弾薬の口径の表記について。
モーゼルC96の使用弾薬「.30モーゼル」は7.63×25とか7.62×25と表記されます。またP.08以前のルガー「.30ルガー」は同じ.30口径なのに7.65×22とされた資料があります。.32ACPは表記の上では0.02インチ大きいはずですが7.65×17だそうです。
これらの弾薬の弾頭の直径は実際に0.02mm~0.03mm違っているのでしょうか?
あるいは実は弾頭は互換性がありケースのサイズの相違だけ、ということなのでしょうか?
またこの小数点以下の数字は実測値でしょうか?
あるいはインチからメートルに変換したときの数学的な数値かなとも思うのですが、如何なのでしょうか?
弾薬の表記と実測値は異なります。
類似弾薬の比較
ここでは類似の弾薬として7.62mmトカレフ、.30マウザー、.30ルガーを例とします。
弾薬名 | 7.62x25mmトカレフ | .30マウザー(7.63x25mm) | .30ルガー(7.65x21mm) |
弾頭径 | 0.307インチ(7.7978mm) | 0.308インチ(7.8232mm) | 0.308インチ(7.8232mm) |
ネック径 | 0.33インチ(8.382mm) | 0.332インチ(8.4328mm) | 0.322インチ(8.4328mm) |
ショルダー径 | 0.37インチ(9.398mm) | 0.37インチ(9.398mm) | 0.374インチ(9.4996mm) |
ベース径 | 0.38インチ(9.652mm) | 0.381インチ(9.6774mm) | 0.388インチ(9.8552mm) |
リム径 | 0.39インチ(9.906mm) | 0.39インチ(9.906mm) | 0.391インチ(9.9314mm) |
ケース長 | 0.99インチ(25.146mm) | 0.99インチ(25.146mm) | 0.85インチ(21.59mm) |
弾薬長 | 1.34インチ(34.036mm) | 1.36インチ(34.544mm) | 1.15インチ(29.21mm) |
プライマーサイズ | 0.175インチ(4.445mm) | 0.175インチ(4.445mm) | 0.175インチ(4.445mm) |
それぞれスペックはこのようになりますが、これは厳密には正しい数値ではありません。
弾薬は職人が一発ずつ手作りで0.1mm単位の製造をするわけにはいかないので、必ず製造時に誤差が生まれます。
.30ルガー(7.65x21mm)の規格
下図はSAAMI規格の.30ルガーのスペックです。
実際の弾薬はサイズが微妙に異なるため、限界値を決めて、その範囲内に収まるよう規格が定められています。
弾の先に「.3095-.0030」と記載されていますが、これは弾頭の直径が「0.3065インチ~0.3095インチの範囲内」という意味です。
その下の「(7.861)」はミリメートル表示で7.861mmを意味し、7.861mmより0.076mm小さいサイズまでは規格内という意味を持ちます。
よって、.30ルガーの弾の直径は、7.861mmでもあり、7.785mmでもあります。
.30ルガーは7.65x21mmと呼ばれますが、弾の直径は7.65mmではありません。
では次に、チャンバー(薬室)とバレル(銃身)のサイズを見てみます。
.30ルガー(7.65x21mm)のチャンバー規格
下図はチャンバーとバレルの内径を表しています。
上図の右上に「BORE DIA(ボアダイアメーター/山径)」と「GROOVE DIA(グルーブダイアメーター/谷径)」と記載されています。
銃のバレルにはライフリングの溝が刻まれており、バレル内径の山から山での内径をボアダイアメーター(ランドダイアメーター)と呼び、谷から谷までの内径をグルーブダイアメーターと呼びます。
そして、口径(ボア)とは「ボアダイアメーター(ランドダイアメーター)」を指します。
.30ルガー(7.65x21mm)の口径は0.3008インチ(7.64mm)で、グルーブダイアメーターは0.3112インチ(7.904mm)です。
ライフリングに弾を食い込ませながらバレル内を通過させるには、弾の直径はボアダイアメーターより大きい必要があります。
.30ルガーの弾の直径は7.785~7.861mmなので、このバレル(内径7.64~7.904mm)を通過可能となっています。
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