
北海道のヒグマや北米のグリズリーといった大型クマに対して、どんな弾薬や銃が有効なのでしょうか?
ヒグマやグリズリーは極めて危険な動物であり、確実な一撃で仕留めるための強力な銃器が求められます。
この記事では、北米のハンターが推奨する弾薬と銃を整理し、分かりやすく解説します。
※専門用語は記事の最後で解説しています。
ライフル(クマ狩猟で最も一般的)
.375 ルガー

画像出典:Hellbus, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
.375ルガー(.375 Ruger)は、2007年にホーナディとルガーが共同開発した、大型デンジャラスゲーム狩猟向けのライフル弾です。従来の.375 H&Hマグナムに匹敵する性能を持ちながら、短く幅広の弾薬設計により効率的な装薬容量を確保しています。
狩猟用語におけるデンジャラスゲーム(Dangerous game / 危険獣)とは、狩猟対象として大きく攻撃性が高く、力や習性により人間に重大な危害を及ぼす可能性がある動物を指します。狩猟では非常にリスクが高く、経験や専用装備、大型ライフル、場合によってはプロのガイドが必要です。
代表的なデンジャラスゲームには以下があります。
口径は.375(9.5mm)、最大圧力は62,000 psiで、270〜300グレインの弾を使用可能です。初速は約2,660〜2,840フィート毎秒(810〜870 m/s)で、高い貫通力を発揮します。スタンダードレングスアクションに対応しているため、.375 H&Hマグナムより短く軽量なライフルで同等の弾道性能を得られ、扱いやすく、コスト面でも利点があります。
狩猟用途としては、北米やアフリカの大型獣、特にクマやエルク、バイソンなどの大型獣に適しています。短めの銃身でも十分な威力を発揮できる点が、実用的な選択肢となっています。

.375 H&H マグナム

.338ウィンチェスターマグナム(右)
画像出典:Alchemy pete at English Wikipedia, Public domain, via Wikimedia Commons
.375 H&Hマグナム(.375 H&H Magnum)は、弾頭重量が235グレインから350グレイン(15〜23g)まで揃い、一般的には300グレイン(19g)が使用されます。
初速はおおむね2,500〜2,700フィート毎秒(約760〜820 m/s)で、高い貫通力と安定した弾道を誇ります。弾頭の重量が異なっても狙点の変化が少ないため、狩猟時の照準調整が容易です。
多くの地域では、デンジャラスゲームを狩猟する際の法定最低口径として採用されており、アフリカや北米の大型獣から中型獣まで幅広く対応可能です。
その信頼性と汎用性から、「中口径の女王」と称され、100年以上にわたって愛用され続けています。

画像出典:Alaska Senate Majority, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
.338 ラプアマグナム

.338ラプアマグナム(右)
画像出典:Grasyl, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
.338ラプアマグナム(.338 Lapua Magnum / 8.6×70mm)は、1980年代にフィンランドのラプア社およびSAKO社とイギリスのアキュラシー・インターナショナル社が共同で開発した長距離狙撃用弾薬です。当初から軍事用途を念頭に設計されており、標準的な7.62×51mm NATO弾では射程や貫通力に限界があることから、それを大きく上回る性能を実現するために生まれました。その後、アフガニスタンやイラクでの実戦において、1,500m以上の距離で確実に目標を撃破できる能力が評価され、世界各国の軍・特殊部隊で採用されています。
弾頭径8.6mm(.338インチ)、薬莢長70mmというサイズを持ち、発射時の初速は約880~915m/s、マズルエナジーは6,000~6,500J(およそ4,500~4,800ft-lbf)に達します。これは通常のライフル弾を大きく上回る数値であり、1,000m以上先のハードターゲットや防弾装備を貫通する能力があります。最大有効射程は1,500m以上とされ、条件次第では2,000mを超える狙撃記録も存在します。こうした特性から、現在でも世界屈指の軍用長距離狙撃用弾薬として高い評価を受けています。
軍事的な用途が注目されがちですが、.338ラプアマグナムは民間においても人気が高く、特に長距離射撃競技や大型獣の狩猟に用いられています。鹿やイノシシといった中型獣には過剰ともいえる威力を発揮しますが、ヒグマやグリズリーのように体格が大きく、危険性の高いクマ類に対しては信頼できる選択肢の一つです。

