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5.56mm NATOと.223レミントンの違いとは? 知っておきたい互換性と使用上の注意点

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.223レミントン弾と5.56×45mm NATO弾(5.56 NATO)は、外見上ほとんど見分けがつかず、同じマガジンや銃の仕様に適合することが多い弾薬です。

しかし、「薬室設計」「最大腔圧」「弾薬仕様」「用途」に大きな違いがあり、これらすべてが安全性、精度、信頼性に影響を与えます。

この記事では、.223レミントン弾と5.56 NATO弾の違いについて解説します。

.223レミントンとはどんな弾薬か

マガジン画像

.223レミントン弾は、1957年にレミントン社とフェアチャイルド・インダストリーズが共同開発した、リムレス・ボトルネック型のセンターファイア中間弾薬です。

  • リムレス:薬莢の底にあるリム(縁)が出っ張っていない形状。
  • ボトルネック型(ネックダウン型):首が細くくびれた瓶のような形状。
  • センターファイア: 銃弾の着火方式の一つで、薬莢の中心にある雷管を叩いて火薬に点火する方式。
  • 中間弾薬(インターミディエイト・カートリッジ): フルパワーライフル弾と拳銃弾の中間に位置する、比較的軽量で反動が少なく、連射しやすい弾薬。
    • (例:5.56x45mmや7.62x39mmなど)

米陸軍の「小口径高速(SCHV: Small Caliber High Velocity)」弾薬開発計画の一環として生まれたもので、当時の.222レミントン弾をベースに、薬莢をわずかに長くして火薬量を増やすことで、55グレインの弾頭を約3,300フィート毎秒という高初速で発射できるように設計されました。

グレイン (grain): 弾頭の重さを表す単位です。1グレインは約0.065グラムで、主に米国で使われます。

この弾薬は、5.7mm(0.2245インチ)径の弾頭を使用し、従来の大口径弾よりも高い命中精度、射撃時のコントロール性、そして有効射程の向上を目的としています。

軍用としては1963年に「5.56mm弾 M193」として正式採用され、アーマライト「AR-15」とともに制式化されました。このライフルは後にM16として発展し、米軍の制式小銃となります。

同時期にレミントン社は、.223レミントンを狩猟やスポーツ射撃向けの市販弾としても発売しました。

高初速・低反動・平坦な弾道といった特性から、害獣駆除(バーミントハンティング)や精密射撃競技などで広く使用されるようになりました。

軍用の5.56 NATO弾と.223レミントンは、薬莢の寸法はほぼ同一ですが、軍用弾は通常、より高い腔圧(薬室内圧力)で設計されています。

.223レミントンの主な用途は以下のとおりです。

  • 軍・警察用途
  • コヨーテやグラウンドホッグなどの小型害獣猟
  • 競技やプリンキング(遊戯的射撃)、命中精度の高い精密射撃訓練
  • ボルトアクションおよびセミオートライフルでの多目的なスポーツ利用

現在、.223レミントンは世界中で最も普及している弾薬の一つです。

軍用弾をルーツに持ちながら、優れた命中精度、反動の軽さ、高い初速といった性能が評価され、民間でも幅広い用途で使用されています。

.223レミントンと5.56 NATOの主な違い

5.56 NATOの薬室は「リード」(フリーボア)が約0.125インチと長く、緩やかな角度を持つ設計で、弾頭に余裕を持たせることで高い信頼性と高圧弾薬の安全な使用が可能です。

556と223の比較画像
画像出典:wingtactical.com

銃器における「フリーボア(freebore)」とは、薬室とライフリングが始まる部分の間にある、銃身内部の円筒形の「無ライフリング区間」を指します。フリーボアの直径はライフリングの溝径よりもわずかに大きく、弾頭が抵抗なく加速できるようになっています。

薬室の前方には「スロート」と呼ばれる部分があり、これはフリーボアと「リード」(フリーボアからライフリングへと緩やかに繋がるテーパー部分)で構成されています。リードの角度は通常1〜3度ほどです。

