フルメタルジャケット(FMJ)は貫通力が高く、.38スペシャルでも人間1~2人分を貫通する能力があるため二次被害のリスクがあります。
また、体内に残る銃創(永久空洞)が小さいため、行動を停止させることに失敗したり、停止に至るまで時間を要する場合があります。
一方、ホローポイント(HP)は永久空洞が大きく、拡張したジャケットが細胞組織を切り裂くため出血が多くなり、内蔵へのダメージが大きくなります。
また、体内で運動エネルギーが消費されるため、貫通しにくい傾向があります。
アメリカの殆どの州でハンティングでFMJの使用が規制されていたり、ハーグ陸戦条約で拡張する弾頭が禁止されているように、FMJとホローポイントの間には明らかな能力差があり、ホローポイントは相対的に殺傷力が高いといえます。
ですが、ホローポイントであれば必ずターゲットの行動を停止できるものではなく、命中する場所によって結果が異なります。
筋肉や肺にホローポイントが命中しても瞬時に行動を停止させることは困難ですが、FMJでも脳、心臓、脊髄などに命中すれば瞬間的、または10~20秒以内に行動停止に至る可能性が高くなります。
法執行機関が容疑者の逮捕を目的としていても状況によっては自分や第三者の命を守るために銃を使用せざるを得ない場面があり、こうした場面では速やかに行動を停止させることが可能な殺傷力の高い弾薬が必要とされます。
また同時に貫通弾や流れ弾による二次被害のリスクを軽減する必要があり、これらの理由からホローポイントが利用されています。
アメリカの法執行機関では80年代の中ごろから90年代にかけてFMJからホローポイントに交替されましたが、当時のアメリカのマスコミは「警察は殺傷力の高い弾を使い始めた」と騒ぎを起こしていました。
日本の警察も本来であればホローポイントを利用した方が合理的ではありますが、そうなれば日本のマスコミがどう反応するかは容易に想像できます。