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ウクライナの戒厳令と銃規制 民間人を参戦可能にする法律とは?

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ウクライナに侵攻したロシア軍から防衛するため、ウクライナ政府は国内の民間人(外国人を含む)がウクライナ国内に侵攻したロシア兵に対して銃を使用しても罪に問わない旨の法律を施行しました。

今回はその法律の内容の日本語訳と、ウクライナの銃規制についてご紹介します。

法律の原文

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日本語訳

ウクライナ法

ウクライナの防衛に民間人が参加できるようにすることについて

ウクライナの主権に対するロシア連邦の武力侵略行為に留意し、国家的抵抗に積極的に参加する市民の願いを考慮して、生命と健康、名誉と尊厳、不可侵性と人間の安全を最高の社会価値として守ることを求め、ウクライナ憲法第65条第1部の規定を考慮して、ウクライナの祖国、独立と領土の完全性を守ることは、ウクライナ市民の義務であるとするものである。

ウクライナ王国ヴェルホヴナ議会は、本法を採択した。

第1条 戒厳令の期間中、ウクライナの市民、ウクライナの領土に合法的に滞在する外国人と無国籍者(以下、民間人)は、ロシア連邦および/または他の国の武力侵略の撃退と抑止に参加することができ、それにはウクライナ内務省が定めた手順と要件に従って銃器と弾薬を受け取ることが含まれる。

第2条 本法律に従って入手した民間人の銃器の使用は、ウクライナ内閣が承認した手続きに従って、ウクライナに対する武力侵略を撃退する任務を遂行する軍人の武器の使用と同様でなければならない。

第3条(武器の使用 民間人は、ウクライナにおける戒厳令の終了または解除後10日以内に、受領した銃器及び未使用の弾薬をウクライナ国家警察の機関に引き渡す義務を負う。民間人は、本条に定める要件に違反した場合、刑事責任を問われるものとする。

第4条 戒厳令の間、ウクライナの市民は、独自の賞用武器、スポーツ用武器(ピストル、リボルバー、ライフル、スムースボアライフル)、猟銃、スムースボア、滑腔砲複合武器およびそれ用の弾薬を使用して、ロシア連邦および/または他の国家の武力侵略の撃退および抑止に参加することができる。

第5条 民間人は、ウクライナに対して武力侵略を行う者に対して、当該武器が本法第1条及び第4条により定められた手続きに基づき使用された場合には、その責任を負わない。

第6条 最終および経過規定

1.この法律は、その公表の日の翌日から施行する。

2.本法は、本法第1条に規定する場合において銃砲弾薬を受領したすべての者に対し、その発行日に関係なく適用し、戒厳令期間中およびその終了または廃止の10日後に適用するものとする。

3.刑法第二節「最終および経過規定」

ウクライナ法典(Vidomosti Verkhovnoi Rady Ukrainy, 2001, № 25-26, p.131)

22 項を以下のように追加する。

“22. ウクライナに対する武力侵略を行う者に対して銃器を使用した場合、その武器が「ウクライナの防衛における民間人の参加の確保に関する法律」に従って使用された場合、民間人は刑事責任を負わないものとする。”

ウクライナ大統領

キエフ 2022年3月3日 №2114-IX

ゼレンスキー

鹵獲兵器の所持は合法?

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Photo via Jules31415

ロシアのウクライナ侵攻によりウクライナ政府は市民にAK-74、AKM、RPGなどの武器弾薬を配布しており、2月26日時点で25,000丁のライフルと1,000万発の弾薬が配布されたとウクライナの内務大臣が発言しています。

戒厳令の法律をあらためて確認すると、個人所有のスポーツ用銃器を使用することも許可されているのは興味深い点です。

また、戒厳令の期間が終了すると、配布された武器弾薬を警察へ返納しなければ罪に問われることも明記されています。

ここで気になるのはロシア軍から鹵獲した銃器の扱いです。

果たして鹵獲銃器の所持は合法なのでしょうか?

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ウクライナの農家は放置されたロシア軍の地対空ミサイルシステム(Tor-M2)や装甲兵員輸送車(BTR-80)等をトラクターで回収しています。

インタファクス通信によると、ウクライナ当局(NAPC)はロシア軍兵器の「戦利品」を所得税申告する必用はないと述べています。

申告不要の理由として、取得が取引の結果によるものではなくロシア軍の侵攻によるものであり、ウクライナの法律ではそれらの価値を評価できないためとしています。

しかし、税務上申告の必要がないとしても、機能する銃や兵器を所有し続けることは合法なのか不明なところがあります。

もし第3条が鹵獲銃器にも適用されるなら返納の義務が生じる可能性がありますが、他の法律が適用される可能性もあります。

参考までに、アメリカやイギリスの法律では戦利品を持ち帰るのは現在では違法となっています。

ウクライナの銃規制(平時)

ウクライナ国家警察によると、2018年7月31日時点で892,854丁の銃器がウクライナ国内で合法的に登録されています。

ウクライナでは平時から民間人がライセンスを得てフルオートを除くライフル(装弾数10発まで)やショットガンを所有するのは合法です。

しかし、ハンドガンは射撃競技を除き規制されています。

コンシールドキャリーライセンス(隠匿携帯許可証)は発行されますが、これは特殊ケースのため事実上コンシールドキャリーは法的に不可な状態※です。

※2022年2月23日以降、有事のため護身用武器の携帯が合法化されています。

年齢制限はライフルが25歳以上、スムースボア(ショットガン)は21歳以上、空気銃は18歳以上となっています。

ライセンスは3年で更新され、更新が許可されない場合は銃を没収されます。

ライセンスの取得や更新には、犯罪歴、家庭内暴力、精神疾患などの有無の他、銃を必要とする正当な理由(狩猟や射撃競技のためなど)が問われます。

このように現在戦場となっているウクライナも平時には銃所持が厳しく規制されており、鹵獲兵器の扱いも終戦後には法的に処理される可能性があります。

そして合法的に処理されない銃器の一部はブラックマーケットに流通することでしょう。