  • スロート = フリーボア + リード
  • 構造の順番:薬室 → フリーボア → リード → ライフリング

フリーボアの長さは、発射時に弾頭がライフリングに接触するまでの「ブレットジャンプ(弾頭が何にも接触しない距離)」に影響し、フリーボアが長いと、装薬容量の拡張・初速向上・摩耗軽減といった高威力・高耐久を目指す設計において利点があります。

一方で、精密射撃や命中精度重視の用途では、短めのフリーボアが選ばれることが一般的です。

ただし、発射のたびに高温のガスによって銃身内部が摩耗し、フリーボアの寸法は次第に拡大していきます。この現象はスロートエロージョン(throat erosion)と呼ばれます。

対して、.223レミントンはリードが約0.085インチと短く、急角度で精度を重視しています。

また、最大腔圧(薬室圧力/チャンバープレッシャー)は5.56 NATOが約62,000 psiの軍用仕様であるのに対し、.223レミントンはSAAMI規格で55,000 psiが上限です。

圧力試験の方法も異なり、5.56 NATOは常に.223より高圧に耐える設計とされています。

項目.223レミントン5.56 NATO
リード
(フリーボア)
約0.085インチ
短く急な角度で精度を重視
約0.125インチ
長く緩やかな角度で信頼性を重視
最大腔圧55,000 psi(SAAMI規格)63,000 psi(軍規格)
試験方法SAAMI方式で圧力測定NATO方式で測定
(数値の比較は困難)
用途の傾向民間向け、精密射撃に適す軍用、信頼性と耐圧性を重視

薬室のリードが短い.223レミントン薬室で高圧の5.56 NATO弾を使用すると、銃弾がライフリングに早期に接触し、薬室内の圧力が危険なほど上昇する可能性があります。

圧力測定方法の違い

弾薬の薬室内圧力を測定し、安全性や性能を評価するための統一された試験方法があり、主に以下の3つの規格があります。

  • SAAMI(米国民間規格)
    • .223レミントンなどに適用
    • 測定位置:ケースの後方
    • 安全性重視の設計
  • NATO EPVAT(軍用規格)
    • 5.56 NATO弾などに適用
    • 測定位置:ケースの首元近く
    • 高圧での耐久性・性能を重視
  • C.I.P.(欧州民間規格)
    • .223レミントンやその他欧州弾薬に適用
    • 測定位置:薬室中央付近

SAAMIは製造現場や民間用途に向いた「簡単で安価な方法」ですが、EPVAT/CIPは軍用や法的検査に向いた「高精度だがコストのかかる方法」といった違いがあり、用途に応じて選択されます。

.223レミントンの歴史

サプレッサー付M4ライフル画像

以下は、.223レミントン弾およびその派生弾であるM193、M855(SS109)、M855A1の開発から採用までの主要な出来事を時系列でまとめたものです。

  • .223レミントン
    • 1957年:米国のレミントン・アームズとフェアチャイルド・インダストリーズが、小口径・高速(SCHV)戦闘用弾薬として開発開始。先行する.222レミントンをベースに薬莢長を延長し、55グレイン弾頭で約3,300fpsの速度を実現。
    • 1959年:誤解を避けるため「.223レミントン」と命名(元は.222レミントンスペシャル)。
    • 1961〜1963年:軍の評価試験を経て、1963年9月に「5.56mmボール弾 M193」として米軍正式採用。AR-15ライフルと組み合わせて使用。
    • 1964年:Remingtonが民間向けに発売。狩猟や射撃競技、法執行機関で広く普及。
  • M193
    • 1960年代初頭:.223レミントンの軍用仕様として登場。
    • 1960年代から1980年代初頭まで、M16の標準弾薬として使用された。
  • M855(SS109)
    • 1970年代後半:NATOが軽量・中間弾薬でバリア貫通力の向上を求め、新型弾薬の開発を開始。
    • 1980年:NATOでSS109(欧州名、米国ではM855)を規格化。
    • 多くのNATO加盟国が採用し、M193に代わって標準5.56mm弾となる。
  • M855A1
    • 2010年頃:米陸軍が環境配慮型(鉛不使用)の強化性能弾(EPR)としてM855の改良版を導入。
年代弾薬名主な出来事・特徴
1957年.223レミントンSCHV弾として開発開始、.222レミントンを延長
1959年.223レミントン「.223レミントン」と命名
1963年M193米軍正式採用、M16の標準弾
1964年.223レミントン民間向け発売、射撃・狩猟に普及
1970年代後半M855(SS109)NATO規格化に向け開発開始
1980年M855(SS109)NATO標準弾に採用、M193に代わる
2010年頃M855A1環境配慮型強化性能弾として米軍採用、性能向上と摩耗問題あり

