皆さんからいただいた、「銃の疑問」に回答します。
連射速度の低い短機関銃及びPDWについて、550RPMかつ油圧バッファを装備しているMP40のフルオート射撃はMP5やUZIをも凌ぐグルーピング(集弾率)を誇り
クローズドボルトに改修して近代化改修を施せば現代でも通用する様に思えますが、そうとも言えないのでしょうか?
近代化改修したMP40は現代でも通用する?
「現代でも通用する」の意味は、「軍や法執行機関で採用される水準」という意味でしょうか?
「アメリカの民間市場で需要があるか」と問われると、マイクロUZI(UZIピストル)がUZI Proとして販売されているように、近代化改修によって一定の需要があると思われます。
民間市場では性能に関わらず「外観が好み」や「射撃が楽しそう」という理由から売れることもありますし、実際にドイツのGSG社製復刻版MP40(.22LR/9mm)が販売されています。
しかし、軍や法執行機関で採用されるには、顧客の特別なニーズを満たす必要があります。
仮にニーズを満たせるところまで改修できるとしても、それに膨大な労力(時間やコスト)が必要となれば、最初から新規で設計した方が合理的といえます。
また、改修したMP40の総合的な性能がMP5より少し上回ったところで、MP5はすでに多くの法執行機関で採用されており、現状に満足している法執行機関にとって「コストを掛けて交代するメリット」がありません。
むしろ、法執行機関での需要は2000年頃からサブマシンガンからライフルへと移行しており、これを無視するとH&K UMPの失敗を繰り返すことになります。
また、NATO規格のPDWの需要を見込む場合、軽量、コンパクト、低反動、高い貫通力、高い命中率、高い汎用性などの性能が要求されますが、MP40をこの条件に合わせるには大幅な設計変更が必要となり、可能であったとしても原型を留めない状態になるでしょう。
必用な弾速を維持しつつ全長を短くする目的から、「HK MP7」や「FN P90」のようにマガジンをグリップ内に収めたりブルパップ化してしまうと、それは最早「MP40」と呼べるのか疑問です。
現在、ウクライナではMP40が実戦で使用されていますが、これは「使える武器は何でも使う」という状況下にあるためで、MP40に需要があるわけではありません。
私はMP40、MP5、UZIのいずれもフルオート射撃経験がありますが、MP40の命中率が高いのは遅い発射速度と約4kgという重い重量によるもので、実用としてはMP5の総合的な優秀さには程遠いと感じます。
発射速度、信頼性、安全性、携帯性、重量、汎用性、メンテナンス性、ストック、グリップ、トリガープル、レシーバー、マガジン、マガジンハウス、サイト・・・等々、MP40はどの点を見ても時代遅れで、現在の平均的なサブマシンガンの水準まで引き上げるには、新規設計を必要とするレベルの大幅な改善が必要です。
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