.338 ウィンチェスターマグナム

.338ウィンチェスターマグナム(右)
画像出典:Alchemy pete at English Wikipedia, Public domain, via Wikimedia Commons
.338ウィンチェスター・マグナム(.338 Winchester Magnum)は、1958年にウィンチェスター社が開発した中口径マグナムライフル弾です。元は.375 H&Hマグナムを短縮・口径変更して設計されており、スタンダードレングスアクションのライフルに対応しています。
北米では、特にグリズリーなどの大型クマ狩猟で、最も信頼される弾薬の一つです。弾頭重量は200~250グレインが一般的で、高初速かつ大きなエネルギーを持つため、突進してくる危険な獣に対して十分なストッピングパワーを発揮します。例えば、200グレインの弾では約4,000 ft-lbfのマズルエナジーを発生させ、長距離でも大きな威力を保持できます。
反動は強めですが、適切なストックやリコイルパッドで軽減可能です。北米では大型シカやヘラジカ、さらにグリズリーやヒグマなどの危険な獲物の他、クラス3ゲームの狩猟・ディフェンス用途として広く使用されており、信頼性の高い中口径マグナム弾として知られています。
クラス3ゲーム(Class 3 game)とは、一般的に危険性は低いものの大型で、狩猟には中~大口径ライフル弾が必要な大型獣の分類を指します。体重は約140~680kgで、体の皮膚は薄めです。

.300 ウィンチェスターマグナム

画像出典:Jim Miles, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
.300ウィンチェスターマグナム(.300 Winchester Magnum)は、1963年にウィンチェスター社が開発したマグナムライフル弾です。7.62mm口径でスタンダードアクションのライフルに対応しており、元は.375 H&Hマグナムを短縮・口径縮小して設計されています。中型から大型の獣狩猟や長距離射撃、精密射撃にも対応できる汎用性の高い弾薬です。
弾頭重量は150~220グレインが一般的で、150~165グレインは中型の鹿やシープ(バイソンシープやマウンテンシープ)に適し、180グレインは大型鹿やヘラジカにも対応できる汎用性の高い弾です。さらに200グレイン以上にすると厚骨の大型獣やクマ狩猟にも十分な威力を発揮します。高初速で弾道がフラットなため、長距離でもエネルギーを維持でき、スタンダードレングスアクションのライフルを使用できることから軽量化も可能です。一方で反動はやや強く、.30-06スプリングフィールドより約30%増となりますが、慣れや反動軽減機能付きストックで対応可能です。
.300ウィンチェスターマグナムはブラック・ベアやグリズリーなどの大型クマ狩猟にも利用実績があり、山岳地帯や長距離からの狩猟でも十分な性能を発揮します。重量弾を使用することで大型獣にも安心して使用できるため、世界中のハンターに支持されているマグナム弾の代表格です。

.450 マーリン

画像出典:IHMSA80x80 at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
.450マーリン(.450 Marlin)は、.45-70を現代的に改良したライフル弾で、2000年にマーリンとホーナディの共同チームによって開発されました。主にマーリン1895Mレバーガン向けに製造され、現在はブローニングBLRやルガーNo.1でも使用可能です。
弾道性能は.45-70に似ていますが、直接の派生ではなく、.458ウィンチェスター・マグナムを基にしたワイルドキャット弾「.458×2インチ・アメリカン」から設計されています。これにより、高圧でも安全に使用でき、古い銃での危険な「ホットロード」弾のリスクを避けられます。.45-70とは互換性がなく、誤装填の危険はありません。
ワイルドキャット弾とは、既存の市販弾薬を改造して作られる自作または民間開発の特殊ライフル弾のことを指します。
弾薬の形状は.458ウィンチェスター・マグナムに似ていますが、ベルト幅が広く設計され、より大口径のライフル用に調整されています。近距離(約150〜175ヤード/137〜160m)の大型獣狩猟に適しており、北米の大型シカ、ブラウンベア、ヘラジカなどを狩猟可能です。
また、ボルトアクションライフルにも装填可能で、「ボルトアクション用.45-70」として使用できます。多くの既存ライフルも換装によって.450マーリンに対応可能で、近距離の大型獣狩猟に適した現代的弾薬として評価されています。

