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強装弾、ホットロード、オーバーロード、+Pの違いを解説

強装弾」「ホットロード」「オーバーロード」「+P」などの銃器用語があります。

弾薬(カートリッジ)の装薬量に関係する用語ですが、これらの意味を解説します。

弾薬の基本構造

銃に使用される弾薬(カートリッジ)は、装填される装薬量によって弾速腔圧(銃身内や薬室内の圧力)が変化します。

装薬量を増加させると大きなパワーを得られる傾向がありますが、過剰な装薬量は銃の反動を大きくしたり、銃の破損や破裂事故に繋がる恐れがあります。

弾薬の構造は、薬莢(ケース)の中に装薬(火薬)を入れ、弾頭で蓋をする構造になっています。

薬莢の底には雷管(プライマー)が備わっており、銃の撃針(ファイアリングピン)が雷管に打撃を与えると圧力により雷管内の火薬が撃発します。

これにより装薬に引火し、高圧ガスが発生することで弾頭が圧力に押されて発射されます。

画像出典:cheaperthandirt.com

薬莢先端は厚みが薄く、反対に後端は厚みがあります。

発射時には薬莢先端が膨張することで発射ガスが後方へ逃げるのを防ぎ、強い圧力が加わる薬莢後端を厚くすることで強度を得ています。

薬室や薬莢は耐えられる圧力に限界があり、限界を超えると破損するため、限界を超えない安全なレベルの装薬量や適切な燃焼速度の装薬を使用する必用があります。

ホットロードとは?

ホットロード(Hot load)とは、通常より多く装薬が充填された、高圧を発生する弾薬です。

具体的な定義は無く曖昧な用語ではありますが、一般的にロードデータ(装薬の種類や量を提供するレシピ)やSAAMIが示す最大腔圧に近い圧力を発生させる弾薬は「ホットロード」と呼ばれる傾向があります。

SAAMI(Sporting Arms and Ammunition Manufacturers’ Institute/スポーツ用武器・弾薬製造者協会)は、1926年にアメリカ連邦政府によって発足した団体で、弾薬の基準や互換性など安全のための技術情報を提供しています。

画像出典:quora.com

9mm弾を例に挙げると、一般的に重さ5~6グレイン(1グレイン=0.0647989グラム)の装薬が使用されています。

装薬には様々な種類やブランドが存在し、目標とする弾速や腔圧を得るために、必要な装薬の種類や装薬量が異なります。

弾頭重量115グレインの9mm弾の場合、「Blue Dot」という装薬を使用したとき最大(MAX)で装薬重量8.5グレインになります。そして、「AutoComp」という装薬を使用したとき最大で5.5グレインになり、これら両者共にホットロードの状態です。

「Blue Dot」が8.5グレイン装填された薬莢内は完全に装薬で埋まった状態になりますが、「AutoComp」が5.5グレイン装填された薬莢内の35%は空洞(エアスペース)です。

このように、「ホットロード=装薬が満杯に詰まった状態」ではなく、装薬の種類によってホットロードとなる装薬量が異なります。

+P(プラスP)とは?

拳銃弾の画像

9mm+P」や「9mm+P+」のように、弾薬の名称の後ろに「+P」や「+P+」の表示が追加されることがあります。

これは通常より腔圧が高い弾薬を意味します。

例外はありますが、一般的に「+P」は通常より10%前後高圧で、「+P+」は10~25%高圧な弾薬です。

弾薬通常腔圧
(psi)
+Pの腔圧
(psi)
増加割合
.38 SPL17,50020,00014.29%
.38 ACP26,50036,50037.74%
9 mm35,00038,50010%
.45 ACP21,00023,0009.52%

ちなみに、NATO軍規格の9mmNATO(弾頭重量124グレイン)は36,500 psi(プルーフテストでは45,700 psi)で、民間の「9mm+P」に相当します。

注意したいのは、必ずしも「高圧=威力が強い」ではありません。

発生するパワーの大きさは弾頭重量や弾速などの条件によって異なります。

また、「+P」や「+P+」は銃に負荷を掛けるため使用には注意が必要となり、これら高圧の弾薬に対応する銃はモデルによって異なります。

自動車に例えると「+P」は急ブレーキと急発進を繰り返すようなもので、日常的に「+P」を使用することは推奨されません。

普段の射撃練習用に通常弾を使用し、護身用として携帯する際に「+P」を装填するといった使い分けが一般的です。

また、サブマシンガンに使用される弾薬は高圧な方が作動の信頼性が高いため、「+P」との相性が良いとされます。

オーバーロードとは?