5.56 NATO弾とは何か

5.56mm NATO弾画像
5.56mm NATO弾 画像出典:Clément Dominik, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

5.56 NATO弾(5.56×45mm NATO弾)は、リムレス・ボトルネック形状のセンターファイア式ライフル弾で、1980年にNATOによって小銃用の標準弾薬として制式化されました。

M16やM4などの軍用ライフル向けに設計され、現在ではNATO加盟国および多くの非加盟国でも広く使用されています。

この弾薬は、元となった.223レミントン弾をベースに、ベルギーのFNハースタル社が開発したもので、外観や寸法は類似していますが、より高い腔圧と軍用規格に基づいた薬室設計など、技術的に相違点があります。

弾頭の直径は.224インチ(約5.7ミリ)で、弾の重さに応じて銃身(バレル)のツイストレート(転度)は1:7~1:9インチが一般的です。

代表的なM855(SS109)弾は62グレインの弾頭を使用し、銃口初速はおおよそ920〜930m/s、マズルエナジー(銃口エネルギー)は約1,700ジュール(≒1,250 ft-lbf)に達します。

  • ツイストレート: 銃身内に刻まれたライフリング(溝)が、弾頭を1回転させるために必要な長さをインチで表したものです。例えば「1:7インチ」は、弾頭が7インチ進むごとに1回転することを意味します。弾頭の重さによって適切なツイストレートが変わります。
  • マズルベロシティ(銃口初速): 弾頭が銃口を離れる瞬間の速度のことです。単位は「フィート毎秒(fps)」や「メートル毎秒(m/s)」で表されます。
  • マズルエナジー (銃口エネルギー): 弾薬が銃口から発射される瞬間に持つエネルギーのことで、弾頭の重さと初速から計算されます。弾薬の威力を示す指標の一つです。

5.56 NATO弾の主な特徴は以下のとおりです。

  • 1980年以降、西側諸国で従来の7.62×51mm NATO弾に代わり、小銃や軽機関銃の標準弾として採用
  • 軽量で携行弾数を増やしやすく、連射時のコントロール性にも優れる
  • 600メートル前後まで有効射程があり、弾道が比較的平坦
  • 高圧(最大で63,000 psi)で装填され、.223レミントンとは安全な互換性に制限がある

