狙撃手までの距離を測る方法は、いわゆる「クラック・サンプ法(Crack Thump Method)」が利用されます。
銃撃を受けた際、音速を超える弾によってソニックブームが発生することで頭上等を弾が通過した際にパチッという弾けるような音が聞こえ、少し遅れてパンという銃声が聞こえます。この通過時の音(着弾)と銃声の時間差を測ると距離が分かります。
予め使用された弾薬が分かっていれば弾道計算機で計算できますが、実際には使用されている弾薬の種類を判断するのは困難な場合が多く、現場で計算している時間があるかも分からないため、通常は狙撃手が所持している、弾速、飛翔時間、時間差などの弾道データが書き込まれたカード(レンジカード)を見ておおよその距離を割り出します。
米軍のスナイパートレーニングの教本では、時間差が1秒で距離600ヤード、0.5秒で300ヤードとされていますが、使用する弾薬によって異なるため、必ずしも正確とはいえません。
何故なら弾速差によって時間差が異なるうえ、音速の2倍以上で飛ぶ弾も発射直後から減速を始めることで距離が離れるほど弾に銃声が追いつき、ある一定の距離に達すると着弾と銃声が同着になります。そして、それを超えると今度は逆に着弾よりも銃声の方が早く到達します。
例えば7.62x39mmの場合、距離600メートルでは着弾から0.5秒遅れて銃声が届き、1200メートルでは銃声と着弾が同時になりますが、これ以降の距離では銃声の方が先に届きます。(およそ500~600メートルで弾速は超音速から亜音速になります)
一方7.62x51mmNATOの場合、距離600メートルでは着弾から1秒遅れて銃声が届き、1200メートルでは着弾から0.9秒後に銃声が届きます。(およそ900~1000メートルで弾速は超音速から亜音速になります)
しかし、時間差で距離を割り出す方法は開けた場所で有効なものの、連続的に複数発発射された場合や、建造物が多い場所では音が反響するため正確な距離を判断しにくくなります。
狙撃手の方角を割り出す方法は、一般的には着弾時の土埃の飛び方や方向、弾痕の状態などからおおよその方向を判断できます。(耳で判断できる場合もあります)
または三角測量を利用して二か所で観測して距離を割り出し、地図上に距離分の半径の円を描いて二つの円が交差する場所が狙撃手の場所と推測できますが、その前に距離が分かれば狙撃手が潜んでいそうな場所を絞りやすくなりますし、続けて銃撃を受けた場合はマズルフラッシュやマズルブラストによる埃などから場所を特定することも可能です。(良く訓練された狙撃手はこういったことを理解しているため、より発見が困難になります)
また余談ですが、アフガニスタンでは米軍が通称「ブーメラン」や「PILAR」といった狙撃手探知システムを利用していました。
これは複数のマイクによって銃声の時間差を計測し、距離と方角、狙撃手の場所を地図上に示す機能があり、車載や基地に据え置いて運用されていました。