.30-06 スプリングフィールド

画像出典:Per G. Arvidsson, Public domain, via Wikimedia Commons
.30-06スプリングフィールド(.30-06 Springfield)は、1906年に米陸軍で採用された口径.30インチのライフル弾で、狩猟用としても広く使われています。弾頭重量は110〜220グレイン(約7〜14g)まで幅広く、特に150〜220グレインの弾頭は、中型から大型の獣に適しています。初速はおおむね2,900フィート毎秒(約880 m/s)前後で、十分な射程と威力を持ちながら、反動はマグナム弾ほど強くなく扱いやすいのが特徴です。
中型獣の鹿や羊には150グレイン前後の弾頭、大型獣のエルクやクマには180〜220グレインの重弾頭を用いると安定した弾道と十分な貫通力を得られます。フラットな弾道とエネルギー保持に優れ、横風の影響も比較的少なく、北米の大型狩猟に幅広く対応可能です。
.30-06は.270ウィンチェスターや.25-06レミントンなど多くの人気狩猟用弾薬の元になっており、汎用性の高いカートリッジとして長年愛用されています。

.45-70 ガバメント

画像出典:Hmaag, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
.45-70ガバメント(11.6×53mmR / .45-70 Government)は、1873年のスプリングフィールドM1873ライフル用に開発された歴史ある.45口径ライフル弾です。元々は70グレインの黒色火薬と405グレイン(26g)の鉛丸を使用しており、後に500グレイン(32g)の重量弾も採用され、より優れた射程と威力を実現しました。
最大射程は約3,500ヤード(3,200m)に達し、大型の北米産野生動物やクマ類にも十分な威力を持ちます。弾頭は低速で重く、ブッシュや密林での近距離狩猟に適しています。弾道は急降下気味で、100ヤード(約91m)ではおおむね4インチ(約10cm)の精度を持ちます。
現代でも北米の大型シカやブラウンベア、ホッキョクグマなどの狩猟に使用され、アフリカのビッグファイブにも対応可能です。
ビッグファイブ(Big Five)とは、アフリカにおいて徒歩で狩猟する際に最も有名で、かつ難易度が高いとされる5種の動物を指す言葉です。対象となるのは以下の5種です。
- アフリカライオン
- アフリカゾウ
- アフリカヒョウ
- アフリカスイギュウ(特にケープバッファロー)
- サイ(クロサイとシロサイの両方が含まれる)
この呼称は大物猟を行うハンターの間で生まれたもので、動物の体の大きさを意味するのではなく、「狩猟が最も困難で危険な動物」という意味合いで使われています。
.45-70は歴史的な単発のシングルショットライフルだけでなく、現代のスポーティングライフルやシングルショットピストルでも使用され、近距離での高いストッピングパワーを発揮します。重い弾頭による反動はありますが、適切な銃床設計やマズルブレーキで軽減可能です。クマ狩猟においても信頼性の高い選択肢の一つとして知られています。

.270 ウィンチェスター

画像出典:Snowjackal at English Wikipedia, Public domain, via Wikimedia Commons
.270ウィンチェスター(.270 Winchester)は、1925年にウィンチェスター社が発表したライフル弾で、当時としては非常にフラットな弾道性能を持つ弾薬として知られるようになりました。.30-06スプリングフィールドを基に開発され、口径は.277インチ(約7.04mm)です。当初は普及に苦戦しましたが、戦後にはスコープの普及や狩猟作家ジャック・オコナーの推奨などもあり、世界的に人気の高い狩猟用弾薬となりました。
主力弾頭は130グレインで、約930m/s(3060fps)の初速を持ち、シカやカモシカなど中型獣に最適です。150グレイン弾はワピチやヘラジカなど大型獣にも対応でき、100グレイン弾は小型獣向けに用いられます。弾道がフラットで扱いやすく、反動も比較的穏やかなため、多くのハンターに長年支持されています。
クマ猟においても有効とされ、特にツキノワグマやブラックベアには130〜150グレインの高品質弾頭(Nosler PartitionやSwift A-Frameなど)を用いることで十分な威力を発揮します。
グリズリーやヒグマのような大型クマに対しても、200ヤード(約183メートル)以内での適切な弾頭選択と正確な急所狙いを前提とすれば使用可能です。アラスカ州の野生生物局も、150グレインのプレミアム弾を用いた場合にはブラウンベア用としても推奨しています。

