空に向かって撃った弾は時速何kmで落ちてくる?
これは空気密度や弾頭の横転(タンブリング)まで考慮した精密弾道シミュレーターです。
9mm、.38スペシャル、.30-06など主要弾薬に対応。垂直射撃と斜め射撃の致死性の違いを、科学的な数値で体感することができます。
更新履歴
- 2026年2月21日:正式公開。
- 計算エンジンの高精度化:RK4(4次ルンゲ=クッタ法)による、誤差の極めて少ない逐次演算処理の実装。
- 動的大気モデルの導入:高度に応じた空気密度の変化(bsimRhoScale)を計算ロジックに統合。
- タンブリング挙動の再現:高仰角・落下時に発生する弾頭の横転を考慮した実効抗力係数および終端速度のプリセット化。
- ビジュアライザーの改善:アスペクト比固定による物理的な仰角と描画角度の一致、および垂直発射(90度)時のグラフスケールエラー回避処理。
- 管理者パネルの搭載:空気抵抗係数やラグなどの物理パラメーターを管理画面から調整できるバックエンド機能の追加。
- マルチデバイス対応:スピンボタンによる数値入力の操作性向上、およびタッチデバイス用イベントの最適化。
既知の仕様上の制約
- 2次元平面での演算:X軸(水平)とY軸(垂直)の2次元計算のため、コリオリの力や偏流(スピンドリフト)は非考慮。
- 無風状態の仮定:風速や風向による流され、および横風による弾道への影響は計算外。
- 固定の姿勢モデル:飛翔中の弾頭の姿勢変化をリアルタイム追跡せず、プリセットされた(G1/G7またはタンブリング値)を全行程で適用。
- 等温大気モデルの近似:空気密度計算において、高度による気温の変化(気温減率)は考慮せず、高度のみを変数とした近似式を採用。
- ブラウザ依存の計算速度:JavaScriptによるリアルタイム演算のため、実行速度はユーザーのブラウザ・デバイスの処理能力に依存。
落下弾については、こちらの記事で詳しく解説しています。

シミュレーター利用上の注意事項
本シミュレーターは筆者による自作機です。弾頭のスピンドリフト(回転による横偏差)の算出やコリオリ効果(地球自転による影響)、風の影響の計算は含まれません。
算出される数値(飛距離・高度・速度)は、物理学上の理論モデルに基づいた計算結果です。実際の弾道には、以下の要因により計算値と異なる挙動が発生することをあらかじめご理解ください。
理論上の最大値と現実の射程
シミュレーターでは、着弾時の終端速度については弾頭の横転(タンブリング)を考慮した最大抵抗値を採用していますが、飛行中の軌道計算については理想的な姿勢を維持する前提で算出しています。
そのため、着弾時の威力(速度)は現実的な予測値となりますが、水平距離や到達高度については、現実よりも数値を大きく見積もる傾向(理想値)があります。
特に .338ラプアマグナム などの強力な弾薬を仰角45度付近で発射した場合、計算上は 9km以上 の飛距離が算出されることがありますが、現実には風の影響やタンブリングによる失速が発生するため、実際の最大射程はこれより数キロ単位で短くなるのが一般的です。
最大射程と有効射程の違いはこちらの記事で解説しています。

空中での不安定挙動(タンブリング)
現実の超音速弾頭は、速度が落ちて音速を下回る際、コマが止まる直前のようにフラフラと姿勢を崩す「不安定化」が起こります。
- シミュレーター: 理想的な空気抵抗で計算し続けますが、仰角が90度に近づくほど落下時にタンブリングしやすくなります。
- 現実: 超音速弾を使用して仰角を45度にしても、弾が亜音速域へ移行する際に姿勢が乱れたり、弾頭に急激な減速が生じるため、計算上の着弾点よりも手前に落下します。
気象条件の影響
計算では標準的な大気状態(気温15℃、無風など)を前提としています。
- わずかな横風でも、数キロ先の着弾地点は数百メートル単位でズレが生じます。
- 湿度・気圧: 標高や天候によって空気の密度が変わり、滞空時間や高度に影響を与えます。
落下弾の危険性
「着弾速度」として表示される数値は、自由落下する弾頭が持つ 致命的な威力 を示唆しています。真上に撃った場合でも、弾頭が発射地点に正確に戻ってくることは稀であり、数キロ圏内の予期せぬ場所へ落下します。このシミュレーターは、そうした「落下の危険範囲」を視覚化するための教育ツールとして活用してください。
免責事項
