
この記事の要約:
- フルオート射撃が可能なショットガンは複数存在し、主に近接戦闘用として開発された。
- H&K OLIN CAWS、S&W AS、AAI CAWS、USAS-12、AA-12 などが代表的モデル。
- 多くは試作止まりだが、USAS-12 や AA-12 などは実戦・民間市場でも一定の存在感を持つ。
フルオート射撃が可能なショットガンは、実際にいくつかのモデルが開発されてきました。近接戦闘での高い制圧力を期待されて誕生したものですが、現在まで広く普及するには至っていません。
連続して弾を送り出す仕組み自体は技術的に実現されていますが、反動の大きさや弾薬携行量の制約など、運用面での課題が多かったためです。
本記事では、これまでに登場した代表的なフルオート・ショットガンの特徴と、普及が進まなかった背景について整理してご紹介いたします。
AA-12

AA-12(オートアサルト12 / Auto Assault-12)は、1972年にアメリカのマックスウェル・アッチソン氏が開発したAAS(アッチソン・アサルト・ショットガン)を起点とするフルオートマチック・ショットガンです。AASは近接戦闘を想定し、軍や法執行機関向けに設計されていました。M16のハンドガードやストック、ブローニングBARのトリガーグループを流用するなど、当時としては合理的かつ簡素な構造が特徴でした。
AASは試作段階にとどまったものの、その設計思想は後継モデルであるAA-12へと受け継がれます。AASではボルトに固定されたファイアリングピンによる撃発方式が採用されていましたが、AA-12ではハンマー方式へと改められました。この構造は、後に開発されるUSAS-12の原型にもなっています。

1987年、アッチソン氏は設計権をミリタリーポリスシステム社(MPS)に売却し、AA-12は本格的な再設計の段階に入ります。ドイツ出身の技術者ボイェ・コーニルス氏の主導のもと、約19年にわたり改良が重ねられ、2005年に現在知られる完成形へと到達しました。この過程で作動方式はガス作動・閉鎖機構付きへと変更され、独自の反動吸収システムによって12ゲージ弾としては異例の低反動を実現しています。
AA-12はフルオート専用設計で、発射速度は毎分約300発に抑えられています。そのため、短いトリガー操作で単発に近い射撃も可能です。オープンボルト方式を採用し、「アドバンスド・プライマー・イグニション」を応用することで、連続射撃時の制御性を高めています。給弾方式は8連ボックスマガジンと20連ドラムマガジンが基本で、32連ドラムの存在を示す資料もあります。チャージングハンドルは銃の上部に配置され、射撃中に前後動作しない構造となっています。
アドバンスド・プライマー・イグニション / Advanced Primer Ignition(API)は、主にオープンボルト式ブローバック火器で用いられる、反動低減を目的とした撃発方式の概念です。
通常は、弾薬が完全に薬室へ装填された後に雷管が撃発されますが、APIではボルトが前進中の段階で雷管を撃発します。これにより、発射による後方反動と、前進するボルトの慣性が相殺され、ボルト後退の勢いが抑えられます。
その結果、体感反動や銃の跳ね上がりが低減され、重いボルトや強力なリコイルスプリングを用いずに安定した自動射撃が可能となります。この特性は、強力な弾薬を使用するフルオート火器において大きな利点となります。
AA-12では、このAPIの考え方を応用することで、12ゲージ弾でありながら高い制御性を実現しています。
完成したAA-12は軍や法執行機関で正式採用されるには至りませんでしたが、後年には民間市場向けにセミオートマチック仕様が登場しました。ただし、この民間モデルは法規制を巡る問題から生産が停止されています。
全長は約966ミリメートル、重量は約5.2キログラムで、製造はMPSが担当しています。AA-12は実戦配備の実績こそ限られるものの、フルオートショットガンという特殊なカテゴリーにおいて、反動制御と継続射撃性能を高い次元で両立させた象徴的な存在といえるでしょう。
USAS12

