映画「ダイ・ハード」でハンス・グルーバー役を演じたアラン・リックマンが亡くなりました。
世間では「ハリポタのスネイプ役」と紹介されますが、自分にとってはハンス・グルーバー役のイメージが強く感じられます。
私はダイ・ハードの大ファンで、当サイト名「HB-PLAZA」も、映画の舞台となった「ナカトミ・プラザ」から貰いました。好きな作品なので訃報にショックを受けています。
恐らく、この作品に出合わなかったら鉄砲趣味を続けていなかったでしょう。
心よりご冥福をお祈りします。
ハンス・グルーバーとH&K P7M13
ハンスグルーバーが所持する銃は、H&K P7M13のクロームモデル。
P7自体が絶版品なので、近年アメリカでは市場価格が年々上昇しています。
使用サプレッサーは、珍しいバレルの内側にネジを切っているタイプ。容量が小さいので現実には減音効果は少ないでしょう。
暗闇のシーンが多いからシルバーの銃を選択したのでしょうか? あらゆるシーンで映える存在でした。
私がエアガンメーカーの中の人だったとき、社内では「光り物(シルバーの銃)は売れる」と言われていましたが、やはりシルバーは人の目を引きやすいと思います。
これを見なければクリスマス気分になれない名シーン。
ハンス・グルーバーの落下地点であり、パウエル巡査がテロリストからM60E3の掃射を受けた場所。
LAを訪れたら必ず立ち寄るのが「ナカトミ・プラザ(Fox Plaza)」です。ロビーの前に屋根が付いたりと、月日が経つと少しずつ風景が変わっています。ロビー内に入ってみると映画の雰囲気そのままですが、警備員が居た円形のテーブルは無く、セットのようです。
この二軒隣りのホテル「センチュリー・プラザ」では、映画「リーサルウェポン2」のプール落下シーンが撮影されました。この地域は落下シーンで有名かも?
H&K P7M13
P7最大の特徴は、やはりスクイズコッカーと呼ばれる機能でしょう。
一般的なピストルはスライドを引いてハンマーやストライカーをコックしますが、P7ではグリップを握ってフロントストラップが引かれるとファイアリングピンが後退し撃てる状態となります。
もし不発が起きても、グリップを握るだけでストライカーがコックされ、再度撃発をトライできます。
また、グリップを離してフロントストラップが元の位置に戻るとストライカーがデコックされ、トリガーを引いても撃発しなくなります。
この操作方法は一般的なピストルと異なるため、使用には慣れが必要です。
1911ピストルにもサードパーティーのパーツで専用スクイズコッカーが販売されましたが、構造が複雑なため以後このシステムは流通しませんでした。もはや過去のシステムといえるでしょう。
P7のスライドストップは少し分かりづらい場所にあります。
上図はP7のフレーム分解図ですが、部品番号26番がスライドストップです。マガジンキャッチ(50番)の隣に配置され、フレーム側に押し込むとスライドストップが上昇してスライドをホールドオープンさせることができます。
作動方式はガスディレードブローバック方式を採用。
撃発し弾が発射されるとチャンバー前方の穴からガスシリンダー内にガスが流入します。スライドとピストンは連結されており、ガス圧が低下するまでピストンを前へ押し出しているためスライドは後退できません。
そしてガス圧が低下すると膨張した薬莢が収縮して引き抜ける状態となり、スライドが後退して排莢されます。
デザートイーグルもバレルの下にピストンが備わっていますが、デザートイーグルでは発射ガスがピストンを押してスライドを後退させるのに対し、P7では逆にピストンを後退させないためのシステムとして利用されています。
シリンダーとピストンを用いたピストルのガスディレードブローバック方式は、連続射撃を繰り返すとフレームが過熱しやすく、射手にとってあまり快適とはいえません。
H&K P7のバリエーション
最後に、ざっくりとP7シリーズのバリエーションを追ってみます。
1970年に国民ピストルとして登場したVP70ですが、のちに登場したのが同じく9mm口径のH&K PSPでした。PSPとは「警察自動拳銃」の略称で、素早く撃てるピストルを要求したドイツ警察に応えたモデルです。
こちらはP7M8です。P7M13の装弾数が13発なのに対し、M8は8発です。例外はありますが、P7シリーズは大抵P7の後ろのナンバーが装弾数なので覚えやすいでしょう。
M13と比較してM8は装弾数が犠牲になりますが、M8の方がグリップ形状がスリムで握りやすいと評判です。
他には、以下のモデルが存在します。
- P7M45 アメリカ市場を狙った試作品。口径.45ACPと強力なためシリンダー内がオイルで満たされたオイルダンパーを使用。ピストンには穴があり、オイルの抵抗を調整していた。
- P7M7 口径.45ACPで装弾数7発。少数製造のレアモデル。
- P7M10 口径.40S&Wで装弾数10発。基本的にM13と同じものの、耐久性アップのためにスライドの重量が増加した。
- P7PT8 装弾数8発の非致死性9mmPTトレーニングカートリッジ(プラスチック弾)を使用する訓練用ピストル。集弾率は8mで10cmと意外と良い。
そしてこちらはP7K3です。
スクイズコッカーを装備していますが、装弾数8発の.380ACPとなり、作動方式はガスピストンを廃止してオーソドックスなストレートブローバック方式となりました。
オプションで.22LRコンバージョンキットも使用できます。
今回はダイ・ハードについて語ろうと思っていたら、いつの間にかP7の話だけで終わってしまった・・・。
またの機会に「なぜダイ・ハードは素晴らしいのか」を延々と語らせていただきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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