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ピストルの最適な射程距離とは?

ベレッタM9の画像

ピストルのサイトは最適距離を検証して設定されているのでしょうか?

また、その設定は何を基準に決定されているのでしょうか?

今回は9mmピストルを例に最適な射程距離の設定について解説します。

ピストルの最適な距離

ピストルの最適な距離は、使用弾薬の弾速や弾頭重量等から計算された弾道データと、ピストルの有効射程距離を元に設定されています。

発射された弾は、銃口を離れた瞬間から落下を始めます。

弾は常に曲線を描いて飛びますが、高速で飛ぶと落下量が少なく、空気抵抗によって弾速が低下すると落下量が大きくなります。

つまり、弾が水平に近い状態で飛んでいられる距離にサイトを合わせると精度が高まります。

拳銃弾でポピュラーな9mmルガーを例にすると、この弾薬を使用するピストルの多くはおおむね25ヤード(アメリカ)、または25メートル(ヨーロッパなど)で正確に命中するように設定されています。

9mmルガーは拳銃弾としては比較的弾道がフラットなため、50ヤードでもある程度の精度を得られますが、ピストルは手で保持した際に安定せず、50ヤードは遠すぎて実用的ではありません。

仮にピストルにストックを装着すれば安定するため、50~100ヤードでも狙えるようになりますが、ストック付きサブマシンガンも25ヤード/25メートルで設定されるのが一般的です。

銃の画像
Image courtesy of heckler-koch.com

例えば、H&K MP5サブマシンガンは9x19mmNATO弾を使用時に25メートルで命中するように設定されており、工場出荷前テストも25メートルの距離で試射されています。

この弾薬のサイズでは、25メートルは遠すぎず近すぎず、弾道特性や安定性から高い精度が得られる実用的な距離となります。

9mmルガーの弾道曲線

銃の画像
銃の画像

9mmルガーを使用する銃を水平にして撃つと、このような弾道曲線になります。

縦軸が高さ(インチ)、横軸が距離(ヤード)です。(100ヤード=91.44メートル)

発射直後は水平に近い弾道となりますが、徐々に弾速が低下し、それに伴って落下角度が強まっていきます。

9mmルガーの落下量(水平発射時)

弾頭重量 115 gr / 初速 1260 fps / 弾道係数 0.158

距離弾の落下量経過時間
25ヤード-0.7128インチ(-1.810512 cm)0.062秒
50ヤード-2.9602インチ(-7.518908 cm)0.127秒
100ヤード-12.7155インチ(-32.29737 cm)0.266秒

水平にして撃つと弾は25ヤード地点で約1.8cmほど落下しており、銃のサイトと銃身が水平では照準場所と着弾場所にズレが生じます。

そのため、照準場所と着弾場所を一致させる(ゼロインする)必要があります。

ライフル弾(.223レミントン)の場合

銃の画像
RUGER AR-556 Image courtesy of ruger.com
銃の画像

参考までにライフル弾の場合も確認してみます。

9mmルガーは25ヤード地点で約1.8センチ落下するのに対し、ライフル弾の.223レミントンは25ヤード地点で約2.6ミリしか落下していません。

.223レミントンの落下量(水平発射時)

弾頭重量 55 gr / 初速 3,240 fps / 弾道係数 0.255

距離弾の落下量経過時間
25ヤード-0.1054インチ(-0.267716 cm)0.024秒
50ヤード-0.4313インチ(-1.095502 cm)0.048秒
100ヤード-1.8030インチ(-4.57962 cm)0.099秒
150ヤード-4.2431インチ(-10.777474 cm)0.153秒
200ヤード-7.9004インチ(-20.067016 cm)0.211秒
250ヤード-12.9495インチ(-32.89173 cm)0.273秒
300ヤード-19.5964インチ(-49.774856 cm)0.340秒