本ツールの計算結果を用いて行われたいかなる行為についても、当サイトは一切の責任を負いません。弾道学の学習や、安全意識の向上のための参考値としてご利用ください。
高仰角弾道シミュレーター:使い方ガイド
このシミュレーターは、弾を空高く撃ち上げた際の軌道や、落下時の危険性を予測するためのツールです。
以下の手順で操作を行ってください。
画面右上のスイッチで、メートル法(m, m/s)とヤード・ポンド法(ft, fps)をいつでも切り替えることができます。
まずは「使用弾薬」のメニューから、シミュレーションしたい弾種を選んでください。
- 代表的な弾種: 9mm、.45ACP、.30-06などの主要なデータが登録されています。
- 自動設定: 弾種を選ぶと、初速、弾頭重量、弾道係数(BC)が自動的にセットされます。
弾頭はその形状(尖っているか、丸いか等)によって空気の抵抗の受け方が全く異なります。そのため、基準となる「標準弾」の形状を定義したのがドラッグモデルです。(BC: Ballistic Coefficient)
主に以下の2種類が使われます。
- G1モデル(一般的な弾頭向け)
- 底が平ら(フラットベース)で、全体的に少し丸みを帯びた形状。
- 拳銃弾(9mmや.45ACPなど)や、昔ながらのライフルの弾によく適合します。
- 多くの市販弾薬メーカーがカタログ値として採用している最も一般的な基準です。
- G7モデル(長距離精密射撃向け)
- 底部が絞られた「ボートテイル」形状で、先端が鋭利な形状。
- 近代的な長距離用ライフル弾(.308 Winや.338 Lapuaなど)に適合します。
- 高速域から低速域まで安定して高い精度で計算できるため、精密射撃で好まれます。
「弾頭がいかに空気抵抗を受け流して飛べるか」を表す数値です。
- BC値が高い(例: 0.500 以上)
- 空気を切り裂く能力が高い。
- 速度が落ちにくく、風の影響も受けにくい。
- 遠くまでエネルギーを維持して飛ぶ。
- BC値が低い(例: 0.150 以下)
- 空気抵抗を強く受ける。
- すぐに失速し、弾道が大きくドロップ(落下)する。
- 風に流されやすい。
重くて細長い弾頭ほど、BC値は高くなります。逆に、軽くて太い(空気を受ける面積が広い)弾頭はBC値が低くなります。
本シミュレーターでは、選択したプリセットに合わせて自動的に最適なBCタイプと数値がセットされます。
- 拳銃弾(9mmなど): 空気抵抗を受けやすいため、BC値は 0.140〜0.190 程度と低めに設定されています。
- ライフル弾(.30-06など): 非常に効率的に飛ぶため、BC値は 0.400〜0.500 近くまで上がります。
もし正確なBC値がわからない場合は、メーカーの公式サイトを確認してみてください。多くの場合「G1 BC」として記載されています。この数値を微調整することで、より現実に即した高度や飛距離の予測が可能になります。
スライダーまたは数値入力ボックスを使って、細かな条件を変更できます。
- 初速:銃口付近の弾速です。
- 弾頭重量:弾頭重量の単位はグレインまたはグラムが使用されます。
- 仰角・発射角度:45°〜90°の高仰角設定が可能です。90°にすると真上に打ち上げます。
- 標高:発射地点の海抜です。標高が高いほど空気抵抗が少なくなります。
操作のポイント
スライダーは中央の丸いつまみをドラッグして操作します。
バーの部分を誤ってクリックしても値が飛ばない「誤操作防止設計」になっています。
準備ができたら、[発射] ボタンを押してください。
- グラフ上にリアルタイムで弾道が描かれます。
- 画面上部のパネル(HUD)に、経過時間・現在の高度・飛翔速度と着弾時速度・水平距離がリアルタイム表示されます。
- 表示速度は秒速・時速・マッハを切り替え可能です。
弾頭が地面に到達すると、自動的に計算が停止し、最終的なシミュレーション結果が固定されます。
- 経過時間:発射から着弾までにかかった秒数です。
- 着弾速度:速度表示が「着弾速度」に切り替わります。これは空気抵抗によって減速し、最終的に一定の速さ(終端速度)で落下してきた際の「激突時の速度」を指します。
- 水平距離:発射地点から着弾地点までの直線距離です。発射する角度(仰角)によって距離が変化します。
シミュレーターの計算手法と信頼性について
本シミュレーターは、高仰角射撃や自由落下という特殊な条件下での弾道を正確に再現するため、一般的な弾道計算ソフトよりも高度な物理モデルを採用しています。
