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なぜ日本の警察は38口径拳銃を使用するのか?その歴史と選定理由を徹底解説

銃を構える警察官

日本の警察の拳銃は、なぜ38口径?

本記事では、日本の警察が38口径の拳銃を使用している理由について解説します。

日本における銃携帯の歴史

日本で初めて軍以外で拳銃を携帯した職業

日本では、警察が銃を携帯する以前から郵便配達人が銃を携帯していました。

配達中の強盗を防ぐ目的から、明治6年(1873年)に「郵便保護銃」と呼ばれるピストルやリボルバーを携帯するようになり、1949年まで携帯されていました。

.32口径のブローニングM1910(.32ACP)も郵便配達人が携帯していたピストルのひとつです。

当時は民間人も銃砲店で拳銃を購入可能な時代であり、現在と比べると銃規制のゆるい時代でした。

警察が拳銃を携帯

日本の警察が拳銃を携帯することが認められたのは、大正12年の勅令によるものでした。

米騒動(大正7年/1918年)や関東大震災(大正12年/1923年)などによって治安が悪化し、警察の装備を強化する必要性が認識されます。

そして、大正12年10月15日の閣議で拳銃携帯が決定され、警察官が正式に拳銃を携帯することを承認。

大正12年10月20日、「勅令第450号」および「第451号」が発令され、警察官が拳銃を携帯することが正式に決定されました。

.32ACP画像
.32ACP

かつて日本の警察が広く使用していた銃の口径は、.25口径の.25ACPや、.32口径の.32ACPなどでした。

これらのピストル弾は低圧で反動が少ないため、「命中率が高い」「速射性が高い」「貫通弾による二次被害のリスクが低減される」「訓練が短時間で済む」などのメリットがあります。

また、これらの弾薬を使用する銃は軽量コンパクトなため携帯しやすく、日常的に携帯しても重量による負担が少ないのも良い点です。

戦後に米軍から供与

第二次世界大戦後、武装解除した日本には治安維持のためアメリカから多くの銃が供与されました。

このとき、.38口径の「.38スペシャル」や.45口径の「.45ACP」を使用するリボルバーやピストルが警察用拳銃の中心となり、アメリカの警察や軍で広く使用されていた.38スペシャルの有用性が日本でも知られるようになりました。

そして、これらの制圧力や訓練効率が評価され、日本でも.38口径弾の採用につながります。

その後、警察官の装備軽量化の観点から、さらに小型な.38口径リボルバーが求められるようになり、国産で信頼性の高い拳銃の開発が推し進められた結果、ニューナンブM60が採用となります。

ニューナンブM60の画像
Image courtesy of Wikipedia

ニューナンブM60はアメリカのS&W社の「Jフレーム」および「Kフレーム」のリボルバーを参考にしたダブルアクションリボルバーで、新中央工業(現・ミネベアミツミ)が開発、製造しました。

1961年から約13万3400丁製造され、1964年に制式拳銃として一本化されたのち、1990年代まで製造されました。

日本の警察が.38口径を選択する理由

日本警察の画像

なぜ日本の警察は.38口径を選択したのか?

実のところ、私は本当の理由を存じ上げません。

日本の警察では、SATや銃器対策部隊など、各機関によって.38スペシャルの他に.32ACPや9mmも採用されています。

しかし、一般的な制服警察官は基本的に38口径の.38スペシャルを使用するリボルバーを装備しています。

.38スペシャルが選択されるに至る歴史的背景や、弾薬の性能面のメリットから採用理由を推測できますが、「いつ誰が最終的な判断を下したのか」といった点が不明確で、「.38口径を採用する理由を警察が発表したことがあるのか」という事実関係も確認できません。

そのため、本記事では「.38口径が採用されることの合理性」を解説する内容としています。

私が知る限り、日本の警察が.38口径を装備する理由を公式に明かしたことはないと思われますが、次のような理由が推測できます。

  • 反動が軽いことから命中率が高く、一般的な日本人の体格でも扱いやすい
  • .38スペシャルを5発装填するリボルバーは小型軽量なため、常時携帯する場合でも身体への負担が少なく、日常業務に支障なく快適に携帯できる
  • 日本のほとんどの現場対応可能な必用十分な弾道性能を持つ
  • .38スペシャルはリボルバーで使用され、リボルバーはシンプルで扱いやすく、信頼性が高い

もし、小口径高速弾を使用すると、貫通力が高まることで二次被害のリスクが生じる可能性があります。

また逆に、大口径を使用すると装弾数が少なくなり、装弾数を維持、または増加させるにはシリンダー径を大きく設計する必要があるため、結果として銃の重量が増加するほか、携帯性が悪化します。

そういった意味で、38口径は警察用リボルバーの弾薬として大きすぎず、小さすぎず、ちょうどいい大きさといえます。

その他、「リボルバーは排莢されないため薬莢を回収する必要がない」という意見も耳にしますが、これについては警察ではセミオート・ピストルも多く採用されているため、個人的には懐疑的です。

アメリカの警察で.38口径が選択された理由

.38スペシャル弾画像
.38スペシャル

.38スペシャルは1898年に開発され、.38ロングコルト弾を強化した改良版として登場しました。

.38スペシャル登場により従来の.38口径弾よりも弾速や貫通力が増し、より強力なストッピングパワー(対象を無力化する能力)の効果が得られるようになりました。

.38スペシャルは汎用性が高く、古い.38ロングコルトを使用する銃から発射することも可能なうえ、一部の黒色火薬を使用するパーカッション式リボルバーを利用することも可能です。

1920年代までアメリカの法執行機関は旧式のシングルアクションリボルバーに代わる銃を探しており、この互換性の高さが魅力で、.38スペシャルの採用が加速しました。

.38スペシャルを採用した最新のダブルアクションリボルバーには、以下のような利点があります。

  • 従来の.38口径弾と比べて威力が向上
  • 反動が軽く、大半の警官にとって扱いやすい
  • 法執行機関が対応する多くの現場で十分な精度や実力

特に以下の2つのリボルバーが法執行機関で広く使用されました。

  • スミス&ウェッソン・モデル10
  • コルト・オフィシャルポリス

どちらも.38スペシャルを使用し、アメリカの法執行機関におけるリボルバーの代表として長年愛用されました。

1972年にFBIが「FBIロード」(後に+Pロードと呼ばれる)として.38スペシャルを採用したことが、さらにこの弾薬の法執行機関での人気を確固たるものにしました。

当時、.357マグナムのような強力な弾薬も存在し、一部法執行機関でも採用されましたが、それでも多くの法執行機関はあえて.38スペシャルを選択しました。

.38スペシャルは比較的に反動が小さいためコントロールのしやすさがあり、ストレス状況下でも正確に射撃可能というメリットがあるためです。

しかし、アメリカでは1980年代から1990年代にかけて装弾数15~17発のセミオート・ピストルが普及するようになり、装弾数5~6発のリボルバーは法執行機関用として次第に時代遅れとなりました。

一方、日本では民間人が拳銃を所持しないため、現在も日本警察は装弾数5発のリボルバーで現場対応が可能な状況です。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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