ライフル弾は長い距離でも落下が少なく、サイトを遠くに設定しても精度の高い結果を得られます。

ピストルは両手(片手)で一点を支えて保持しますが、ライフルは両手、肩、頬などで複数個所を保持するため、より安定した精密な射撃が可能です。

銃の画像

しかし、ライフルによっては25ヤードで弾道と照準を一致させる(ゼロインする)場合があります。

この図のように、仮に25ヤード地点(図A地点)を通過した弾が600ヤード地点(図B地点)で再び交わる弾道を描くことがあるため、25ヤードゼロインは必ずしもピストルに限ったことではありません。(通常、図A地点でゼロイン後に図B地点で再度ゼロインする)

25ヤードにサイトを合わせた場合の弾道データ

銃身と照準が平行では弾がどこまで飛んでも交わることがないので、フロントサイトを低く、リアサイトを高く設定することで、サイト越しにターゲットを狙った際に銃口が若干上を向くようにします。

※例外的に重量の重い弾を使用する銃では反動による銃の移動量を考慮して逆に設定する場合もあります。

その結果が以下の弾道になります。

9mmルガーの弾道データ

弾頭重量 115 gr / 初速 1260 fps

弾道係数 0.158 / サイト高 0.17インチ / 25ヤードゼロ

距離
(ヤード)
弾速
(フィート/秒)
マズルエナジー
(フィート/ポンド)
弾道曲線
(インチ)
01260405.0-0.2
251190362.00.0
501130326.0-1.4
751081298.0-4.4
1001039275.0-9.3
1251003257.0-16.3
150972241.0-25.4
175944228.0-36.8
200919216.0-50.6
225896205.0-67.0
250875195.0-86.1
275855186.0-108.1
300835178.0-133.0
325817171.0-161.0
350800163.0-192.3
375784157.0-227.0
400768150.0-265.2
425752144.0-307.4
450737139.0-353.1
475723133.0-402.9
500709128.0-456.7

銃口を離れた弾が25ヤードでサイトの高さまで上昇し、その後下降するという弾道曲線を描いているのが確認できます。

上の表はヤード表記ですが、同一条件のメートル法バージョンも以下に用意しましたので、参考にしてください。

9mmルガーの弾道データ(メートル)

弾頭重量 115 gr / 初速 384 m/秒

弾道係数 0.158 / サイト高 4.3mm / 25メートルゼロ

距離
(メートル)
弾速
(メートル/秒)
マズルエナジー
(ジュール)
弾道曲線
(センチメートル)
0384549.0-0.4
25361485.00.0
50341434.0-4.4
75325394.0-14.0
100312363.0-29.4
125301337.0-52.1
150291316.0-80.8
175282297.0-116.9
200275281.0-162.5
225267266.0-215.0
250261253.0-276.1
275254241.0-349.3
300248229.0-429.7
325242219.0-520.4
350237209.0-625.8
375232200.0-738.9
400227191.0-864.6
425222183.0-1007.3
450217175.0-1158.2
475212168.0-1323.8
500208161.0-1502.6

もしピストルのサイトを100メートルに合わせたらどうなる?

ピストルは25メートル/25ヤードが最適とします。

では、もしピストルを100メートルでゼロインするとどうなるでしょうか?

結果はこのようになります。

9mmルガーの弾道データ(メートル)

弾頭重量 115 gr / 初速 384 m/秒

弾道係数 0.158 / サイト高 4.3mm / 100メートルゼロ

距離
(メートル)
弾速
(メートル/秒)
マズルエナジー
(ジュール)
弾道曲線
(センチメートル)
0384549.0-0.4
25361485.07.4
50341434.010.6
75325394.08.3
100312363.00.2
125301337.0-14.8
150291316.0-36.3
175282297.0-65.0
200275281.0-101.6

100メートル先のターゲットには命中可能ですが、50メートル先のターゲットを狙うと、狙った場所より10.6cmも上に命中します。

また同じ条件で50メートルでゼロインした場合では、25メートル先のターゲットを狙うと2.2cm上に命中します。

2.2cmの差は人間大ターゲットに命中させることは可能ですが、最適とはいえません。

特に、環境によっては距離が遠くなるほど横風で弾が流されやすくなるため、あえて50~100メートルでゼロインする必要はないでしょう。

勿論、ピストルで長距離を狙うのも面白いですが、弾道学的には9mmルガーは25メートルゼロインが実用的かつ合理的です。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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