コンペンセイターとサプレッサーは、銃の射撃性能向上に役立つマズルデバイスです。
それぞれ異なる目的で設計されていますが、これらを組み合わせることは可能なのでしょうか?
本記事では、それぞれの役割や特性、併用する際の課題や解決策を詳しく解説します。
コンペンセイターとは?
コンペンセイターは、ライフルやピストルの銃口に取り付ける装置で、発射時の反動(リコイル)とマズルジャンプ(銃口の跳ね上がり)を減少させることを目的としています。
銃は火薬の燃焼によって発生した高圧ガスを利用して弾を発射しており、この高圧ガスを上向きに噴出させることで銃口付近に下向きの力を加えて銃を安定させる仕組みです。
銃の跳ね上がりを防ぐことができれば、次弾発射までの時間が短縮され、速射性や命中精度が向上するメリットがあります。
特にピストルにおいては、反動を最大37%まで軽減することができ、射撃精度を向上させることができます。
これにより、連続して素早く正確なショットを撃つことができ、特に射撃競技や護身用途などでメリットがあります。
一方、欠点としては、ガスが射手の方向に排出されるため、銃声が大きくなる傾向があります。
大きな銃声は射手の聴力を奪う可能性があり、屋内射撃、軍事、狩猟などでは問題となる場合があります。
大きな音だけを遮断する電子式のイヤーマフを使用するのも解決法のひとつですが、ユーザーによっては些細な音も聞き逃したくないという理由からイヤーマフが敬遠されることもあります。
また、狩猟時には銃声が猟犬の聴力に影響する場合もあります。
その他の欠点としては、銃身先端がやや重くなり、その分銃の取り扱いやバランスが悪くなることがあります。
マズルブレーキやポーテッドバレルとの違い
コンペンセイターと似た装置に、「マズルブレーキ」や「ポーテッドバレル」があります。
これらはどれもマズルジャンプや反動軽減を目的としており、効果が似ていますが、わずかな違いがあります。
コンペンセイターは、マズルジャンプ減少を主目的としており、ハンドガンからライフルまで様々な銃で使用されます。
マズルブレーキは、反動の軽減を主目的としており、強力なハンドガン、ライフル、ショットガンに多く利用されています。
ポーテッドバレルは、マズルジャンプ軽減を目的としていますが、主にハンドガンやショットガンで利用され、銃身自体を加工するため「マズルデバイスだけを交換する」といった手軽さがありません。
それぞれ一長一短があるため、目的に合わせて利用する必用があります。
また、商品によっても性能が異なるため、必ずしも明確に分類できるわけではありません。
特徴 | コンペンセイター (Compensator) | マズルブレーキ (Muzzle Brake) | ポーテッドバレル (Ported Barrel) |
---|---|---|---|
機能 | マズルジャンプを減少 | 反動を減少 | マズルジャンプと一部反動を減少 |
設計 | デバイスの上部にポートやベントが配置 | 側面または後方にガスを誘導するためのカットやポートを配置 | 銃身の上部などに穴やスリットを配置 |
用途 | 競技や速射、戦術的な用途 | 大口径ライフルや長距離射撃、反動減少が重要な場面 | ハンドガンやショットガンで、永久的な解決策が求められる場面 |
ガス誘導方向 | 主に上方 | 主に側面や後方 | 主に上方 |
利点 | マズルジャンプの減少 | 反動の減少 | マズルジャンプと一部の反動減少 |
音 | 銃声やマズルブラストの影響は比較的少ない | 銃声やマズルブラストが大きい | 銃声やマズルブラストの影響は比較的少ない |
汎用性 | 交換や取り外しが可能 | 交換や取り外しが可能 | 固定され簡単に変更できない |
重量 | 重い | 重い | 軽量 |
マズルブレーキの欠点としては、ガスが側方や後方に放出されることで砂埃が周囲の視界を悪化させ、戦闘時にはデメリットとなる場合があります。
サプレッサーとは?
サプレッサー(サイレンサー/消音器/減音器)は、銃の発砲時に発生する音や閃光(発射炎)を軽減するための装置です。
内部には「バッフル」と呼ばれる仕切りがあり、これがガスを減速させ、熱エネルギーに変換することで音を低減します。
高圧の発射ガスが外部に放出される前にサプレッサー内部で減速し、音圧のエネルギーを大幅に減らすことができます。
サプレッサーに関する誤解
映画など創作物の影響により、サプレッサーの性能に関して誤解が多いともいえます。
最も多い誤解として、サプレッサーは完全な静音ではありません。
映画のような無音状態にはなりませんが、音量を大幅に軽減することは可能で、銃声が届く距離が短くなります。
また、弾速への影響はほとんどありませんが、サプレッサーを使用すると弾速が向上する傾向があります。
その他、銃身の振動に影響を与える場合がありますが、通常は精度に大きな悪影響を及ぼしません。
むしろサプレッサーを使用すると命中精度が向上することがあります。
コンペンセイターとサプレッサーの併用は可能か?
コンペンセイターは、サプレッサーとの併用が可能です。
例えば、Dead Air社の「Ebrake」は、サプレッサーに取り付けることができるオムニディレクショナル(多方向)コンペンセイターの一例です。
これはサプレッサーを装着していながらマズルブレーキと同様の効果が得られます。
しかし、通常のマズルブレーキのように最大限のガス圧は得られないため、マズルブレーキ単体と同じ効果が得られるわけではありません。
このような製品は特殊で、多くのサプレッサーは特定のマズルに対応しており、コンペンセイターとの互換性がない場合が多いと言えます。
また、一部のメーカーは、サプレッサーとの統合を考慮して特別に設計された製品を提供しています。
例えば、SilencerCo ASR RCBはその一例で、サプレッサーとのシームレスな統合を目的としており、コンペンセイターやマズルブレーキの上から直接サプレッサーを被せて装着されます。
この場合、コンペンセイターやマズルブレーキは発射ガスを誘導できず機能しなくなるため、サプレッサーの機能だけが有効になります。
(メーカーは両方の機能が有効と主張する場合があります)
併用時の注意点
コンペンセイターとサプレッサーを併用する場合、次の点に注意する必要があります。
サプレッサーを取り付けたり外したりすることで着弾点(POI:Point of Impact)が変わる場合があります。
サプレッサーを装着しない状態では正確に命中しても、追加されるマズルデバイスのような重量物を銃身に搭載すると、狙点より下へ着弾しやすくなります。
また、コンペンセイターとサプレッサーを併用すると、サプレッサーの銃声低減効果や、コンペンセイター機能に影響を与える可能性があります。
その他、両方の装置を組み合わせることで、銃の長さと重量が増加し、操作性やバランスに影響を与えることもあります。
選択時のポイント
コンペンセイターやサプレッサーを選択する際、以下のことに注意が必要です。
- 法規制:サプレッサーは法規制の対象となる場合が多く、国や地域によって使用には特別な許可が必要です。
- コスト:高品質なデバイスは高価であり、目的によっては費用対効果が低い場合もあります。
- 使用環境:屋内射撃場ではコンペンセイターの使用が制限(禁止)される場合があります。
まとめ
結論として、コンペンセイターとサプレッサーを併用することは可能ですが、互換性のある部品を選び、トレードオフを考慮する必要があります。
多くのユーザーにとって、サプレッサーだけでもある程度はコンペンセイターと同等の役割を果たすため、別途コンペンセイターを使用する必要はない場合があります。
それぞれ一長一短があるため、自分のニーズに合った選択をする必要があるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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