USAS-12(Universal Sporting Automatic Shotgun)は、1980年代後半に開発された12ゲージのフルオートマチック・ショットガンです。その開発思想は、AA-12で知られるマックスウェル・アッチソン氏の自動ショットガン設計に端を発しており、そのコンセプトを発展させる形で実用化が進められました。
1989年頃には、アメリカのギルバート・イクイップメント・カンパニー(Gilbert Equipment Company)がこのセレクティブファイア(選択射撃式)ショットガンの市場投入を計画し、設計はジョン・トレバー・ジュニア氏によってまとめられました。しかし、同社には量産能力がなかったため、製造パートナーを探すことになり、その結果、韓国の大手企業である大宇グループ傘下の大宇精密工業(Daewoo Precision Industries)が生産を引き受けました。大宇側で量産向けの設計調整が行われ、1990年代初頭から本格的な製造が開始されています。
USAS-12はガス作動方式を採用したフルオート対応ショットガンで、10発装填のボックスマガジン、または20連ドラムマガジンを使用します。発射速度は毎分約400〜450発と12ゲージとしては比較的高く、近接戦闘における継続火力を重視した設計となっています。作動機構はロングストローク・ガスピストン式で、ボルトは円筒形ロッキングピースがバレルエクステンション上部の穴に噛み合うことで閉鎖されます。この方式は、12ゲージ弾の腔圧に対して十分な強度を確保しつつ、構造を簡潔にまとめている点が特徴です。
操作系は左右対称性が高く、チャージングハンドルやダストカバーは左右入れ替えが可能です。排莢方向も選択できる設計となっており、射手の利き手を問わない運用が考慮されています。ボルトホールドオープンは自動では作動しませんが、チャージングハンドルを押し込むことで手動保持が可能です。照準器は初期型ではキャリングハンドル一体型のアイアンサイトを備え、後期には外観を簡略化したCQモデルも登場しました。
生産数は1990年代半ばまでに3万丁以上とされ、その多くがアジア地域の軍や警察組織に納入されました。一方、アメリカ国内では1986年以降に製造された機関銃であることに加え、「スポーティング用途に該当しない」と判断されたため、破壊的装置(デストラクティブ・デバイス)に分類され、民間市場での流通は厳しく制限されました。この扱いは、ストリートスイーパーやストライカー12と同様の経緯をたどっています。
米国法での「破壊的装置(Destructive Device)」は、爆弾・手榴弾などの爆発物、大口径(0.5インチ超)兵器、そしてそれらを組み立て可能な部品セットを指します。
- 爆発物系:爆弾・手榴弾・ロケット(推進薬4オンス超)・ミサイル(炸薬1/4オンス超)・地雷など
- 大口径兵器:口径0.5インチ(12.7mm)超の銃器(スポーツ用途の散弾銃は除外)
- 部品セット:上記を組み立て可能な部品の集合も対象
その後、民間向けセミオート仕様の試みも行われ、2000年代にはWM-12と呼ばれる派生モデルが少数製造されましたが、いずれも短期間で終了しています。現在、USAS-12はS&T 大宇(現SNT Motiv)によって、軍および法執行機関向けに限定して生産されているとされています。
スティーブン・セガール主演映画の「沈黙の要塞」で登場したことでも有名です。
筆者はUSAS12の射撃経験がありますが、銃の重さと頻発するFTF(装填不良)に悩まされたことから、残念ながらあまり良い印象がありません。
- メーカー:S&Tモーティブ(大宇)
- 装弾数:10 / 20+1発
- 全長:960mm
- 重量:6.2kg
- 発射速度:毎分360発
パンコール・ジャックハンマー

