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米国で軍用狙撃銃は所有可能か?連邦法・州規制・購入手順を解説

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バレットM99 画像出典: Barrett

米国で「軍用狙撃銃」はどの程度一般人が所有できるのでしょうか。

日本と異なり、アメリカでは州ごとに法律が異なり、連邦法との組み合わせで複雑な規制が敷かれています。

この記事では、狙撃銃の定義や特徴、連邦法・州法による規制、バックグラウンドチェック、口径や装弾数に関する制限、そして実際に購入する際の手順まで、具体例を交えて分かりやすく解説します。

軍用狙撃銃とは、軍隊で長距離精密射撃に用いられるボルトアクションまたはセミオート式ライフルを指します。

一般的な特徴は以下のとおりです。

  • 使用弾薬:7.62 NATO(.308 ウィンチェスター)、.300 ウィンチェスターマグナム、.338 ラプアマグナム、.50 BMGなど
  • 口径:おおよそ.30~.50インチ(約7.62~12.7mm)
  • 有効射程:800~2000メートル
  • 機能:精密バレル、光学サイト、バイポッド、着脱式マガジン
  • 法的な曖昧さ:「狙撃銃」という定義は法律上存在せず、実際は「精密ライフル」「アサルトウェポン」「マシンガン」「ショートバレルライフル」といった用語で分類されます

狙撃銃の購入は可能

米国では、民間人がセミオート式またはボルトアクション式の精密射撃用ライフルを所有することは、連邦法上おおむね認められています。

これらは軍用狙撃銃と同等の性能を持つ場合がありますが、マシンガン(フルオートやセレクトファイアが可能な火器)やショートバレルライフル(銃身長16インチ未満)、あるいはサプレッサー付きライフルなど、国家火器法(NFA)で規制される分類に該当しない限り所有可能です。

多くの州ではこのような所有を許可していますが、カリフォルニア州、イリノイ州、ニューヨーク州、マサチューセッツ州、ワシントンD.C.など一部地域では禁止または厳しい制限があります。

フルオート火器の民間所有は、1986年以前に登録されたごく少数の例外を除き禁止されています。不法所持は連邦法で最長10年の禁錮刑となる場合があります。

バックグラウンドチェック

米国では銃購入時に購入者の犯罪歴を調べる「バックグラウンドチェック」が義務付けられています。

  • 犯罪歴の問い合わせは州単位またはFBI経由で行われ、州によって手続きが異なります。
  • ガンショー(銃の展示即売会)では、州によってバックグラウンドチェックが不要な場合があります。

ガンショーでの州別の傾向は以下の通りです。

画像出典:governing.com
画像出典:governing.com
  • 赤色の州:ガンショー購入時にバックグラウンドチェック不要
  • 灰色の州:ハンドガン購入時にバックグラウンドチェック必要
  • 緑色の州:すべての銃購入時にバックグラウンドチェック必要

連邦法における規制(タイトルII・長さ規制)

フルオート射撃が可能な銃(マシンガンなど)はタイトルII(クラスIII)に分類され、規制されています。

  • 銃身長が短いライフルは「ショートバレルライフル(SBR)」と呼ばれ、銃身長16インチ未満または全長26インチ未満のものが該当します。
  • 銃身長が短いショットガンは「ショートバレルショットガン(SBS)」と呼ばれ、銃身長18インチ未満または全長26インチ未満のものが対象です。

これらのSBR/SBSを所有するには、ATFへの登録申請と200ドルの税金支払いが必要です。

ただし、カリフォルニア州やニューヨーク州などでは州法で所有が禁止されている場合があります。

.50口径規制

バレットM107A1画像
バレットM107A1 画像出典:barrett.net

カリフォルニア州では2004年以降、.50 BMG弾を使用するライフルは規制され、民間所有できません。

しかし、これは50口径規制であり、類似する口径を規制するものではありません。

.49口径や.51口径は理論上合法であり、例えば.416口径のバレットライフルは州内で所有可能です(マガジンは固定式)。

表向きはテロ防止を目的として制定された法律ですが、現実的に抑止効果はないとみられ、むしろ政治色の濃い規制です。

規制法施行当時、私はカリフォルニア州在住でしたが、知り合いの大口径ライフル専門ディーラーも他州へと引っ越しを余儀なくされるなど、業界に混乱がありました。

装弾数規制とアサルトウェポン

州によっては装弾数やアサルトウェポンの販売・所有を規制しています。

アサルトウェポンとアサルトライフルの違いとは?