オーバーロード(Overload)とは、ロードデータの限界値を超えた装薬量が装填された状態です。

例として、弾頭重量115グレインの9mm弾に「HS-6」という装薬を装填したとき、ロードデータでは最大(MAX)7.1グレインのため、7.2グレイン以上装填するとオーバーロードになります。

ロードデータで示されている最大値は安全に使用可能な範囲の限界値であるため、これを超えると危険です。

通常の2倍の装薬量を装填することを「ダブルロード」、3倍装填することを「トリプルロード」と言いますが、トリプルロードは薬室が破裂する確率が高いといえます。

強装弾とは?

強装弾とは、通常より高圧な弾薬を意味します。

「ホットロード」「+P」「+P+」はどれも強装弾です。

しかし、強装弾はオーバーロードではありません。

【質問と回答】腔圧の限界とは?

強装弾について質問したいのですが、薬莢と銃身を損傷しない範囲で、どこまで強化できるものなのでしょうか?
そうした限界まで増強した強装弾の事例があれば聞きたいです。
もう少し具体的に言うと、9x19mmパラベラム弾の「寸法」で、44マグナム弾の初活力(1000~2000J)を出す事は可能なのか、撃ちやすさは置いといて、可能性についてちょっと聞いてみたいです。

条件を設定しないのであれば、理論上は9mmで.44マグナム並みのマズルエナジーを出すことも可能です。

・・・とはいえ、.44マグナムにも様々な種類が存在し、マズルエナジーが500ft-lbfの.44マグナムが存在する一方、1,400ft-lbfの.44マグナムも存在するため、どのブランドの弾薬と比較するかによって異なります。

画像出典:cheaperthandirt.com

装薬には様々な種類が存在します。9mmで通常のマズルエナジーを発生させようとする場合、装薬Aを使用すると薬莢の容量の50%を占め、装薬Bを使用すると容量の100%を占めることがあります。

そのため、装薬の種類によっては装薬が入る物理的スペースが足りないことから、腔圧を上昇させることが難しい場合があります。

また、装薬は圧力と時間のバランスが重要になります。

圧力と時間の関係画像

この図は、発射時の腔圧の状態を表しています。

撃発によって装薬が燃焼すると、圧力が急上昇し、時間の経過とともに圧力が緩やかに低下します。

安全に発射するためには、最大圧力(ピークプレッシャー)が「銃身が耐えられる圧力」を下回る必要があり、それを超えると銃身が破裂します。

そのため、高圧な弾薬を作っただけでは意味がなく、その圧力に耐えられる銃が必要になります。

狭いスペースで高圧を発生させるには、燃焼速度が速い装薬を詰め込むと達成可能ですが、高圧になりすぎて破裂に繋がります。

一方、高圧になりすぎない範囲で弾速を加速させて高いマズルエナジーを得る方法では、弾頭が加速中に継続的なガス圧をゆっくり供給する必用があり、それには「燃焼速度の遅い装薬」「多い装薬量」「長い銃身」が必要になります。

9mm弾の画像
画像出典:Wikipedia

アメリカのテキサス州に存在する「RBCD Performance Plus」というメーカーは、マズルエナジーが539ft-lbf(731J)になる9mm弾を販売しています。

「通常より高圧」といわれる9mmNATO弾が約413ft-lbf(530J)のため、どれだけマズルエナジーが大きいかが分かります。

このRBCDの9mmは弾頭重量が60グレインという軽量弾で、2,010 fpsという高速で発射されます。

運動エネルギーは、「弾頭重量 x 初速の二乗」になるため、弾速が速いほどマズルエナジーは大きくなります。

しかし、ここで誤解してはいけないのは、「マズルエナジーが大きい=殺傷力が大きい」ではありません。

弾頭が高速で着弾しても、衝撃で弾頭がバラバラに砕け散るとエネルギーが拡散され、対象に対してエネルギーを伝えられない場合があります。

そのため、弾薬の効果を高めるには「マズルエナジーのみ」に注目するのではなく、弾頭重量や弾頭の設計も考慮する必用があります。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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