銃弾の形状と種類:弾頭の違いによって異なる効果

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この記事の要約

  • 銃弾は形状や内部構造によって貫通力やダメージが大きく変わり、用途に応じて使い分けられる。
  • フルメタルジャケット(FMJ)、ホローポイント(HP)、ソフトポイント(SP)など多様な種類があり、それぞれ軍用・狩猟・護身などに適している。
  • 着弾後の変形や拡張の仕組みが殺傷力や二次被害に直結し、規制や使用環境にも影響を与えている。

弾頭は装薬の燃焼によって発生した高温高圧のガスに押されて飛びます。

弾薬によってそれぞれパワーが異なり、弾頭の形状や内部構造によってもターゲットに与えるダメージの大きさが異なります。

また、弾頭には様々な種類があり、それぞれ特性が異なるため用途によって使い分けられています。

今回は、弾頭形状の違いとその効果について解説します。

目次

フル・メタル・ジャケット(FMJ)

ホローポイント弾画像
FMJイラスト画像
  1. ジャケット(被甲): 弾頭を覆う金属製の外装で、精度や貫通力を向上させる役割を持つ。
  2. コア(弾芯): 弾頭の内部にある主要な金属部分で、貫通やダメージを与える中核部分。
  3. パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  4. ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  5. プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。
  • 軍用や射撃練習用として広く使用されている弾頭です。
  • 鉛のコアを銅のジャケット(被甲)で覆う構造です。
  • 日本語では完全被甲弾と呼ばれます。
  • 低コストで大量生産できるため、軍用や民間で最も幅広く利用されているタイプであり、最も作動不良が起きにくい信頼性の高いデザインです。
  • 貫通力が高く体内での慣性エネルギー消費が小さいため、警察や護身用としてはほとんど使用されません。
  • アメリカの警察では1990年代頃を境に使用されなくなりましたが、日本警察では現在も使用されています。

フル・メタル・ジャケッテッド・フラット・ノーズ(FMJFN)

fmjfn
  • フル・メタル・ジャケット(FMJ)の先端を平らにした形状。
  • 紙のターゲットを撃つと綺麗な丸い穴が空くので、どこに命中したか遠くからでも視認性が良い利点があります。
  • 貫通力はFMJに劣ります。

エクスパンディング・フルメタルジャケット(EFMJ)

EFMJガードドッグ弾
画像出典:shootingillustrated.com
  • 着弾時に拡張するフルメタルジャケット弾です。
  • ホローポイント弾は人体など流体に対して拡張する設計であるのに対し、EFMJはターゲットの種類に関係なく拡張しやすいため、流れ弾などの二次被害を軽減します。
  • 内部にポリマーを使用しているため弾頭重量が軽量となり、ホローポイント弾より命中精度や貫通力が劣る傾向があります。
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ホローポイント(HP)

ホローポイント弾画像
ホローポイント弾
ホローポイント弾イラスト画像
  1. ホローポイント・キャビティー(先孔): 弾頭先端の空洞部分で、命中時に拡張し威力を高める構造。
  2. ブレット(弾頭): 発射後に標的に向かって飛ぶ金属製の弾体。
  3. パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  4. ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  5. プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。

ホローポイント弾とは、弾頭の先端に穴 / 凹み(hollow)が備わっている弾薬です。

人体などに着弾すると流体によって穴が拡張され、拡張した弾頭によってターゲットに対し大きなダメージを与えます。

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ジャケッテッド・ホロー・ポイント(JHP)

