が開発したAR-15を基にアメリカ軍向けに改良された5.56×45mm NATO弾薬使用のアサルトライフルです。当初は20連発マガジンを装備し、軽量かつ高い連射性能を特徴としていました。
第二次世界大戦後、アメリカ軍はM1ガーランドやM1/M2カービン、BAR、トンプソン短機関銃といった複数の小銃や自動火器を統合的に更新する必要に迫られていました。朝鮮戦争での戦訓から、従来の.30カービン弾では威力不足であり、逆にM14ライフルに採用された7.62×51mm NATO弾はフルオート射撃時に制御困難で携行弾薬数も限られるという問題が明らかになりました。そのため、中間的な性能を持つ小口径高速弾を使用する新型小銃の必要性が高まりました。
1957年、アーマライト社のユージン・ストーナーがAR-10を縮小設計したAR-15を発表しました。5.56mm弾を用いるこの小銃は、軽量設計とコントロールしやすい反動、量産性の高さを兼ね備えており、従来の7.62mm小銃よりも持続的な火力を発揮可能でした。当初、陸軍兵器局はM14の継続採用を推して反対しましたが、空軍参謀総長カーチス・ルメイ大将が高く評価し、空軍での採用が進められました。その後、南ベトナム軍への供与試験でも高い信頼性が確認され、国防総省全体での導入が検討されるようになりました。

1963年、国防長官ロバート・マクナマラはM14の生産中止を決断し、AR-15の大規模調達を命じました。これにより改修型のXM16E1が開発され、1964年にアメリカ陸軍へ制式採用されました。しかし、当初はクロムメッキの施されていない薬室と不適切な火薬の組み合わせ、さらには清掃用具の不足が原因で戦場での作動不良が多発し、ベトナム戦争初期には兵士の死傷の一因となりました。これを受けて1967年に薬室と銃身内面をクロムメッキ加工し、フォワードアシストや改良型フラッシュハイダーを装備したM16A1が制式化され、信頼性の問題は大きく改善されました。1969年にはM14に代わり、アメリカ軍全体の制式小銃となりました。
1980年代には改良型のM16A2が登場し、海兵隊が1983年に、陸軍が1986年に採用しました。M16A2は新型のM855弾に対応し、調整可能なリアサイト、薬莢排出を補助するケースディフレクター、強化型銃身、新しいハンドガードやストック、そしてセミオートと3点バースト射撃切替機構を装備していました。さらに1997年には光学照準器やアクセサリーの搭載を前提に、着脱式キャリングハンドルとピカティニーレールを採用したM16A4が導入されました。
M16シリーズは世界各国にも広く輸出され、総生産数は約800万挺に達し、5.56mm口径の小銃として最も普及した存在となりました。近年、アメリカ軍の前線部隊ではショートバレルで携行性に優れるM4カービンが主力として使用されています。そして2022年には次世代分隊火器計画(NGSW)によりSIG MCX SPEARがM16/M4の後継として選定され、M7ライフルの名称で正式採用が決定しました。
M16は、小口径高速弾薬をベースとしたアサルトライフルの標準を確立した画期的存在であり、半世紀以上にわたりアメリカ軍の歩兵装備の中心であり続けた銃器です。
項目 | AK-47 | M16 |
---|---|---|
使用弾薬 | 7.62×39mm | 5.56×45mm NATO |
作動方式 | ロングストロークピストン | DI式(ガス直噴) |
信頼性 | 非常に高い | 定期整備で高い |
重量(装填時) | 約4.3kg | 約3.4kg |
実用有効射程 | 約300m | 約460m |
精度 | 中程度 | 高い |
発射速度 | 約600発/分 | 約700〜950発/分 |
製造コスト | 低い | 高い |
AK-47は「信頼性と簡素さ」を追求し、正規軍から非正規勢力まで世界中に広まりました。
一方M16は「軽量・高精度」を重視し、米軍の戦術や訓練体系と統合されることを念頭に開発されました。
冷戦期に両者が象徴したのは、東西陣営それぞれの軍事思想そのものであり、どちらも後世のアサルトライフル設計に強い影響を残しました。
アサルトライフルの作動方式
アサルトライフルの作動方式には、ロングストロークピストン方式、ショートストロークピストン方式、ダイレクト・インピンジメント(DI)方式があります。いずれも発射ガスでボルトを作動させ次弾を装填しますが、仕組みは異なります。
M4カービン(ダイレクト・インピンジメント方式)を例にすると、発射時には以下の順番で作動しています。

- 発射時の火薬の燃焼により高圧ガスが発生。
- ガスが銃身内から取り込まれガスチューブを通り、ボルトキャリア上のガスキーに導かれる。
- ガス圧でボルトキャリアが後退を始める。
- カムピン機構でボルトが回転し、薬室を閉鎖するロックが解除される。
- ボルトキャリアの後退で薬莢を抽出・排莢する。
- 後退によりストック内のバッファースプリングが圧縮され、ロアレシーバー内ではハンマーが起こされる。
- バッファースプリングの反発力によりボルトキャリアが前進する。
- 弾薬がマガジンから薬室へ送り込まれ、ボルトが回転して再ロックする(薬室閉鎖)。
- 次弾発射準備が完了。
こうしたボルトやボルトキャリアを後退させる方法として、ガス圧を利用したピストンなどが利用されます。
ロングストロークピストン方式

ロングストロークピストン方式は、ピストンがボルトキャリアと一体で長い距離を動き、ガス圧で全体を往復させます。AK-47やM1ガーランドなどが代表例で、信頼性が高く堅牢ですが、動く部品が多いため反動が大きく、射撃精度にわずかに影響します。
ショートストロークピストン方式

ショートストロークピストン方式は、ピストンがボルトキャリアと直接つながっておらず、短い距離だけ動きボルトキャリアに打撃を与えて作動させます。FN SCARやHK416などが例で、反動が小さく射撃精度は良好ですが、機構は複雑で部品点数が多くなります。
ダイレクト・インピンジメント(DI)方式

ダイレクト・インピンジメント(DI)方式はピストンを使わず※、ガスを直接ボルトキャリアに導き作動させます。AR-15/M16/M4が代表例で、最も構造が簡単で反動も小さい一方、ガスやカーボンが機関部に入るため、清掃や整備が頻繁に必要です。
※AR-15/M16/M4で利用されるDI方式では一般的に「ピストンを使用しない」と説明されることが多いですが、厳密にはピストン構造がボルトキャリア内に備わっています。ピストンの役割を果たすボルトは固定された状態で、シリンダーの役割を果たすボルトキャリアがガス圧によって後退しています。
耐久性重視ならロングストローク、バランス重視ならショートストローク、シンプルな構造と低反動重視ならダイレクトインピンジメント方式が適しています。
現代の最新アサルトライフル
近年登場したアサルトライフルを以下に紹介します。
M7(アメリカ)

