
ガトリングガン、バルカン砲、ミニガン、マイクロガンは、いずれも複数の銃身を回転させることで「高い発射速度を実現しつつ、銃身の過熱を最小限に抑える」という構造の火器です。
本記事では、これらの違いについて解説します。
ガトリングガン、バルカン砲、ミニガンの違い
ガトリングガン、バルカン砲、ミニガン、これら3つの兵器は、リチャード・ガトリングによって考案された回転銃身のデザインを利用していますが、技術や用途がそれぞれ異なります。
ガトリングガンは19世紀の手動式兵器である一方、バルカン砲とミニガンは現代のオートマチック・ウェポンとして、異なる口径や用途で利用されています。
項目 | ガトリングガン | バルカン砲 | ミニガン |
---|---|---|---|
時代 | 1862年~現在 南北戦争以降 | 1946年~現在 第二次世界大戦後 | 1959年~現在 ベトナム戦争以降 |
開発者 | リチャード・ガトリング | ゼネラル・エレクトリック | ゼネラル・エレクトリック |
動力 | 手動クランク (後に電動化) | 電動、油圧、空圧 | 電動 |
発射速度 | 毎分約200~900発 | 毎分4000~6,000発 | 毎分2,000~6,000発 |
口径 | .30~.50口径 7.62~12.7 mm | 20 mm | 7.62 mm |
射程距離 | 1000 m | 1000~2000 m | 1000~1500 m |
用途 | 歩兵支援 | 戦闘機用機銃 CIWS | ヘリコプター搭載 地上車両搭載 |
標的 | 対人、対物 | 対空、対地 | 対人、対物 |
撃発方式 | 撃針 | 電気式発火 | 撃針 |
重量 | 77~170 kg | 92~112 kg | 19~39 kg |
ガトリングガンが初めて実戦で使用されたのは南北戦争で、少人数の兵士で大きな火力を持つことで、大規模な部隊の必要性を軽減する目的がありました。
バルカン砲は、主にF-15イーグルやF-16ファイティングファルコンなどの固定翼航空機に搭載されており、1950年代以降、M61バルカンは米軍の航空機の標準装備となっています。(現代のF-22ラプターに使用されるM61A2など、軽量化されたバージョンも存在)
ミニガンは、ヘリコプターや地上車両に搭載可能なコンパクト設計で、高い発射速度と信頼性から制圧射撃に広く使用されています。(「ミニガン」という名前は、より大型のバルカン砲の小型版であることに由来)
ガトリングガン

ガトリングガン(Gatling Gun)は1861年、リチャード・ジョーダン・ガトリングにより発明され、1862年に特許が取得されました。
複数の回転する銃身を持つ機構で冷却効果を高め、装填・発射・排莢を同期的に行える仕組みです。
手動のクランク操作で銃身を回転させ、上部のホッパーから重力で弾薬を供給する構造。この設計により、過熱を抑えながら高い連射速度を実現し、連続的に発射が可能です。

ガトリングガンは、南北戦争で初めて戦闘に投入され、その後もアメリカ独立戦争、戊辰戦争、ズールー戦争、スペイン・アメリカ戦争などで使用されました。さらに、植民地戦争では先住民に対する効果的な武器としても活躍しました。
米国以外でも、アルゼンチン、ペルー、エジプト、ロシア、日本、朝鮮などで採用されました。初期モデルは黒色火薬を使用する紙薬莢を採用していましたが、後に金属薬莢に変更され、射撃速度が向上しています。
1881年には「ブルース型給弾システム」が導入され、連続射撃が可能になりました。また、1893年モデルでは電動クランクによる射撃速度の向上も試みられています。
ガトリングガンは初期の機関銃として画期的でしたが、自動化が進むにつれてマキシムマシンガンのような完全自動火器に取って代わられ、米軍では1911年に廃止されました。

現代ではチップマンアーモリー社から、グロックピストルのマガジンを使用可能な9mm口径のガトリングガンが販売されています。
バルカン砲 / M61バルカン

M61バルカン(M61 Vulcan)は、6本の砲身を持つガトリング型回転式機関砲で、油圧・電気・空圧のいずれかで駆動されます。空冷式で20mm弾を毎分6,000発という高速で発射可能です。
60年以上にわたり、アメリカの固定翼軍用機の主要兵装として採用されており、現在はゼネラル・ダイナミクスが製造しています。
第二次世界大戦後、ジェット戦闘機の高速化に対応するため、アメリカ空軍は高い発射速度と信頼性を備えた新型機関砲を求めました。ゼネラル・エレクトリックは、ガトリングガンの多砲身設計を復活させ、電力を利用することで信頼性を向上させました。また、1砲身あたりの負荷を減らすことで砲身寿命の延長も可能にしています。
1946年には「バルカン計画」として、6砲身・毎分7,200発の砲が開発され、試験を経て20mm弾を使用するM61が標準化されました。