米国における「アサルトウェポン」と「アサルトライフル」は、法的な定義と機能において明確な違いがあります。

アサルトライフルは軍事用語であり、中間弾薬を使用するセレクティブファイア(セミオートとフルオートの切り替えが可能)なライフルを指します。このタイプの銃器は、1986年の銃所有者保護法(FOPA)以降、民間人が新規で所有することは厳しく制限されており、事実上入手難易度が高い傾向があります。

一方、アサルトウェポンは、法的な規制のために作られた用語です。これは特定の軍用銃器に外観が似たセミオートライフルやピストル、ショットガンを指します。アサルトウェポンの定義は州によって異なり、ピストルグリップ、調整式ストック、フラッシュサプレッサーなどの特徴が複数備わっているか、大容量マガジンを使用できるかなどが基準となります。これらは見た目が軍用銃器に似ているものの、機能的には一般的なセミオート銃器と同じであり、トリガーを1回引くと1発だけ発射されます。

アサルトウェポンとは、セミオートマチックの銃(ライフル、ピストル、ショットガン)に加え、2つ以上の条件が加わると、その銃はアサルトウェポンと定義されます。

着脱式マガジンを持つセミオートマチック・ライフル
条件(2項目以上でアサルトウェポンに該当):

  • フォールディング/テレスコピックストック
  • ピストルグリップ
  • バヨネット・マウント
  • フラッシュサプレッサーまたはスレデッドバレル
  • グレネードランチャー・マウント

着脱式マガジンを持つセミオートマチック・ピストル
条件(2項目以上でアサルトウェポンに該当):

  • ピストルグリップの外側にマガジンを装着
  • フラッシュサプレッサー、ハンドグリップ、サプレッサーを装着可能なスレデッドバレル
  • 火傷防止用バレルシュラウド
  • アンロード時重量50オンス(1.4kg)以上
  • フルオートマチック銃のセミオートマチック・バージョン

セミオートマチック・ショットガン
条件(2項目以上でアサルトウェポンに該当):

  • フォールディング/テレスコピックストック
  • ピストルグリップ
  • 着脱式マガジン

アメリカでは連邦法で1994年にアサルトウェポン規制法(AWB)が施行されますが、これは時限立法であったため2004年に失効しました。

しかし、ハワイ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州では失効前に同様の州法が制定され継続されています。

  • カリフォルニア州:アサルトウェポン販売禁止、マガジンは10発以下
  • コロラド州:マガジン15発以下
  • コネチカット州:アサルトウェポン販売禁止
  • ハワイ州:アサルトウェポン販売禁止、マガジン10発以下
  • ニューヨーク州:免許保持ディーラー以外でアサルトウェポン販売禁止
  • ワシントンD.C.、ニュージャージー州、マサチューセッツ州:アサルトウェポン販売禁止

※カリフォルニア州は1989年から、ニュージャージー州は1990年から、コネチカット州は1993年から法制化されています。

※アメリカの銃規制は、基本的に法律施行後のみに適用されるため、施行前から所有している銃器は法律施行後も所有可能です。(ただし州によって規制内容が異なる)

実例:着脱式マガジンと規制回避

「カリフォルニア州で.416口径のバレットライフルを所有可能」と述べましたが、このライフルは非着脱式マガジンを持つセミオートマチック・ライフルなのでアサルトウェポン規制に抵触しません。

もし、着脱式マガジンのバレットライフルをカリフォルニア州で所持したい場合は、ピストルグリップを排除すれば、「着脱式マガジンを持つセミオートマチック・ライフル+スレデッドバレル」のみなので、前述条件の2項目以上に抵触しません。

カリフォルニア州では、以下のような着脱式マガジンを持つAR15が販売されています。

画像出典:photobucket.com
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画像出典:exilemachine.net
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このようにピストルグリップを排除してアサルトウェポン規制を回避するモデルがあります。

画像出典:thefirearmblog.com
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こちらはニューヨーク州対応モデルですが、グリップはストックの一部であり、独立したピストルグリップではありません。

一見するとフラッシュサプレッサー/フラッシュハイダーが装着されているように見えるモデルがありますが、これは「マズルブレーキ」なので「フラッシュサプレッサー」ではありません。

法律上この定義が曖昧で、フラッシュサプレッサーとしての効果を持っていても「マズルブレーキ」として販売されているものは合法となっています。ただし、ATFが違法と判断すれば違法となることもあります。

以下は州ごとの規制状況の例です。

州・地域状況
テキサス州連邦法準拠で特別な規制なし
カリフォルニア州.50 BMG規制、SBR/SBS規制、アサルトウェポン規制あり
ニューヨーク州アサルトウェポン登録制、NFA規制、マガジン容量制限あり
フロリダ州連邦法のみ適用、州独自の禁止規制なし
マサチューセッツ州アサルトウェポン禁止、州法独自規制あり
ワシントンD.C.狙撃銃を含む多くのライフルが禁止対象