M7はSIG Sauerが開発したSIG MCX-SPEARを基に、米陸軍向けに採用された6.8×51mm弾(.277 Fury/6.8 Common Cartridge)使用のライフルです。次世代分隊火器(NGSW)計画によりM4カービンの後継として選定され、設計・運用面で従来の5.56mm系小銃と異なる設計思想が採用されています。
M7は当初XM5、その後XM7と呼称され、最終的にM7として型式分類が行われています。弾薬には6.8×51mmの新型中間〜高性能カートリッジを採用しており、従来の5.56×45mmより高い貫徹力と遠射性能を想定しています。2019年に開始されたNGSW計画にSIG Sauerが提出したMCX-SPEARが選定され、2022年に大口契約が結ばれました。2023年秋からの試験配備を経て、2024年3月から現場への配備が始まり、2025年5月に正式にM7として型式分類されました。
ガス作動方式を採用し、取り回しと拡張性を重視した設計が採られています。フローティング構造の強化されたM-LOK互換ハンドガードが備わっており、スロット部に直接アクセサリを取り付ける方式を採用しています。給弾はSR-25規格のボックス・マガジンを用い、標準で20発(オプションで25発)を装填します。想定される携行弾数は20発×7本=140発が基準とされ、従来のM4A1の210発に比べて弾数は減る一方で1人当たりの携行重量は増加します。
運用面では、歩兵や斥候、工兵、前方監視員、衛生兵などの近接戦闘担当者に配備される想定であり、非近接戦闘職には配備されません。陸軍は数万挺規模の調達を想定しており、海兵隊や特殊作戦群が追加で採用を希望した場合は契約に基づく拡充が行われる可能性があります。
M7は精度・耐久性・重量・弾薬信頼性・運用適合性に深刻な課題を抱えているという報告もあります。主に以下のような問題点が指摘されています。
- 精度が不安定で3〜6MOAと低下し、基準を満たさない場合がある
- 高圧弾薬によって銃身やボルトなどの摩耗が早く、約2,000発で劣化が発生
- サプレッサーが短時間で赤熱し、暗視装置の使用を妨げる
- 薬莢破裂や排莢不良など弾薬・作動不良が確認されている
- 重量が重く、携行弾数が210発から140発に減少し制圧射撃力が低下
- 新型光学照準器(XM157)の視認性不足
- 実戦の大半が300m以内で行われるため、長射程性能が戦術的に有効でない
- 兵士の否定的なフィードバックが公表から排除され、調達が進められている
デザートテック・セイバートゥース(アメリカ)

アメリカのデザートテック・セイバートゥース(Desert Tech Sabertooth)は、同社の新型ブルパップライフル WLVRN(ウルヴァリン)を基に開発されたセレクトファイアの軍・法執行機関向けバリアントです。
WLVRNが民間向けのセミオートマルチキャリバーブルパップとして2024年のSHOT Showで発表されたのに続き、セイバートゥースはフルオートを含むセレクティブファイア機能を装備し、軍・法執行機関の作戦用途に対応するために設計変更が加えられています。
設計上の特徴はWLVRNのベースを受け継ぎます。WLVRNはショートストロークガスピストン式・ロータリーボルトを採用するマルチキャリバー(5.56×45mm、.300 BLK、6.5mm Creedmoor 等に対応)ブルパップで、6ポジションのマニュアルガスレギュレータや、ショートバレルから20インチ級までの複数の銃身長をサポートするクイックチェンジ機構を持ちます。セイバートゥースもこれらのガス系・モジュール性を基本にしつつ、軍や法執行の要求に合わせた設計の強化が図られています。
WLVRN/セイバートゥース系の改良点としては、レシーバーに切削加工された銃身固定部を導入したこと、新しいバレルエクステンション設計、交換可能なフィードランプ、新型ボルトキャリア、更新されたチャージングハンドル、改良型マガジンリリース、気密性を高めたガスブロック(ピカティニーレールは廃止)などが挙げられます。
セイバートゥースはWLVRNとハードウェアの互換性に関して配慮があり、セレクティブファイア機能を持つ部品はWLVRN側と交換できないように設計されています。これは米国のATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)によるセレクトファイア規制(フルオート機能を持つ構成を容易に一般向けと互換にしないこと)に適合させるための措置です。
派生オプションとしては、WLVRN用の短縮化キット「MICRON」が既に発表されており、セイバートゥースも運用要求に応じた各種銃身長やアクセサリ搭載が可能です。運用上はフルオート射撃を含む火力支援、近接戦闘や機動展開部隊での使用を想定した設計であり、軍や法執行機関での実務的な信頼性が重視されています。
ブルパップ(bullpup)は、作動部とマガジンをトリガー後方に配置し、銃身長を保ったまま全長を短くする設計です。

DSAR-15(韓国)

DSAR-15は韓国のDasan Machineriesが製造する5.56mm口径のAR-15ライフルで、基本型はダイレクト・ガス・インピンジメント(DI/直接ガス噴射)方式を採用しています。韓国軍がK1Aを更新する目的で実施した「特殊作戦サブマシンガン」調達プログラムに提出され、Type‑Iプログラムではショートストロークのガスピストン方式に改変したDSAR-15P系列(特に近接戦闘向けのDSAR-15PC)が一時的に採用候補に選定されました。
2020年にDSAR-15PCがType‑Iの基準機として選ばれ、707特殊任務群など特殊部隊へ1,000挺を配備し、フィードバックを反映した改良版を大量生産する計画が示されました。しかし、メーカー幹部による機密漏洩疑義が発生したため2021年6月に当該案件は取消され、プログラムは再始動することになりました。以降、Dasanはクイックリリースバレルを持つDSAR-15PQなどで再入札を目指す動きを見せています。一方で同時並行のType‑IIプログラムではS&T MotivのSTC‑16が選定され、K13として一定数が調達されています。
バリエーションは主に以下の分類となります。
- 基本型のDSAR-15(DI方式)
- DSAR-15P(ショートストロークピストン方式)
- DSAR-15PC(CQB対応)
- DSAR-15PQ(クイックリリースバレル採用)
輸出・配備面ではバングラデシュ海軍特殊部隊やインドネシアの海洋保安機関特殊部隊、フィリピン国家警察などへ供給実績が報告されています。
SAX-200 シウコアトル(メキシコ)