.308 ウィンチェスター

.308ウィンチェスター(.308 Winchester)は1952年にウィンチェスター社が民間向けに発表したライフル弾で、軍用の7.62×51mm NATO弾とよく似ていますが完全に同一ではありません。短い薬莢長を持つためショートアクションライフルに適しており、信頼性と扱いやすさから世界中で狩猟や射撃競技、さらには軍や警察用として幅広く使用されています。
性能面では中型から大型の獲物に対応できる十分な威力があり、北米ではシカやカリブー、ブラック・ベアの狩猟に広く利用されています。アラスカ州の野生動物局もヒグマやグリズリーに適した弾薬として推奨しており、カナダ北極圏レンジャーもホッキョクグマ対策用として採用しています。これらの実績からも分かるように、危険な大型獣に対しても高い信頼性を持つ弾薬です。
反動は比較的穏やかで、同クラスの.30-06スプリングフィールド弾よりわずかに弾速は遅いものの、狩猟における実用性を損なうことはありません。信頼性の高いショートアクションライフルと組み合わせることで、.308ウィンチェスター弾はシカからクマに至るまで幅広い狩猟に対応できる実用的かつ汎用性の高いカートリッジといえます。

ショットガン(近距離用)

クマ狩猟用のショットガン用弾薬として最も適しているのは、12ゲージのスラッグ弾です。
貫通力が高く、心肺に命中すれば確実にクマを止められます。
ただし、クマ狩猟にはライフルが適しており、近距離で使用されるショットガンは基本的に経験豊富なハンターに限り推奨されます。
経験豊富なハンターや専門家のおすすめは以下の通りです。

ハンドガン(主に護身・バックアップ)
.500 S&W マグナム


.500 S&Wマグナム(.500 S&W Magnum)は2003年にスミス&ウェッソンとコーボンが共同開発した、世界最大級の拳銃弾です。北米の大型獣を狩猟できる威力を想定して設計され、特に大型クマやバイソン、ムース、エルクなどの狩猟に適しています。
.50口径(12.7mm)、最大圧力は60,000 psiで、重い弾(500グレイン以上)を使用することで高い貫通力とストッピングパワーを発揮します。発射時の反動は非常に強力ですが、S&Wモデル500リボルバーの重量やコンペンセイターである程度抑えられています。また、軽量弾や低反動弾も用意され、使用目的に応じて選択可能です。
主用途はハンドガンでの大型獣狩猟ですが、北米ではサバイバル用ハンドガンやディフェンス用としても携行されます。リボルバーだけでなく、一部のカービンやライフルにも対応しており、強力なストッピングパワーをハンドガンで扱える点が特徴です。


.454 カスール


.454カスール(.454 Casull)は、1958年にディック・カスールらによって開発された拳銃弾で、延長・強化された.45コルト弾のケースをベースにしています。1983年にフリーダムアームズが装弾数5発のリボルバーを発売したことで広く知られるようになり、その後ルガーやトーラスも対応モデルを発表しました。.45コルト弾は使用可能ですが、逆はできません。
この弾は非常に高い圧力(約50,000 CUP)で発射されるため、小型ライフル用の雷管を使用します。拳銃弾としては最大級の威力を誇り、.45コルトの約5倍、.44マグナムより約75%強い反動を生じます。250グレイン弾で初速約580 m/s、発射エネルギーは最大約2,000 ft-lbfに達します。


