FN社のP90やファイブセブンに使用されている弾丸は、壁やボディアーマーなどの硬い物は貫通し、人体などの柔らかい物は貫通しないと聞いたのですが、なぜそのようなことが可能なのか疑問です。
弾頭部が特殊な構造をしているのでしょうか?
流体内では向きが変わりやすい特徴があるためです。
FN社は、FN P90や、FN ファイブ・セブンに使用する弾薬として特別な新弾薬、5.7×28mm弾(SS190)を開発しました。仰るとおり、この弾薬は通常のボディー・アーマー(ケブラー繊維48枚重ね)や、CRISATボディー・アーマー、米軍正式採用のPASGTヘルメットなどを貫通しながらも、人体に対しては貫通しにくい特性を持ちます。しかし、その秘密は特殊な弾頭を使用しているからではなく、軽量な弾頭重量にあります。
この新弾薬「SS190」は従来のライフル弾よりも軽い弾頭を使用し高速で撃ち出します。細く高速で飛翔する弾頭は100mで厚さ3.5mmのスチール・プレートを貫通できますが、人体など水分を多く含むターゲット内での弾頭は、その軽さから直進性のバランスを急激に崩し、進む方向を変えながら、弾頭が持つエネルギーを失うことで貫通せずに留まります。これと同様の効果は、NATO標準の5.56×45mm弾を始めとするライフル弾など小口径高速弾で得られますが、こういった通常のライフル弾は弾頭の持つエネルギーが大きいため、弾頭が大きく向きを変える前に比較的貫通しやすいのです。
ちなみに、SS190は特別貫通力を持つ弾薬ではありません。通常のライフル弾同様にボディー・アーマーやヘルメットを貫通しますが、5.56×45mm弾が貫通不可能なターゲットに対しては、同様に貫通できません。SS190は、9×19mmピストル弾の2/3の反動でありながら、ライフル弾並の貫通力を持ち、ストッピング・パワー(目標の敵を無力にする)に優れるためその価値があります。
スタンダードなSS190(FMJ)の他にも、光の尾を引きながら飛翔する、”L191(トレーサー)”や、サイレンサー使用時に使用する亜音速で飛翔する”Sb193(FMJ)”、人質が存在するといった対テロに適した貫通力の低い、”SS192(JHP)”といった弾薬バリエーションがあります。
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