SAX-200 Xiuhcoatl(シウコアトル:アステカ神話に登場する炎の蛇の怪物が由来)は、メキシコ軍(陸軍および空軍)向けに開発された5.56×45mm NATO弾使用のカービンです。2018年に設計が始まり、2023年から生産されています。
軍需産業応用研究・技術開発センター(Centro de Investigación Aplicada y Desarrollo Tecnológico de la Industria Militar)が設計し、軍需産業総局(Dirección General de Industria Militar)が製造を担当しています。MP5などの従来型サブマシンガンを国内生産のカービンで代替することを目的に設計されました。部品の約68%は自国製カービン「FX-05 シウコアトル」と共通化されています。
伸縮式ストックを装備し、ストックを伸ばした状態で全長680 mmとなります。銃身長は200 mmで、射撃方式は左右両利きに対応したアンビデクストルなセレクティブファイア方式を採用し、着脱可能な30連マガジンを使用します。ピカティニーレールを複数配置して光学照準器や補助光学機器、フォアグリップ等の装着を可能にしています。
材質は金属部品が各種鋼合金で構成され、樹脂部品は炭素繊維で強化した高耐衝撃ポリマーを用いることで強度と軽量化を両立させています。公表された重量は約2.9 kg。設計・製造は国内で完結しており、公式公開はメキシコの軍事教育機関(Heroico Colegio Militar)創立二百年記念に合わせる予定で進められました。
T112(台湾)

T112は台湾の205工廠が開発したAR-15系の新型アサルトライフルで、T91の後継を目的に設計され、2024年から量産が始まっています。現代的な運用ニーズに合わせて精度・耐久性・操作性が改善されており、モジュール性の高い上部レールやM-LOKハンドガード、左右両用のアンビ操作系が備わっています。
各種光学機器を搭載でき、折りたたみ式のバックアップサイトを装備しています。M-LOKハンドガードによりライトやレーザー、フォアグリップなどのアクセサリを装着でき、ポリゴナルライフリングの採用によって銃身寿命は従来の約6,000発から約10,000発へ延びています。
新型フラッシュハイダーを採用し、操作系はアンビ仕様で「セーフティ/セミオート/2点バースト/フルオート」の4ポジションを持ちます。大型のブラスディフレクターが薬莢排出の安全性を高め、バヨネットラグも装備し着剣が可能です。しかし、フォワードアシスト機能は非搭載(T91と同様)です。
主要仕様は、使用弾薬が5.56×45mm NATO、作動方式がガス作動・ローテイティングボルト式、重量は約3.5 kg、有効射程は公称600 m、給弾はSTANAG互換マガジンを使用し、試験値で100 mにおける集弾は約9.8 cmとされています。
初期ロットで25,000丁以上の発注を受け量産が開始されました。T112は2023年の台北防衛展示会で初公開され、その後の適合試験を経て2024年に量産が開始。台湾軍がT91から代替する主力小銃として配備が進められています。
ピンダッドAM1 / SS3-M1(インドネシア)

ピンダッドAM1(民間呼称)ことインドネシア軍制式名SS3-M1は、PT Pindadが開発した5.56×45mm口径の先進的なアサルトライフルです。AR-15系の人間工学を踏襲しつつショートストロークガスピストンとアジャスタブルガスシステムを採用した第3世代モデルとして設計され、2022年に初公開されています。
インピンジメント式のように直接ガスをボルトへ吹き付ける方式ではないため、作動部への汚れや熱の蓄積が抑えられる点が大きな特徴です。ガス流量はユーザーが調整できるため、使用する弾薬や気候や環境条件に合わせて最適化でき、安定した信頼性の高い作動を維持できます。
外装はピカティニーレールとM-LOKを装備したハンドガードを採用しており、光学機器やウェポンライト、フォアグリップなどの取り付けが容易に行えるよう設計されています。銃身長は用途に応じて複数のバリエーションが用意され、伸縮式ストックにより携行性と射撃時の安定性のバランスを取れるため、近接から中距離まで幅広い任務に対応します。給弾系やボルト・ボルトキャリア周りにも改良が加えられており、分解整備のしやすさと現場での取り扱い性が向上しています。
銃身長は構成により14.5インチまたは10.5インチのいずれかが選択されます。全長は14.5インチバレルモデルのストックを展開した状態で約881 mm、ストックを短くした状態で約797 mmとなります。重量は空マガジンを除いて約3.25 kgです。
SS3-M1はインドネシア軍の戦力構成や特殊部隊の要求に応じた近代化小銃として設計され、国内での採用を進めるとともに海外市場への輸出も図られています。
IFAR 22(インドネシア)

IFAR 22(Indonesian Future Assault Rifle 22)は、インドネシア共和国兵器産業社(PT Republik Armamen Industri)が製造するインドネシア製のブルパップ式カービンで、5.56×45mm NATO弾を使用します。設計・開発は国防省研究開発局(Balitbang Kemhan)およびピンダッド(Pindad)との協力で進められ、2022年のIndo Defence展示会で公開されました。
IFAR 22は左右どちらの肩付けでも使用できるアンビ設計を採用し、射撃モード切替(セーフ、セミ、フル)は両側から操作可能です。作動方式はガスピストン方式で、発射速度は毎分約600〜800発とされています。上部レシーバーにはピカティニーレールとKeyMod互換レールを装備し、各種光学機器の搭載に対応します。
銃身長は508 mm(20インチ)と406 mm(16インチ)の2仕様があり、それぞれの重量は約3.7 kgと約3.6 kgです。銃身耐久試験として4,000発の連続発射試験が実施されています。STANAG準拠マガジンを用い、その一部はピンダッドが供給しています。
CZ BREN 3(チェコ)

