
ホローポイント弾は、高いストッピングパワーから自衛・警察用途で広く使われています。
しかし一方で、「ジャムを起こしやすい」という話を聞いたことがあるかもしれません。
なぜJHP弾はフルメタルジャケット弾(FMJ)に比べて給弾の信頼性が劣ると言われるのでしょうか?
この記事では、弾頭の構造や銃器の歴史からその理由を解説します。
ジャム(Jam)とは、銃の作動中に弾薬の装填や排出がうまくいかず、動作が停止してしまう故障全般を指す俗称です。
特に給弾不良や排莢不良などが原因で発生するトラブルです。
ホローポイント弾(JHP)とFMJの基本的な違いとは?
JHP弾の構造と目的

ホローポイント弾(Jacketed Hollow Point/JHP)は、弾頭先端に空洞を持つ設計が特徴です。
この空洞によって人体など柔らかい目標に命中した際に拡張し、貫通を抑えてストッピングパワー(目標を無力化する力)を高めることが目的です。
自衛・警察用途で多く採用されています。
ホローポイント弾についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
FMJ弾の構造と目的

フルメタルジャケット弾(FMJ)は、鉛の弾芯全体が金属ジャケットで覆われており、形状は丸く滑らかです。
貫通力に優れ、軍用として広く使われています。
給弾時に障害が起きにくく、信頼性の高い形状です。
JHP弾がジャムしやすい理由とは?
弾頭形状の違いが信頼性に影響

JHP弾はFMJ弾に比べて先端が平たく、空洞がある分、給弾時に「フィードランプ」や「薬室(チャンバー)」の入り口に引っかかりやすい傾向があります。
特に、ノーズプロファイル(弾頭前面の曲線形状)が鋭くないモデルほど、滑らかに装填されにくくなります。
フィードランプ(Feed Ramp)とは、弾倉(マガジン)から銃身(バレル)へ弾薬を送り込む際に、弾薬をスムーズに誘導するための坂道状の部品です。
弾薬の先端がこのランプに沿って滑り上がり、薬室(チャンバー)へとまっすぐに向かうように設計されています。

薬室(やくしつ/チャンバー/Chamber)とは、銃身(バレル)の後方にある、弾薬を装填して発射準備をするための部分です。
この空間に弾薬が収まることで、発射時に高圧ガスの力を効果的に利用できます。
リボルバーには装弾数と同数の薬室が備わっています。
旧型ピストルでは顕著な問題

ホローポイント弾は19世紀後半から利用されていましたが、当初は主にライフルやリボルバーで利用されていました。
1960年代に入ると、セミオートピストル向けとしてホローポイント弾が普及し、広く流行を始めたのは1980年代以降です。
しかし、ワルサーP38や1911ピストルのような初期の設計は、当時ホローポイント弾の使用を前提としていなかったため、弾頭形状や給弾特性との相性が必ずしも良くありません。
オリジナルの1911はフルメタルジャケット弾(FMJ)の使用を想定しており、初期のホローポイント弾では給弾不良や作動不安定が起きやすい傾向がありました。
こうした背景から、現代において当時の1911ピストルをホローポイント弾で運用する場合は、フィードランプの加工や給弾系統の調整が必要になる場合があります。
現代のピストルはJHP弾対応が進んでいる
フィードランプの改良

グロック、S&W M&P、SIG P320などの近代的ピストルでは、フィードランプの角度や幅が改良され、JHP弾でも滑らかに薬室へ進入できる設計が施されています。
これにより、JHP弾の給弾信頼性は大幅に向上しています。
ネット上の都市伝説として「ポリマーフレームの柔軟性が微細な衝撃を吸収し、弾の装填を補助する」といった説もありますが、これには根拠がありません。
ポリマーフレームの柔軟性によって反動が吸収されるのは事実ですが、装填不良を防止する効果はありません。むしろ、マガジンと銃身の位置関係にズレが生じるとジャムのリスクが高くなる可能性があります。
信頼性の高いJHP弾とその選び方
実績あるJHP弾ブランド

デフェンス用途や法執行用途で使用されるホローポイント弾薬の中でも、以下の5種類は特に高い作動信頼性が報告されています。
いずれもセミオートピストルでの使用実績が豊富で、給弾不良の発生率が低いとされています。
これらの弾薬はいずれも高い信頼性を持っていますが、JHP弾は同一のピストルであっても相性の差が生じる場合があります。
特定の銃種によっては、特定ブランドの弾薬で給弾不良が発生するケースもわずかに報告されています。そのため、ディフェンス用途で使用する場合は、実際に使用する銃と組み合わせて50~250発程度の実射テストを行うことが推奨されます。
JHP弾の信頼性を高めるための工夫
ジャムのリスクを低減するために、以下のような対策が有効です。
JHP弾は目的に適した優れた弾種ですが、すべてのピストルで確実に作動するわけではありません。
繰り返しになりますが、実射テストによる「銃と弾薬の相性確認」は必須です。

リップ(Lip)とは、マガジンの上部にある、弾薬を保持するための金属の突起部分です。
給弾時に弾薬を適切な位置で送り出す役割があります。
ジャムの発生頻度と条件

銃は適切に整備・清掃され、品質の高い弾薬を使用していれば、作動不良(ジャム)が発生する頻度は極めて低くなります。
ジャムの発生頻度は、以下の要因に大きく左右されます。
また、銃の種類によってもジャムの発生率は異なります。
機構が複雑で反動利用による作動に依存するセミオートピストルは、構造が単純なリボルバーよりジャムが発生しやすい傾向があります。
一方で、AK-47のような軍用小銃は悪条件下でも高い信頼性を発揮し、ジャムが極めて少ないことで知られています。
現代の銃であれば、適切な整備と高品質な弾薬、そして過酷すぎない環境下での使用により、ジャムの発生は数千発に1回未満という低頻度に抑えられます。
ジャムの多くは、銃そのものの欠陥ではなく、整備不足、弾薬不良、または操作ミスが原因です。
ジャムについては以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
ホローポイント弾(JHP)は、その先端が平らで空洞になっているため、給弾時に銃の部品に引っかかりやすく、ジャム(弾詰まり)を起こしやすいと言われています。
一方で、フルメタルジャケット弾(FMJ)は先端が丸く滑らかなため、ジャムが起こりにくいとされています。
この問題は、特に1911ピストルのような旧式の銃で顕著でした。これらの銃はFMJ弾の使用を前提に設計されていたため、JHP弾を使用すると給弾不良が発生しやすい傾向があります。
しかし、現代の銃器はJHP弾に対応するよう改良が進んでいます。フィードランプの形状が最適化されたことで、JHP弾でも高い信頼性で給弾できるようになりました。
ホローポイント弾使用時のジャムを防ぐには、高い信頼性を持つJHP弾を選ぶことも重要です。フェデラルHSTやスピアー・ゴールドドットなど、法執行機関で採用実績のあるブランドは、作動不良が少ないことで知られています。
また、JHP弾を安全に使用するためには、実際に使う銃で複数の種類の弾薬を試射し、相性を確認することが必要です。
フィードランプの研磨やマガジンの状態確認といったメンテナンスも、ジャムのリスクを減らす上で有効な対策となります。