5.56 NATO弾の採用は、「より軽く、コントロールしやすく、兵士1人あたりの携行弾数を増やせる弾薬」という要請に基づいて進められました。

現在では、ライフルのみならず軽機関銃にも用いられ、世界中の軍隊で主力弾薬の一つとなっています。

M193とM855(SS109)の違い

556mm弾比較画像
画像出典:imgur.com/a/eOfR7

5.56 NATO弾には複数のバリエーションがありますが、主に「M193」と「M855(SS109)」の2つの弾薬が代表的です。

両者は構造、弾道性能、用途において明確な違いがあります。

  • 構造の違い
    • M193は55グレインのフルメタルジャケット(FMJ)弾で、芯材には鉛のみが使用されています。
    • M855/SS109は62グレインとやや重く、鉛製のベースに加え、弾頭前部に焼入れ処理されたスチール製の貫通体(ペネトレーター)を内蔵した複合構造となっており、遮蔽物や軽装甲への貫通力が高められています。
  • 弾道性能の違い
    • M193は軽量なため、20インチバレルから発射した場合の銃口初速は約3,215 fpsとやや高くなります。
    • M855/SS109は約3,060〜3,100 fpsと若干遅くなりますが、弾頭が重いため、マズルエナジーは高くなります。
    • 400〜500ヤード以内の一般的な交戦距離では、両者の弾道はほぼ同等ですが、より遠距離になるとM855の方がエネルギー保持力と貫通性能に優れた結果を示します。
    • M193は高速かつ鉛芯構造であるため、柔らかい目標に命中した際に激しい破砕を引き起こし、大きな創傷を与えます。
    • M855/SS109は安定性が高く、短距離では破砕やヨー(横転)による創傷効果がやや抑えられる傾向があり、貫通してしまうケースも見られます。
  • 用途と互換性
    • M193はM16の初期モデルで標準採用されていた弾薬で、1:12のようなツイストレートの遅い銃身との相性が良好です。
    • M855/SS109は1980年にNATOで標準化された弾薬で、ヘルメットや軽装甲を貫通する性能を重視して設計されており、1:9または1:7といった速いツイストレートの銃身で最も安定した精度を発揮します。
    • M855/SS109はスチールコアを使用しているため、跳弾やバックストップの損傷を懸念して、多くの民間射撃場では使用が制限されることがあります。
  • その他の注記
    • SS109はNATOにおける呼称であり、M855は米軍の呼称ですが、性能は基本的に同一です。
    • 米国内で製造されたM855は、弾頭先端が緑色に塗られていることから「グリーンチップ」として知られています。
項目M193M855
(SS109)
弾頭重量55グレイン62グレイン
コア/構造フルメタルジャケット(鉛)スチール貫通体 + 鉛(複合構造)
銃口初速約3,215〜3,250 fps(20インチバレル)約3,060〜3,100 fps(20インチバレル)
マズルエナジー約1,300 ft-lbf約1,700 ft-lbf
適正ツイスト1:12など遅いツイスト1:9 または 1:7の高速ツイスト
障害物貫通性標準的:軟らかい標的に有効良好:薄い鋼板、車体、軽装甲を貫通
終末効果近距離で激しい破砕、広い創傷を形成破砕効果はやや控えめ、短距離では貫通傾向
長距離性能エネルギー減衰が早く、精度もやや低下長距離でのエネルギー保持と貫通力に優れる
使用背景初期型M16で標準採用、軽量で反動が小さい1980年にNATO標準化、軽装甲・ヘルメット対策
民間用途での制限一般的な使用に制限なしスチールコアのため一部射撃場で使用制限あり
呼称・識別米国における旧標準弾欧州ではSS109、米国ではM855(グリーンチップ)
総評破壊力と価格に優れ、近距離戦に適する遮蔽物越しの戦闘や長距離精度を重視する用途向け
  • フルメタルジャケット(FMJ): 弾頭を金属のジャケット(被甲)で完全に覆った構造の弾頭です。
  • ヨー(yaw): 弾頭が飛翔中に進行方向から軸がずれて、横転するような動きのことです。これによって、標的に命中した際に不規則な損傷を与えることがあります。
  • 終末効果:弾頭が目標に命中した際に生じる損傷や貫通、ストッピングパワーなどの効果を指します。これは「終末(ターミナル)弾道学」とも呼ばれ、以下の要素が含まれます。
    • 貫通力:目標をどれだけ深く貫くか
    • 拡張や変形の程度:ホローポイント弾などが体内で拡がるか
    • エネルギー伝達:目標内にどれだけ運動エネルギーを伝えるか
    • ストッピングパワー:目標を即座に無力化する能力

SS109とM855の違い

SS109はベルギーのFN社が開発し、1980年にNATOで標準化された欧州製の弾薬です。

一方、M855は米軍が1980年代初頭に採用した軍用バージョンです。

どちらも62グレインの弾頭(鉛芯+鋼鉄製ペネトレーター)を使用する5.56 NATO弾で、遮蔽物に対する貫通力が高められています。

M855の弾頭は、鋼芯を銅ジャケットで覆っており、これにより障害物貫通性能が若干向上している可能性があります。両者とも、1:7または1:9のツイストレートの銃身が必要です。初速や貫通力、終末効果はほぼ同等であり、M855は弾頭先端が緑色に塗られていることから「グリーンチップ弾」として知られています。

米国製M855は製造公差がわずかに厳しく設定されており、理論上はSS109よりも精度が高い可能性もありますが、実用上の差はほとんどありません。いずれも鋼芯を含むため、民間使用には一部制限がかかる場合があります。

