
ご質問を頂きました。
グロック25は、ローエンフォースメント専用であると、グロックのカタログにありますが、威力の低い.380なのに、なぜ一般には販売されないのでしょうか。
外国製のハンドガンをアメリカ国内に輸入するには、法律で定められた指定の条件を満たす必要があります。グロック25はその条件を満たさないため、輸入できません。
しかし、法執行機関は例外として輸入可能なため、法執行機関が民間人にグロック25を売れば、民間人でも所有可能です。
この条件は輸入時にのみ課せられるため、正規の手続きを経て輸入されたグロック25の所持や売買は合法となります。
グロック25がアメリカで販売されない理由

グロック25の外見は普通のピストルですが、輸入が規制されています。
これはグロック25に限ったことではなく、グロック28やワルサーPPKも輸入不可となっています。
ワルサーPPKは、PPK/Sが製造されたことにより条件が満たされ、現在アメリカでは輸入されたPPK/Sと、アメリカ国内(ワルサーアームズ)で製造されたPPKが流通しています。
ピストルの輸入条件

1968年に制定された銃規制法「ガン・コントロール・アクト1968(GCA68)」により、アメリカ国内へ輸入されるハンドガンが規制されました。
これは、安価な銃(いわゆるサタデーナイトスペシャル)がヨーロッパから大量に輸入されることを懸念し、犯罪抑止を目的として制定された法律です。
すでにアメリカ国内の銃器メーカーは同様の銃を製造しているように、この法律で輸入規制対象となっているハンドガンと全く同じスペックのハンドガンをアメリカ国内で製造、所持、売買することは合法であり問題ありません。あくまで外国製品が対象です。
輸入条件は点数制となっており、ピストルは計75点以上、リボルバーは計45点以上であれば輸入可能です。
ピストルは、全長と全高を足して10インチ以上(全長6インチ以上、全高4インチ以上)であることが最低条件となっています。
ピストルのスペック | 点数 ※合計75点以上が必要 |
---|---|
全長:6インチ以上(以降1/4インチごとに1点) | 1 |
フレーム構造:インベストメント鋳造鍛 / 鍛鋼 | 15 |
フレーム構造:インベストメント鋳造鍛 / HTS合金 | 20 |
重量:(空マガジン付き)(1オンスごとに1点) | 1 |
口径:.22ショート / .25オート | 0 |
口径:.22LR / 7.65mm~.380オート | 3 |
口径:9mmパラべラム以上 | 10 |
安全機能:ロックドブリーチ | 5 |
安全機能:ローデッドチャンバー・インディケーター | 5 |
安全機能:グリップセイフティ | 3 |
安全機能:マガジンセイフティ | 5 |
安全機能:ファイアリングピンブロック(ロック) | 10 |
エクスターナル(外部)・ハンマー | 2 |
ダブルアクション | 10 |
ドリフトアジャスタブル・ターゲットサイト | 5 |
クリックアジャスタブル・ターゲットサイト | 10 |
ターゲットグリップ | 5 |
ターゲットトリガー | 2 |
グロック25をこの条件に当てはめると、以下のようになります。
- 全長:187 mm / 7.36 in. 5点
- 重量:640 g / 23.30 oz 23点
- 口径:.380ACP 3点
- ロックドブリーチ 5点
- ファイアリングピンブロック 10点
- ダブルアクション 10点
- ターゲットサイト 10点
- ターゲットグリップ 5点
計71点となり、条件の75点を満たさないため輸入できません。
リボルバーの輸入条件

リボルバーの場合は、ピストルとは少し条件が異なります。
最低条件として、セイフティーテストをクリアし、銃身長3インチ以上、フレーム長4.5インチ以上が必要です。
セイフティーテストの条件とは、ダブルアクションにはトランスファーバーのような自動的に作動するインターナルセイフティ(内蔵型安全装置)が必須となり、加えて落下テストに合格することです。
落下テストの内容は、バレルとハンマーが直線上に、地面に対して直角で、高さ36インチ(約91センチメートル)から5回落下させて撃発しないことを確認します。
つまり、銃口から落としてハンマーやファイアリングピンがプライマーを叩かなければ合格です。
リボルバーのスペック | 点数 ※合計45点以上が必要 |
---|---|
銃身長:4インチ未満 | 1 |
銃身長:4インチ以上(以降1/4インチごとに0.5点) | 1/2 |
フレーム構造:インベストメント鋳造鍛/鍛鋼 | 15 |
フレーム構造:インベストメント鋳造鍛/HTS合金 | 20 |
重量:(アンロード時)(1オンスごとに1点) | 1 |
口径:.22ショート / .25ACP | 0 |
口径:.22LR / .30~.38S&W | 3 |
口径:.38スペシャル | 4 |
口径:.357マグナム以上 | 5 |
ドリフトアジャスタブル・ターゲットサイト クリックアジャスタブル・ターゲットサイト | 5 |
ターゲットグリップ | 5 |
ターゲットハンマー/ターゲットトリガー | 5 |
リボルバーはインターナルセイフティと落下テストが必須のため、安全装置関連の項目が点数化されていません。
また、リボルバーは銃身長3インチ以上が条件となっているため、スナブノーズのリボルバーは輸入できません。
それでも、どうしても欲しいというコレクターは、法執行機関から民間市場に放出されたモデルを探すか、あるいは規制法が施行された1968年より前に輸入されたモデルを探す必要があります。
一部モデルがLEオンリー(法執行機関限定販売)になった理由
法規制以外の理由として、法執行機関限定販売(LEオンリー)になることがあります。
具体的な例として、グロックの第4世代(Gen4)では、9mm口径と.40S&W口径のモデルが2020年ごろにLEオンリーに転換されました。
グロック社はすでに第5世代(Gen5)の製品を販売しており、第3世代や第4世代のモデルを廃止し、経営的な観点から第5世代に生産を集中させたいという考えがあります。
ただし、第4世代は法執行機関で広く採用されており、契約や予算の都合から、第5世代に簡単に切り替えられない法執行機関も存在します。そのため、グロック社は法執行機関をサポートするために9mmと.40S&Wの第4世代モデルをLEオンリーとし、一般の販売を終了しました。
このため、一部のグロックピストルが一般市場に提供されない背景には、法執行機関向けに特化した方針が影響しています。
一方で、第3世代のグロックがなお一般市場に残っている理由は、カリフォルニア州の法規制が影響しています。
第3世代は以前、カリフォルニア州で販売が許可されていましたが、新しい法律によりマイクロスタンプのないピストルの販売が制限されました。
マイクロスタンプは銃の発射元を特定する技術で、製造コストや政治的な問題から、グロック社は新しいモデルの販売を諦め、当時州内で許可された第3世代のモデルのみを生産し続けています。
マイクロスタンプとは、銃のファイアリングピン/ストライカー(撃針)の先端に銃の情報を彫り込み、薬莢のプライマー(雷管)に、「どの銃から発射されたか」という情報を自動的に打刻する仕組みです。この情報は犯罪捜査に利用されます。