CZ BREN 3はチェコのCZUB(Česká zbrojovka)が開発した最新のモジュラーライフルで、CZ 805やBREN 2の系譜を受け継ぎながら耐久性、拡張性、携行性を強化したショートストロークガスピストン式のアサルトライフルです。現場の運用ニーズを反映した設計により、近接戦闘から中距離支援まで一本で対応できる柔軟性を備えています。
作動機構はショートストロークピストンを採用し、三段階の可変ガスポートにより環境や弾薬に応じたガス調整が可能なため、信頼性の高い作動を維持できます。機体素材には7075-T6航空機用アルミ合金やカーボンファイバー樹脂が用いられ、約3 kgの軽量級を実現しているため携行性に優れています。外装は取り外し可能なM-LOK方式のハンドガードを採用し、前方2点と後方5点のQDポイントを装備して多様なアクセサリの装着に対応します。ストックは四段階伸縮で折畳式を採用しており、アルミ製アダプタによる堅牢な固定が行えるほか、PDWスタイルのオプションも用意されています。
銃身はクロムメッキおよびハンマー鍛造加工で耐久性と精度を確保しており、チャージングハンドルは両利き対応の折畳式(非連動)を採用することで左右どちらの射手にも配慮した操作性を確保しています。フォワードアシストやトリガーガード内蔵のボルトリリース、デュアルプランジャーエジェクター、アンチバンプ機構などの信頼性向上策も装備されています。マルチキャリバー対応により任務や弾薬事情に応じた構成変更が短時間で可能であり、5.56×45mm NATO仕様は銃身長185 mm、280 mm、367 mm、420 mmが選択でき、.300 AAC Blackout仕様は180 mmおよび229 mmの銃身長が用意されています。
運用面では通常歩兵装備から特殊部隊の近接・中距離任務、PDW的運用まで幅広く想定され、モジュール性を活かしてグレネードランチャーや各種光学装置、レーザー照準器を装着して任務特化が行えます。
Sako Ak24(フィンランド)

Ak 24(Automatkarbin 24)は、フィンランドのSakoが開発したM23系ライフルをスウェーデン仕様に調整した制式小銃で、5.56×45mm NATO弾を使用するアサルトライフルです。2024年から生産が始まり、2025年からスウェーデン軍で運用が開始されています。2025年時点の公表価格は1挺あたり約45,000スウェーデンクローナ(約70万8,000円)とされています。
旧式小銃の更新を目的とした北欧の共同調達の流れの中で、フィンランドとスウェーデンが共同でM23系を選定し、Sakoと契約して供給を受けることになりました。最初の部隊納入は2024年12月に行われ、徴兵教育を行う部隊でも2025年1月から使用が始まりました。しかし導入直後に一部の量産ユニットでトリガー操作後の発火遅延が報告され、安全性と運用性の観点から使用が一時的に停止され、原因究明と個体点検が行われる事態となりました。初期試作機では問題が確認されなかったため、量産工程に起因する可能性があります。
Ak 24はショートストローク式ガスピストンを採用するガス作動式で、セレクティブファイア方式によりセミオートとフルオートの切替が可能です。軽量化と取り回しの良さを重視しており、トリガープルは約2.5〜3.5 kgに設定されています。給弾は30発のSTANAG互換着脱式マガジンを用い、光学装備用にレールやマウントを装備する設計となっています。実戦想定では短〜中距離での機動的運用を主眼に置いた構成です。
Ak 24はAk 5およびAk 4の後継として段階的に配備され、歩兵小銃の主力を代替することを目的としています。ショートバレルのAk 24Aは車両乗員や士官など取り回しを重視する運用に、長銃身のAk 24Bは一般小銃手向けの汎用運用に適した設計です。
世界各国で運用される主力アサルトライフル
M4カービン(アメリカ)

M4カービン(正式名称:Carbine, Caliber 5.56 mm, M4)は、1980年代にアメリカで開発されたM16A2の短縮型アサルトライフルです。軽量で取り回しが良く、米軍でM16の後継として広く採用され、M4A1を含む多くの改良型が世界60カ国以上で使用されています。
M4はガス作動方式で、ローテイティングボルトとボルトキャリアを装備。14.5インチ(約368 mm)の銃身と7075-T6アルミ製レシーバーを持ち、モジュール式で光学機器やグレネードランチャーなどの装備が追加可能です。M4A1はフルオート射撃が可能で、銃身を太くした「SOCOMバレル」により加熱に対応します。特殊作戦向けにはSOPMODキットが開発され、近接戦闘用のCQBRや指定射手用のSPRなど、多様な改良が施されています。
特徴 | M4 | M4A1 |
---|---|---|
射撃モード | セーフ / セミオート / 3点バースト | セーフ / セミオート / フルオート |
銃身 | 標準で軽量 | SOCOM仕様で重く耐久性向上 |
セーフティ | 標準 | 左右両用(アンビ) |
重量 | 軽い | やや重い |
役割 | 順次M4A1に更新中 | 現行の米陸軍標準 |
M4は特に近接戦闘に適しており、歩兵以外の車両乗員や指揮官にも有用です。米軍内ではM16A2/A4の代替として広く配備され、扱いやすさとカスタマイズ性から高い評価を受けています。
AK-12(ロシア)

AK-12はロシアのカラシニコフ・コンツェルン(JSC Kalashnikov Concern)が開発したガス作動式のアサルトライフルで、5.45×39mm弾を使用する第五世代(Ratnikシリーズ)のカラシニコフライフルです。
AK-15は7.62×39mm弾仕様の兄弟モデルで、両者はロシア軍の「Ratnik試験」に合わせて開発されました。また、ショートバレル仕様としてAK-12C、AK-12SC、AK-15C、AK-15SCが存在します。国際市場向けには5.56×45mm NATO弾仕様のAK-19や、7.62×51mm NATO弾仕様のバトルライフルAK-308も開発されました。
Ratnik試験(ラトニクトライアル)とは?
ロシア軍が実施したラトニク計画における小銃試験は、次世代歩兵装備の一環として新型アサルトライフルを選定する目的で行われました。Ratnik(Ратник)はロシア語で「戦士」を意味します。試験ではカラシニコフ社とデグチャレフ工廠の両社が候補となり、5.45×39mmと7.62×39mm口径のモデルが評価され、射撃精度や運用適応性が重視されました。
試験対象となったのは、カラシニコフのAK-12(5.45mm)、AK-15(7.62mm)、そしてデグチャレフのA545(5.45mm)とA762(7.62mm、AEK-971をベースとした設計)です。これらのライフルは部隊での実地試験と政府主導の受領試験を経て、人間工学的設計、信頼性、連射時の精度、そしてラトニク戦闘システム※との実用的な互換性が確認されました。
※ラトニク戦闘システムとは、兵士の生存性と戦闘力を高めることを目的とした近代装備一式です。システムは防弾ベスト、ヘルメット、通信機器、暗視装置、照準器、光学機器など59品目から構成されています。
評価項目には、バーストやフルオート射撃における命中精度、極限環境での耐久性、サプレッサーやラトニク対応光学機器との適合性が含まれました。さらに、ピカティニーレールの搭載、安全装置やストック設計の改良、固定バースト射撃機能の導入といった改良も試みられました。また、電子機器や暗視照準器、防護装備との統合運用も検証されました。
最終的に4種類すべてが採用に推薦されましたが、標準配備用としてはAK-12とAK-15が選定され、AEK系統のライフルは特殊部隊や空挺部隊、海軍の一部部隊に配備されました。これらはラトニク装備とともに配備が進められ、光学機器や防護装備、ネットワーク化された指揮システムとの統合による改良が継続されています。
AK-12の開発は2011年に始まり、2012年から2015年にかけて三度の試作段階を経て改良が重ねられました。当初の試作モデルには多くの欠点がありましたが、AK-400プロトタイプの設計を基に最終モデルが完成。2017年にはロシア軍の試験を終了し、2018年から正式採用・量産が開始されました。初の実戦使用例はロシアのウクライナ侵攻時であり、一部の部隊によって運用されました。
AK-12の特徴として、ガス作動式ロングストロークピストンを採用し、銃身はフリーフローティングで外力の影響を受けにくく、精度を向上させています。最終モデルでは、従来のAK-74Mに近い構造を維持しつつ、レシーバーの剛性向上、改良されたハンドガード、トップカバーの改良、二発バースト射撃モードの追加などが行われています。銃床は伸縮・折りたたみ可能で、チークピース(頬当て)の高さも調整可能です。ピストルグリップには内部にメンテナンスキット収納が備わり、ハンドガードはフリーフローティング設計で通気孔を装備しています。サイトは100~800 mまで調整可能なタンジェント式リアサイトと、容易に調整可能なフロントサイトを装備し、光学照準器はピカティニー・レールで取り付け可能です。
マガジンは従来のAK-74系と互換性があり、30連マガジンが標準で、残弾確認用のウィンドウ付きです。また、サプレッサー、銃剣、40 mmグレネードランチャーの装着も可能です。
バリエーションとしては、標準のAK-12・AK-15、ショートバレル仕様のAK-12C・AK-12SC・AK-15C・AK-15SC、国際市場向けのAK-19(5.56mm NATO)、AK-308(7.62mm NATO)、民間向けセミオートのTR3があります。最新の2023年モデルでは、フラッシュハイダーをバードケージ型に変更、ハンドガードの強化、サイトと安全機構の改良、二発バーストモード廃止などが行われています。
191型5.8mm自動歩槍 / QBZ-191(中国)

