架空銃HK G56とKRISS Vector

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Photo via http://alexjjessup.deviantart.com/art/HK-G56-390638785

これは最近Tumblrなどで拡散されている”架空の銃”の画像です。「HKとKRISSによって開発され2023年に米軍に採用」という説明があるせいか、これを事実だと勘違いしている人もいるようですが、全て架空のデマなのでご注意下さい。

ところで私は個人的にKRISS Vectorのデザインを「カッコ悪い」とは思っていませんが、KRISSという会社のセールス方針がどうにも好きになれません。 日本語版ウィキペディアでは、Vectorについて次の様に説明されています。

Kriss Super Vとはトリガーとマガジンの間に内蔵されているV字型の機構であり、これにより銃身の軸線(ボアライン)上にグリップ位置を並べることができ、反動のベクトルを銃身を跳ね上げる動きから後方へ押す動きに近いものにできると同時に、ボルト及びスライダが下へ下がる動きになることによって発砲による反動エネルギーを下方への運動エネルギーに変換する。これにより今までとは全く異なる反動軽減が可能となりフルオートでの射撃でもコントロールが容易になるとされている。



マズルの軸線上にグリップがあることでマズルジャンプが抑えられるのは事実ですが、「発砲による反動エネルギーを下方への運動エネルギーに変換」という説明は言い過ぎだと思います。実際、KRISSはこの部分をアピールしますが、物理的にボルトの上下運動による効果は感覚的な物であり微々たるものに過ぎません。なぜなら、どんな銃もリコイルの発生源はマズルブラストと弾頭の移動によるものだからです。

ファイアリングピンがプライマーを叩き、パウダーが燃焼を始めるとケースの内部が高圧になります。すると弾頭は押されて前進を始めますが、弾頭が動き出す瞬間からリコイルは発生し、弾頭が前進を始めると共にケースもボルトを後方へ押します。KRISS Vectorはディレード・ブローバックなので、弾頭がマズルを離れマズルブラストが前方へ噴射された後、バレルやチャンバーの内圧が下がってからボルトが後退して下向きに移動します。

弾頭がマズルを離れ、マズルブラストが噴射された時点でリコイルが最大となり、水平方向に後方へリコイルが発生しています。これを抑えるには無反動砲のように何らかの力を後方へ噴射させるか移動させるしかありませんが、Vectorにそのような機能はありません。ボルトが後退する頃にはリコイルの発生は終了しており、ボルトの運動エネルギーはボルトの移動とメインスプリングの伸縮に消費されます。道路工事に使用する削岩機を水平に持って作動させても後方に押されないのと同じ理屈で、ボルトの移動自体が後方へのリコイルを発生させているわけではありません。

Vectorが完成されるまでKRISSは様々な試作品を誕生させ、いずれもマズルとグリップを同じ軸線上に配置することでマズルジャンプを抑えた銃の開発を目的としていました。完成したVectorはその目的を達成し、その手段としてボルトの位置を従来の一般的な銃とは異りグリップの前に収めました。ボルトを上下運動させることで全長を短くすることに成功し、重量バランスが向上してより扱いやすい重心位置となりました。

ところが、最近はやたらと「ボルトの上下運動」が注目され、それがあたかも「この動きがリコイルを抑えているのだ」という誤解が広まっているのは残念なことです。ボルトキャリアの移動分を減少させているのは事実ですが、それがリコイル減少の主原因ではありません。Vectorで注目すべき点は、バレルとグリップの位置でしょう。もしKRISSが素人を騙すようなグレーな売り方をするとしたら、きっと同社にプラスとはならないでしょう。




 
 
 
 
 
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