
この記事の要約:
- 7mmバックカントリーは高圧・高初速による「遠距離向け」の新世代ライフル弾。
- 8.6ブラックアウトは極端な高速ツイストで「近距離〜中距離の破壊力」と静音性を重視した弾薬。
- 狩猟スタイルにより最適解が異なり、どちらも現代的な用途に特化した設計思想を持つ。
近年、狩猟用ライフル弾には新しい設計思想が次々と登場し、従来の「大口径で強い反動」から、より軽量で扱いやすく、それでいて十分な威力を発揮できる方向へと進化しています。
本記事では、そうした新しい弾薬として注目されている7mmバックカントリーと8.6ブラックアウト(8.6 BLK)について解説します。
どちらも現代の狩猟スタイルに合わせて生まれた弾薬であり、用途によって得意分野が存在します。
7mmバックカントリー

| 項目 | 7mmバックカントリー |
|---|---|
| 代表的な弾頭重量 | 155gr / 195gr |
| 代表的な初速 (24インチ銃身など) | 155gr:3,300fps 195gr:3,000fps |
| エネルギーの目安 | 約3,700〜3,900ft-lbs |
| 得意な射程 | 約600ヤード以上 |
| 設計の主眼 | 高圧・高初速による長距離性能 |
2025年に登場した 7mmバックカントリー(7mm Backcountry / 7mm BC / 7×61mm) は、ショートバレル(短銃身)・軽量ライフルでもマグナム級の性能を引き出すことを目的として、フェデラル社が約6年かけて開発した新型カートリッジです。
最大の特徴は、高圧設計による高初速です。24インチ銃身では155グレイン弾で約3,300 fps、195グレイン弾でも約3,000 fpsを達成し、20インチ銃身でも170グレイン弾で3,000 fps超を実現します。これにより、遠距離での弾道落下が少なく、風の影響も受けにくくなるため、山岳地帯や広大な草原での狩猟に大きな利点があります。
また、軽量ライフルでも反動を抑えつつ高性能を発揮できる点は、長距離を歩くハンターにとって大きな魅力です。設計は高BC弾の使用を前提にロングアクションへ最適化されており、5発のマガジン容量、フラットな弾道、扱いやすい反動を両立しています。
BC(Ballistic Coefficient/弾道係数)とは、弾が空気抵抗をどれだけ受けにくいかを示す数値です。 この値が高いほど、弾は空気を効率よく切り進み、速度が落ちにくく、風の影響も受けにくくなります。
そのため 高BC弾(high‑BC bullet) とは、細長い形状や最適化された後部形状によって空気抵抗を最小限に抑え、遠距離でも弾道が落ちにくく安定して飛ぶよう設計された弾のことを指します。
この高性能化は、米軍が求めていた「高初速で軽量プラットフォーム向けの弾薬」という研究の延長線上にあるとも言われています。
さらに、2026年にはレミントン社も採用を開始し、175グレイン弾(Core-Lokt、Tipped、Speer Impact)で20インチ銃身・約2,975 fpsを実現しています。ニッケルメッキケースはリロード(個人による弾薬製造)も可能ですが、高圧専用データが必要となります。
7mmバックカントリーのポイント:
- 高圧設計によりマグナム級の初速を実現
- 遠距離でも弾道が安定しやすい
- シカからムース(北米のヘラジカ)まで幅広く対応可能
Peak Alloy(ピークアロイ)について
Peak Alloy は、フェデラル社が特許を持つ一体構造の高強度スチール合金製薬莢で、7mmバックカントリーの性能を支える技術です。
- 従来の真鍮薬莢(約65,000 psi)を大きく超える最大 80,000 psi の高圧に対応
- 耐火金庫や原子炉にも使われる素材に近い高強度合金を使用
- 高圧により、ショートバレルでもマグナム級の初速を実現
(例:20インチ銃身で170〜175gr弾が約3,000 fps) - 反動の低減、7mm PRCより1発多いマガジン容量、ショートバレル+サプレッサー運用での耐久性向上といった利点を持つ
| カートリッジ | 20インチ銃身速度(170gr) | 最大圧力 | 薬莢素材 |
|---|---|---|---|
| 7mm Backcountry | 約3,000 fps | 80,000 psi | Peak Alloy スチール |
| 7mm PRC | 約2,850 fps | 約65,000 psi | 真鍮 |
| 7mm Rem Mag | ショートバレルでは低め | 約61,000 psi | 真鍮 |
フェデラルとフェデラルプレミアムの違い
Federal Ammunition(フェデラル)とFederal Premium(フェデラル・プレミアム)は同じメーカーで、Federal Premiumはその上位グレードの製品ラインを指します。
1977年以降の正式名称は「Federal Premium Ammunition」ですが、一般的には通常ラインを「Federal」、高性能ラインを「Federal Premium」と区別して扱っています。
- Federal(通常ライン)
- アメリカンイーグル(American Eagle)やチャンピオン(Champion)など、訓練・プリンキング・大量消費向けの手頃で実用的な弾薬が中心です。
- Federal Premium(上位ライン)
- 高品質の雷管・火薬・弾頭・真鍮を使用し、精度・耐久性・専門用途(狩猟・防衛・競技)に特化した弾薬を展開しています。
8.6ブラックアウト

