S&Wのリボルバーのキーロックシステムについて質問があります
21世紀に入ってから(正確な年は忘れてしまいました)S&Wのリボルバーにはキーロックが追加されましたが、youtubeで実銃を紹介している日本人の方によると、このキーロックはDAのフィーリングを若干悪くしていて、ユーザーに余り良い評価を得ていないと言っていました。
本当にこのキーロックでDAのフィーリングは悪くなっているのでしょうか?
また、もし悪くなっているのでしたら実用上問題ないレベルなのでしょうか?
問題ないことがほとんどですが、トリガーの抵抗になったり、ジャムの原因となることがあります。
S&Wがキーロックを採用した経緯
2000年3月、クリントン政権は銃による事故や犯罪を減少させるため、S&Wと銃の安全に関する合意に至りました。
合意項目のひとつには、「ハンドガンにはセイフティ・ロッキング・デバイスを必須とし、(期限は)エクスターナルロック(外部ロック)が60日以内、インターナルロック(内部ロック)が24ヵ月以内(に完了する)」という内容が含まれていました。これにより、S&Wはワイヤーロック等のロックを銃と同梱し、ハンドガンにはインターナルロックシステムを導入することになります。
2001年5月、セイフティーハンマー(Saf-T-Hammer Corp)社がS&W社を買収し、セイフティハンマー社は社名をS&Wホールディングスに改めます。
そしてセイフティーハンマー社は銃器専用ロックを製造していたため、同社の製品がS&Wの銃器に転用されました。(興味深いことに、セイフティーハンマー社の社長であるボブ・スコットはS&Wの元社員でしたが、この買収によりS&Wの社長に就任します)
S&Wは2001年からインターナル・キーロック・システムを採用し始めました。しかし、インターナルロックシステムの評判は悪く、S&Wは次第にこのシステムをフェードアウトさせ、やがてインターナルロックシステムを持たないリボルバーも製品化するようになります。
S&Wは2000年の合意でユーザーや銃器業界から猛烈なバッシングを受けており、実用より政治的な意味が大きいインターナルロックシステムにより、S&Wは現在も一部ユーザーから不評を買っています。
インターナル・キーロック・システムの構造
S&Wのリボルバーには、グリップ内部のメインスプリングロッドの動きを止めてロックする方式を採るモデルもありますが、今回はハンマーをロックするキーロックシステムについて解説します。
リボルバーの左側、サムピースの上にキーを差し込む穴が開けられています。
ここにキーを挿し、左に回すとロック、右に回すとロックが解除されます。挿しこみ口の左上には回転方向を示す矢印と、ロックの頭文字「L」の刻印が入っています。この刻印は、美しいフィニッシュのボディについた傷として、ファンから嫌われる存在でもあります。
ロックするとハンマーの側面から「LOCKED」と刻印されたタブが現れ、銃がロックされた状態であることを表しています。ロックされると、ハンマーやトリガーが固定されて動かなくなります。
このようなパーツによりロックが構成されています。LOCKEDの刻印が入ったパーツが回転し、スプリングがE字型のパーツを押してロックにクリック感が生まれます。
リボルバーのサイドプレートを外し、ハンマーを取り外すとこのように見えます。
キーを左に回すとトックリ形のパーツが回転し、タブを押し上げます。
タブの突起(赤色で示された部分)に注目。
ハンマーの側面にはタブの突起が通るスリットがあり、この突起が押し上げられてハンマーの凹みに入ることでハンマーがロックされます。
トリガーを引いてハンマーが動くとき、タブの突起がハンマーの凹みの角に接触すると、トリガープルに抵抗が生まれ、これが違和感の原因となります。
実際に、射撃中にジャムが発生し、トリガーが引けなくなるという報告もあります。特にジャムが起きやすい状況は、スカンジウム合金やアルミ合金を使用した軽量リボルバーに多く、「+P+」やマグナムカートリッジを使用した際に、ジャムが起こりやすくなる傾向があるようです。
軽量な銃は強烈なリコイルによる大きな加速度を受け、内部パーツの摩耗やガタツキが発生しやすくなります。そして、リコイルの衝撃によりタブの突起が引っ掛かることで、ジャムが発生します。
このようなジャムは非常に稀ですが、ジャムに至らなくてもトリガープルに違和感として現れることがあります。
まとめ
このキーロックシステムの問題は、タブの突起を削り取ってしまえば解決します。ロックは使えなくなりますが、キーロックシステムによるジャムの心配は無くなります。
しかし、もしロック機能排除済みの銃を使用して人を撃った場合、正当防衛であっても「安全装置を故意に排除していた」として、裁判で不利になる可能性も指摘されています。
また、メーカー修理が必要な場合でも、当然ながらメーカー補償対象外になります。
このようなリスクがあるため、キーロックシステムを採用するリボルバーは、通常の射撃練習用やスポーツ目的用とし、護身用やホームディフェンス用としては使用しない方が良いでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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