PEQ-15からNGALへ。米軍次世代レーザー『LA-23』は何が進化したのか?

LA-23 PEQ NGALイメージ画像

この記事の要約:

  • AN/PEQ‑15は20年以上にわたり米軍の夜間戦闘を支えてきた多機能レーザーデバイス。
  • 現代のNVGや戦術環境の進化により、小型・高性能なNGALが新たな基準として求められるようになった。
  • NGALはPEQ‑15の操作性を継承しつつ、光質・サイズ・効率を大幅に改善した次世代レーザーとして米軍が採用を進めている。

夜間戦闘の現場では、AN/PEQ‑15 ATPIALが長年にわたり重要な役割を果たしてきました。可視光レーザー、IRレーザー、そしてイルミネーターを一体化したこのデバイスは、20年以上にわたり現場で信頼されてきました。

しかし、NVG(ナイトビジョン)技術の進歩や戦術環境の変化により、従来の設計では対応が難しい場面も増えてきました。こうした状況を踏まえて登場したのが、L3Harrisが開発した次世代レーザー「NGAL」です。

本記事では、PEQ‑15とNGALの特徴や違いについて、わかりやすく解説していきます。

目次

AN/PEQ‑15 ATPIALとは何か

ATPIAL (AN/PEQ-15)画像
ATPIAL (AN/PEQ-15) 画像出典:United States Army | Program Executive Office Soldier, Public domain, via Wikimedia Commons

AN/PEQ‑15は、ATPIAL(アドバンスドターゲットポインター・イルミネーター・エイミングライト / Advanced Target Pointer/Illuminator/Aiming Light)の名が示す通り、可視光レーザーと赤外線レーザー、そしてIRイルミネーターを備えた多機能エイミングライトです。

暗視装置(NVG)を通さなければ見えない非可視光を広範囲に照射できる点が最大の特徴で、夜間だけでなく建物内部やトンネルといった暗所で敵に気づかれずに視界を確保できます。ATPIALの能力を最大限に活かすにはNVGが必須であり、レーザーサイトとウェポンライトの役割を一体化した装備として発展してきました。

銃の画像
画像出典:L3

その背景には、1991年の湾岸戦争で得られた教訓があります。AN/PAQ‑4CやAN/PEQ‑2といった初期のIRレーザー装置は有用であったものの、サイズや重量、操作性に課題がありました。

PEQ‑15はそれらの後継として登場し、レール上の占有スペースを大幅に削減しつつ、可視レーザーを追加するなど、当時の戦術環境に適した改良が施されました。重量はバッテリー込みで約213gと軽量で、フルパワー(デュアルハイ)で約6時間の連続使用が可能です。

銃の画像
画像出典:tacticalblueprint.com

米軍の装備名称である「AN/PEQ‑15」は、JETDS(電子機器共通名システム)に基づいており、

  • AN=Army/Navy(陸軍・海軍)
  • P=Portable(携行型)
  • E=Laser(レーザー)
  • Q=Special(特殊用途)

を意味します。前身のPAQシリーズに含まれる“A”は「非可視光(赤外線)」を示す記号です。

軍用モデルのIRレーザーは規制対象であるため民間市場には流通せず、出力を0.7mWに落としたATPIAL‑C(Class 1)が販売されています。

軍用モデルでは可視レーザー最大5mW、IRエイムレーザーは700µW(LOW)〜45mW(HIGH)、IRイルミネーターは3.5mW(LOW)〜27.5mW(HIGH)と、用途に応じた幅広い出力を備えています。

PEQ-15の各部名称と機能

各部名称と機能を紹介します。

銃の画像
PEQ-15フロント 画像出典:L3
番号概要
1レンズキャップ
照準用レーザーに被せて保護すると同時に、
夜間の隠密行動時などで不意に可視光レーザーが照射するのを防ぐ。
付属のパターンジェネレーター(レンズキャップ)に交換することで、
レーザーの形状を〇、△、□、+、Tなどに変更可能。
2セーフティースクリュー
モードセレクターがハイパワーモードに入らないようにするための保護用ネジ。
武器庫保管時や輸送時などで使用し、六角レンチで着脱する。
(スクリューを外すとすべてのモードが使用可能になる)
3モードセレクター
レーザーやイルミネーターのモードを切り替えるスイッチ。
4イルミネーターアジャスター
イルミネーターの照射方向(上下左右)を調節するネジ。
5イルミネーター・ディフューザー・レンズキャップ
IRイルミネーターに被せると光を拡散し広範囲を照射する。
(特に室内など近距離で使用される)
6IRイルミネーターとフォーカスリング
暗視装置使用時に照射する赤外線照射装置。
フォーカスリングを左右に回して照射範囲を調節する。
(左に回すと狭くなり、右に回すと広くなる)
照射距離2000m
7IRエイムレーザー
暗視装置使用時に使用する非可視光レーザーを照射。
照射距離600m(LOW)2000m(HIGH)
8可視光エイムレーザー
暗視装置不要で肉眼で目視できるレーザーを照射。
照射距離25m
銃の画像
PEQ-15リア 画像出典:L3
番号概要
9バッテリーキャップ
3Vリチウム電池が入るバッテリースペース。
10ファイアボタン
各モードの照射のオンオフをコントロールするスイッチ。
指でボタンを押し続けている間だけオンになり、指を離すとオフになる。
連続して点灯させたい場合はボタンを2回連続で押し、もう一度押すと消灯する。
(5分経過すると自動的にオフになる)
11エイムレーザーアジャスター
レーザーの照射方向(上下左右)を調節するネジ。
12レイルグラバーブラケット
銃のピカティニレイル(MIL-STD-1913)に固定するための装置。
13セーフティースクリュー・ストレージロケーション
取り外したセーフティースクリューを収納する場所。
14リモートジャック
プラグを外してリモートケーブルを挿し込むジャック。
リモートケーブルを使用しないときはプラグを差し込んで異物の侵入を防ぐ。
リモートケーブルで接続されたスイッチは、本体のファイアボタンと同じ操作方法と機能を持つ。
15LEDステータス・インジケーター
レーザー照射中を知らせるLED。
通常は緑色で、バッテリーが低下すると赤色で5秒間隔の点滅で知らせる。
プログラミング完了時はオレンジ色で3回点滅する。