ホローポイント弾画像
ホローポイント弾イラスト画像
  1. ホローポイント・キャビティー(先孔): 弾頭先端の空洞部分で、命中時に拡張し威力を高める構造。
  2. ジャケット(被甲): 弾頭を覆う金属製の外装で、精度や貫通力を向上させる役割を持つ。
  3. コア(弾芯): 弾頭の内部にある主要な金属部分で、貫通やダメージを与える中核部分。
  4. パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  5. ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  6. プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。
  • 最も多く流通するホロー・ポイント弾がジャケッテッド・ホローポイント(JHP)です。
  • 日本語では被甲先孔弾と呼ばれます。
  • 着弾後に体内で先端が裂けることでターゲットに対して大きなダメージを与えます。
  • 弾頭先端に穴が空けられ弾頭が裂けやすくなっていますが、銅のジャケットに包まれているため適度な貫通力を持ち、効率的にストッピング・パワーを引き出します。
  • 対人用や狩猟用としてポピュラーな弾頭です。
  • 弾頭先端まで銅のジャケットにカバーされているため、オートマチックの銃において装填の際のジャム(装填不良)の確率を低下させます。
  • 私の個人的経験上、FMJより命中精度が高い印象があります。先端の窪みが気流に良い影響があるようです。

セミ・ジャケッテッド・ホロー・ポイント(SJHP)

銃の画像
SJHP 画像出典:Usconcealedcarry.com
  • JHPと似ており、弾頭先端の鉛が露出し、半分しかジャケットに包まれていない弾頭です。
  • 主に護身用(セルフディフェンス)を目的として使用されます。
  • 先端だけ鉛が露出しており、側面をジャケットで覆うことで着弾時の拡張を一定レベルに抑えつつ、貫通力を強化した設計です。
  • 着弾時の拡張性を低く抑え、JHPよりも貫通力が高い特徴があります。
  • ピストルではジャムが多くなりやすいため、リボルバーで利用されます。
  • 1970~1980年代のアメリカの警察ではリボルバーの弾薬として定番でした。

レッド・ホロー・ポイント(LHP)

銃の画像
LHP 画像出典:luckygunner.com
  • レッド(鉛)がジャケットで覆われていないホローポイント弾頭です。
  • 着弾時に最も裂けるスピードが速く、貫通力の弱い弾頭です。
  • ターゲットを貫通させたくない場合に有効です。
  • ピストルでは.22LR口径で広く利用されていますが、9mm~.45ACPといった口径ではほとんど利用されていません。
  • ピストルで使用するとジャムが多い傾向がありますが、リボルバーとは相性の良い弾頭です。

ソフト・ポイント(SP)

ソフトポイント弾は、先端がジャケットで覆われておらず、鉛が露出している弾頭です。

ジャケッテッド・ソフトポイント(JSP)

ソフトポイント弾イラスト画像
  1. ソフトポイント:コアが露出し、拡張性と貫通力のバランスを重視した設計。
  2. ジャケット(被甲): 弾頭を覆う金属製の外装で、精度や貫通力を向上させる役割を持つ。
  3. コア(弾芯): 弾頭の内部にある主要な金属部分で、貫通やダメージを与える中核部分。
  4. パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  5. ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  6. プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。
  • 弾頭の先端部分の鉛が露出しており、着弾時に変形して拡張します。
  • 弾頭の側面と後部が硬い金属製の被甲で覆われており、弾道の安定性を実現すると同時に銃身の汚れを防ぎます。
  • 貫通力が比較的高く、障害物を突破しやすい傾向があります。
  • ソフトポイント部分が命中時に変形し、ダメージを与えやすい性質を持ちます。
  • ホローポイント弾とフルメタルジャケット弾(FMJ)の中間的な特性を持ちます。
  • 主に狩猟用として利用されます。
  • 飛距離や命中精度が良好で、弾道性能に優れます。
  • 人体を貫通しやすいため、都市環境における対人用としては二次被害のリスクがあり不向きです。

セミ・ジャケッテッド・ソフト・ポイント(SJSP)

銃の画像
画像出典:fflone.com
  • ソフト・ポイントの基本形。
  • 先端だけ鉛が露出し、その他は銅で覆われています。
  • いずれも適度なストッピング・パワーを持ちながら、着弾と同時に先端が丸く潰れ(マッシュルーミングする)始め、ホロー・ポイントより貫通力があります。
  • 対人用や大口径の狩猟用として広く使用されます。
  • 鉛が露出しているためチャンバー(薬室)に送られる過程で滑りが悪く、オート・ピストルに適していません。
  • リボルバーに適した弾頭です。