QBZ-191自動小銃(中国語:191式自动步枪)は、中国人民解放軍(PLA)および中国人民武装警察(PAP)の新世代制式ライフルとして設計・製造された、5.8×42mm中間弾仕様のアサルトライフルです。名称の「QBZ」は、「軽火器(Qīng Wǔqì)、小銃(步枪 / Bùqiāng)、自動(自动 / Zìdòng)」を意味しています。2019年10月1日の建国70周年記念軍事パレードで正式に公開され、陸軍と武装警察の隊員によって使用されました。「20式」ファミリーの一部として位置付けられています。

中国軍は2014年に従来型制式ライフルの開発を開始し、複数のメーカーが参加してプロトタイプの開発や入札が行われました。QBZ-191は、ブルパップ構造のQBZ-95ライフルも設計した中国兵器工業集団(Norinco)の208研究所によって設計され、「単兵総合作戦システム」の一環として導入されました。このシステムは歩兵装備の全面的な刷新を目指しています。QBZ-191はQBZ-95の後継として順次運用が進められ、QBZ-03と合わせて将来的に代替することが計画されています。2023年8月以降、中国特殊部隊でQBZ-192の運用が開始され、装甲歩兵部隊にも展開が進んでいます。また、2024年にはラオスやタイの特殊部隊向けに輸出・運用事例が報告されています。

従来のブルパップQBZ-95と比べて、従来型のQBZ-03に近いレイアウトを採用し、操作性、両利き対応性、環境に対する信頼性が大幅に向上しています。銃身長やハンドガード構造に複数のバリエーションがあり、軍事パレードではショートバレルのカービンバージョンも使用されました。上部にはフルレングスのピカティニーレールを装備。QMK152およびQMK-171Aといった3倍光学照準器が標準装備され、暗視・サーマル対応の光学装置も取り付け可能です。DMR型はQMK-191可変倍率(3~8.6倍)スコープを装備します。アッパー・ロアレシーバーはアルミ合金製、ハンドガード・グリップ・伸縮式ストックはポリマー製で、チャージングハンドルは右側、ボルトリリースボタンは左側に配置されています。
作動機構はショートストロークピストン方式で、ローテイティングボルトを採用し、4つのロッキングラグとヘリカルカムインロック機構を装備しています。ガスブロックには3段階ガス調整機構があり、トリガーグループはモジュール化され、射撃モードは安全、フルオート、セミオートの順で選択可能です。ストックは4段階調整可能、マガジンリリースはグローブ装着時でも操作しやすく延長され、マガジンは透明窓付きで弾数確認が容易です。給弾はQBZ-95の旧型30連マガジンやQJB-95用75連マガジンも使用可能です。ハンドガードにはアクセサリー取り付け用の小型ピカティニーレールを選択的に装着可能で、ライト、レーザー、フォアグリップ、バイポッド、グリップポッドなどを取り付けられます。また、銃剣、サプレッサー、アンダーバレルグレネードランチャーの装着も可能です。
弾薬は中国独自の5.8×42mm弾で、新設計のDBP-191弾を使用し、中・長距離での弾道性能が改善されています。
バリエーションは以下の通りです。
- QBZ-191:標準型、銃身長368.3 mm、フルオート750発/分
- QBZ-192:カービン型、銃身長266.7 mm
- QBU-191:DMR型、800 m有効射程、フリーフローティングのロングバレルと拡張ハンドガード、QMK-191可変倍率スコープ装備、フルオート射撃も可能
- QBZ-195T:5.56mm NATO仕様輸出モデル
- CS/LR42:5.56mm NATO仕様、QBZ-191ベース輸出モデル
- CS/LR42A:5.56mm NATO仕様カービン、QBZ-192ベース輸出モデル
- CS/LR43:7.62×39mm仕様、QBZ-191ベース輸出モデル
- CS/LR43A:7.62×39mm仕様カービン、QBZ-192ベース輸出モデル
- CS/LR44:7.62×51mm NATO仕様DMR、QBU-191ベース輸出モデル
QBZ-191は設計面での信頼性、操作性、拡張性が重視され、中国軍の次世代制式ライフルとして位置付けられています。
L85A3 / SA80(イギリス)