パンコール・ジャックハンマー(Pancor Jackhammer)は、1980年代にアメリカで開発されたフルオートマチック・ショットガンです。設計者は朝鮮戦争に従軍した経験を持つジョン・A・アンダーソン氏で、当時のコンバットショットガンに対して「装弾数が少なく効率が悪い」という問題意識を抱いたことが開発の出発点でした。そこでアンダーソン氏は、高装弾数かつフルオート射撃が可能な12ゲージ戦闘用ショットガンの設計に着手します。
開発はパンコール・コーポレーション(Pancor Corporation)を通じて進められ、1984年に基本設計が完成、1987年には特許が取得されました。ジャックハンマーはブルパップレイアウトを採用し、全長を約787ミリに抑えながら、10発装填の回転式ドラムマガジンを備えています。発射方式はガス作動によるブローフォワード構造で、発射時に銃身が前進し、その動きでドラムを回転させるという、極めて独創的なメカニズムを採用していました。理論上はセミオートとフルオートの切り替えが可能で、発射速度は毎分約240発とされています。
実際には、アンダーソン氏自身の手で3丁の実働プロトタイプが製作されました。このうち1丁は設計者本人が保管し、残る2丁はHP White社に送られて軍事試験に使用され、最終的には破壊試験によって失われています。アメリカ海軍を含む軍関係者から一定の関心は寄せられたものの、開発資金の確保には至らず、さらに輸出制限の問題も重なったことで、プロジェクトは量産化されないまま終息しました。
その後、アンダーソン氏は初期設計の課題を踏まえ、軽量化や耐久性向上を目的とした改良型の開発に取り組みます。これがいわゆるMk2、さらに発展したMk3構想です。現存が確認されているMk3は、法的にはマシンガン(機関銃)として登録されているものの、撃発機構などが未完成のまま開発が中断された試作段階の個体です。基本レイアウトは初期型を踏襲しつつ、照準用リブの強化や部品の見直しが行われており、完成していれば改良型ジャックハンマーとなるはずでした。
パンコール・ジャックハンマーは、軍や法執行機関で正式採用されることはなく、実戦で使用されることもありませんでした。しかし、その特異な外観と前衛的な構造は強い印象を残し、1990年代以降は映画やゲームなどのフィクション作品を通じて広く知られる存在となりました。
レミントン7188

レミントン7188(Remington Model 7188)は、1960年代にアメリカで開発された12ゲージのフルオートマチック・ショットガンです。名称の「7188」は、ベースとなった民間用ショットガン「レミントン1100」のモデル番号に由来しており、これを軍用に改造した試作兵器として製作されました。主に米海軍特殊部隊 Navy SEALs が、ベトナム戦争での近接戦闘用として使用することを想定して開発されたもので、当時としては高い火力を追求した特殊兵器の一例といえます。
設計にはガス作動方式が採用され、連射性能を備えつつセレクティブファイア(セミオート/フルオート)の切り替えが可能とされました。給弾方式は8発入りのチューブ型マガジンで、これは通常の1100の構造を発展させたものです。発射速度は毎分約480発とされ、フルオート射撃時には強力な連射能力を発揮しました。
モデル7188には複数のバリエーションが存在します。初期型のMk 1は、延長されたチューブマガジン、パーフォレーテッド・バレルシェラウド(穴あきヒートシールド)、銃剣取り付け用ヨーク、調整式照準器などを備えていました。他にも、バレルシュラウドの有無や照準器の仕様が異なるモデルが少数ずつ製作されています。
実戦では火力面で一定の評価を得た一方、いくつかの欠点も指摘されました。フルオートショットガン特有の強烈な反動は制御が難しく、湿潤なジャングル環境では汚れの堆積により信頼性が低下しやすいという評価もあったようです。また、装弾数が8発と少ないため、フルオート射撃では瞬時に弾を消費してしまうという実用面の課題もありました。その結果、量産や広範な部隊配備には至らず、実用期間は短かったとされています。
戦後、多くの7188はセレクティブファイア機能を残しつつセミオートのみの仕様に改修され、モデル7180として再分類された例もあります。これは事実上、軍用フルオート機能を廃した民間仕様への転用です。
ゴードン CSWS