SS109とM855は実質的に同じ5.56 NATO弾であり、主な違いは生産国、製造基準、弾頭構造のわずかな違いによるものです。性能差はほとんどありません。

M855とM855A1の違い

M855A1は、従来のM855(いわゆるグリーンチップ)を大幅に改良した、5.56 NATO弾の発展型です。

  • 弾頭の構造と素材の違い
    • M855は、62グレインの弾頭に鉛製のコアとスチール製の貫通体を組み込んだ設計です。
    • M855A1も同じ重量の62グレインですが、鉛を一切使用せず、銅製のコアと、前部に露出したスチール製の大型貫通体を装備しています。この構造により、環境への配慮がなされているほか、硬い目標への貫通力が大きく向上しています。
  • 終末効果と障害物貫通性能
    • M855は、着弾後の挙動(ヨー)や貫通性能にばらつきが見られ、特に長距離や遮蔽物越しでは効果が安定しませんでした。
    • M855A1は、着弾時に確実にヨーや破砕を引き起こすよう設計されており、軟部組織に対して安定した大きな損傷を与えます。また、鉄板やボディアーマーといった硬い目標に対しても優れた貫通力を発揮し、最大で9.5mm厚の軟鋼板を撃ち抜くことが可能とされています。
  • 弾道性能
    • M855の銃口初速はおおよそ3,060 fps程度ですが、M855A1はそれをわずかに上回る約3,113 fpsの初速を持ち、より空気力学的に優れた弾頭形状により、遠距離でもエネルギーの減衰が少なく、平坦な弾道を維持します。
    • また、M855とほぼ同じ弾道特性を有しているため、訓練時にはM855を使用し、実戦ではM855A1を使用しても照準調整を変更せずに運用することが可能です。
  • 圧力の影響
    • M855A1は、M855に比べて大幅に高い薬室内圧(M855:約55,000 psi、M855A1:約61,000 psi超)で作動します。このため、銃器にかかる負荷も大きくなり、ボルトの破損は約3,000発で発生することがあり、銃身寿命も約半分に短縮される場合があります。
    • M4カービンなどのショートバレルモデルでの性能を最大限に引き出すために、燃焼速度の速い火薬が使用されている点も特長です。その結果、対応するための改修が行われています。
  • 環境対策と法規制
    • M855A1は鉛を使用しておらず、米陸軍の環境基準を満たす「グリーン・アモ(環境配慮弾)」として設計されています。
    • 環境への鉛汚染を防ぐ目的から採用された側面もあります。
  • 製造コスト
    • 銅合金製の弾頭や、精密な製造工程により、M855A1はM855よりも高コストな弾薬となっています。
項目M855M855A1
弾頭タイプFMJ(フルメタルジャケット)EPR(環境配慮弾)
弾頭重量62グレイン62グレイン
弾頭構造鉛コア+スチール貫通体銅コア+大型スチール貫通体(部分露出)
銃口初速約3,060 fps約3,110 fps以上
マズルエナジー約1,289 ft-lbf約1,330 ft-lbf
貫通性能中程度(軽装甲に対応)優秀(鋼板・ボディアーマーを貫通)
終末効果破砕効果はやや控えめ着弾時のヨーと破砕が安定し、大きな組織損傷を与える
環境対応鉛を含む鉛フリー(環境配慮型)
薬室腔圧約55,000 psi約61,000 psi以上
銃器への影響通常の摩耗・寿命摩耗が増加し、銃身寿命は短くなる傾向あり
運用コスト比較的安価製造コストが高い

互換性の注意点|5.56mmの銃に.223弾は使えるか?