SA80(Small Arms for the 1980s)はイギリスのブルパップ式5.56×45mm制式小銃ファミリーで、L85が1987年以降の標準小銃となり、2000年代初頭にドイツのヘッケラー&コッホ(H&K)によるA2改修で信頼性が大幅に改善され、2018年からはA3改良型が順次導入されています。
SA80ファミリーは、用途に応じて4つの主要モデルに分かれています。
- L85 ライフル
- イギリス軍の主力小銃。アンダーバレル式40mmグレネードランチャー(L123)を装備可能で、多様なグレネード弾薬に対応しています。
- L86 軽支援火器(LSW)
- 分隊支援用の長銃身モデル。二脚と光学照準を装備し、精密射撃に優れますが、ベルト給弾ではないため持続的なフルオート射撃はできません。後にDMRとして運用され、2019年に退役。L129A1等に代替されました。
- L22 カービン
- 全長を短くした車両搭乗員向けモデル。取り回しが良く、特殊部隊や車両部隊で使用されています。2003年に正式採用されました。
- L98 カデットライフル
- 教練用ライフルで、L85A2に類似しますがフルオート射撃機能はありません。1987年に導入され、改良型のL98A2が現在も使用されています。

L85ライフルはL1A1に代わる制式小銃として1987年から配備されました。試作は1970年代から行われ、量産は1985年から1994年にかけて実施されました。A2改修で2000年代に約20万丁が改修され、A3は2018年に採用されています。
基本はブルパップ・レイアウトで、短い全長でありながら通常の銃身長を確保する設計です。作動方式はショートストロークピストンのガス作動、ローテイティングボルトを採用し、三段階のガス調整やセレクティブファイア機能を持ちます。上部には光学照準のためのレールを装備し、SUSATやACOG、ELCANなどの光学機器が使用されます。
導入直後は耐久性や環境耐性、部品強度、給弾系など多数の欠点が指摘され、湾岸戦争での運用を経てLANDSET報告書などで問題点が明らかになりました。2000年以降のA2改修ではチャージングハンドル、ボルト系、エキストラクター、ハンマーなどが改良され、信頼性(平均故障間隔)が大幅に向上しました。
A3改修でレールの全長化、軽量化、M-LOK採用などが進み、2025年以降も運用延長が図られる見通しです。一方で後継検討(Project Grayburn)が進行中で、将来的な更新が視野に入っています。
プロジェクト・グレイバーン(Project Grayburn)は、イギリス国防省がSA80系L85の後継制式小銃を選定・調達する計画です。およそ15万~18万挺の調達を見込み、L85A3が2030年頃に退役する想定に合わせて実行されます。
検討項目は弾薬(従来の5.56×45mmか、6.8×51mmや6.5mm Creedmoorなどの高性能弾か)や銃のレイアウト(ブルパップ継続か従来型へ移行か)で、性能、信頼性、光学機器やモジュール対応性、整備性、国内生産の可否が評価基準です。
現在は概念段階で複数の候補と口径を比較中であり、実行は2020年代後半を目標に進められています。
ベレッタ ARX160(イタリア)

ベレッタARX160はイタリア製のモジュラー式アサルトライフルで、5.56×45mm弾を基本とし、ショートストロークピストン方式と工具不要のクイックチェンジバレル、両利き対応の操作系を装備しています。GLX160という着脱式40mm(低速)グレネードランチャーと組み合わせて運用可能で、イタリア軍をはじめ複数国で採用・評価されています。
ARX160は2008年に市販モデルとして投入され、「Soldato Futuro計画」向けに発展しました。イタリア陸海空軍および特殊部隊で採用され、約3万挺が供給されています。派生のARX160 A2/A3ではハンドガードやグリップの改良が行われ、国外でも評価・試験を受けています。
ソルダート・フトゥーロ(Soldato Futuro)は、イタリア語で「未来の兵士」を意味するイタリア軍の歩兵近代化計画で、先進技術とモジュール式装備を統合し、兵士の戦闘能力、生存性、指揮統制能力を向上させることを目的としています。
ヘルメット装着型ディスプレイや低照度カメラ、耐衝撃タッチパネル端末、GPSや無線、各種センサーを「e-ベスト」で連携させ、デジタル地図や部隊追跡、指揮通信をサポート。防弾・NBC・レーザー防護装備や気候対応制服、健康管理センサーも備わっています。
プロトタイプはアフガニスタンで試験運用され、ベレッタARX160などの小火器も導入済みで、NATO規格に対応した歩兵の戦闘力向上を目指しています。
アッパー・ロアレシーバーは主にポリマー製で、ショートストロークピストンとローテイティングボルトを採用します。弾薬は5.56×45mm(一部7.62×39mmコンバージョンあり)で、給弾はSTANAGマガジンやAK系マガジンに対応します。空薬莢の排莢方向を左右切替可能、チャージングハンドルやボルトリリース、マガジンキャッチは完全両利き仕様で操作性が高く、ピカティニーレールによる拡張性も確保されています。

派生モデルのARX200は7.62×51mm仕様のバトルライフル/DMR(指定射手用)として2015年に発表され、フルサイズの冷間鍛造バレルや20発マガジン、専用光学機器により長距離精度を重視した構成です。イタリア軍で評価用発注が行われ、少数が配備されています。
HK416(ドイツ / フランス)

