銃の薬莢はなぜ飛ぶ? 意外と知らない排莢の仕組みを図解

ベレッタ92FS排莢イメージ画像

この記事の要約:

  • 銃の排莢は、反動で後退するボルト/スライドが薬莢を引き抜き、エジェクターにぶつけて外へ飛ばす仕組みで行われる。
  • 現代の多くの銃では、エキストラクターが薬莢を確実に保持し、エジェクターと組み合わせて高い排莢信頼性を実現している。
  • 銃の方式によって排莢構造は異なり、ブローバック式・ショートリコイル式・プランジャー式など多様なメカニズムが存在する。

自動式の銃を撃つと、空になった薬莢が勢いよく横へ飛び出していきます。

その排莢動作がどのような仕組みで行われているのかご存知でしょうか?

銃はエキストラクターが無くても排莢するのでしょうか?

この記事では、反動エネルギーの利用、エジェクターとエキストラクターの役割、そして銃ごとに異なる排莢構造まで、代表的なメカニズムをわかりやすく解説します。

目次

銃の基本構造

リコイルエナジーとマズルエナジー解説図

銃は火薬の燃焼によって高温高圧のガスを発生させ、そのガス圧で弾頭を加速して発射します。

このとき、弾頭が前方へ押し出される力と同じ大きさで、銃本体には後方へ押し返す力(反動 / リコイル)が働きます。これは「作用反作用の法則」によるものです。作動方式によっては、この反動エネルギーがボルトやスライドを後退させる原動力として利用されます。

発射後の薬莢は、後退したボルト(またはスライド)がエキストラクターで薬室から引き抜き、続いてエジェクターによって銃外へ排出されます。

この一連の動作も、発射時に生じた「作用反作用の力」や「ガス圧の変化」を利用して行われる仕組みです。

  • マズルエナジーは「弾が銃口を出る瞬間の運動エネルギー」
  • リコイルエナジーは「その反作用として銃本体に生じる運動エネルギー」

どちらも運動エネルギーですが、「どちらの物体が動くか」が違うだけです。

エジェクターで排出する仕組み

薬莢はエジェクター(イジェクター)という部品によって排出されます。その仕組みは非常に単純です。

拳銃弾排莢構造イメージ画像

薬莢が後退するとエジェクターに衝突し、薬莢が横方向へ押し出され、銃の外へ跳ね飛ぶように排出されます。

銃のモデルによってはエジェクターが薬莢の側面を叩いて蹴り出す仕組みも存在しますが、多くのモデルで採用されるエジェクターは、薬莢の底部と接触します。

特に「エジェクターのみ」を利用して排出する方法は、古いストレートブローバック方式の銃でみられます。

ストレートブローバック方式は、発射時に薬莢がガス圧で後方へ押される力を利用し、その力だけでボルト(またはスライド)を後退させる最も単純な作動方式です。

銃身は固定されており、閉鎖はボルトの質量とリコイルスプリングの力によって維持されます。

ボルトが後退する過程で薬莢が排出され、前進時に次弾が装填されます。

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例を上げると、ベレッタ21Aボブキャット、トーラスPT22、ル・フランセ・ポケットピストルなどは、エジェクターが唯一の排出機構となっています。

ル・フランセイメージ画像
ル・フランセ内部構造イメージ

また、ドイツのベホラ(Beholla)ピストルでは、ストライカー(撃針)をエジェクターとして機能させる珍しい構造を持ちます。

ル・フランセやベホラはこちらの記事で紹介しています。

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エキストラクターを利用する仕組み

ピストル排莢構造説明画像

現代の銃の多くにはエキストラクターが備わっています。

エキストラクターは、薬莢底部の溝にはまり、未発射の弾薬や発射済みの薬莢を薬室から引き抜くために存在します。

拳銃弾排莢構造イメージ画像

現在多くのピストルで採用されているショートリコイル方式では、エジェクターだけでは排莢の信頼性が低いため、エキストラクターを必要とします。

エキストラクターが薬莢を後退させ、薬莢がエジェクターに衝突すると銃の外へ排出されます。

ベレッタ92FS排莢イメージ画像

この仕組みはピストルに限らず、AK-47などライフルでも多く利用されています。

ショートリコイルは、発射時にバレル(銃身)とスライドが一緒に短い距離だけ後退し、その途中でロッキングが外れてスライドだけが後退を続ける方式です。

  1. 発射 → バレルとスライドが結合したまま短く後退
  2. 後退途中でロックが解除される
  3. スライドだけが後退し、排莢・再装填を行う
  4. 前進時に再びバレルとスライドがロックされる

高圧弾(9mm・.45ACPなど)を安全に扱うための代表的な方式で、M1911やGlockなど多くの現代拳銃が採用しています。

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こちらの動画では、ショートリコイル方式(グロック)やディレートブローバック方式(MP5)の銃からエキストラクターを排除した場合、正常に排莢するのか実験しています。

エキストラクターを排除すると排莢の信頼性が大きく低下することがわかりますが、サプレッサーを装着したグロックではエキストラクターを排除しても確実に排莢する結果となっています。これは、サプレッサーによるガス残圧が影響しています。

銃ごとに異なる排莢構造

M4A1イメージ画像

AR-15系やレミントンM700など、モデルによってはプランジャー式のエジェクターが利用されています。

ライフル弾排莢構造イメージ画像

弾薬が薬室に装填されたとき、既にエジェクターが薬莢底部に接触しており、バネで押す状態を維持します。

この状態でエキストラクターによって薬莢が引き抜かれると、薬莢先端がエジェクションポート(排莢口)に到達した瞬間に外へ排莢されます。

AR15内部構造イメージ画像

プランジャー式のエジェクターは、「凍結」や「大量発射により過度に汚れるとカーボンの堆積」で機能不全のリスクがありますが、そういったリスクは非常に低く、逆にコンパクトかつボルト後退量に依存しない確実な作動性が評価されます。

こちらの動画では様々なモデルの排莢構造を紹介しています。

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この記事を書いた人

・1998年:実銃解説サイトを開設
・2001年~2007年:米国に居住し実弾射撃を学ぶ
・エアガンメーカー勤務経験や実銃経験を活かした情報を発信中

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