.480 ルガー


.480ルガー(.480 Ruger)は2003年にルガーとホーナディが開発した大型高威力な拳銃弾で、当時.475口径としては市販リボルバー用弾薬で二番目に太い弾でした。設計の基となったのは1988年登場のワイルドキャット弾.475ラインボーで、クマ狩猟など大型獣用に深い貫通力を確保できる弾として知られています。
.480ルガーはダブルアクションのスーパー・レッドホーク用に設計され、6発装填可能なシリンダーに対応。最大圧力は48,000 psiで.454カスールより低いため反動とマズルブラストが抑えられています。重い弾(400グレイン以上)でも高い貫通力を発揮し、大型獣狩猟に適しています。
初速やエネルギーは.44マグナムを上回る場合もあり、重い弾でも扱いやすいのが特徴です。発射感覚は比較的穏やかで、TKO(Taylor Knockout)値も.454カスールに匹敵します。用途としては、大型クマや鹿などの狩猟、セルフディフェンス用拳銃弾として有効です。


スペック表まとめ
弾薬名 | 弾頭重量 | 銃口初速 (ft/s) | マズルエナジー (ft-lbf) |
---|---|---|---|
.375 Ruger | 270〜300 gr | 2,660〜2,840 | 4,200〜5,360 |
.375 H&H Magnum | 235〜350 gr (一般的に300 gr) | 2,500〜2,700 | 4,100〜4,850 |
.338 Lapua Magnum | 250〜300 gr | 2,850〜3,000 | 4,500〜4,800 |
.338 Win Mag | 200〜275 gr | 2,489〜2,950 | 3,784〜3,918 |
.300 Win Mag | 150〜220 gr | 2,950〜3,150 | 3,500〜4,200 |
.450 Marlin | 350〜400 gr | 2,100〜2,200 | 3,400〜4,000 |
.30-06 Springfield | 150〜220 gr | 2,500〜2,910 | 2,820〜3,036 |
.45-70 Government | 405〜500 gr | 1,350〜1,800 | 1,650〜3,600 |
.500 S&W Magnum | 300〜700 gr | 1,200〜2,075 | 2,238〜2,868 |
12ゲージスラッグ | 1 oz(437 gr)以上 | 1,600〜1,800 | 2,500〜3,150 |
.270 Winchester | 90〜150 gr | 2,850〜3,603 | 2,595〜2,705 |
.308 Winchester | 147〜180 gr | 2,600〜2,800 | 2,500〜2,700 |
.454 Casull | 240〜400 gr | 1,400〜1,900 | 1,741〜1,923 |
.480 Ruger | 325〜400 gr | 1,200〜1,350 | 1,050〜1,600 |
クマの種類と狩猟用ライフル・弾薬の選び方


以下の表では、主要なクマの種類ごとに体格、毛色、性格、生息地、狩猟に適した弾薬の目安をまとめました。クマ狩猟の計画を立てる際の参考としてご覧ください。
項目 | ブラック・ベア | グリズリー | ヒグマ | ツキノワグマ |
---|---|---|---|---|
体長 | 1.2~2.0m | 2.0~2.8m | 1.8~2.8m | 1.2~1.8m |
体重 | 90~200kg | 200~450kg | 150~400kg | 70~150kg |
特徴 | 黒色主体、茶色や白も | 茶色主体、肩や背中に銀毛 | 茶色~濃茶色、肩や背中に明るい毛混じり | 黒色主体、胸に白い三日月模様 |
性格 | 臆病、人間を避ける | 攻撃的、縄張り意識強い | 警戒心強い、攻撃性中程度 | 臆病、警戒心強い |
生息地 | 北米森林地帯 | 北米北西部・カナダ・アラスカ | 北半球温帯・寒帯、日本北海道・ロシア | 東アジア、日本本州・四国 |
推奨弾薬 | .300 WinMag #.450 Marlin .30-06 .270 Win .308 Win #.45-70 ※.500 S&W ※.454 Casull ※.480 Ruger | .375 Ruger .375 H&H Mag .338 Lapua Mag .338 WinMag .300 WinMag ※.450 Marlin .30-06 .270 Win .308 Win ※.45-70 | .375 Ruger .375 H&H Mag .338 Lapua Mag .338 WinMag .300 WinMag ※.450 Marlin .30-06 .270 Win .308 Win ※.45-70 | .300 WinMag .30-06 .270 Win .308 Win |
弾頭重量 | 130~220 gr #350~500 gr ※240~700 gr | 180~300 gr ※350~500 gr | 180~300 gr ※350~500 gr | 130~220 gr |
このなかでグリズリーやヒグマに対して最も効果があり信頼性が高いのは、「.375 ルガー」「.375 H&H マグナム」「.338 ラプアマグナム」「.338 ウィンチェスターマグナム」です。
「.300 ウィンチェスターマグナム」「.30-06 スプリングフィールド」「.308 ウィンチェスター」に類似するカテゴリーの弾薬は、弾頭重量や弾頭の種類によっては大型獣に対して非推奨になり得るため、「重い弾頭」と「貫通力と信頼性の高い弾頭タイプ」を選択する必要があります。
グリズリーやヒグマに対してショットガンは貫通力が不足するため非推奨ですが、ブラック・ベアやツキノワグマに対しても、安全性という意味ではショットガンよりもライフル推奨です。
「.45-70ガバメント」「ショットガン」「ハンドガン」は近距離で使用されるため、「経験豊富なハンター限定」として推奨されます。
クマの種類の違い
ブラウンベア、ブラック・ベア、ツキノワグマは別種であり、ヒグマやグリズリーはブラウンベアの地域名・亜種名です。
クマ狩猟に有効なライフルの選び方と使い方