照射モードセレクター

回転式レバーを操作し、各モードを選択することができます。

銃の画像
PEQ-15のモードセレクター 画像出典:L3
表示
IR赤外線/非可視光(暗視装置使用時)
VIS可視光
VIS – ALビジブル・エイムロー
可視光照準用レーザー
Oオフ
Pプログラム
IRイルミネーターのパルスレートをプログラムする際に選択。
ファイアボタンとセレクターの組み合わせにより、1,2,4,8回/秒のモードが選択可能。
ALエイムロー
IR照準用レーザーをローパワーで照射。
DLデュアルロー
IR照準用レーザーとIRイルミネーターを同時にローパワーで照射。
AHエイムハイ
IR照準用レーザーをハイパワーで照射。
IHイルミネーターハイ
IRイルミネーターをハイパワーで照射。
DHデュアルハイ
IR照準用レーザーとIRイルミネーターを同時にハイパワーで照射。

通常、FOF(Force on Force)などの訓練ではローパワーが使用され、実戦でハイパワーが使用されます。

またPEQ-16では通常の可視光ライトが追加され、機能的に進化しています。

PEQ‑15が築いた20年の標準

銃の画像
画像出典:L3

2000年代初頭に登場したPEQ‑15は、可視レーザーとIRレーザーを同軸上に配置することで、昼間に可視光でゼロインした設定を夜間のIRレーザーでもそのまま使用できるという利点を実現しました。これは当時としては革新的で、PEQ‑2からの大幅な小型化と合わせて、米軍・法執行機関の標準装備として一気に普及しました。

堅牢性も高く、砂漠・湿地・寒冷地といった過酷な環境でも安定して動作する信頼性は、20年以上にわたり評価され続けています。

しかし、夜間装備の進化は速く、PEQ‑15の設計思想は次第に現代の戦術環境とズレを生じ始めました。アクセサリーが増えた現代のカービンではサイズが大きく感じられ、IRイルミネーターの光質も最新NVGには最適とは言えなくなってきました。ENVG‑Bのような高性能双眼ゴーグルを前提とした近接戦闘では、より精密で制御性の高いレーザーが求められるようになったのです。

NGALの登場

AN/PEQ LA-23 NGAL
AN/PEQ LA-23 NGAL 画像出典:Patrik Orcutt, Public domain, via Wikimedia Commons

こうした背景のもと、L3Harrisが開発したのがNGAL(Next Generation Aiming Laser)です。USSOCOMが正式に進めた「Squad Aiming Laser(分隊照準用レーザー)」更新プログラムの成果であり、PEQ‑15の長年の運用実績を踏まえて設計された「次世代の基準モデル」です。

NGALの最大の特徴は、圧倒的な小型・軽量化です。「クレジットカードサイズ」と形容されるほどコンパクトで、混雑したレール環境でも無理なく搭載できます。IRイルミネーターは光の均一性が大きく改善され、中心部の極端な眩しさ(ホットスポット)や周辺への不要な光漏れ(スピル)を抑えることで、最新の暗視装置での視認性を向上させています。

電子回路の効率化により、サイズを縮小しながら出力とランタイムを両立させた点も特筆すべき点です。照準レーザーとイルミネーターを独立して調整できる構造は、任務に応じた照射パターンの最適化を可能にし、恒久的なゼロイン精度も0.5mrad以下(100m先で約5cm以内のズレ)と高い水準を維持しています。

NGALの操作性

NGALはPEQ‑15の操作体系を踏襲しつつ、現代的なエルゴノミクスに合わせて洗練されています。

NGAL(LA-23/PEQ)は、基本的に「CR123A」リチウム電池1本を使用し、装着は一体型グラバーでピカティニーレールに直接固定するだけで、追加のマウントは不要です。

