アメリカでは大砲の個人所有は可能ですか?
いわゆる骨董品ではなく第二次大戦クラスの実用品です。
アメリカで個人所有の105mm榴弾砲が試射したところ目標を外して民家に着弾したという話を聞いて質問させていただきます。
目標を外してしまったのは榴弾砲の特性によるのでわかりましたが、いまだ戦争で使われている榴弾砲を使用可能な状態で所有できるのだとしたら驚きます。
州によっては民間人も大砲を所有可能です。
大砲は連邦法で「デストラクティブ・デバイス」のカテゴリーに含まれ、州によって規制内容が異なります。
以下購入方法の解説ですが、実際に購入の際は自己責任でお願いします。
デストラクティブ・デバイス(Destructive device/DD)とは?
デストラクティブ・デバイスは直訳すると「破壊的装置」で、銃器や爆発物の法律上のカテゴリーを指します。
1934年に銃規制法「ナショナル・ファイアーアームズ・アクト(NFA1934)」で施行され、1968年に「ガン・コントロール・アクト(GCA1968)」で改訂されました。
グレネードランチャー、榴弾、大砲、砲弾、迫撃砲、ロケットランチャーの他、銃器ではストリートスイーパー・ショットガンや20mm対戦車ライフルも「デストラクティブ・デバイス」となります。
以下の条件がデストラクティブ・デバイスとして定義されます。
- 重さ4オンス(約113g)以上の推進薬を使用するロケット弾(毒ガス弾、爆弾、りゅう弾)
- 重さ1/4オンス(約7g)以上の爆発物や焼夷剤を含むミサイル、地雷など
- 飛翔体を発射できる内径0.5インチ(.50口径/12.7mm)より大きな口径を持つ武器
- デストラクティブ・デバイスに転換できるよう設計されたパーツ
ただし、以下は例外としてデストラクティブ・デバイスから除外されます。
- スポーツ用として司法長官に認められたショットガンまたはショットガンシェル
- 武器として使用するために設計されていない装置
- 信号銃、花火、ライン投射装置などの装置
- 陸軍長官の許可の元、放出された軍用品やアンティークの青銅製や鉄製の大砲
- 司法長官に認められた武器として使用されないと推定される装置
- アンティーク銃
- スポーツ用として使用されるライフル
アメリカでのデストラクティブ・デバイス登録数
デストラクティブ・デバイスは2014年の時点で登録数2,246,422件となっており、銃規制の緩い州ほど登録数も多い傾向があります。
ただし、全米一銃規制が厳しいといわれるカリフォルニア州は例外で、230,410件のデストラクティブ・デバイスが登録されていますが、ハリウッドによる登録が多いので他州とは状況が少し異なるでしょう。
日本から見れば驚くような登録数ですが、登録されたデストラクティブ・デバイスが犯罪に使用されることはほとんど無く、むしろ見た目が軍用ライフルのセミオートマチック・ライフルの方が問題視されています。
詳しい統計はこちらからPDFをダウンロードできます。
大砲を探す
大砲は通常のガンショップでは扱っていないので、まず最初に所有者を探さなければなりません。
オークションサイトのGunBroker.comではデストラクティブ・デバイスも扱っており、出品者から直接購入できます。
こちらのボフォース 37mm対戦車砲は33,500ドル(約374万円)で出品されています。
こちらのM1 57mm対戦車砲は56,000ドル(約626万円)で出品されています。
登録と税金
購入を決めたら所有者と連絡を取って手続きと支払いを進めてください。
しかしその前に、デストラクティブ・デバイスを購入するにはATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)に登録する必要があります。
これは申請書類のATF Form4です。
デストラクティブ・デバイスを譲渡する場合、トランスファー費用として200ドルの税金が掛かります。クレジットカードやデビットカードなどを使用してATFに支払い、書類に添付されるTAXスタンプを購入しましょう。
マシンガンやグレネードランチャーなどクラスIIIのカテゴリーに入る武器も同様に200ドルの税金が掛かる他、大砲の砲弾やグレネードランチャーのグレネードなどの実弾にも一発ずつ、それぞれに200ドルの税金が掛かります。
しかし一発撃つごとに200ドルの税金は高価なので、実際には税金の掛からない練習弾を使用して発射を楽しむオーナーが多いようです。(それでも火薬代だけで数千円~数万円ですが)
支払いと発送
手続きが終わったら大砲の発送手続きが必要ですが、発送先は自宅というわけにはいきません
元の所有者は購入者の近くのFFL(フェデラル・ファイアーアームズ・ライセンス)を持つディーラーに発送(トランスファー)し、そのディーラーから購入者が受け取ります。
ただし、ディーラーによっては所有するFFLのタイプによって年間に処理できるデストラクティブ・デバイスの数が制限されていることもあるので、引き受けが可能かどうか事前確認が必要です。
デストラクティブ・デバイスを扱えるFFLのタイプにはタイプ1~タイプ11があり、「タイプ9(DDディーラーライセンス)」「タイプ10(DD製造ライセンス)」「タイプ11(DD輸入ライセンス)」のFFLを持つディーラーであれば間違いなく引き受けてもらえるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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