設計 | 6砲身が回転し、1回転ごとに各砲身が1発発射。 これにより高い発射速度と砲身寿命の両立が可能。 |
駆動方式 | 主に油圧駆動で、電気点火システムを使用。 自動駆動型(ガス圧式)も存在。 |
給弾方式 | 初期型はリンク式。 その後、弾詰まりやリンクの廃棄問題を解決するためリンクレス給弾方式に改良。 |
軽量型 | F-22ラプター用に設計されたM61A2は、砲身を薄くし軽量化。 |
M61バルカンはベトナム戦争で初めて実戦投入され、多数の敵機撃墜に成功しました。戦闘がミサイル主体となった後も、近接戦闘やミサイル不足の場面で信頼性の高い兵器として採用され続けています。
また、F-15やF-16などにも搭載され、多用途性と高性能が評価されています。高発射速度を持つため、機体に搭載可能な弾薬量には制限があり、通常は1回の発射で2~50発程度のバースト射撃で運用されます。
M61バルカンは、アメリカ軍の多くの戦闘機や攻撃機、ガンシップ、爆撃機に搭載されており、日本の三菱F-1などにも採用されています。

航空機で使用されるM61バルカンは、油圧で砲身を回転させ、電気でプライマー(雷管)を撃発しています。通常のマシンガンのようにファイアリングピン(撃針)で撃発する方式は、航空機でのG(重力)負荷により不発が発生しやすいため、M61バルカンで使用される20×102mm弾ではエレクトリックプライマー(電気雷管)が採用されています。
一方、地上設置型など外部電源が使用できない場合には、ガス圧を利用した作動方式が用いられます。
装弾数は弾倉の大きさに依存し、搭載機種によってドラムの容量が異なります。例えばF-15戦闘機では940発を装填でき、約6.4秒の連続発射で弾切れになります。発射速度は毎分6,000発、有効射程は約1,000~2,000メートルです。
公式に確認されたM61バルカンによる歴史上初の撃墜は、1966年6月29日にF-105戦闘機がMiG-17戦闘機を撃墜した事例です。
ミニガン

M134ミニガン(Minigun)は、アメリカ製の7.62×51mm NATO弾を使用する6銃身の回転式機関銃で、毎分2,000〜6,000発という高い発射速度を誇ります。ガトリング式の回転銃身を持ち、電動モーターで駆動されるのが特徴です。名称の「ミニ」は大型のバルカン砲に対する相対的な大きさを示し、「ガン」は砲弾ではなくライフル弾を使用することを意味します。
ミニガンの元祖は、1860年代にリチャード・ジョーダン・ガトリングが発明した手動回転式銃です。彼は後に電動化した設計を特許取得しましたが、軽量なリコイル式やガス式機関銃の普及により一時は廃れました。その後、第一次世界大戦や1950年代の試行錯誤を経て、1960年代のベトナム戦争中に現代版ミニガンが開発されました。
M134は過熱や弾詰まりによる作動不良が少なく、ヘリコプターや航空機に搭載される兵器として活用されました。初期型はベトナム戦争で米軍が使用し、主にヘリコプターの防衛や近接航空支援で活躍しています。
1990年代にはディロンエアロ(Dillon Aero)が改良を重ね、軽量化したチタン製モデル(M134D-T)や耐久性を向上させたハイブリッドモデル(M134D-H)が開発されました。これらの改良型は、ヘリコプターや地上車両、艦船に搭載され、特殊部隊や海兵隊でも採用されています。

ミニガンは、外部電源(通常は電動)で駆動する複数の閉鎖式銃身を持ち、高速発射を可能にしています。多銃身構造により、過熱を防ぎつつ発射、排莢、装填のプロセスを同時並行で行う仕組みです。
初期型では弾薬のリンクを解除する装置が必要でしたが、改良型ではより効率的な設計が採用されています。ミニガンは米軍の各部隊で幅広く使用されており、航空機やヘリコプター、地上車両、艦船への搭載が一般的です。
また、ディロンエアロ(Dillon Aero)やガーウッド・インダストリーズ(Garwood Industries)などが改良型を生産しており、軍事以外の分野でも技術が活用されています。近年では、軽量化されたポッド型システムも開発され、さまざまなプラットフォームで運用可能になっています。
ミニガンは、その高火力と信頼性により、戦場や特殊任務で敵を圧倒する兵器としての地位を確立しています。

M134Dミニガンでは、28Vモーターとバッテリー(鉛蓄電池やリチウムイオンバッテリー)を使用して銃身を回転させ、ファイアリングピンによって弾を撃発する構造になっています。発射速度は理論上毎分最大6,000発ですが、実際の運用では毎分3,000~4,000発程度に制限されています。
ミニガンにはさまざまなバリエーションが存在します。主なものとして、米陸軍のM134、米空軍のGAU-2/AやGAU-17/A(Mk 77 MOD0)、改良型のM134D、特殊用途向けのXM196などがあります。
マイクロガン
7.62x51mm弾を使用するミニガンをさらに小型化し、5.56x45mm弾を使用する「マイクロガン」が複数存在します。
XM214