ライフル購入手順

アメリカでライフルを購入する際の一般的な手順を整理すると以下の通りです。

連邦法で定められた手続きに加え、州ごとの独自規制もあるため、購入前に必ず確認が必要です。

  1. 購入資格の確認
    • 連邦法および州法に基づき購入可能か確認します。
    • 犯罪歴(重罪)や精神疾患の有無など、法的に所持が禁止される条件に該当しないことを確認します。
  2. 販売店やオンライン小売店の選定
    • 店頭購入の場合は、連邦ライセンスを持つディーラー(FFL)を選択します。
    • オンライン購入の場合は、購入先を決定し、地元のFFLでの受け取り手続きを行います。
  3. ライフルの選定
    • メーカー・モデルを決定し、マガジン容量や銃の種類など、州の規制に適合しているか確認します。
  4. 身分証の提示
    • 公的な写真付き身分証(運転免許証など)を提示します。
    • 州によっては居住証明や追加の許可証が必要な場合があります。
  5. ATFフォーム4473の記入
    • 連邦銃器取引記録(Form 4473)に必要事項を記入します。
    • すべてのFFLからの購入で必須です。
  6. バックグラウンドチェック(NICS)
    • ディーラーがあなたの情報をNICS(全国即時犯罪歴照会システム)に送信します。
    • 結果は「承認」「保留」「拒否」のいずれかで、保留の場合は数日以内に購入可能となります。
  7. 州独自の要件確認
    • 州によっては追加の書類提出、購入許可証、ウェイティングピリオド(待機期間)などが必要です。
  8. 支払いの完了
    • バックグラウンドチェックが承認された後、銃本体および必要な手数料を支払います。
  9. ライフルの受け取り
    • 支払いとバックグラウンドチェック通過後、待機期間がない場合は自宅に持ち帰ることができます。
  10. 安全な保管と輸送
    • 銃はロック可能なケースで保管し、輸送時も州・地元の法律に従います。
  • 個人間取引(FFLを介さない販売)は州ごとに規制が異なります。
  • オンライン購入は必ずFFLを経由して配送される必要があります。直接配送は違法です。
  • 待機期間や購入許可の有無は州によって異なります(例:カリフォルニア州、メリーランド州など)。
  • オンライン購入や州間転送ではディーラー手数料が発生する場合があります。
  • 軍用狙撃銃:軍隊で長距離精密射撃に使用されるボルトアクション式またはセミオート式ライフル。
  • ボルトアクション:手動でボルトを操作して装填・排莢するライフルの機構。
  • セミオート(セミオートマチック):トリガーを1回引くと1発だけ発射され、自動で次弾を装填する機構。
  • 口径:銃弾の直径。狙撃銃はおおよそ.30~.50インチ(7.62~12.7mm)。
  • 有効射程:弾丸が精密に命中可能な距離。狙撃銃では約800~2000メートル。
  • 精密バレル:精密射撃に適した高精度の銃身。
  • 光学サイト(スコープ):照準を補助する望遠装置。
  • バイポッド:銃を安定させるための二脚スタンド。
  • 着脱式マガジン:弾薬を装填する容器で取り外し可能なもの。
  • マシンガン:フルオート射撃が可能な銃。
  • ショートバレルライフル(SBR):銃身長16インチ未満または全長26インチ未満のライフル。
  • ショートバレルショットガン(SBS):銃身長18インチ未満または全長26インチ未満のショットガン。
  • NFA(国家火器法):フルオート火器やSBR/SBSなどを規制する米国連邦法。
  • バックグラウンドチェック:銃購入者の犯罪歴や所持適格性を確認する手続き。
  • タイトルII(クラスIII):フルオート火器や特殊火器を規制するNFA上の分類。
  • .50口径規制:カリフォルニア州で.50 BMG弾使用ライフルの民間所有を禁止する規制。
  • アサルトライフル:軍事用語で中間弾薬を使い、セレクティブファイア可能なライフル。
  • アサルトウェポン:法的規制用語で、軍用銃に似た外観を持つセミオート銃。州によって定義や規制が異なる。
  • ピストルグリップ:銃を握るための拳銃型のグリップ。
  • フォールディング/テレスコピックストック:折りたたみ式または伸縮式の銃床。
  • フラッシュサプレッサー:発射時の火花や閃光を抑える装置。
  • マズルブレーキ:発射時の反動を軽減する装置。
  • スレデッドバレル:サプレッサーやフラッシュサプレッサーを装着可能なねじ付き銃身。
  • ATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局):米国連邦の銃規制機関。
  • Form 4473:連邦銃器取引記録フォーム。購入時に記入が必要。
  • NICS(全国即時犯罪歴照会システム):バックグラウンドチェックで使用される犯罪歴照会システム。
  • FFL(連邦ライセンスディーラー):連邦ライセンスを持つ銃販売店。
  • ウェイティングピリオド:銃購入後、受け取りまでに設けられる待機期間。
  • ガンショー:銃の展示即売会。州によってバックグラウンドチェックが異なる場合がある。
  1. Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives (ATF): Gun Control Act, National Firearms Act
  2. Giffords Law Center: Machine Guns & .50 Caliber Weapons
  3. California Penal Code §30530
  4. New York Penal Law §§265.00, 265.02
  5. ATF Form 4473, NICS 審査関連資料
  6. Barrett.net: .50 BMG規制情報
  7. Governing.com: US Gun Laws Overview