民間では.357マグナムや.44マグナムをコンシールドキャリー(隠匿携帯)に選択する人もいますが、好みの問題でもあるため必ずしも合理性が考慮されているとは限りません。
法執行機関では非番の警官に対して「携帯して良い銃のリスト」を各法執行機関のポリシーとして定められていることが多いですが、通常そのリストの中に.44マグナムは入りません。これは.44マグナムよりコンシールドキャリーに適した弾薬が存在するためです。
.357マグナムのリボルバーのなかにはコンシールドキャリー向けのモデルも存在し、3インチバレルなどショートバレルのコンパクトなサイズが見られますが、.357マグナムの本来の力(初速やマズルエナジー)を引き出すには4インチ以上が必要になります。
もちろんショートバレル用.357マグナム弾を選択するのも良いですが、9mm+Pを選択する方が同等のパワーを得られるうえ、軽量コンパクトで厚みも薄い、速射性が高く装弾数も多いなどの他の利点を得られます。
しかし.357マグナムのリボルバーはサイズ的にもコンシールドキャリーが可能で、扱う人のスキルによってはコントロールしやすいレベルの反動のため、有効な集弾率も期待できます。
一方、.44マグナムは多くの人にとってコンシールドキャリーに適した弾薬ではなく、いくつかの問題があります。
【携帯性】
.44マグナムを使用するリボルバーは重く大型で、携帯性に優れているとはいえません。
大多数の人が護身目的で発砲する機会が一生に一度もないにも関わらず、1kgオーバーの大きな銃を毎日携帯するのは多くの人にとって苦痛です。
巨漢のアメリカ人にとってはさほど苦痛にならないとしても、一般的には好まれるものではありません。
【隠匿性】
コンシールドキャリーは基本的なルールとして衣服の中に隠れて外見から銃を所持していることがわからない状態にする必要があります。これは州によっては法律で定められており、露出すると違法となる可能性があります。
.44マグナムを使用する大きな銃はそれだけ露出しやすい状態となり、注意が必要です。
【速射性と命中率】
.44マグナムは反動が大きく、大きく跳ね上がった銃口を再びターゲットに向ける「リカバリー」が遅くなります。
そのため速射性が悪く、多数の弾を素早く撃つことが困難です。
もし銃撃戦の相手が反動が小さく速射性が高い銃を所持していれば、こちら側が撃ち負ける可能性が高くなります。
一般的に初弾を相手に命中させて無力化することは稀で、アドレナリンが出るストレス状況下では命中率が普段より低下し、それによって多数の弾を発射する傾向があり、その多くはターゲットに命中しません。銃撃時に発射された7割の弾がターゲットに命中していないという法執行機関の統計も存在します。
【貫通力】
.44マグナムは人体に対して貫通力が高く、ターゲットの背後に第三者が居れば二次被害の恐れがあります。
貫通弾や流れ弾によって人的被害や物損が生じた場合は射手に責任があるため、その損害に対して懲役刑を受けたり賠償責任が生じるリスクがあります。
【コスト】
一般的にマグナム弾は高価です。
もし銃で身を守るなら使用する銃に慣れておくことがベストですが、9mm~.45ACPなどと比べると射撃トレーニングに掛かる費用も多くなり、コストパフォーマンスが良いとはいえません。
ここまで.44マグナムのデメリットについて述べましたが、メリットもあります。
それは対人用としてではなく、熊などの危険な野生動物から身を守るために携帯する場合です。
国立自然公園のパークレンジャーが.44マグナムを携帯するように、ハイキング、キャンプ、ハンティングなどの場面で.44マグナムは有効です。
大抵こうした場面ではコンシールドキャリーよりオープンキャリーされることが多く、携帯中に銃が露出していないかと心配する必要もありません。
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>逆にマグナム弾を使用したことで、威力が大きすぎるなどして万が一訴えられた時に不利に働きそうな気もします。
裁判で相手側の弁護士からその点を突かれる可能性もないとはいえませんし、実際過去に事例がありますが、パワーが問題だとすると.44マグナムより強力なライフルやショットガンをホームディフェンスに使用することができないことになるため、その点は心配する必要はないと思われます。