HK416は、ドイツのヘッケラー&コッホ(H&K)が開発した5.56×45mm NATO弾使用のアサルトライフルで、M16/M4シリーズを基に設計されていますが、独自のショートストローク・ガスピストン方式を採用しており、作動部への熱や汚れの影響を抑え、高い信頼性と耐久性を実現しています。この設計により、工場試験ではフルオートで1万発を連続発射しても作動不良は確認されず、特殊作戦や過酷な環境下でも安定した運用が可能です。
1990年代に米陸軍デルタフォースの要望で近接戦闘向けのカービンとして開発され、M4カービンやMP5の課題を補う形で完成しました。2005年にはデルタフォースで正式採用され、2011年のウサーマ・ビン・ラーディン殺害(ネプチューン・スピア作戦)でも使用されました。その後、米海兵隊ではM27歩兵自動小銃(IAR)として導入され、分隊レベルでの軽機関銃の役割を兼ねる形で配備されています。
HK416は世界各国の軍でも採用されており、ノルウェー軍はHK416Nをスタンダードライフルとして配備、フランス軍はHK416FをFAMASの後継として採用、アイルランド陸軍レンジャー部隊でもHK416A5が運用されています。ドイツ陸軍はG36の後継としてG95A1を採用しており、標準的な歩兵小銃としての地位を確立しています。
フリーフロート式のレールフォアエンドにより銃身への接触がなく精度が向上し、テレスコピックストックは多段階調整可能で小物の収納も可能です。銃身は冷間鍛造で製造され、耐久性が高く、20,000発の使用に耐えます。オーバーザビーチ(OTB)仕様も選択可能で、水中や濡れた環境下でも迅速に射撃可能です。また、スラムファイア防止のボルト安全装置により安全性が高められています。
OTB(オーバーザビーチ)仕様は、水没直後に銃を安全に発射できるよう設計された仕様です。海上・両用作戦に従事する部隊が水中から直ちに戦闘に移行できることを目的としています。OTBの要点は以下のとおりです。
- 水が残った状態でも発射による銃身や機関部の破裂や異常圧力を防ぐための設計
- 排水経路が設けられており、ボルトキャリア、バッファチューブ、ストックなどから水が速やかに排出
- エキストラクター支え部や薬室補強など、外見では分かりにくい内部加工を含む
- 特定の弾薬が推奨、または制限される場合がある
- 海軍特殊部隊や水中作戦を行う部隊にとって、即応性と安全性を高める
代表的なOTB対応例としてHK416(SOCOM向け仕様など)の他、Haenel MK556/CR223(ドイツ)やBR18(シンガポール)などが挙げられます。
バリエーションとしては、軍用モデルでは銃身長10.4インチから20インチまでの標準型HK416、米海兵隊向けのM27 IAR、改良型HK416 A5、ドイツ特殊部隊用G95/G95A1、7.62×51mm NATO仕様のHK417などがあり、民間向けにはMR223/MR556/MR556A1、MR762、フランス向けのMR223 F-S/F-Cなどがあります。民間モデルはAR-15規格と一部互換性があり、特殊部隊の意見を反映した改良型も存在します。
自衛隊の制式小銃:89式から20式への更新
自衛隊のアサルトライフルである89式小銃と20式小銃はともに5.56×45mm NATO弾を用いる制式小銃ですが、設計思想と運用コンセプトに世代差があります。
89式は既に実戦での運用実績がある「信頼性重視」の制式小銃であり、20式はモジュール性や情報統合など近代戦の要件を取り込んだ「次世代型」として位置づけられています。
以下で双方の特徴をわかりやすく整理します。
89式小銃(89式5.56mm小銃)

89式5.56mm小銃は、日本の自衛隊で1989年に制式化された国産の自動小銃で、64式7.62mm小銃の後継として開発されました。設計・製造は豊和工業が担当し、陸上自衛隊を中心に海上自衛隊や警察の特殊部隊でも使用されています。
5.56mm口径の小口径高速弾を使用し、20発または30発のボックスマガジン(箱型弾倉)を装填可能です。作動方式はロングストロークガスピストン式とローテイティングボルト式で、連射時の命中精度を高めるためにピストンとボルトキャリアを分離する構造を採用しています。銃身長は420mm、全長は固定銃床式で916mm、折曲銃床式で670mm、重量はマガジンを除き約3,500gです。射撃時の反動軽減にはマズルブレーキ兼フラッシュハイダー(消炎制退器)と二脚を装備し、銃身・部品にはプラスチックやプレス加工を多用して軽量化と整備性の向上を図っています。
命中精度は、300mで単射は標準偏差19cm以下、6発連射は縦横2m以内に収まる性能です。内部機構にはスライドとローテイティングボルト、ホールドオープン機能付きスライド止め、バースト機構(3点制限点射機構)が備わり、工具なしで分解やメンテナンスが可能です。銃床は日本人の体格に合わせた左右非対称で頬当てを設計しており、折曲式銃床も採用されています。
89式5.56mm小銃は日本人向けに操作性を最適化しつつ、連射精度と耐久性を両立した自衛隊向けの実用性の高い制式小銃です。
20式小銃(20式5.56mm小銃)

20式5.56mm小銃は、陸上自衛隊向けに豊和工業が開発した自動小銃で、2020年に89式5.56mm小銃の後継として正式採用されました。口径は5.56mmで、銃身長330mm、装弾数30発、作動方式はガス圧作動方式です。全長は779~851mm、重量は3.5kg、有効射程は500m以上とされています。発射速度は650~850発/分です。
開発は2015年に試作開始され、外国製小銃との比較試験を経て2019年に選定されました。設計にはアクセサリレールによる拡張性、調整可能な銃床、左右操作可能なアンビ仕様など現代的な機能を装備しています。銃身や操作系部品は防錆コーティングを施したステンレス製で、高い耐久性を持ちます。弾薬は従来の89式5.56mm普通弾に加え、2023年からは貫徹力を強化したJ3高威力弾も使用可能です。
拡張性としては、ピカティニーレールやM-LOKレールによる光学照準器やグレネードランチャー、二脚付きフォアグリップの装着が可能です。航空自衛隊や海上自衛隊でも少数配備され、水陸機動団や普通科部隊を中心に全国的な配備が進められています。調達は約15万丁規模で、ライフサイクルコストは約439億円と見積もられています。
89式と20式の比較
89式は「運用性と信頼性」を提供し、20式は「拡張性と将来性」を重視しています。
運用面において短期的には89式で十分な運用が可能ですが、中〜長期的な戦闘環境の変化(情報化戦、複合任務)を見据えるなら20式の導入効果が大きいといえます。
項目 | 89式小銃 | 20式小銃 |
---|---|---|
採用年 | 1989年 | 2020年代(段階的導入・配備中) |
弾薬 | 5.56×45mm NATO (89式5.56mm普通弾) | 5.56×45mm NATO (89式5.56mm普通弾使用、J3高威力弾も配備) |
全長 (銃床) | 916 mm(固定銃床式) 670 mm(折曲銃床式) | 851 mm(銃床最小 779 mm) |
銃身長 | 420 mm | 330 mm |
作動方式 | ロングストロークガスピストン式、ローテイティングボルト | ショートストロークピストン |
重量 (本体) | 約3.5 kg | 約3.5 kg |
発射速度 | 650~850発/分 | 650~850発/分 |
装弾数 (マガジン) | 20発または30発 (STANAG互換) | 30発 (STANAG互換、樹脂製マグプル等使用) |
有効射程 | 約500 m(実用上は中距離) | 公称500 m以上 |
特徴 | 反動低減と命中精度を重視、折畳式銃床モデルあり、二脚装備可能、耐久性・操作性に優れる | モジュラー性(ピカティニーレール/M-LOK)、アンビ操作系、調整式チークピース、防錆・排水性能重視 |
素材・外観 | 銃床・銃把・被筒に強化プラスチック、金属部はプレス加工主体 | ロアレシーバー樹脂、アッパー/ハンドガードはアルミ、ステンレス銃身+防蝕コーティング |
運用・配備 | 陸上自衛隊、海上自衛隊、海上保安庁、警察特殊部隊に制式配備 | 離島防衛を想定、防錆・排水性を装備し陸上自衛隊中心に段階配備中 |
「最強のアサルトライフル」とは?
世界的に「最強のアサルトライフル」という普遍的な基準は存在せず、軍、法執行機関、民間など利用環境によって選択は異なります。しかし、高く評価されるモデルはいくつかあります。