ホロー・ソフト・ポイント(HSP)

銃の画像
HSP 画像出典:bulkammo.com
  • .44マグナムや.30カービンなどで使用される古い設計の弾頭であり、次第に市場から消えつつあります。
  • 構造はセミ・ジャケッテッド・ホロー・ポイント(SJHP)と似ていますが、先端の穴の大きさが小さい特徴があり、一般的なホローポイント弾よりも貫通力を高めています。
  • ソフト・ポイントの弾頭先端に穴をあけ、ホロー・ポイントの効果を狙ったソフト・ポイントとホロー・ポイントの中間的存在です。
  • ライフルよりハンドガンで多く利用されます。
  • 人体に対する効果はJHPの方が効率的です。

セミ・ジャケッテッド・フラット・ポイント(SJFP)

jsp
  • ソフト・ポイントの先端が平らになっているバージョンです。

レッド・ラウンド・ノーズ(LRN)

22lr
  •  レッド(鉛)のラウンドノーズ(丸い先端)の弾頭です。.22LRなど小口径ピストルやリボルバーで幅広く利用される弾頭で、最も安価で命中精度が高いのが特徴です。
  • 弾頭は鉛オンリーなので柔らかく、大量に撃ちつづけると銃身内の油分が消え、ライフリングの溝に鉛が固着(レッディング)することがあり、クリーニングに手間がかかる厄介さがあります。

ワッドカッター(WC)

WCワッドカッター
  • 弾頭の先端が平らになっている、紙のターゲットを撃つための弾です。
  • 紙に命中すると丸くキレイに切り取られたような穴が空きます。
  • 長い距離では命中精度が悪いため、近距離専用です。
  • 主にリボルバーで多く利用されます。
  • ワッドカッターはジャケットに覆われていない鉛オンリーの弾頭が多数派を占める傾向があります。

セミ・ワッドカッター(SWC)

銃の画像
画像出典:concealednation.org
  • フラット・ポイントに近い形状の弾頭です。
  • ワッドカッターはオート・ピストルに不向きですが、セミ・ワッドカッターであればピストルにも使用可能です。(ただし信頼性は他の弾頭形状より劣ります)

ダブル・エンデッド・ワッドカッター(DEWC)

WCワッドカッター
  • 円柱状で先端や底など前後の区別がないため、個人で弾を製造する場合も間違えにくく製造しやすい弾です。

ベヴェルド・ベース・ワッドカッター(BBWC)

銃の画像
画像出典:tigersharkballistics.com.au
  • セミ・ワッドカッターやワッドカッターで底の部分に傾斜があり、気流を整えて命中精度を高めています。
  • 効果はライフル弾のボートテイルに似ています。

ホロー・ベース・ワッドカッター(HBWC)

銃の画像
画像出典:tigersharkballistics.com.au
  • エアガン歴が古い人は「つづみ弾」と言えばピンとくるかもしれません。弾頭の底の部分に空洞があり、ガス圧が底に加わることで周囲に広がって銃身の側壁に押し付けられ密閉性が高まり、弾速が向上します。
  • 高圧ガスで裂けてしまうためパワーのあるカートリッジには使用できません。

アーマー・ピアシング(AP)

銃の画像
12.7mm AP BZT44 画像出典:gunrf.ru
ポリマーチップドホローポイント弾断面図
ポリマーチップドホローポイント弾断面図 画像出典:Grasyl, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
  • 弾頭内部にスチールなど硬い芯を含んだ弾頭で、日本語では徹甲弾と呼ばれます。
  • 着弾時の弾頭の変形が少ないため、高い貫通力を持ちます。
  • 貫通できる鋼板の厚みは着弾時の弾頭エネルギー量によりますが、7.62x39mmではおおむね5mm、.50BMGで25mm程度を貫通できます。