ライフル弾とマガジンの画像
弾薬薬室危険度
.223レミントン.223レミントン安全
5.56 NATO5.56 NATO安全
.223レミントン5.56 NATO安全だが精度に問題
5.56 NATO.223レミントン危険

.223レミントン弾を5.56 NATO規格の薬室を持つライフルで使用する場合、この組み合わせは基本的に安全とされています。

5.56 NATOの薬室は、.223弾よりも高い圧力に耐えるよう設計されており、かつリード(弾頭がライフリングに達するまでの空間)も長めに確保されているため、.223弾を装填しても過剰な圧力がかかることはほとんどありません。そのため、日常的な射撃用途であれば、.223弾を使用しても特に問題はありません。

ただし、銃身長が非常に短いライフル(たとえば10インチ以下)では、ガス圧の不足により作動不良が起こることがあり、稀に排莢や装填が不安定になるケースも報告されています。

また、命中精度が低下しやすい傾向があります。

一方で、5.56 NATO弾を.223レミントンの薬室で発射することは、非常に危険です。

.223の薬室は、もともと民間向けに設計された規格であり、軍用の5.56mm弾と比べてリードが短く、耐圧設計も低くなっています。そのため、高圧の5.56mm弾を.223の薬室に装填して発射すると、薬室内で過剰な圧力が発生しやすく、65,000 psi以上の危険な圧力に達することがあります。

圧力規格の違いに注意

弾薬ごとの最大腔圧には明確な差があります。

軍用弾であるM193、M855、M855A1は、NATOのEPVAT規格に基づき6万psiを超える高圧で設計されており、民間規格(SAAMI)に基づく.223レミントン(最大55,000psi)とは異なります。

以下は主な弾薬ごとの最大腔圧の比較です:

弾薬種最大腔圧(psi)測定規格
.223レミントン55,000SAAMI(米国民間規格)
M19355,000SAAMI(米国民間規格)
M19362,366NATO EPVAT
M85555,000~58,000SAAMI(米国民間規格)
M85562,366NATO EPVAT
M855A161,000~62,000超NATO/米軍基準

【補足解説】

  • .223レミントンは民間用の標準装弾で、SAAMI規格により最大55,000psiと定められています。
  • M193は初期の5.56 NATO軍用弾で、NATO EPVAT方式では62,366psi。ただし、米国軍用規格(SCATP)では55,000psi程度とされることもあります。
  • M855(SS109 NATO)は62グレインのスチールコア弾で、NATO EPVATで62,366psiですが、米国SAAMIやSCATPでは55,000~58,000psiの範囲で評価されることもあります。
  • M855A1は米軍の最新型強化弾で、61,000~62,000psi超の高圧を発生します。特にショートバレル(カービン)での性能最適化を目的としており、長期間使用すると銃の摩耗が増加する可能性があります。
  • 軍用の5.56 NATO弾(M193、M855、M855A1)は、一般的に.223レミントンよりも高圧です(特にNATO EPVAT規格での評価において)。
  • M855A1はこの中で最も高圧な弾薬であり、銃の耐久性に与える影響も大きくなります。

弾薬が発生させる圧力は非常に高圧です。

どれぐらい高圧かは、以下を比較するとわかりやすいでしょう。

比較対象圧力(psi)
車のタイヤの空気圧約30〜35 psi
炭酸飲料のペットボトル約40〜50 psi
エアソフトガン約109 psi
消防ホースの水圧約100〜300 psi
家庭用高圧洗浄機約100〜2,000 psi
水深1万メートルの水圧約14,500 psi
.44マグナム36,000 psi
.223レミントン55,000 psi
12.7×99mm NATO(.50BMG)60,481 psi
M855A161,000~62,000+ psi

購入時に確認すべき刻印と注意点

5.56mmバレル刻印
Image courtesy of nrablog.com

ライフルを購入する際や弾薬を選ぶ際には、必ず以下の刻印を確認してください。

  • 5.56 NATO:
    • 銃身に「5.56」「5.56 NATO」または「5.56x45mm」と刻印されている場合、5.56 NATO弾と.223レミントン弾の両方を安全に発射できます。
  • .223 Remington:
    • 銃身に「.223 Remington」または「.223 REM」とだけ刻印されている場合、.223レミントン弾のみを発射すべきであり、5.56 NATO弾は使用しないでください。
  • .223 Wylde:
    • 「.223 Wylde」や「multi-cal」と刻印されている場合、両方の弾薬を安全かつ高精度で発射できるように設計されています。