ゴードンCSWS(ゴードン・クローズサポート・ウェポン・システム / Gordon CSWS)は、1970年代初頭にオーストラリアで構想された多用途自動火器プロジェクトです。設計者はダンカン・ゴードン氏で、BSPプランニングアンドデザイン社によって基本設計が進められました。ベトナム戦争で得られた戦闘経験を踏まえ、近距離から中距離での火力支援を目的としたシステムとして構想されています。
このシステムは名称の「CSWS」が示す通り、単一の基本設計を基盤に、用途に応じて構成を変更できるファミリー型の武器として設計されました。具体的には、アサルトライフル、ライトマシンガン、サブマシンガン、ショットガンといった複数の用途に対応することが想定されていました。銃器本体は迅速なバレル交換が可能な構造とされ、NATO 5.56×45mm、7.62×51mm、9×19mmパラベラム、12ゲージ散弾など、異なる弾薬に対応できる柔軟性を備えた構想でした。
CSWSのショットガン構成では、12ゲージ弾を使用するフルオートショットガンと、ベルト給弾式ショットガンの2種類が設計案として存在していました。通常のショットガン形態では側面装着のボックスマガジンを採用し、迅速なリロードと継続射撃を可能とする設計が意図されています。一方、ベルト給弾式の案では、大量の散弾を連続して射撃する火力支援用途が想定されていました。
このプロジェクトは戦術的柔軟性を重視しており、アサルトライフルやライトマシンガンでは30発装填のボックスマガジンを使用する構成が想定されていました。また、サブマシンガンのバージョンでは、二連装バレルや上部装填式マガジン、折り畳み式ストックといった独特の設計案も提示されています。
しかし、ゴードンCSWSは設計段階のプロジェクトにとどまり、実際に製造された試作モデルが確認された記録はほとんどありません。設計図面や基本構想は残されているものの、完成品や量産例は存在せず、その全容は現存する資料から推測するほかありません。
FAS-173

FAS-173(フート・オートマチック・ショットガン / Foote Automatic Shotgun)は、1973年にアメリカで設計されたフルオートショットガンの試作モデルです。設計者はジョン・P・フート氏で、当時進められていたフルオートショットガンの実用化に向けた試みの一つとして開発されました。現時点で量産モデルが実戦配備された記録はなく、手作業で製作されたプロトタイプのみが確認されています。
FAS-173は、フート氏がそれ以前に手掛けたアサルトカービン FAC-70 をベースに拡大した設計で、12ゲージ弾仕様と20ゲージ弾仕様の2種類が試作されました。設計思想は、同時期に開発が進められていたAA-12などのフルオートショットガンと共通しており、連射性能と近接戦闘における火力を重視した構成となっています。
作動方式はガス圧を利用するロングストローク・ガスピストン式で、トリガーを引き続ける限り連続発射が可能なフルオート射撃機構を備えています。給弾方式には着脱式の10発入りボックスマガジンを採用しており、これは当時の実験的なフルオートショットガンに見られる典型的な設計理念を反映したものです。プロトタイプではコストを抑えるため、外装の多くに安価な鋼板プレス部品が使用されていました。
重量は12ゲージ仕様で約4.3キログラム、20ゲージ仕様では約3.0キログラムと比較的軽量で、いずれのバージョンでも携行性が考慮されています。総じて、FAS-173は実験段階にとどまったものの、アメリカにおける初期のフルオートショットガン開発を示す一例として評価される存在です。
AAI CAWS

AAI CAWS(Close Assault Weapon System)は、1980年代にアメリカで開発された試作自動式ショットガンです。設計および製造は AAI コーポレーションが担当し、米軍の「クローズ・アサルト・ウェポン・システム(CAWS)計画」への提出を目的として開発されました。最終的に量産や正式採用には至りませんでしたが、当時のフルオートショットガン開発を象徴するモデルの一つとして知られています。
AAI CAWSは12ゲージを基本とする自動ショットガンで、セミオートとフルオートのセレクティブファイアを備えています。マガジンは10〜12発程度の着脱式ボックスマガジンを使用し、発射速度は毎分約450発です。全長は約984ミリ、重量は約4.08キログラムで、作動方式には反動利用方式が採用されています。照準装置には昼夜対応のリフレックスサイトと、バックアップ用のアイアンサイトが標準装備されていました。
設計面では、米軍で広く使用されているM16アサルトライフルのストックとピストルグリップを流用し、反動が一直線に伝わるインラインデザインを採用しています。これにより、強力なショットガン弾を連続発射する際の体感反動が軽減され、射撃時のコントロール性が向上したとされています。また、ショートストック仕様も開発され、空挺部隊など近接戦闘を重視する部隊での運用も想定されていました。
弾薬面にも独自性があります。AAIは専用の特殊弾を開発し、これらは市販の12ゲージショットシェルと互換性がないよう設計されていました。そのため、通常の12ゲージ弾を使用するにはチャンバーアダプターを装着する必要があります。標準的な対人用弾薬には、8本のフレシェット(矢状の飛翔体)を装填したタイプがあり、150メートル先でも4メートル円内に散布し、高い貫通力を発揮しました。フレシェットは約365メートル毎秒の速度を維持し、木材や薄鋼板を貫通する能力を持っていたとされています。
フレシェット弾についてこちらの記事で詳しく解説しています。

