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.45ACP vs 5.56x45mm|人体に対して本当に威力があるのはどっち?

5.56x45mmは高速で飛翔し、体内での横転や破片化、そして一時的な空洞(cavitation)によって軟部組織に広範な損傷を与えるため、組織破壊の観点では一般に.45 ACPより致命的と評価されます。

一方で.45 ACPは大型で遅速の弾頭が大きな永久銃創(permanent cavity)を作り、近接戦闘などで即時の「ストッピングパワー(対象を無力化する力)」を発揮する場合があり、命中箇所(ショットプレースメント)や状況によって結果が大きく変わります。

この記事では両弾薬の運動学的特徴、創傷メカニズム、臨床的影響と実用上の注意点を整理して比較します。

比較の要点

5.56x45mmの弾速とマズルエナジー

コルトM4A1ライフル画像
コルトM4A1ライフル Jackolmos, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

5.56x45mmはライフル向けの高初速弾で、一般的な市販弾薬でのマズルエネルギーはおおむね1,200〜1,300 ft-lbf程度です。

5.56mm NATO弾画像
5.56mm NATO弾 
画像出典:Clément Dominik, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
弾種弾頭重量
(gr)
初速
(fps)
マズルエナジー
(ft-lbf / J)
Winchester USA Tactical62約3,120約1,335 ft-lbf
(約1,810 J)
Remington 62gr FMJ62約3,120約1,335 ft-lbf
(約1,810 J)
Hornady TAP Duty 62gr62約3,100約1,329 ft-lbf
(約1,800 J)
M855A162約3,000約1,328 ft-lbf
(約1,800 J)
M855 / SS109 NATO62約3,100約1,320 ft-lbf
(約1,790 J)
Hornady V-Max50–55約3,100–3,200約1,200–1,320 ft-lbf
(約1,627–1,790 J)
M193(5.56x45mm NATO)55約3,250約1,295 ft-lbf
(約1,756 J)
Mk 262(HPBT)77約2,670約1,220 ft-lbf
(約1,654 J)
Federal Gold Medal Match69約2,700約1,120 ft-lbf
(約1,520 J)
Black Hills 69gr OTM69約2,705約1,120 ft-lbf
(約1,520 J)

.45ACPの弾速とマズルエナジー

コルトM1911A1ピストル画像
コルトM1911A1 M62, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

.45 ACPは拳銃弾で、標準的な装弾(230gr等)でのマズルエネルギーは概ね300〜400 ft-lbfです。

45ACPの画像
.45ACP
弾種弾頭重量
(gr)
初速
(fps)
マズルエナジー
(ft-lbf)
230 gr +P+ FMJ230約1,100約620
185 gr Match FPJ185約1,100約497
230 gr +P FMJ230約950約460
200 gr JHP200約900〜1,000約400〜450
230 gr JHP Match230約900約414
230 gr FMJ230約830〜900約350〜414
185 gr JHP185約1,000約411
185 gr Hollow Point185約1,000約411
185 gr FPJ185約900約333
230 gr Hardball FMJ230約810約333

数値的に見ても5.56は.45 ACPよりエネルギーが大きく、速度差が創傷に大きく影響します。

創傷メカニズムの違い

5.56x45mm:高速で体内に入ると軸方向のヨー(Yaw)や条件次第で弾体が破片化します。

破片化や高速の圧力波により一時的空洞(temporary cavity)が発生し、直接通過した経路とは離れた部位にも二次的な損傷を引き起こす場合があります。

特に胸部や腹部などの重要臓器に直撃すると急速に機能不全を招きやすい特徴があります。

ヨー(Yaw)とは、弾頭の進行方向と弾軸がずれる現象を指します。

5.56mm弾が人体に命中すると、弾頭の先端が進行方向から急激にずれる「ヨー」が発生します。このヨーにより、弾頭は体内で横向きになり、組織に当たる面積が大幅に増加します。結果として、運動エネルギーを効率的に体内に伝え、広範囲にわたる大きな損傷を引き起こします。

.45 ACP:大口径で重い弾頭が比較的低速で組織を通過するため、弾道学的には大きな永久銃創(組織の破砕・圧迫)を作る傾向が強く、弾が体内に留まればエネルギーを局所で伝えて深刻な損傷を与えます。

