.22LRという小さな弾薬は、護身用(セルフディフェンス)として利用するのに適した弾薬なのでしょうか?
この問題について解説します。
.22LRとは?
.22LRの歴史
.22ロングライフル弾(.22LR)は、1887年にアメリカのJ.スティーブンス・アームズ&ツール・カンパニー社が開発しました。
この弾薬は、.22 BBキャップ弾(1845年開発)と.22ショート弾(1857年開発)をベースとし、.22ロング弾(1871年開発)の薬莢に弾頭重量40グレイン(約2.6g)の弾頭を組み合わせて誕生しました。
これにより従来より全長が長くなり、弾速や性能が向上しています。
.22LRの登場により、それまで利用された.22エクストラロング弾(1880年~1935年製造)は姿を消すこととなりました。
年代 | 開発されたカートリッジ |
---|---|
1845年 | .22 BB キャップ |
1857年 | .22 ショート |
1871年 | .22 ロング |
1887年 | .22 ロングライフル |
.22LRの特性
.22LRに人気がある理由は、「反動が小さく撃ちやすい」「命中率が高い」「銃声が比較的小さい」「低価格」「流通量が多く入手しやすい」などの特徴があるからです。
このような点から扱いやすく、初心者から上級者まで幅広く利用されています。
レクリエーション射撃、小動物狩猟、害虫(害獣)駆除に最適で、.22LRはボーイスカウトや軍の訓練で基本的な射撃技術を教えるためにも使用されます。
また、多くのハンドガンメーカーは、.22LR用の変換キット(コンバージョンキット)を提供しており、所有する銃を.22LRに対応させることが可能です。
これにより、9mmや.45ACPといった比較的高価な弾薬を使用する銃で、安価に.22LRを用いた射撃が行えます。
また、屋内射撃場では強力な弾薬の使用が禁止されていることがあるため、これらの変換キットは人気があります。
.22LRのスペックは以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
弾丸の直径 | .223 インチ (5.7 mm) |
ケースの種類 | リムドカートリッジ(ストレートケース) |
弾頭重量 | 20 ~ 60 グレイン (1.3 ~ 3.9 g) |
銃口初速 | 575 ~ 1,750 fps (175 ~ 533 m/秒) |
マズルエナジー | 45 ~ 183 lbf (装填量により異なる) |
最大有効射程距離 | 最大 150 ヤード (小動物狩猟時の最大推奨距離) |
.22LRはメーカーやブランドによって様々な種類があり、弾頭重量は20〜60グレイン(約1.3〜3.9g)、弾速は575〜1,750フィート毎秒(175〜533m/s)と幅広いバリエーションがあります。
一般的に、「50発入」や「100発入」の箱で販売されることが多く、なかには「500発入」や「5,000発入」のケース販売もされています。
年間生産量は推定で20〜25億発に達し、アメリカでは10億発以上が.22LRとされています。
.22LRの種類
.22LRにはスタンダード(標準弾)、ハイベロシティー(高速弾)、ウルトラベロシティー(超高速弾)サブソニック弾(亜音速弾)、マッチグレードなどの種類が存在します。
種類 | 説明 |
---|---|
スタンダード(標準弾) | 標的射撃や練習用など一般向け |
ハイベロシティー(高速弾) | 1,200fpsを超える弾速 狩猟や長距離射撃に適している |
ウルトラベロシティー(超高速弾) | 1,400fpsを超える弾速で、通常は軽量弾を使用 |
サブソニック弾(亜音速弾) | サプレッサー用として利用される低速弾 騒音の原因となるソニックブームを発生しない |
マッチグレード | 競技射撃用に精密に製造された弾薬 |
.22LRホローポイント弾は護身用として有効?
これはCCIの.22LRホローポイント弾が護身用として有効か?を検証した動画です。
この動画からわかるポイントは、.22LRほどの軽量弾頭で小口径では弾速が遅いと弾頭が拡張しないことがあるという問題点です。
同じ弾をピストルとライフルで撃ち比べた結果、ピストルを使用した場合では弾速が足りず拡張(マッシュルーミング)しないため、着弾後の抵抗が小さいため貫通力が高くなります。
一方、ライフルを使用すると弾速が高まるため着弾時に拡張が起こり、ピストルから発射される場合と比較して貫通力が低くなります。
本来、高いストッピングパワーを得るには「弾頭の拡張」と「貫通力」の両方が必要となりますが、.22LRのような軽量弾では限界があります。
軍や法執行機関での利用
かつて1960~1970年代のアメリカの法執行機関では、.22LRのサブマシンガンを制式採用していた時代がありました。
しかし、キャストブレット(鉛弾)では貫通力が高いうえ、フルオートを利用していたこともあり、二次被害の問題から使用されなくなりました。
現在、イスラエルの治安部隊は.22LRのルガー10/22を暴徒鎮圧用などに利用していますが、こうした例は多くありません。
ストッピングパワーの問題
護身用として使用する場合、ターゲットとなる攻撃者を行動不能にする目的があるため、神経、臓器、血管にダメージを与えたり、流血によって血圧を低下させる効果がある弾薬が有効になります。
これは液体の入った容器から液体を抜くようなもので、.22LR(5.56mm)と9mmを比較したとき、.22LRで9mmより多く出血させるには、1発だけでなく2発3発と多くの穴を空けることで達成できます。
.22LRのような弾頭重量と腔圧の値が小さい弾薬は反動が小さいため速射しやすく、速射時でも命中率が高くなる傾向があります。
このメリットを活して短時間に多くの弾を命中させることが可能なら、総合的に有効なストッピングパワーが期待できますが、ストレス状況下では普段の状態より命中率が低下するため簡単なことではありません。
攻撃者を無力化しない選択?
.22LRを護身用として選択するもうひとつのアイディアは、「攻撃者を無力化する」のではなく、「攻撃者を追い払う」という目的で利用することです。
1発の.22LRだけでは致命傷となる部位に命中しない限り、行動不能に陥る確率が低いため、攻撃者に逃走能力を残しておけます。実際、この使い方を目的に.22LRを護身用として選択している人もいます。
しかし、これはすべてケースバイケースです。
1発被弾した攻撃者が激高し、より攻撃的になった事例があります。
また、2発3発と続けて被弾することで戦意喪失し逃走する事例もあれば、攻撃者の体力が続く限り倒れるまで攻撃を続け、危険な状況に陥った事例もあります。
またあるいは、当たり所次第により一発で行動不能になった事例もあります。
推奨されない最大の理由
結論として、.22LRを護身用として使用するのはおすすめしません。
攻撃者を無力化する能力については、複数弾を命中させると効果が期待できますが、銃や弾薬の信頼性の問題から対人用として利用することを避けた方が良いでしょう。
.22LRのようなリムファイアカートリッジは、軍や法執行機関で使用されるセンターファイアーカートリッジと比較して不発率が高いという問題があり、一瞬の行動が生死を分ける状況において不発率の高いリムファイアカートリッジは適切な弾薬とはいえません。
また、.22LRで利用されるリムドケースは、ケースのリム径が大きいためマガジン内で引っ掛かりやすく、ジャムを起こしやすい傾向があります。
そのためオートピストルとの相性が悪く、作動の信頼性が劣ります。
※リボルバーやシングルショットピストルなどではこの問題はありません。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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