銃にサプレッサーを装着すると弾速はどう変化するのか?
この記事ではサプレッサーと弾速の関係について解説します。
サプレッサーを使用すると弾速は変化する?
Youtubeチャンネル「Top Shot Dustin」は、「サプレッサーを使用すると威力が低下する」という俗説を検証するため、実射テストを行いました。
以下は各5発ずつの平均の弾速です。
弾薬 | サプレッサーなし (フィート/秒) | サプレッサーあり (フィート/秒) |
---|---|---|
.22LR | 1001 | 1022 |
9mm | 1259 | 1281 |
.300AACブラックアウト | 2134 | 2147 |
7.62x39mm | 2158 | 2175 |
.223レミントン | 2968 | 2957 |
.308ウィンチェスター | 2495 | 2515 |
.338ラプアマグナム | 2956 | 2968 |
結果は、サプレッサーを使用すると.223レミントンを除くすべての弾速がアップしました。
サプレッサー内部は密閉空間なので、発射ガスは前か後ろしか逃げ道がありません。
密閉空間でガスが充満すると内部の圧力が高まり、サプレッサーを通過中の弾の底を押すガス圧が強くなることで弾速が上がります。
つまり、サプレッサーを使用するとバレルを延長したかのような効果があります。
最近、銃身長11.5インチ以下のショートバレル・ライフル(SBR)が流行していますが、ガス作動方式でバレルが短い場合、しっかりセッティングしないと作動が不安定になりがちです。
しかし、ショートバレル・ライフルにサプレッサーを装着するとバレル延長効果が得られるため、ショートバレル・ライフルとサプレッサーは相性が良いといえます。
勿論、デメリットもあります。
サプレッサーにより圧力が強くなる作用は、同時にガスの逆流が起こりやすくなることを意味しており、後方へガスが流れることで銃の機関部が汚れやすくなったり、エジェクションポートから漏れるガスの量が多くなり、顔に向かってガスが吹き付けられたりします。
ただし、そのガス量はサプレッサーの性能によって差があります。
なぜ.223レミントンだけ弾速が低下した?
動画では理由について触れられていませんが、.223レミントンだけ弾速が低下した原因は3つの可能性があります。
- サプレッサーの構造的要因によりガスが弾の抵抗になった
- 弾薬の欠陥(不完全燃焼や装薬量不足、圧力不足など)
- 上記の組み合わせで生じた理由
.223レミントンを使用した動画の銃はアダムスアームズ社のAR15でしたが、これにはガスの流量を調節できるガスバルブ(ガスプラグ/ガスレギュレーター)が備わっています。
動画ではサプレッサー装着時にガスバルブを操作する様子が確認できます。
このことから、「サプレッサー装着時にピストンセッティング(ガスバルブ)を調整してガスのガスシリンダーへの流入量が変化した」と考える方もいるでしょう。
これは銃によってはガスシステムの違いからあり得ることです。
しかし、アダムスアームズの場合、ガスバルブを正しく使用して弾速低下が起こることは通常ありません。
その理由について以下で解説したいと思います。
ガスバルブを操作するとどうなる?
アダムスアームズのガスシステムは、ガスバルブを右へ45度回転させるとサプレッサーモードとなり、セミオートまたはフルオートでサプレッサーを使用できます。
右へ90度回転させるとガスを完全に遮断し、手動作動のボルトアクション・モードになります。
これは「ボルトアクションを楽しむため」ではなく、サプレッサー使用時の作動音やエジェクションポートから漏れる音を消し、最大の減音効果を得るために使用します。
また、.22LRコンバージョンキットを組み込んだ際のピストンロッド排除時にも使用されます。
(因みに、左へ90度回転させるとガスバルブを抜き取ることができます)
ガスバルブは作動の信頼性を向上させる
サプレッサーを使用するとバレルやチャンバーの内部圧力(腔圧)が高まるため、ガス作動方式の銃ではガスピストンへのガス流入量を減少させることでサプレッサー使用時の作動の信頼性や安全性を向上させることができます。
もし高圧状態のまま作動させるとどうなるでしょうか?
排莢時にチャンバー内の薬莢は膨張しチャンバー側壁に密着した状態を維持しているため、エキストラクターが薬莢を強引に引き抜こうとして薬莢を破断させたり、引き抜きに失敗したにも関わらず次弾を装填してダブルフィーディング(二重装填)といったジャムが発生することがあります。
高圧になると銃の回転(連射速度や作動サイクル)が通常より早くなるため、負荷を掛けずにベストタイミングで作動させるためにガス調節機能が役に立ちます。
動画内では「ガスが顔に向かって噴き出すのを抑えるためにサプレッサーモードにする」と説明していますが、これは間違いです。
この機能は確実な作動を実現するために、上昇したガス圧をピストンに過剰流入させないことが目的なので、原理的にはサプレッサーモードにすると腔圧が上昇し、エジェクションポートからのガス噴出量が若干増加します。
ただし、エジェクションポートからのガス噴出量はサプレッサーの種類や性能によっても異なります。
ガスバルブの作動原理
この画像はSIG516のピストンバルブです。
中央に大、中、小のガスポート(穴)が確認できますが、外部からガスバルブを回すことで使用するガスポートの大きさを選択でき、ここを通るガス量を調節できます。
サプレッサーを使用する場合はバレル内が高圧になるため、ガスバルブを回して通常より小さなガスポートを使用します。
これにより安全で確実に作動します。
※アダムスアームズのピストンバルブ(アダムスアームズではピストンプラグと呼んでいます)は、大きな穴がひとつだけあり、バルブを回転させることでガスの入口を狭めています。
サプレッサーを装着していないときにガスバルブを閉めてサプレッサーモードで射撃した場合は、通常よりリコイルが強くなり、早めのタイミングでボルトが後退しようとするため負荷が掛かり、破損の原因となることがあるため注意が必要です。
高圧化したのに.223レミントンは弾速が低下した原因
ガスバルブをサプレッサーモードにすると、ガスピストンチャンバー(ガスシリンダー)内の圧力が減少(遅延)し、バレル内の圧力が上昇します。
この場合、弾速が増加するはずですが、結果は減少でした。
上で挙げた推測される理由のうち、ガスバルブが原因でないとしたら、他のサプレッサーとは異なるガスの流れがあった・・・といった構造的理由からかもしれません。
または、欠陥弾薬が混ざっていたのかもしれません。
弾速低下はたったの-11フィート/秒なので、たまたま誤差が生じただけともいえます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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