クマをライフルで狩る際は、ライフルや弾薬の選択、狙う部位、射撃スキル、安全対策、追跡・後処理までを総合的に考えることが重要です。
以下に北米におけるベアハンティングの基本的なポイントをまとめます。
1. ライフルと弾薬の選択
銃の選択においては、自分が扱いやすく正確に撃てるものを優先すべきで、必ずしも大口径マグナムは必要ではありません。
実際、多くのプロガイドは標準的な口径を推奨しており、これに高品質の弾頭を組み合わせれば大型の獲物にも十分対応できます。むしろ反動の強いマグナムを使いこなせず、命中率が下がることの方が問題とされています。
2. 狙う部位(ショットプレースメント)


獲物が真横を向いて歩行しているとき、前脚の骨の背後に心臓が隠れます。
そのため、前脚が前へ移動したときに画像の狙点の位置を射撃すると効果的です。
ヘッドショットは高威力のライフル弾が命中すれば有効ですが、ストレス状況下で小さな脳に命中させるのは困難です。
クォータリング・アウェイ(quartering-away)とは、獲物が背を向けながら斜め方向を向いている状態を指す狩猟用語です。


獲物の体勢 | 銃 | 弓 | 備考 |
---|---|---|---|
真横を向いている (Broadside) | 有効 | 理想的 | 基本の射角 |
背を向けつつ斜め方向を向く (Quartering-away) | 有効 | 中型以下に有効 | 反対側の前脚を目安に胸部を狙う |
射手に斜め前を向く (Quartering-to) | 肩骨に阻まれやすい | 不適 | 弓では避けるべき角度 |
真正面を向く (Head-on) | 胸骨に阻まれやすい | 不適 | 特殊な状況以外では非推奨 |
完全に背を向ける (Rear shot) | 非推奨 | 非推奨 | 苦痛を与えやすいため倫理的に問題 |
北米では弓でクマを狩るボウハンティングも行われています。弓での狩猟でも、中型以下の獲物(レイヨウ、ホワイトテイル・ディア、ミュール・ディア、ブラックベアなど)に対しては、斜め後ろは致死部位を正確に射抜ける良好な角度です。
ただし、大型獣では腹部や腸が邪魔になり、心肺に矢を通すことが難しくなるため不向きです。狙うときは、銃と同じく「反対側の前脚の位置」を基準にするとよいでしょう。
3. 狩猟戦術
4. 射撃スキルと安全
5. 追跡と後処理
日本国内での法律上の注意点
銃より効果的な選択肢:クマスプレー