その他の弾薬として、18.5×54mm SCMITR弾もテストされました。この弾薬は金属製のブレード状弾を装填し、同じく150メートルの距離で一定範囲内に命中させられる性能が確認されています。これらの実験的な弾薬は、戦術的な汎用性を追求した試みとして注目されました。
AAI CAWSは米軍のテスト段階まで進みましたが、計画全体の見直しや、H&K CAWS など競合モデルの存在も影響し、最終的には採用に至らず開発は終了しています。
- メーカー:AAI
- 装弾数:12+1発
- 全長:984mm
- 重量:4.08kg
- 発射速度:毎分450発
S&W AS

スミス・アンド・ウェッソンAS(Smith & Wesson Automatic Shotgun)は、1960年代後半にアメリカの銃器メーカー、スミス・アンド・ウェッソンが試作したフルオートショットガンです。当時、軍や法執行機関向けの高火力近接武器への関心が高まっていた背景のもとで開発されたモデルであり、限定的な試作段階にとどまったため、正式な量産や配備には至りませんでした。
ASは、同社が当時生産していたポンプアクションショットガンの機構をベースに、自動式(セミオート/フルオート)へ転換する改良を加えたモデルです。作動方式にはガス圧利用のオートマチックシステムが採用され、トリガーを引き続ける限り連続発射が可能な構造となっていました。12ゲージ弾を使用し、比較的単純な内部構造によって信頼性と操作性のバランスを追求した設計が特徴です。
給弾方式には着脱式のボックスマガジンが採用され、複数の装弾数オプションが検討されていたとされています。構造面では、既存のポンプアクションショットガンの主要部品を流用することでコストを抑えつつ、フルオート機能を付加するという実験的な意図がありました。
試作されたS&W ASは評価段階まで進んだものの、軍や法執行機関から正式採用されることはなく、実戦投入の記録も残されていません。その後のフルオートショットガン開発は、より反動制御や信頼性を重視した別モデルへと移行したため、ASは試作段階で開発が終了しました。
- メーカー:S&W
- 装弾数:10+1発
- 重量:4.42kg
- 発射速度:毎分375発
H&K OLIN CAWS

ヘッケラー&コッホ HK CAWS(Heckler & Koch HK CAWS / クローズ・アサルト・ウェポン・システム)は、1980年代に西ドイツの名門銃器メーカー、ヘッケラー&コッホが開発した自動式ショットガンの試作モデルです。米軍が推進していた「クローズ・アサルト・ウェポン・システム(CAWS)」計画への提出を目的として設計され、近接戦闘における高い制圧力と機動性の両立を目指した戦術火器でした。最終的に米軍との契約には至りませんでしたが、同時期に開発された他社製プロトタイプと並び、フルオートショットガン研究の重要な事例として位置付けられています。
HK CAWSは12ゲージ弾を使用する自動式ショットガンで、セミオートとフルオートの両方の射撃モードを備えています。給弾方式には着脱式ボックスマガジンを採用し、連続射撃に対応した構造となっています。作動方式はガス圧利用式で、軽量化と高い信頼性を重視した設計が特徴です。反動制御や再装填の効率にも配慮されており、近距離での継続射撃性能が強化されています。
外観は当時の一般的なショットガンとは異なり、戦術的運用を前提としたモジュール化されたフレームを採用しています。ストック、ハンドガード、ピストルグリップは最新の設計思想を取り入れた造形で、反動方向と銃身軸を可能な限り一直線に配置するインラインデザイン(直銃床)が採用されました。これにより、連続発射時の跳ね上がりが抑えられ、射手の負担が軽減されています。
設計段階では、軍事作戦や特殊作戦における近距離戦闘への対応力が重視されました。マガジンキャッチや安全装置、照準器などの操作系は直感的に扱える位置に配置され、左右どちらの手でも操作しやすい設計となっています。また、口径に応じたユニット変更による柔軟な運用も想定され、汎用プラットフォームとしての発展性が意識されていました。
しかし、HK CAWSは最終的に軍採用には至りませんでした。米軍による試験や評価は行われたものの、競合モデルの存在や戦術的優先事項の変化により契約には結びつかず、計画は中断されています。それでも、HK CAWSの開発で得られた知見はショットガン設計の研究として高く評価され、後の戦術火器設計に影響を与えたとされています。
- メーカー:H&K
- 装弾数:10+1発
- 全長:764mm
- 重量:4.3kg
- 発射速度:毎分250発
これらの他、ロシアのSaiga-12やVepr-12はセミオートとして普及していますが、一部地域ではフルオート化された例も確認されています。
なぜ普及しなかったのか
フルオートショットガンが普及しない理由は以下のとおりです。
1. 弾薬携行量の問題

