前回はMOAやMIL(ミル)について解説しましたが、今回はミルを利用したスコープの使い方(読み方)について簡単に解説します。
SVD PSO-1
ドラグノフ・ライフル等に装着されるロシア製スコープ(PSO-1)は、ゲームに登場することが多く知名度が高いモデルだと思います。
PSOとはロシア語で「狙撃用光学サイト」の意味を表す頭文字で、倍率やレティクルのデザインが異なる複数のPSOが存在します。
PSO-1は7.62x54Rという弾薬の使用を想定した設計となっており、他の一般的なスコープとは異なるレティクルを採用しています。
下の画像は、私がカリフォルニアでSVDを射撃した際、装着されていたPSO-1を覗いた様子です。
左の数字、2、4、6、8、10は距離を表し、それぞれ200メートル、400メートル、600メートル・・・と読みます。
ターゲットの身長を1.7メートルと仮定して当てはめることでターゲットまでの距離を素早く測ることができます。
「^」のマークは一番上が距離1,000メートル以下で使用され、ターゲットと重ねて撃ちます。
その下、二番目が1,100メートル、三番目が1,200メートル、一番下が1,300メートルの距離でそれぞれ使用されます。
弾は放物線を描いて飛ぶため、距離によって射角を変えて撃つ必要があります。
倍率が4倍という低いパワーのPSO-1は、恐らく600~700メートル以下での使用に適しており、それ以上の距離を狙うのは至難の業です。
700メートル以上ではあまり実用的とは言えず、倍率は6~10倍以上が必要でしょう。
BDC (ブレット・ドロップ・コンペンセイション)
軍用として使用されるスコープにはBDCと呼ばれる機能があります。
射撃する段階で弾道を計算したり、その都度クリックを数えるのは時間を要するため、使用弾薬によって決められた位置までノブを回せば自動的に正しい位置にレティクルが定まるスコープを一般的に「BDCスコープ」と呼び、同様の機能を持つレティクルは「BDCレティクル」と呼ばれます。
PSO-1にはこのBDC機能が備わっており、エレベーション・ノブ(ターレット)を回したり、「^」のレティクルに合わせることで素早くターゲットを狙って射撃できます。
画像出典:Dragunov.net
PSO-1のエレベーション・ノブには0~10の数字が刻まれており、ノブが「0」の位置で100メートルの距離でゼロインされたとき、200メートル先を狙うにはノブを「1」に合わせます。
同様に、300メートル先を狙うにはノブを「2」に合わせます。
PSOには0~20の目盛りが刻まれたものもありますが、それはさらに細かく距離を設定することができます。
ノブ(ターレット)の目盛りと距離 (単位はメートル)
0 | 1 | 2 | 3 | 3.5 | 4 | 4.5 | 5 | 5.5 | 6 | 6.5 | 7 | 7.5 | 8 |
100 | 200 | 300 | 350 | 400 | 450 | 500 | 550 | 600 | 650 | 700 | 750 | 800 | 850 |
※以上の数字は7.62x54Rを水平に撃った場合のみを想定しており、撃ち上げや撃ち下ろしの状況、または異なる弾薬では結果が異なります。
PSO-1で距離を測るもうひとつの方法
PSO-1を覗くと見える「水平に伸びる目盛り」は、すべて1ミル間隔で刻まれています。
これは横風に対処する際に使用しますが、距離を測る際にも使用されます。
1ミルは距離100メートルで対象が10センチメートル、距離1キロメートルで対象が1メートルです。
ミルを使用して距離を計算するには、次の公式を使用します。
対象の大きさ X 1000 ÷ ミル = 距離
仮にターゲットの傍にロシアの戦車「T-90」が停車しているとき、目盛りを戦車に合わせると車幅は5ミルだったとします。
T-90の車幅は3.78メートルなので、これを計算すると、3.78 x 1000 ÷ 5 = 756となり、戦車までの距離は756メートルと予想されます。
そしてエレベーション・ノブを回してノブの目盛りを7に合わせたら「100メートルゼロ」で750メートルに設定されるので、誤差を修正してあとは撃つだけです。(もちろん、風や高度、高低差を読むのも重要です)
物体の大きさはスナイパーにとって重要な情報であり、彼らは対象の身長だけでなく、座ったときの高さ、タイヤのホイール径、窓枠の長さ、ドラム缶の高さなど、あらゆる物体の大きさが参考にされます。
ミルドット・スコープ
下図は米陸軍で採用されているミルドット・スコープを表しています。
黒点が等間隔に並んでおり、黒点の中心から隣の黒点の中心まで1ミルとなっています。
第一次世界大戦で砲撃の弾着修正で使用されたのがミルドットの始まりであり、双眼鏡や潜水艦の潜望鏡などで使用され、現在の形に完成したのは1970年代の米海兵隊によるものでした。
米海兵隊が使用しているミルドットは黒点が楕円形なので陸軍とは読み方が若干異なりますが、黒点の中心同士が1ミルであることは陸軍と共通です。
先ほど述べた通り、単位はミルを使用しているのでターゲットまでの距離を測ることが可能です。
次回はミルドットを利用したムービング・ターゲット(移動目標)の撃ち方と計算方法について解説します。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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