ハイパーゴリック式液体装薬を使った重機関銃を作る場合、構造はどのようになり、またどのような課題が生まれますか
二液混合式の弾薬は、1952年に特許が出願されたことがあります。
Liquid projectile propellant for military ammunition US 2960031 A
この弾薬は厳密にはハイパーゴリックを応用したものですが、雷管の撃発による圧力で二液をケース前部に噴出させて混合し、自己着火による燃焼ガスで弾頭を発射する構造です。
これは実用化されませんでしたが、ハイパーゴリック推進剤の小火器転用にはいくつか問題点があります。
【安全性の問題】
ハイパーゴリック推進剤はロケットの燃料としても使用されますが、人体に有害な劇物であることから取り扱いには注意を要します。
特に運用時に衝撃が加わることが多い軍用小火器用弾薬としては、破損等により液体が漏れ出すと大きな健康被害を生むため、扱い難い弾薬となります。
【コストの問題】
ケース内で二液を分け、簡易的な燃料噴射構造や高い気密性が必要となるため、製造コストが通常の弾薬より大きく跳ね上がります。
ハイパーゴリック推進剤のメリットとして高い弾速が得られる反面、複雑な製造工程で製造されたコスト高な弾薬は、いわば小型ロケットを大量採用するようなもので、現実的ではありません。
【重量の問題】
弾薬内が液体で満たされるため総重量が重くなります。
現在の軍用弾薬の開発傾向では、弾薬の軽量化が重要な要素となっています。強度が不要な部分にプラスチックパーツを使用するなどして軽量化が研究されている現在、重い弾薬は時代の流れに逆行することになります。
仮に以上の問題点を無視してハイパーゴリック推進剤を使用する銃を製造するとしたら、通常のメカニズムを応用できると考えられますが、上記の特許の様にガンパウダーより高い圧力が予測されるため、かなり肉厚な銃身や薬室と全体的な強度アップが必要となるでしょう。その結果、実用性が低くなる可能性が否定できません。
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