不明な場合は、必ず製造元に確認するか、専門家に相談してください。

.308 winと7.62mm NATOの違い

7.62x51mm NATO規格画像
7.62x51mm NATO 画像出典:Wikipedia

本題から外れますが、.308ウィンチェスター(.308 win)弾7.62×51mm NATO(7.62 NATO)弾も外見が非常によく似ているため、この違いについても簡単に触れておきます。

  • 圧力
    • .308 winは通常、最大で約62,000 psiまで装薬圧が高めに設定されています。
    • 7.62 NATOは約60,000 psiで、やや低圧です。
  • 薬莢(ケース)と薬室の寸法
    • 外寸はほぼ同じですが、7.62 NATOのケースは軍用での耐久性を重視しており、ケースウォールがやや厚めです。そのぶん内部容量は.308 winよりわずかに小さくなります。
    • 7.62 NATOの銃は薬室がやや広めに作られており、全長が.308 win規格より約0.006~0.010インチ長い場合があります。これは軍用でさまざまな弾薬を確実に使用するためですが、ケースウォールの薄い.308 winをこうした広めの薬室で発射すると、ケースが破裂する恐れがあります。
  • 用途の違い
    • 7.62 NATOは軍用として信頼性と耐久性を重視して設計されています。
    • .308 winは民間の狩猟やスポーツ射撃用に開発されています。
  • 弾薬の種類
    • .308 winは弾頭の種類や重さ、装薬量のバリエーションが豊富で、精密射撃から大型獣の狩猟まで対応します。
    • 7.62 NATOは軍用規格が中心で、種類は限られています。
  • 互換性と安全性
    • .308 win仕様の銃で7.62 NATOを撃つことは、圧力が低くケースも厚いため、一般的に安全とされます。
    • 7.62 NATO規格の銃で.308 winを撃つのは破裂のリスクがあり危険です。

.223レミントンと5.56 NATOの例から「NATO弾の方が高圧」という誤った覚え方は危険です。

.308 winと7.62 NATOを比較すると、民間の.308 winの方が高圧のため注意が必要です。

項目.308ウィンチェスター7.62 NATO
最大腔圧約62,000 psi約60,000 psi
薬室長やや短くタイト約0.006〜0.010インチ長い
薬莢厚さ薄め(容量やや多い)厚め(容量やや少ない)
弾薬の種類狩猟・スポーツ向けの種類が豊富軍用規格中心で種類は少ない
用途民間用(狩猟・スポーツ射撃)軍用(信頼性・耐久性重視)
使用銃.308仕様のライフル7.62 NATO仕様の軍用小銃や機関銃

まとめ

.223レミントン弾と5.56 NATO弾は、外見はほぼ同じですが、技術的な仕様や用途が異なる弾薬です。

  • 2つの弾薬の主な違い
    • 用途と設計思想:
      • .223レミントン弾は、もともと民間向けの狩猟やスポーツ射撃用に設計され、精密射撃を重視しています。
      • 5.56 NATO弾は軍用規格として設計され、高い信頼性と対人・対軽装甲貫通能力を重視しています。
    • 薬室の構造:
      • .223レミントンの薬室は、弾頭とライフリングの間の空間(リード)が短く、高い精度を追求しています。
      • 5.56 NATOの薬室はリードが長く、高圧の弾薬を安全かつ確実に発射できるように設計されています。
    • 最大腔圧:
      • .223レミントンの最大腔圧はSAAMI規格で55,000 psiと規定されています。
      • 5.56 NATO弾は軍用規格でより高圧(約63,000 psi)に設計されており、これが安全性の違いを決定づける重要な要素です。
  • 互換性に関する注意点
    • 5.56 NATOの薬室を持つ銃は、高圧の5.56 NATO弾と低圧の.223レミントン弾の両方を安全に使用できます。
    • .223レミントンの薬室を持つ銃で、高圧の5.56 NATO弾を使用することは非常に危険です。過剰な薬室内圧力が生じ、銃器の破損や事故につながる可能性があります。
    • .223 Wyldeなどの特殊な薬室は、両方の弾薬を安全かつ高精度で発射できるよう設計されています。

ライフルや弾薬を選ぶ際は、銃身に刻印された規格(5.56 NATO、.223 Remington、.223 Wyldeなど)を必ず確認し、適切な弾薬を使用することが重要です。