9mmルガーの147gr弾頭(あるいはそれに近い9mmの重量弾頭系)についてなんとなく思うところがありまして、ご教授いただけると幸いです。
高初速が自慢の9x19mmでも147grでは1000ft/secを下回るくらいですし、大口径の180~200grほど圧倒的なパンチの効いた重さではありませんし、それでいておそらくリコイルはしっかり強くなってしまうのだろうな…と考えると、どうにも単純に威力が高くて有用とは言い切れない気もするのです。
ホットロードを自作すれば重くても高速になるのかもしれませんが…公機関の官給品などは市販品そのままでしょうし、メーカーの公称スペック表を見ても、市販品レベルでは+Pですら大して初速に差はない製品がほとんどに思えます。
しかし、FBIでは官給品として147grを使っているとか、NATO仕様でも9mm-147grがあるとか、実戦向けとして定評がありそうな評判も聞きます。
一般的な市販のホロウポイント弾辺りで比較した場合、147grは124grに対してそこまで差は付くものなのでしょうか?
弾道学的性能差は、124グレイン弾頭の方が147グレイン弾頭よりも優れる傾向があります。
以下は、124グレインと147グレインの弾道データ比較です。
9mmルガーの弾道データ
9mmルガーの弾道データ
スピアーゴールドドット 124 gr JHP 弾道係数 0.135 G1 / サイト高 0.2インチ |
|||
距離 (ヤード) |
弾速 (フィート/秒) |
エナジー (ft-lbf) |
弾道 (インチ) |
0 | 1220 | 410.0 | -0.2 |
25 | 1146 | 361.0 | 0.0 |
50 | 1085 | 324.0 | -1.5 |
75 | 1036 | 296.0 | -4.8 |
100 | 995 | 273.0 | -10.1 |
9mmルガーの弾道データ
スピアーゴールドドット 147 gr JHP 弾道係数 0.165 G1 / サイト高 0.2インチ |
|||
距離 (ヤード) |
弾速 (フィート/秒) |
エナジー (ft-lbf) |
弾道 (インチ) |
0 | 985 | 317.0 | -0.2 |
25 | 957 | 299.0 | 0.0 |
50 | 932 | 283.0 | -2.2 |
75 | 909 | 269.0 | -6.8 |
100 | 887 | 257.0 | -14.2 |
弾速とパワーは共に124グレイン弾頭の方が良好な結果を示しています。
しかし、147グレイン弾頭には以下の利点があります。
命中精度が高い
弾頭重量は重い方がより安定し、高い集弾率を出す傾向があります。
アメリカ市場での反応も、147グレインは命中率が高いという報告が多く、射撃競技でも人気の高い弾頭重量です。
音速を超えない
気温20度での音速は1,125 フィート/秒ですが、147グレイン弾頭は音速を超えない亜音速弾となります。
そのためサプレッサー使用時に高い減音効果が望めますし、サプレッサーを使用しなくても、ソニックブームが発生しないことから銃声による耳へのダメージが小さくなります。
ショートバレル・ピストルと相性が良い
短い銃身長のピストルで軽量弾を発射するとガス圧不足によりジャムを誘発することがありますが、その点で重量弾はピストルを作動させるのに必要なガス圧を得られるため、コンシールドキャリー用コンパクトピストルとの相性が良いといえます。
リコイル(反動)の強さを比較
以下の表は、リローディングデータを元にリコイルの強さを表しています。
リコイルの比較 銃の重さ:2.2lbs(1kg) / 弾頭の種類:JHP |
||||
弾薬A | 弾薬B | 弾薬C | 弾薬D | |
弾頭重量 (gr) | 124 | 124 | 147 | 147 |
装薬量 (gr) | 6.4 | 8.0 | 5.3 | 7.2 |
装薬の種類 | No.5 | No.7 | No.5 | No.7 |
初速 (fps) | 1200 | 1166 | 991 | 1047 |
マズルエナジー (ft-lbf) | 396 | 374 | 321 | 358 |
リコイルインパルス (lbs/s) | 0.8 | 0.82 | 0.76 | 0.84 |
リコイルベロシティー (fps) | 11.74 | 11.99 | 11.18 | 12.33 |
リコイルエナジー (ft-lbf) | 4.71 | 4.91 | 4.27 | 5.2 |
銃の重さ、装薬、装薬量、弾速の条件が同じとき、弾頭重量が重い方がリコイルが強くなります。
しかし、この比較から見て分かる通り、実際には124グレインと147グレイン、どちらがリコイルが強いとはいえません。
弾薬は弾頭重量や装薬量が異なると、発生するリコイルも変化します。市場には様々なブランドの弾が流通しているため、単純な比較が困難です。
また、知覚できるリコイルの強さは、銃のスライド後退量や速度、グリップの大きさや形状、リコイルスプリングの強さなどによっても異なります。
重量弾を撃ち出すマグナム弾との比較であればリコイルの違いは明らかですが、いずれにしても、124グレインと147グレインの「リコイル体感差」が射撃に与える影響は僅かと言えるでしょう。
対人用としての差
では肝心のストッピングパワーで比較したとき、124グレインと147グレインでは大きな差が表れるかといえば、そうではありません。銃創学的に見るとほとんど同じといえます。
一般的に、重い弾頭重量より、弾速で勝る方がターゲットに対する貫通力やダメージがより大きくなります。
しかし、今回の9mm弾の比較の場合、バリスティックゼラチンなどのテストでは、ほとんど差が見られないのが実際のところです。
対人用となれば、弾速やエナジーだけでなく、弾頭の設計によって性能が異なるため、個々の弾薬メーカーやブランドによって結果や評価が異なります。
まとめ
今回は9mmに限定して124グレイン弾と147グレイン弾の比較をしましたが、他の弾薬ではまた違った結果が出ることもあります。
例えば長距離を狙うライフルの場合では、重い弾の方がより遠くまで飛びます。
ゴルフボールとピンポン玉を投げたとき、どちらが遠くまで飛ぶかをイメージすると分かりやすいかもしれません。
弾は空気抵抗を受けながら飛ぶため、重量弾が必要となります。
しかし拳銃弾ではターゲットまでの距離が近いことから、軽量弾と重量弾の影響はライフル弾と比較すると小さいといえます。
ターゲットに大きなダメージを与えるには、より高速な弾速が必要となりますが、重量弾には命中精度などのメリットもあり、使用目的に合わせたバランスが重要です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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