NGAL各部名称図
NGAL各部名称 画像出典:NGAL LA23 IRILU User Manual

上面の「モードセレクタースイッチ」1つですべてのモードを管理します。

スイッチ一つで、可視レーザー、IRレーザー、IRイルミネーター、およびその同時照射(デュアルモード)を直感的に切り替えられます。通常は誤照射を防ぐセーフティスクリューにより低出力(LOW)範囲に制限されていますが、スクリューを外すことで実戦用の高出力(HIGH)モードが解放される仕組みです。

PEQ‑15に存在したストロボ設定が省かれ、必要な機能だけが残されたことで操作の迷いが減りました。

モード表示レーザーIRイルミネーター
VIS
(可視光)
レーザー
AH
(エイム・ハイ)
ハイパワーオフ
AL
(エイム・ロー)
ローパワーオフ
O
(電源オフ)
O
(オフ)
オフオフ
IR
(非可視光)
レーザー
イルミネーター
AL
(エイム・ロー)
ローパワーオフ
DL
(デュアル・ロー)
ローパワーローパワー
AH
(エイム・ハイ)
ハイパワーオフ
IH
(イルミネーター・ハイ)
オフハイパワー
DH
(デュアル・ハイ)
ハイパワーハイパワー
項目内容
点灯操作ダブルクリック:常時点灯
(コンスタントオン)
シングルクリック:押している間のみ点灯
(モーメンタリー)
LED表示グリーン:正常動作
レッド:バッテリー低下

イルミネーターの拡散調整も改良され、後部ベゼルをひねるだけで広いフラッドから遠距離向けのスポットまで素早く切り替えられます。CQB向けには付属のディフューザーキャップを装着することで、さらに広い照射が可能です。

ゼロインは、まず可視レーザーを用いて日中に25m程度で合わせ、その後NVG下でIRレーザーのゼロを確認するという流れはPEQ‑15と同様です。ただし、NGALでは照準レーザーとイルミネーターが独立したノブで調整できるため、照準点と照射パターンを独立して精密に調整できます。

昼間は可視レーザーでの指示やゼロイン、夜間はNVGと組み合わせたIRレーザー照準とイルミネーションという使い分けが基本となります。デュアルハイモードでは約3.5時間の連続運用が可能で、任務に応じて出力を調整することで電池寿命を延ばすこともできます。

調整部位位置表示動作
エレベーションノブ上部U(アップ)上方向
D(ダウン)下方向
ウィンデージノブ側面L(レフト)左方向
R(ライト)右方向
種類ハイパワーローパワー波長安全規格
レッドレーザー
(Red Laser)
4.9mW以下0.7mW以下650nmクラス3R
グリーンレーザー
(Green Laser)
4.9mW以下0.7mW以下520nmクラス3R
IRレーザー
(IR Laser)
0.9mW以下0.1mW以下850nm記載なし
IRイルミネーター
(IR Illuminator)
4.9mW以下0.7mW以下850nmクラス3R

米軍がNGALへ移行する理由

兵士イメージ画像

米軍がNGALへ移行する理由は、USSOCOMが正式に後継機としてNGALを選定し、約4,800万ドルの契約を結んだことが大きな転換点となりました。ENVG‑Bなど新世代NVGとの統合運用を前提とした設計は、PEQ‑15では得られない視認性と操作性を提供します。小型化によるレールスペースの余裕は、ショートバレルやCQB環境での取り回しを大きく改善し、電力効率や光学的安全性も現代基準に合わせて向上しています。20年以上運用されてきたPEQ‑15を維持し続けるより、次世代機に統一した方が整備や補給の面でも合理的という判断も働いています。

「なぜL3Harrisなのか」という点は、同社(旧Insight Technology)はPEQ‑15を設計・製造した企業であり、米軍向けレーザーの運用実績とフィードバックを最も多く蓄積しています。操作感や調整方法が大きく変わらないことは、既存ユーザーにとって訓練負担を軽減するという点でも大きな利点です。

まとめ

PEQ‑15は、米軍の夜間戦闘を20年にわたり支えてきた名機であり、その価値は今も揺らぎません。しかし、戦術・装備・NVG技術が大きく進化した現在、より小型で高性能なNGALが求められるのは必然です。

NGALは、PEQ‑15の実績を土台にしながら、現代の戦場に合わせて最適化された次世代機として評価されています。

参考文献
  • haho:Review – AN/PEQ‑15 ATPIAL Advanced Target Pointer Illuminator Aiming Laser
  • L3Harris:Next Generation Aiming Laser NGAL
  • ownthenight:NGL‑000‑A1
  • somogear:NGAL/LA23 IRILU User Manual
  • spartanat:USSOCOM hat sich für neue PEQ Box entschieden
  • TNVC:ATPIAL AN/PEQ‑15
  • Wikipedia:AN/PEQ‑15
  • YouTube:NGAL関連動画
  • その他、多数の資料

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この記事を書いた人

・1998年:実銃解説サイトを開設
・2001年~2007年:米国に居住し実弾射撃を学ぶ
・エアガンメーカー勤務経験や実銃経験を活かした情報を発信中

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