着弾後の弾頭

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弾頭は多くの場合、内部のコア(弾芯)と外側を覆うジャケット(被甲)による二重構造で作られています。弾頭に使用される素材はさまざまで、ビスマス、プラスチック、スチール、真鍮、銅、亜鉛、アルミ、タングステン、ウラン、磁器などが組み合わせて用いられます。しかし、一般的には鉛、あるいは鉛の表面を銅で覆った構造が主流です。鉛が広く利用される理由は、コストが低いこと、比重が大きいこと、加工しやすいことなどの利点があるためです。鉛は柔らかいため、目標に命中すると変形しやすい特徴があります。

貫通力を重視した徹甲弾(AP弾 / アーマーピアシング弾)では、硬い金属製の芯が使用されますが、それ以外の多くの弾頭は着弾時に大きく変形したり、場合によっては破片化することがあります。弾頭がキノコ状に広がる現象は「マッシュルーミング」と呼ばれ、効率よく変形することでエネルギーを伝達しやすくなるため、狩猟用途では重要な性能とされています。アメリカでは、多くの州でマッシュルーミングしない弾頭の使用を狩猟で禁止しており、これは獲物を不必要に苦しませず、確実に仕留めるための配慮によるものです。

ホローポイント弾は、先端に空洞を設けた構造を持ち、柔らかい目標に命中すると先端が裂けて広がるよう設計されています。これによりエネルギーが効率よく伝達され、弾頭が体内で減速しやすくなる特徴があります。弾頭がどのタイミングで展開するかは製品設計によって異なり、着弾直後に大きく広がるものから、進行しながら徐々に展開するものまでさまざまです。

一方で、ホローポイント弾はガラス、木材、石膏ボードなどの硬い素材に命中すると、先端が潰れたり空洞が詰まることで展開が阻害される場合があります。その結果、弾頭がフルメタルジャケット(FMJ)弾のように変形せず貫通力が高まることがあり、状況によっては予期せぬ貫通が発生する可能性があります。たとえば、車両のフロントガラスを貫通した後、弾頭が展開せずにそのまま進行し、想定より深く貫通するケースが報告されています。ただし、貫通の程度は弾頭重量、速度、角度、骨や金属フレームへの接触など、さまざまな条件によって変化します。

フルメタルジャケット(FMJ)弾は、ジャケットで弾頭全体を覆った構造を持ち、製造コストが低く、軍用やスポーツ射撃で広く使用される標準的な弾頭です。金属やコンクリートなど硬い物質に命中した場合は変形しますが、柔らかい目標に対しては原形を保ちやすい特徴があります。また、先端が尖っているため、マガジンから薬室への装填がスムーズで、相対的にジャム(装填不良)が起こりにくいという利点もあります。

弾頭の底面

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左から、9mmPara薬莢、.45ACPキャストブレット(鉛100%)、.45ACP TMJ/CMJ、.45ACP FMJ

フルメタルジャケット(FMJ)弾はジャケットで弾頭全体を覆っていますが、底面(ベース)には鉛のコアが露出している構造が一般的です。これに対し、底面まで完全にジャケットで覆った弾頭はトータル・メタル・ジャケット(TMJ)、またはコンプリート・メタル・ジャケット(CMJ)と呼ばれます。

底面がジャケットで覆われているかどうかは、本来、射撃性能や命中精度に大きな影響を与えるものではありません。しかし、鉛は融点が低いため、発射時の高温・高圧によって底面の鉛がわずかに溶け、空気中に微量の鉛が拡散することがあります。このため、健康面への配慮から、屋内射撃場では使用弾頭をTMJ / CMJに限定している場合があります。

TMJ / CMJには「溶けた鉛による銃身内部の汚れを防ぐ」という利点が挙げられることもありますが、実際にはその影響はごくわずかです。銃身内部の汚れの主な原因は、装薬(パウダー)や雷管(プライマー)の種類や品質によるものです。

一方、底面に鉛が露出している弾頭では、発射時の圧力によってパウダーが弾頭底面に押し付けられ、パウダー粒の痕が残ることがあります。この痕跡を分析することで、使用されたパウダーの種類や銃の特徴を推定しやすくなるため、犯罪捜査では重要な判断材料のひとつとなっています。

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