
この記事の要約:
- KTW弾の貫通力はテフロンではなく硬質コアが主因であり、テフロンは銃身保護のための補助的コーティングにすぎません。
- 1980年代の誤解を含む報道によって「コップキラー弾」として社会問題化し、アーマーピアシング弾規制の対象となりました。
- 現在は製造が終了し、わずかにコレクター市場に残るのみです。
KTW弾(いわゆるテフロン弾/コップキラー弾)は、「テフロンによって防弾チョッキを貫通する弾」と誤解されることが多い特殊弾薬です。しかし、実際に貫通力を生み出している主因はテフロンではなく、鉛よりはるかに硬いスチールや真鍮などの硬質コアにあります。
本記事では、KTW弾とは何か、なぜ貫通力が高いのか、テフロンの本当の役割、社会問題化した背景、アーマーピアシング弾としての規制、そして現在の入手性まで、分かりやすく解説します。
結論:KTW弾の貫通力は「テフロン」ではなく「硬質コア」が主因
KTW弾(テフロン弾/コップキラー弾)は、テフロンによって貫通力が高まる弾ではありません。
貫通性能を決定づけているのは真鍮・鋼鉄などの硬質コアであり、テフロンは銃身摩耗の低減と偏向防止のための補助的コーティングと説明されています。これについて詳しく後述します。
KTW弾とは何か
KTW弾は1960年代、オハイオ州の検視官 Paul Kopsch、警察官 Daniel Turcus、捜査官 Donald Ward の3名によって開発された特殊目的の拳銃弾です。名称は3名の頭文字(K・T・W)に由来します。
当時、警察は自動車のドアやフロントガラスを貫通できる弾薬を必要としていました。従来の鉛弾は硬い障害物に当たると大きく変形し、貫通力が著しく低下していたため、開発陣は硬質金属コア+テフロンコーティングという構造に到達しました。
KTW弾は1960年代後半に商業生産が始まり、1980年にはNorth American Ordnance Corporationに製造が引き継がれています。
なぜ貫通力が高いのか
KTW弾の貫通力を決定づけているのは、鉛ではなく真鍮・鋼鉄などの硬質金属コア(弾芯)です。
鉛コアの弾は着弾時に大きく潰れ、エネルギーが変形に吸収されますが、硬質コアは形状を保ったまま障害物に進入し、運動エネルギーを効率的に貫通へ転換します。
KTW弾の初期試験で「硬質真鍮弾はライフリングに対して変形せず、銃身摩耗が激しかった」とされており、これが後述するテフロン採用の理由にもつながっています。
テフロンコーティングの役割
テフロンは貫通力を劇的に高める素材ではありません。
テフロンの本来の役割
- 銃身摩耗の低減:硬質コアがライフリングを削るため、摩擦を減らす目的で採用。
- 偏向の抑制:車のドアやフロントガラス貫通時に弾道が逸れるのを軽減する効果がある。
また、ケブラー製ソフトアーマーに対しては、テフロンの“滑りやすさ”が停弾効果を弱める可能性が指摘される一方、開発者 Kopsch は「テフロンはむしろケブラーに対する貫通力を低下させる」と述べた記録もあり、学術的にも一貫した結論はありません。
いずれにせよ、金属面の貫通力はテフロンではなく硬質コアが主因である点は事実です。
なぜ社会問題化したのか(コップキラー弾報道)
1982年、NBCがKTW弾を「Cop Killer Bullets(警官殺し弾)」として報道したことで、KTW弾は一気に社会問題化しました。
報道では「テフロンが防弾チョッキを貫通させる」という誤解が強調されましたが、実際には警官がKTW弾で撃たれた事例は確認されていないと複数の資料が指摘しています。
このセンセーショナルな報道が、後述するアーマーピアシング弾規制の引き金となりました。
規制の内容
1986年、米連邦法はアーマーピアシング弾(AP / 徹甲弾)を以下のように定義しました。
アーマーピアシング弾の主な定義要件
- ハンドガン用弾頭のコアが、タングステン合金・鋼鉄・真鍮・青銅・ベリリウム銅・劣化ウランなどの硬質金属で構成される
- .22口径以上で、ジャケット重量が弾丸総重量の25%を超えるもの
この定義により、KTW弾は事実上アーマーピアシング弾として扱われ、各州でも独自の規制が導入されました。
なお、テフロンそのものは連邦法で禁止されていません。禁止対象は「硬質コア」であり、テフロン規制は州ごとに異なります。
| 区分 | 州名 | 規制内容 |
|---|---|---|
| 全面禁止 | アラバマ | 真鍮・鋼製のテフロン被覆拳銃弾の所持・販売を禁止 (防弾ベスト貫通目的の弾) |
| ノースカロライナ | テフロン被覆弾の輸入・製造・所持・販売を包括的に禁止 | |
| サウスカロライナ | PTFE(テフロン)被覆弾の使用・所持・販売を禁止 | |
| ハワイ | 金属貫通能力向上を目的としたテフロン等被覆弾の製造・所持・販売を禁止 | |
| 犯罪時のみ違法 | オレゴン | 重罪の実行・企図中に所持すると違法 |
| バージニア | 暴力犯罪の実行時に使用・所持すると違法 | |
| ペンシルベニア | 犯罪実行時にKTW弾などを所持・使用すると違法 | |
| ウィスコンシン | 犯罪行為中の使用を禁止(通常所持は合法) | |
| 条件付き規制 | オクラホマ | 防弾ベスト貫通能力を持つフッ素系被覆弾を特定状況下で規制 |
よくある質問
- KTW弾は現在でも入手できますか?
-
製造は1990年代に終了しており、現在はコレクター市場にわずかに流通するのみです。
州によっては所持・売買が可能ですが、テフロンコーティング弾を禁止する州もあります。
- テフロン弾はなぜ規制されたのですか?
-
「テフロンが防弾チョッキを貫通する」という誤解がメディアによって広まり、社会的懸念が高まったためです。実際には硬質コアが主因であり、テフロンは補助的要素にすぎません。
- テフロンは貫通力を高めるのですか?
-
金属面に対してはほぼ影響しないとされます。(開発者は着弾時摩擦による影響で金属面での貫通向上を主張しました)
ケブラーに対しては影響があるとする説と、むしろ貫通力を低下させるとする開発者の証言があり、確定的ではありません。
- なぜ廃れたのですか?
-
アーマーピアシング弾規制の強化、メディアによる悪いイメージの定着、警察機関での採用停滞、民間市場での需要低下が重なり、KTW弾は1990年代に製造が終了しました。
現在では歴史的な特殊弾としてコレクター市場に残るのみです。
まとめ
- KTW弾とは:警察向けに開発された硬質コア弾
- 貫通力 なぜ高い?:硬質コアが変形せずエネルギーを貫通に集中させるため
- テフロン弾の誤解:テフロンは銃身保護と偏向防止が目的で、貫通力の主因ではない
- コップキラー弾の由来:1980年代の誤解を含むメディア報道
- アーマーピアシング弾規制:硬質コアを基準に定義
- 現在の入手性:製造終了、コレクター市場のみ
参考文献
- Wikipedia(英語版)「KTW bullet」
- U.S. Code Title 18, Section 921(米国連邦法)
- NBC News Archives(1982年 “Cop Killer Bullets” 報道)
- National Institute of Justice(NIJ)「Body Armor Performance Standards」
- SAAMI(Sporting Arms and Ammunition Manufacturers’ Institute)技術文書
- FBI Ballistic Research Facility(一般弾道研究報告)