XM214マイクロガンは、アメリカで開発された試作型の5.56mm回転バレル式機関銃です。ゼネラル・エレクトリック(GE)によって設計され、M134ミニガンを小型化・軽量化したバージョンとして開発されました。弾薬にはM16ライフルと同じ5.56×45mm(M193)弾を使用します。
当初は航空機用として開発されましたが、後にGEは「GEシックスパック」と呼ばれる携帯型兵器システムに発展させました。システムの総重量は38.5kg(弾薬1,000発を含む)、銃本体は12.2kgで、2人の兵士で運搬可能です。M122三脚や車両マウントに取り付けて使用できました。
シックスパックにはXM214本体、電源モジュール、弾薬モジュールが含まれ、弾薬モジュールは500発入りの使い捨てカセット2つで構成されます。銃は柔軟な弾薬チューブを通して弾薬を供給し、カセットが空になると次のカセットに自動で切り替わり、新しいカセットが必要な場合は視覚的信号で知らせます。
電源モジュールには24Vのニッケルカドミウム電池、0.8馬力(0.60kW)のモーター、電子制御装置が搭載され、バッテリー単体では約3,000発で充電が切れます。車両電源からの供給も可能です。電子制御にはバーストリミッターや発射後の自動クリア機能が含まれ、発射速度は400~4,000発/分に調整可能です。一部記録では理論上6,000発/分、試作機では最大10,000発/分、GEのテストでは12,000発/分に達したとされています。
航空機やヘリコプター搭載用には、「5.56mmマイクロガンポッド」が開発され、1,500~3,500発の弾薬を搭載可能、重量は84~136kgでした。リンクレス供給システムを採用し、標準発射速度は6,000発/分、1,000~10,000発/分に調整可能で、電源は内蔵バッテリーまたは航空機から供給されます。
XM214の最大の利点は、M16ライフルと同じ5.56mm弾を使用できる点です。これにより米陸軍や空軍は航空機、ヘリコプター、装甲車両への搭載に関心を示しました。軽量なマイクロガンはミニガンから更新することでスペースを節約し、弾薬や装備の搭載量を増やすことが可能です。
しかし、5.56mm弾は高速射撃時の命中率が低く、7.62mmミニガンに比べ射程が短いという欠点がありました。GEは歩兵用として再提案を試みましたが、陸軍の関心を得ることはなく、1990年代にはカタログから姿を消しています。
XM556

2016年、エンプティーシェル社はコンパクトなXM556マイクロガンを開発しました。銃身長は10インチまたは16インチで、コンパクトさが大きな特徴です。5.56×45mm弾を使用し、発射速度は毎分2,000~6,000発に対応しています。M134ミニガンに比べて小型軽量化されており、高い制圧力が求められる場面で、従来の大型ガトリングガンシステムの重量や設置スペースの問題を解消することを目的としています。
XM556は、市場にある5.56mm分隊支援火器よりも小型軽量でありながら、4倍の火力を持つ設計です。M134を単に小型化したのではなく、完全に新しいプラットフォームとしてゼロから設計されており、新しいボルトデザインの採用によってM134で知られていた問題点を解消しています。この改良により、銃の寿命が延び、摩耗の軽減や弾詰まりの発生を抑えることが可能になっています。
さらに、一部のM134用マウントやアクセサリーがXM556にも適合するため、既存システムからの移行が容易です。
回転式多銃身機関銃一覧

以下は、銃身(砲身)が回転して発射するマシンガンの一覧です。
名称 | 口径・弾薬 | 国 | 開発年 |
---|---|---|---|
ガトリングガン Gatling gun | 7.62~12.7mm | アメリカ | 1861年 |
ホチキス・リボルビング・キャノン Hotchkiss Revolving Cannon | 37 mm | フランス | 1872年 |
ベイリー・マシンガン Bailey machine gun | .32口径 8 mm | アメリカ | 1874年 |
パンチェンコフ・マシンガン Panchenkov machine gun | 7.62x54mmR | ロシア | 1915年 |
フォッカー・レイムバーガー Fokker-Leimberger | 7.92x57mmマウザー | ドイツ | 1916年 |
M61 バルカン | 20x102mm | アメリカ | 1946年 |
M197エレクトリックキャノン | 20x102mm | アメリカ | 1957年 |
M134 ミニガン | 7.62x51mm | アメリカ | 1959年 |
AK-630 | 30x165mm | ソビエト連邦 | 1963年 |
XM214 マイクロガン | 5.56x45mm | アメリカ | 1966年 |
GShG-7.62 | 7.62x54mmR | ソビエト連邦 | 1968年 |
GAU-12 イコライザー | 25x137mm | アメリカ | 1971年 |
Yak-B 12.7mm | 12.7x108mm | ソビエト連邦 | 1973年 |
GSh-6-23 | 23x115mm | ソビエト連邦 | 1975年 |
GSh-6-30 | 30x165mm | ソビエト連邦 | 1975年 |
GAU-8 アヴェンジャー | 30x173mm | アメリカ | 1977年 |
GAU-19 | .50 BMG | アメリカ | 1983年 |
XM301 | 20x102mm | アメリカ | 1992年 |
WLKM 12.7 | .50 BMG | ポーランド | 2010年代 |