| 項目 | 8.6ブラックアウト (8.6 BLK) |
|---|---|
| 代表的な弾頭重量 | 210gr / 288gr / 350gr |
| 代表的な初速 (24インチ銃身など) | 210gr(超音速):約2,000fps 288gr(サブソニック):約1,000fps 350gr(サブソニック):約1,200fps |
| エネルギーの目安 | 約700〜1,800ft-lbs |
| 得意な射程 | 約200〜300ヤード |
| 設計の主眼 | ショートバレル・サプレッサー前提の近距離性能 |
8.6ブラックアウト(8.6mm Blackout / 8.6 BLK / 8.6×43 mm)は、Q LLCが開発した.338口径(8.6mm)弾をサブソニック(亜音速)/スーパーソニック(超音速)両対応で使えるようにした新型カートリッジです。 ケースは6.5 クリードモアを短縮して8.6mmにネックアップしたもので、.308プラットフォームのマガジンやボルトをそのまま使用できます。
最大の特徴は、1:3〜1:4という極端な高速ツイストレートです。これにより、重い.338口径弾でも短い銃身で安定して飛翔し、50万rpmを超える回転によって 近距離で非常に強い終末効果を発揮します。
- ツイストレート(Twist Rate)
- 銃身のライフリングが弾を1回転させるのに必要な進行距離
- 例:1:3 なら「弾が3インチ進む間に1回転する」
- 数値が小さいほど回転が速く、重い弾や長い弾を安定させやすいのが特徴
- 終末効果(terminal effect)
- 実際に標的に与えた「結果」や「影響」
- 例:どれだけダメージを与えたか、ストッピングパワーとしてどう作用したか
- 終末性能(terminal performance)
- 弾丸が命中した後に発揮する「能力」や「特性」
- 例:貫通力、変形のしやすさ、エネルギー伝達効率
高速回転は、着弾時に弾頭へ強い外向きの力を与え、エクスパンディング(拡張)弾ではジャケットの分離やコアの膨張を助けます。通常は小さな効果ですが、重い弾頭の高rpmでは、この影響が大きくなります。
弾速は超音速弾で約2,000fpsと控えめですが、重い弾頭の高速回転が威力を補い、サブソニック弾でも中型獣に対してスーパーソニック弾に近い効果が期待できます。
また、サプレッサーとの相性が良く、静粛性を重視する狩猟やタクティカル用途に適しています。ショートバレルのAR-10やボルトアクションでも性能を発揮できる点も利点です。
開発者のケビン・ブリッティンガム(.300 Blackoutの生みの親)は、普及を促すために 弾薬設計をオープンソース化しており、幅広いメーカーが参入できる環境を整えています。
8.6ブラックアウトのポイント:
- ショートバレル・サプレッサー運用に最適
- 近距離での破壊力が高い
- 中型獣向けの設計思想