M4やM16シリーズは依然として広く使用されており、高い命中精度とモジュール性、拡張性の高さが強みです。

AK-47やAKM、AK-74シリーズは過酷な環境でも作動する信頼性と整備の容易さから世界的に普及しています。

HK416はガスピストン方式を採用しており、サプレッサー装着時や長時間の射撃において安定した作動を維持できるため、特殊部隊に好まれています。

ステアーAUGやIWIタボールX95といったブルパップ方式の小銃は全長を短縮でき、都市戦や近接戦闘で優れた機動性を発揮します。

FN SCAR 16/17は口径を5.56mmと7.62mm NATOから選択できる柔軟性を持ち、特殊部隊や即応部隊で高く評価されています。
比較すると、M4/M16やHK416のようなAR系ライフルは精度とカスタマイズ性を重視する利用者に適し、AKシリーズは整備環境が厳しい地域での信頼性が強みです。ブルパップは車両内や建物内での使用に有利であり、FN SCARは多用途性を求める部隊に向いています。
軍用・民間を問わず推奨される主なモデルはM4/M16、HK416、AKシリーズなどであり、使用目的に応じて最適な選択が決まります。
まとめ
この記事では、アサルトライフルの定義・特徴、誕生から現代までの変遷、主要モデルと最新モデルまでを体系的に解説しました。アサルトライフルとは、セレクティブファイア機能を持ち、中間弾薬を使用し、着脱式マガジンを装備、かつ300メートル以上の実用射程を持つ軍用小銃を指します。これは近〜中距離の汎用性を重視した現代歩兵の主力武器です。
中間弾薬は、拳銃弾より強力でフルパワーライフル弾より反動が抑えられており、300〜600メートルの戦闘距離で十分な威力を発揮します。第二次大戦末期のStG44がこの概念を初めて実用化し、戦後はAK-47やM16など世界中のアサルトライフル設計に影響を与えました。
アサルトライフルは、バトルライフルやDMR(指定射手用ライフル)と役割や設計が異なります。バトルライフルはフルパワー弾で中〜長距離火力を重視し、DMRは分隊支援として中〜長距離の精密射撃に特化しています。一方、アサルトライフルは軽量・小型で近〜中距離の汎用戦闘に最適化されています。
冷戦期にはソ連のAK-47と米国のM16が象徴的存在となり、AK-47は信頼性と低コスト生産で世界中に普及、M16は小口径高速弾による高連射性能でアメリカ軍の制式小銃として定着しました。現代ではM4カービンやM7、各国独自の最新モデルが運用され、性能や汎用性の向上が続いています。
- アサルトライフル:セレクティブファイア機能、中間弾薬、着脱式マガジンを装備し、概ね300メートル以上の実用射程を持つ軍用小銃。
- セレクティブファイア:セミオート、フルオート、またはバーストを切り替え可能な射撃方式。
- 中間弾薬(インターミディエイトカートリッジ):拳銃弾より強力で、従来のフルパワーライフル弾より威力が低いライフル弾。
- フルパワーカートリッジ:従来の強力なライフル弾(例:7.62×51mm NATO、.30-06など)。
- 着脱式マガジン:弾薬の迅速な再装填のため、銃本体から取り外し可能な弾倉。
- セミオートライフル:引き金を引くたびに1発ずつ発射される射撃方式に限定された小銃。
- バトルライフル:フルパワーライフル弾を使用する小銃で、アサルトライフルより射程とストッピングパワーに優れる。
- DMR(指定射手用ライフル):通常の小銃と狙撃銃の中間を担い、歩兵分隊で精密射撃に使用されるライフル。
- ユニバーサル・サービス・カートリッジ:小口径高速中間弾とフルパワー弾を統合し、ライフル・汎用機関銃双方に適した性能を目指す軍用弾薬の概念。
- 次世代分隊火器プログラム(NGSW):米陸軍のM4カービンおよびM249軽機関銃を更新するための次期小火器・弾薬開発プログラム。
- デジグネイテッド・マークスマン(DM):小隊や分隊に配属され、通常小銃手より遠距離を狙う精密射撃を担当する射手。
- StG44(Sturmgewehr 44):第二次世界大戦中にドイツで開発され、史上初めて実用化に成功したアサルトライフルのモデル。
- ロングストロークピストン方式:ピストンがボルトキャリアと一体で長い距離を動き、ガス圧で次弾装填を行う作動方式。
- ショートストロークピストン方式:ピストンが短い距離だけ動き、ボルトキャリアに打撃を与えて作動させるガス作動方式。
- ダイレクト・インピンジメント(DI)方式:ピストンを使わず、発射ガスを直接ボルトキャリアに導き作動させる方式で、AR-15系に採用。
- ボルトキャリア:ガス圧で後退・前進し、ボルトを操作して次弾装填や排莢を行う部品。
- ブルパップ(bullpup):作動部とマガジンをトリガー後方に配置し、銃身長を維持して全長を短縮する設計。
- STANAG:北大西洋条約機構(NATO)の標準化協定。加盟国間で部品の互換性を定める規格。
- M-LOK:モジュール式の軽量レールシステム。アクセサリーをハンドガードのスロット部に直接取り付ける方式。
- ピカティニーレール:火器の機関部などに装備され、スコープやアクセサリーを搭載するための規格化されたレール。
- アンビデクストル:左右どちらの利き手でも操作しやすいように設計された操作系またはスイッチの配置。
- ローテイティングボルト:ボルトが回転して薬室を閉鎖(ロック)し、射撃サイクル中に解除・後退する方式。
- マズルブレーキ:発射ガスを噴射することで、射撃時の銃口の跳ね上がりや反動を軽減する装置。
- フラッシュハイダー(消炎器):発射炎を拡散・冷却し、夜間や暗所での銃口の閃光を抑制する装置。
- ラトニク戦闘システム:ロシア軍の歩兵近代化計画。兵士の戦闘力と生存性を高めるための防護・通信・光学機器などを含む装備一式。
- ソルダート・フトゥーロ(Soldato Futuro):イタリア語で「未来の兵士」。イタリア軍が進める歩兵近代化計画。
- OTB(オーバーザビーチ)仕様:水没直後に安全に発射できるよう設計された、海軍特殊部隊などが使用する特殊な仕様。