12ゲージ弾は大きく重いため、同じ重量・容積で比較すると、ライフル弾に比べて携行できる総弾数が大幅に少なくなります。
フルオート射撃では弾薬消費が極端に早く、実戦での持続力に欠けます。
2. 反動制御の困難さ
AA-12のように反動軽減を徹底した例もありますが、基本的にショットガンの反動は強く、フルオート射撃ではマズルジャンプが大きく、跳ね上がりやすくなります。
結果として、連射中盤以降の命中精度が大きく低下します。
3. セミオートで十分な火力
ショットガンは1発で多数の散弾を発射するため、近距離ではセミオートでも十分な制圧力を発揮します。
フルオート化による戦術的メリットが限定的で、既存のセミオートモデルで事足りる場面が多いのが実情です。
4. 運用思想との不一致
一部の試作では反動軽減のためストックを省略し腰だめ射撃を前提とした設計も見られましたが、照準性が著しく低下し、ショットガン本来の強みを損なう結果となりました。
現代の軍事ドクトリンにおいても、フルオート・ショットガンの明確な役割は見出されていません。
まとめ
| 年代 | 名称 | 概要 |
|---|---|---|
| 1972年 | AAS (Atchisson Assault Shotgun) | マックスウェル・アッチソンにより開発が開始された自動式ショットガン。後のAA-12の原型となる設計で、フルオート運用を前提とした近接戦闘用火器として構想されました。 |
| 1980年代初期 | H&K OLIN CAWS | H&K社とOlin社が共同開発したCAWS計画向け試作ショットガン。ブルパップ方式を採用し、フルオート射撃に対応していましたが、計画中止により量産されませんでした。 |
| 1980年代中期 | S&W AS (AS-1〜AS-3) | スミス&ウェッソン社が開発したアサルトショットガン。AS-3ではフルオート射撃が可能で、CAWS計画の競合機でしたが、正式採用には至りませんでした。 |
| 1980年代中期 | AAI CAWS | AAI社が開発したCAWS計画向け試作ショットガン。着脱式マガジンや特殊弾薬の使用を想定していましたが、こちらも試作止まりとなりました。 |
| 1980年代後期〜1990年代 | USAS-12 | 軍・法執行機関向けに設計された自動式ショットガン。フルオート射撃が可能なモデルが存在し、実在するフルオートショットガンとして広く知られています。 |
| 2000年代前半 | AA-12 | AASの設計を基に長年改良が続けられ、完成形として登場したフルオートショットガン。軍・法執行機関向けを想定し、民間ではセミオート仕様が流通しています。 |
フルオート・ショットガンは技術的には実現可能であり、いくつかのモデルは高い完成度を示しました。
しかし、弾薬携行量、反動、戦術的メリットの乏しさといった根本的な課題により、広範な採用には至りませんでした。
現在でも一部の愛好家や研究者の関心を集める存在ではありますが、実戦装備として主流化する可能性は低いと考えられます。
参考文献(クリックで展開)
- Wikipedia「Automatic shotgun」
- Wikipedia「Atchisson AA-12」
- Wikipedia「Daewoo Precision Industries USAS-12」
- Wikipedia「Pancor Jackhammer」
- Wikipedia「Heckler & Koch HK CAWS」
- Military Factory「AA-12 Automatic Shotgun」
- Small Arms Review「Pancor Jackhammer」
- GunMag Warehouse「5 Fabulous Full-Auto Shotguns and Why They Never Took Off」
- Sandboxx「The History of Full-Auto Shotguns and Why These Weapons Don’t Make Sense」
- その他、多数の資料
