1989年に登場した韓国軍制式ピストルDP51(K5)は、センチュリーアームズやキンバーが代理店となってDaewoo DP51の名で米国市場で販売されていました。
ところが、1994年のアサルトウェポン規制法により米国内への輸入が規制され、デーウーも不況により解体しS&T Motivと社名変更した現在では、過去に輸入された在庫分のみが米国市場で売買されています。
外国製品が輸入禁止となった場合、困るのは故障したときのパーツの入手です。
ネジやスプリングといった類はサードパーティーによって提供されますが、DP51のスライド、フレーム、バレルは入手困難。
そこでDP51ユーザーがとる簡単な入手方法は、”パーツ取り”にもう一丁購入するというもの。
そもそも本体価格が200ドル台という安物ピストルなので、ある意味ユーザーフレンドリーでしょうか。
実射レポによってはアキュラシーに問題があると言われ、市場での評判は「特に誉める点もなく、価格相応」というのが一般的かと思われます。
2011年、ワシントン州レッドモンド(シアトル近郊)にライオンハート社が設立されました。
元デーウーのS&T Motiv傘下企業であり、デーウーDP51をリニューアルしたピストルを製造販売しています。
これって、S&T Motiv単独の米国進出なのでしょうか?それとも韓国政府の補助付の国策?・・・実態はさておき、名前だけは新しい企業なので知名度が低い(そもそもデーウーDP51の頃ですら市場ではマイナーな存在でしたが)のですが、最近は多方面で宣伝に専念しているようです。
先日Facebook上の公式ページにアップされた画像をみると、発射テストの画像にはS&Tの文字が。
もう、S&Tブランドで売れば良いじゃない・・・と思ってみたり。
現在、ライオンハートLH9モデルのみが流通しています。
今後、コンパクトモデルのLH9CとMKIIが続くようです。
LH9はDP51の発展バージョンであり、スライドにフロントセレーション追加、グリップチェッカリングの大型化などが大きな違いですが、この内容で615ドルはボッタクリではないかと思います。
個人的には、615ドルもあればベレッタ 92FSか500ドルでGlockを買います。
DP51はS&WM59のパクリ見た目がS&Wオートに近く、実際S&W M59シリーズのマガジンを共用できるという特徴がありますが、この新モデルも共用できるのかは定かではありません。
構造そのものはどうやらDP51と同じようで、FNハイパワーのSFSに似たTri-ActionやFast Actionと呼ばれるトリガーシステムを採用しています。
シングルアクション、ダブルアクション、そしてトライ・アクション(またはトリプル・アクション)という第三のトリガーシステム。
ハンマーをコックした状態でハンマーを押すと、ハンマーレスト状態となり、トリガーが元の位置に戻ります。
しかし、ハンマースプリングは伸縮した状態が維持されるので、DA状態のトリガーを引くと本来より軽いトリガープルで引き続けられ、ハンマーがコックされます。
そして、続けてトリガーを引き続けるとハンマーが落ちて撃発されるメカニズムです。
「コック&ロックの代わりにセイフティとして使用できる」とはよく耳にしますが、DAのトリガープルでない以上、「セイフティの代わり」というのは言いすぎではないでしょうか?
また、「一発目が素早く撃てる」という宣伝文句も、「だったらコック&ロックで良いじゃない」と思ってしまう。
もっといえば、DAで何の問題もない。(SIGのDAKトリガーやパラオードのLDA方式なら評価できた。)このシステムの存在意義がわかりませんが、なにより特別なメリットがあるわけでもないのに、わざわざパーツ点数を増やして複雑化させ、パーツ破損リスクを向上させるような銃を軍制式にしてしまう韓国軍って・・・。
ただ、こうした軍事産業系企業が米国市場を攻めていける環境は日本人として羨ましく思います。
日本は「武器輸出がどーのこーの」と言っていないで、売れるものは何でも売る努力をして欲しい。
米国市場でビジネス展開することで米国に置いている工場で技術者育成やノウハウの蓄積ができ、将来の国産軍用銃器製造技術向上や製造コスト削減に役立つ可能性があると思います。
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