ただし高速弾のような広範囲の空洞作用や破片化は基本的に起こりにくいです。

貫通性と二次被害(過貫通)の違い

5.56はしばしば貫通(through-and-through)が発生します。

貫通すると外見上は「軽微」に見えることがあり得ますが、内部ではヨー(YAW)による横転や破片による広範な損傷が残ります。

また貫通は周囲の第三者への危険も増やします。

対して.45 ACPは貫通せずに体内に留まるケースが多く、エネルギーを局所に伝えることで即時の無力化を促す場合があります。

近接戦闘(CQB)での実用差

近距離では.45 ACPの「打撃力」と大きな永久銃創が即時の無力化に寄与する場面があり、法執行機関での採用理由の一因でもあります。

一方で5.56は短距離でも致命的な内部損傷を与える可能性が高いですが、ショートバレルでは初速低下により期待される破片化が起きにくくなる点に注意が必要です。

致命性を決める最重要要素:射撃部位(ショットプレースメント)

どちらの弾薬においても致命的結果を左右する最大要因はショットプレースメント(どこに命中するか)です。

主要臓器や中枢神経系を確実に狙えばどちらも高い致命性を示しますが、外れてしまえば即時の無力化は期待できません。

装弾種(弾頭形状)、着弾速度、角度、人体の部位によって結果が大きく変動します。

臨床・運用上の補足

  • 医療的には、5.56のような高速弾は内部損傷の見た目が外傷に比べて過小評価されやすく、CTや手術での観察が必要になることが多いです。
  • 自衛・法執行での「最適」は単純な口径論では決まらず、運用環境、法的規制、被使用者の訓練、装弾(防弾プレートや被装備者の有無)などを総合的に考慮する必要があります。

結論

組織破壊の観点からは5.56x45mmの方が一般により広範で深刻な内部損傷を引き起こすため「より致命的」と評価されますが、.45 ACPも近接での大きな永久銃創や即時のストッピングパワーにより致命的になり得ます。

したがって「どちらが強いか」は単純に決められず、状況(射程、銃の銃身長や弾種、ショットプレースメント、対象の防護の有無)によって結論が変わります。

ただし、ライフルは命中精度が高いため、致命的な部位に命中させやすく、様々な状況で優位といえます。

  • 5.56x45mmは高初速・高マズルエネルギー(約1,200〜1,300 ft-lbf)で空洞形成や破片化により広範な損傷を与える。
  • .45 ACPは低速だが大径・重質弾で永久銃創を作りやすく、近接でのストッピングパワーが期待できる(約300〜400 ft-lbf)。
  • 致命性で最も重要なのはショットプレースメントであり、弾薬単体だけで結論を出すべきではない。
比較項目5.56×45mm
(代表値)
.45 ACP
(代表値)
弾頭重量
(gr)
約55〜77 gr約185〜230 gr
初速
(fps)
約2,670〜3,250 fps約810〜1,100 fps
マズルエナジー
(ft-lbf)
約1,120〜1,335 ft-lbf約333〜620 ft-lbf
弾道特性高初速・フラットな弾道。
長距離性能に優れる。
低速・放物線的な弾道。
近距離での有効性が主。
創傷メカニズム高速によるyaw(揺れ)、破片化、temporary cavity(一時的空洞)により広範な軟組織損傷を与えやすい。大口径で重量弾が永久銃創(組織の破砕・圧迫)を作る傾向。
弾が体内に留まれば局所的ダメージが大きい。
貫通性
(過貫通)
貫通が発生しやすく二次被害を生む可能性がある。貫通せずに体内に留まるケースが多い。
典型的用途軍用・法執行・長距離精密
(カービン〜ライフル)
護身・法執行(近接)・ピストル射撃競技
使用銃の種類アサルトライフル/カービン
(AR系など)
セミオートピストル
(1911系等)、リボルバー(稀)
銃身長想定表中数値は通常20インチ銃身を基準にした代表値として示されることが多いです(短銃身では初速低下)。ピストル標準銃身(約3.5〜5インチ)想定の代表値です。銃身長・+Pで差が出ます。

ストッピングパワーについては以下の記事で詳しく解説しています。