クマ対策と聞くと、猟銃を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、最新の研究やフィールドでの実績から、実際にはクマスプレー(カプサイシン入りスプレー)の方がクマとの遭遇において安全かつ効果的であることが示されています。
研究と実績から分かっていること
クマスプレーの注意点
クマスプレーは風向きの影響を受ける可能性があるほか、誤って自分にかかると軽度の刺激を感じることがあります。しかし、これらのリスクは銃の誤射や流れ弾による深刻な結果と比較すればはるかに軽微です。
クマとの遭遇に備えるのであれば、最優先すべきはクマスプレーの携行です。
銃は狩猟や熟練者のバックアップ手段として有効ですが、登山者やキャンパーなど一般的なアウトドア活動では、クマスプレーを持ち、正しい使い方を理解しておくことが最も安全な選択といえます。
また、音を立てて行動し「クマに不意打ちを与えない」など、基本的な回避行動と併用することで安全性はさらに高まります。
おすすめのクマスプレー
クマスプレー購入の際の注意点
北海道ではこちらのスプレーがおすすめです。
本州ではこちらのスプレーがおすすめです。
まとめ
クマ狩猟においては、「ライフル」「ショットガン」「ハンドガン」それぞれに特徴があります。
ライフルは最も信頼できる選択肢であり、用途に応じて.375 ルガーや.338 ウィンチェスターマグナムといった弾薬が効果的です。
ショットガンは近距離で限定的に有効ですが、基本的にはライフルのほうが安全です。
ハンドガンは護身やバックアップとして役立ち、強力な.500 S&W マグナムや.454 カスールなどが選ばれています。
最終的に重要なのは、狩猟環境や目的、自身の射撃スキルに合った銃と弾薬を選ぶことです。
参考文献一覧
- Outdoor Life. “Best Grizzly Guns: 9 Great Guns for Brown Bear Hunting and Defense.” (2012).
https://www.outdoorlife.com/photos/gallery/hunting/2012/12/best-grizzly-guns-9-great-guns-brown-bear-hunting-and-defense/ - Reddit. “What do you carry as a bear defense gun?” (2022).
https://www.reddit.com/r/Hunting/comments/x2fucf/what_do_you_carry_as_a_bear_defense_gun/ - American Hunter. “The Best Black Bear Cartridges.”
https://www.americanhunter.org/content/the-best-black-bear-cartridges/ - Bear Hunting Magazine. “Hound Hunting.”
http://www.bear-hunting.com/hound-hunting?ID=FAB0CBB8-337C-4651-8311-D2ABF871EB3F - Pew Pew Tactical. “Best Bear Defense Guns.”
https://www.pewpewtactical.com/best-bear-defense-guns/ - Backwoods Home – Massad Ayoob Blog. “Handguns for Bear Defense.”
https://www.backwoodshome.com/blogs/MassadAyoob/handguns-for-bear-defense/ - North American Outdoorsman. “Best Bear Guns.”
https://northamerican-outdoorsman.com/best-bear-guns/ - Bear Hunting Magazine. “Back-up Bear Guns.” (2019).
http://www.bear-hunting.com/2019/12/back-up-bearguns - Bear Hunting Magazine. “Firearm vs Bear Spray.” (2019).
http://www.bear-hunting.com/2019/8/firearm-vs-bear-spray - Essential Wilderness. “What’s Better Against an Aggressive Bear: Bear Spray or a Gun?”
https://essentialwilderness.com/whats-better-against-an-aggressive-bear-bear-spray-or-a-gun/ - Montana Fish, Wildlife & Parks. “Bear Spray vs Firearms – Montana Outdoors.” (2024).
https://fwp.mt.gov/binaries/content/assets/fwp/montana-outdoors/sketchbook/2024/sketchbooknd24.pdf - Kodiak Canada. “How Effective is Bear Spray?”
https://kodiakcanada.com/blogs/news/how-effective-is-bear-spray - Backcountry Chronicles. “Bear Spray vs Gun: Which is Better?”
https://www.backcountrychronicles.com/bear-spray-pepper-spray-vs-gun/ - Alien Gear Holsters. “Bear Spray vs Gun.”
https://aliengearholsters.com/blogs/news/bear-spray-vs-gun - BearVault. “Bear Defense: Gun vs Bear Spray.”
https://bearvault.com/bear-defense-gun-vs-bear-spray/ - NASA Safety Center. “Bear Spray vs Bullets.”
https://above.nasa.gov/safety/documents/Bear/bearspray_vs_bullets.pdf - Reddit. “Guns vs Bear Spray for Bear Encounters.” (2022).
https://www.reddit.com/r/Survival/comments/w5vr76/guns_vs_bear_spray_for_bear_encounters/ - YouTube. “Bear Spray vs Bullets Demonstration.”
https://www.youtube.com/watch?v=WASFQh13Dj8