トリガーガード(用心金)について解説します。
トリガーガードの目的とは?
誤射防止
トリガーガード(用心金)は、物体や指がトリガー(引金)に触れて起こる誤射を防止します。
もしトリガーガードが無ければ、銃をホルスターに収める際に誤ってトリガーがホルスターに触れて発射したり、銃を落下させた際にトリガーが引かれて発射するなどの誤射事故が起こりやすくなり、大変危険です。
トリガーガードは安全に銃を使用するために必要不可欠な存在と言えます。
速射性向上
軍や法執行機関で使用されるピストルのトリガーガードには、トリガーガード前面にセレーション(滑り止め加工)を設けているモデルが存在します。
こうした、いわゆる「コンバット・トリガーガード」は指をトリガーガードに掛けることでマズルジャンプを抑え、速射性を向上させる効果があります。
しかし、これには個人差があり、どのピストル、どのユーザーでも有効とは限りません。
プロシューターの間でもグリップ方法は統一されていないため、自分で試してみて有効であれば、そのまま継続することが推奨されます。
因みに、リボルバーの場合はシリンダーギャップから高圧ガスが噴出されるため、トリガーガードに指を掛けると危険です。
リボルバーではトリガーより前へ指が出ないように注意する必用があります。
冬期グローブ対応トリガーガード
軍用ライフルのトリガーガードは取り外し可能な構造が多く見られます。
俗に「ウィンター・トリガーガード」と呼ばれており、冬期に厚手のグローブを装着した状態でもトリガーを引きやすくするための設計です。
M16、SIG550シリーズ、FA-MASなど、様々な軍用ライフルで利用されています。
オーストリアのステアーAUG(ブルパップ・ライフル)では、トリガーだけをガードするのではなく、グリップ全体をガードする設計です。
オーストリア軍の冬期グローブはミトンのため、トリガーガード内に指を入れることができません。
そのためグリップとトリガーを包み込むようにしてグリップし、トリガーが引かれます。
1948年にコルト社とハイスタンダード社は米陸軍と契約し、9x19mm弾を使用するT3ピストル(ハイスタンダード社製)とT4ピストル(コルト社製)が製造されました。
プロトタイプのT4ピストルでは取り外し可能なトリガーガードが備わっており、冬期グローブに対応させています。
しかし、1955年にトライアルを終了し、コルトM1911A1が継続採用される結果となりました。
トリガーガードを排除した例
誤射の危険は承知の上、あえてトリガーガードを排除する例もあります。
代表的なモデルとして「フィッツ・スペシャル」がそれに当たります。
ジョン・ヘンリー・フィッツジェラルドによって開発された「フィッツ(Fitz)」は、1918~1944年に製造され、コルト・ディテクティブの銃身を2インチにカットし、ハンマースパーやトリガーガードを排除しています。
手が大きな射手や、グローブを装着した状態でも素早く射撃する目的でトリガーガードが排除されました。
フィッツ・スペシャルは製造数が少ないため現在では希少価値のあるリボルバーです。
トリガーガードの特異な利用例
マシンピストルのベレッタ93Rは大型のトリガーガードが備わっています。
93Rではトリガーガード内にサポートハンドの親指を入れてグリップし両手で保持されるため、トリガーガードを大きく設計しています。
中国のノリンコM77B(77式)はトリガーガードとスライドが連動し、トリガーガードに指を掛けて引くとスライドが後退し、初弾を薬室に装填可能な設計です。
本来ピストルのスライドは両手を使用して引かれますが、M77Bでは片手のみで操作が完結します。
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