
狩猟用ライフル(ハンティングライフル)は、一般的に軍隊の制式装備としては採用されていません。これは、戦闘で必要とされる性能を満たしていないためです。
一部の狩猟用ライフルは軍用銃の設計に影響を与えたり、スナイパーライフルとして採用されたりした例もあります。しかし、基本的には狩猟用銃と軍用銃では設計思想が大きく異なります。
軍用ライフルと狩猟用ライフルの設計思想の違い
軍用ライフルの特徴

軍用ライフルは戦闘用に開発されており、過酷な環境下でも確実に作動する耐久性と信頼性を重視しています。
また、モジュラー構造を採用し、任務に応じて部品やアクセサリー類(光学照準器、ライト、レーザー、サプレッサーなど)を簡単に交換できる柔軟性があります。
多くはセミオート/フルオートを切り替え可能な機能が備わっており、素早いリロードが可能で、大容量のマガジン(一般的に20~30発)を装備します。これにより、複数の敵と継続的に交戦することができます。
使用弾薬は、国際法に準拠したフルメタルジャケット(FMJ)弾などを使用し、貫通力と安定した弾道を重視します。
こちらの記事でアサルトライフルについて詳しく解説しています。
狩猟用ライフルの特徴

狩猟用ライフルは民間での使用を前提とし、野生動物を狩るために設計されています。精密射撃を重視し、携行性を高めるために軽量化されているのが特徴です。
多くはボルトアクション式または単発式で、引き金の感触(トリガープル)や射撃姿勢時の安定性に重点が置かれています。
使用弾薬は、着弾時に拡張する弾頭(ソフトポイント弾やホローポイント弾)を使用し、目標に対して高いストッピングパワーを発揮します。
一方で、速射性能や過酷な環境下での耐久性は軍用銃に劣ります。
例外的な採用例

高威力の狩猟用ライフル(いわゆる「エレファントガン」)が、かつて対物射撃や狙撃用途で使われたこともあります。
第一次世界大戦中、イギリス軍とドイツ軍は、厚い鋼板で防御されたスナイパーシールドを突破するためにエレファントガンを転用しました。当時の歩兵用ライフルでは貫通できない防弾板も、ニトロ・エクスプレス弾を使用する大口径ライフルなら撃ち抜くことができ、隠れた狙撃兵を無力化できました。
第二次世界大戦では、東アフリカ戦線においてイタリア軍がエレファントガンを再び使用しました。対戦車火器を持たない状況で、狩猟銃を軽装甲車両への対抗手段として転用したのです。性能は限定的でしたが、軽装甲目標に対して一定の効果を発揮しました。
エレファントガンは近距離で強力な威力を発揮しましたが、反動の大きさや装弾数の少なさ、連射性の欠如といった欠点も多くありました。
やがて、より実用的な対戦車ライフルや対物ライフル(例:ボーイズ対戦車ライフル、ラハティL-39)が開発され、これらがエレファントガンの役割を引き継ぎました。
こちらの記事で狩猟用ライフルについて詳しく解説しています。
歴史的・特殊な採用例

商用ライフルや狩猟用ライフルが軍で使われた例はいくつか存在します。
代表的な例として、レミントン700やウィンチェスターM70などのボルトアクション式狩猟用ライフルが挙げられます。
これらは高い精度と信頼性を評価され、スナイパーライフルとして採用されました。

M40は、アメリカ海兵隊(USMC)が使用するボルトアクション式狙撃銃で、1966年にベトナム戦争中に導入されました。狩猟用ライフルとしても有名なレミントン社のボルトアクションライフル「モデル700」をベースに、バージニア州クアンティコ海兵隊基地のガンスミスによって軍用狙撃銃として改修されたものです。
弾薬は7.62×51mm NATO弾(.308ウィンチェスター弾)を使用し、初期型では固定式5連マガジンを採用していました(後期型では着脱式マガジンに変更)。
M40は数十年にわたり海兵隊の主力狙撃銃として使用され、堅牢性・精度・整備性の高さで高く評価されています。すべてが専門のガンスミスによって手作業で組み立てられ、ベトナム戦争以降も長く前線で運用されました。


また、もともと狩猟用として設計されたウィンチェスター1897やレミントン870といったショットガンも軍に採用されています。
レミントン870はベトナム戦争やローデシア紛争、レバノン内戦、イラク戦争、アフガニスタン紛争などで使用されました。主な運用用途は近接戦闘、突入用のブリーチング(ドア破壊)、および暴動鎮圧です。特殊部隊や歩兵部隊での近接装備として広く用いられてきました。
軍用モデルは耐久性を重視して設計されており、短い銃身長(例:18.5インチ=約470mm)やシンセティック(合成素材)のストックを採用するモデルがあります。
手動のポンプアクションはバックショット、スラッグ、非致死弾など多様な弾種で安定して作動し、構造が単純で整備が容易な点も評価されています。

一方で、レバーアクション式ライフルは軍用としてはほとんど採用されませんでした。

これは、構造上の脆弱性や、チューブマガジンによる弾頭形状の制限(フラットノーズ弾 / 平頭弾を使用しなければならない安全上の理由)が原因です。その結果、弾道性能や信頼性の面で不利だったためです。
しかし、過去を遡れば19世紀から20世紀初頭にかけて実際に戦争で使用された歴史があります。
最初の本格的な採用例は、南北戦争におけるスペンサー連発銃とヘンリーライフルです。どちらもレバー操作で装填する仕組みを持ち、当時主流だった前装式銃に比べて、はるかに高い連射性能を発揮しました。特にスペンサー銃は、着脱式マガジンを装備した軍用小銃としてアメリカ軍に正式採用されました。
その後、ウィンチェスター社が改良を重ねたモデル1866やモデル1873をはじめ、モデル1886、1892、1894、1895などの各種レバーアクションライフルが登場しました。これらはアメリカ国内だけでなく、オスマン帝国やフランスなどの国々でも試験・採用が行われ、第一次世界大戦ではイギリス、フランス、ロシアが軍用モデル1895を前線や補助部隊で使用しています。
さらに1930年代のスペイン内戦でも、ソ連が供与したウィンチェスター系ライフルが共和国側の非正規部隊に使用されました。
しかし、無煙火薬と高圧な弾薬を使用するボルトアクション式が登場すると、レバーアクションは次第に軍用銃としての地位を失っていきました。複雑な構造や耐久性の問題により、近代戦の過酷な条件には適さなかったためです。
こちらの記事で軍用ショットガンを含む射程距離について解説しています。
まとめ
| 項目 | 狩猟用ライフル | 軍用ライフル |
|---|---|---|
| 主な用途 | 狩猟、精密射撃 | 戦闘、制圧、多用途 |
| 発射モード | ボルトアクションまたはセミオート | セミ・バースト・フルオート選択式 |
| 弾薬 | 拡張弾頭(ソフトポイント弾など) | フルメタルジャケット(FMJ)弾 |
| 重量・構造 | 軽量で快適性重視 | 耐久性・モジュール性重視 |
| アクセサリー | 最小限または非搭載 | スコープやレール装備が一般的 |
| 射撃特性 | 長距離精密射撃に特化 | 中〜長距離での汎用性重視 |
狩猟用ライフルと軍用ライフルは、外見が似ていても目的と設計思想が根本的に異なります。
狩猟用ライフルは精度と扱いやすさを追求した「スポーツ用銃」であり、軍用ライフルは耐久性と火力を重視した「戦闘用銃」です。
両者はそれぞれの用途に最適化されており、重なるのはスナイパー任務のようなごく限られた場面のみです。