画像出典:Sombodysomewhere, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
| 項目 | 7mmバックカントリー | 8.6ブラックアウト (8.6 BLK) |
|---|---|---|
| 代表的な弾頭重量 | 155gr / 195gr | 210gr / 288gr / 350gr |
| 代表的な初速 | 155gr:3,300fps 195gr:3,000fps | 210gr(超音速):約2,000fps 288gr(サブソニック):約1,000fps 350gr(サブソニック):約1,200fps |
| エネルギーの目安 | 約3,700〜3,900ft-lbf | 約700〜1,800ft-lbf |
| 得意な射程 | 約600ヤード以上 | 約200〜300ヤード |
| 設計の主眼 | 高圧・高初速による長距離性能 | ショートバレル・サプレッサー前提の近距離性能 |
性能の違い:「得意な距離」と「得意な獲物」

7mmバックカントリーは、遠距離での安定性と威力が際立ちます。
600ヤードを超える距離でも十分なエネルギーを維持できるため、広い地形でのミュールジカやアンテロープ狩猟に強みがあります。
エルクやムースといった大型獣にも対応できる余裕があり、1丁で幅広い獲物を狙いたいハンターに向いています。

対して8.6ブラックアウトは、200〜300ヤード(約183〜274メートル)以内の中距離で真価を発揮します。
重い弾頭が高速回転することで、近距離では非常に強い衝撃と拡張を生じさせ、シカやイノシシなど中型獣に適しています。
サプレッサーを使用した静音性を重視する狩猟環境では特に有効です。

ただし、大型獣や危険獣となると話は別です。
8.6ブラックアウトはエネルギーが不足し、ムースやグリズリーには適しません。
7mmバックカントリーは数値上は対応できますが、デンジャラスゲーム(危険獣)に対してはより大口径を選ぶハンターが多いのが実情です。
結論、どちらの弾薬もクマ猟にはおすすめできません。
デンジャラスゲーム(Dangerous Game)とは、人間に重大な危険を及ぼす大型野生動物を対象とする狩猟カテゴリーのことです。
アフリカのバッファローや象、クマなど、攻撃性・体格・耐久力が高く、反撃のリスクが大きい動物が含まれます。


どちらを選ぶべきか ― 狩猟スタイルで決まります
最終的な選択は、どんな狩猟をするかによって決まります。
- 遠距離での射撃が多い
- 山岳地帯や広い草原での狩猟が中心
- シカからムースまで幅広く狙いたい
- 近距離〜中距離の狩猟が中心
- サプレッサーを使いたい
- 静かで扱いやすい銃を求めている
どちらも現代の狩猟スタイルに合わせて設計された優れた弾薬ですが、得意分野がはっきりしているため、用途に合わせて選ぶことで最大の性能を引き出すことができます。
参考文献
- Wikipedia ― 7mm Backcountry
- Wikipedia ― 8.6mm Blackout
- Federal Premium ― 7mm Backcountry Ballistics
- Q LLC ― 8.6 Blackout Technical Overview
- Shooting Times ― The 8.6 Blackout: New King of Subsonic Cartridges?
- Backfire ― 8.6 Blackout Ballistics Profile
- YouTube ― 7mm Backcountry Overview
- KIR Ammo ― The 8.6 Blackout: FAQ
- American Hunter ― An In-Depth Look at 7mm Backcountry
- Gun University ― 7mm Backcountry Review
- Phantom Defense ― 8.6 Blackout Ballistics and Performance
- Ammunition To Go ― 8.6 Blackout Ballistics
- Eastmans’ Blog ― Federal 7mm Backcountry: A Hunter’s Perspective
- Christensen Arms Blog ― 7mm Backcountry vs 6.5 Creedmoor
- Black Basin Outfitters ― 8.6 Blackout for Hunting
- Reddit ― Hunting with 8.6 Blackout / 7mm PRC Discussions
- MeatEater ― Best Bear Hunting Cartridges
- Outdoor Life ― 8.6 Blackout Cartridge Analysis
- その他、多数の資料