1. 高精度な数値計算エンジン(RK4)
弾頭の軌跡計算には、NASAの軌道計算や科学シミュレーションで標準的に用いられる「4次ルンゲ=クッタ法(RK4)」を採用しています。 多くの簡易計算機で使われる手法(オイラー法)とは異なり、時間の経過とともに蓄積する計算誤差を極めて小さく抑えているため、数キロメートルに及ぶ長大な弾道でも高い信頼性を維持します。
2. 地球の大気変化を反映(高度補正モデル)
高仰角射撃では、弾頭は空気が薄い上空へと打ち上げられます。 本機は、高度に応じて空気密度が変化する動的モデルを搭載しています。上空の抵抗が少なくなる性質を計算に含めることで、最高到達高度や、落下時の加速挙動をより現実に近い数値で算出します。
3. 自由落下時の「横転(タンブリング)」を考慮
垂直に近い角度で撃ち上げられた弾頭は、頂点付近で安定を失い、横に回転しながら落下します(タンブリング現象)。 本シミュレーターでは、各弾種に「タンブリング状態の実効抗力係数(Cd ≈ 0.45)」を個別に設定。これにより、理論上の終端速度(例:.38スペシャル弾なら約72m/s)を正確に再現し、「落ちてくる弾頭の危険性」を正しく評価できるように設計されています。
4. ドラッグテーブル(G1/G7)の採用
弾頭の空気抵抗特性として、世界的に標準とされるG1/G7ドラッグモデルを使用しています。弾頭が音速を超える瞬間から、亜音速に落ちるまでの抵抗変化をシミュレートしており、軍事・狩猟用ソフトと同等のロジックで動作します。
Q&A
- なぜ落下中に加速がほとんど止まるのですか?
-
空気の抵抗が「重力」と同じ強さで押し返してくるようになるからです。これを「終端速度」と呼びます。
宇宙空間のような真空状態であれば、物は落ちれば落ちるほど際限なく加速し続けます。しかし、地上には「空気」があります。弾頭が落下する際、物理の世界では以下の2つの力が綱引きをしています。
- 重力(下向きの力):弾頭を地面に向けて加速させようとします。
- 空気抵抗(上向きの力):落ちようとする弾頭を押し戻そうとします。
落下し始めた直後はスピードが遅いため、空気抵抗も弱く、弾頭は加速していきます。しかし、空気抵抗は「速度が速くなるほど強くなる」という性質を持っています。
ある程度のスピードに達すると、ついに「空気抵抗」が「重力」と同じ強さになり、力がつり合った状態になります。こうなると、これ以上加速することができず、一定の速度を保ったまま落ちてくるようになります。
- 垂直(90度)に撃った時と、斜めに撃った時で危険性は変わりますか?
-
はい、斜めに撃った時の方が圧倒的に危険です。
真上に撃った弾は一度速度がゼロになり、不安定に横転(タンブリング)しながら落下するため、空気抵抗を大きく受けて減速します。しかし、斜めに撃った場合は、弾頭が回転による安定を保ったまま「槍のように」高速で落ちてくるため、着弾時の威力は垂直落下の数倍に達することがあります。
- なぜ弾種によって「落下速度(終端速度)」が違うのですか?
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弾頭の「重さ」と「空気を受ける面積」のバランスが異なるためです。
重い弾頭ほど重力に引かれる力が強く、細い弾頭ほど空気抵抗を受けにくいため、より速い速度で落下します。当シミュレーターでは、各口径の正確な直径データを用いて、その弾特有の「落ちやすさ」を算出しています。
- 風の影響は計算に含まれていますか?
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本バージョンでは「無風状態」を想定しています。
現在は純粋な弾頭の性能と重力、空気抵抗の関係を可視化することに特化しています。現実の射撃では横風の影響を受けますが、落下速度やエネルギーの基本特性を理解する上では、無風状態での計算が最も正確な基準となります。
- シミュレーターが動かない、または表示が乱れる場合は?
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最新のブラウザでの閲覧を推奨します。
本機は高度なリアルタイム演算を行っているため、古いブラウザや一部の省電力モードでは動作が重くなる場合があります。Google Chrome、Safari、Microsoft Edgeの最新版をご利用ください。
