
近年、クマによる被害が深刻化し、「警察や自衛隊の銃器はクマの駆除や狩猟に使えるのか?」という疑問が注目されています。
自衛隊の主力である5.56mm NATO弾を用いる小銃や、警察が保有するライフルは、大型獣であるクマに対して十分な効果を発揮できるのでしょうか?
この記事では、クマ狩猟に必要とされる弾薬の威力(運動エネルギー)、貫通深度、弾頭構造といった技術的要件を詳しく解説します。そのうえで、警察や自衛隊が保有するライフル(5.56mm系アサルトライフルや7.62mm系狙撃銃)の性能を分析し、対人戦闘を前提に設計された銃器が、クマ狩猟・駆除に適しているのかを検証・解説します。
※専門用語解説は記事の最後にまとめています。
警察・自衛隊の銃はクマ狩猟に使えるのか?
まずは結論と基本ポイントを簡潔に整理します。詳細な解説は後半でご紹介します。
1. 結論
2. なぜ不適なのか?
3. 推奨される選択肢
| 弾薬 | ツキノワグマ | ヒグマ |
|---|---|---|
| 5.56mm NATO | 不適 | 不適 |
| 7.62mm NATO / .308 Win | 条件付き適正 | 条件付き適正 (重量弾必須) |
| .30-06 Springfield | 適正 | 条件付き適正 (重量弾必須) |
| .338 Win Mag | 適正 | 適正 |
それでは、警察・自衛隊の銃と弾薬の特徴を一つずつ見ていきましょう。
警察用・軍用・狩猟用弾薬の違い
弾薬の設計思想は、その目的によって大きく異なります。
それぞれどのような傾向があるのかを説明します。
警察用弾薬の設計

多くの国の警察用弾薬は、人が多い都市環境で脅威を迅速かつ安全に止めるために設計されています。
代表的なのはホローポイント弾で、命中すると体内で拡張し、効率的にエネルギーを伝えて相手を素早く無力化します。
同時に貫通を防ぐことで、対象の背後にいる第三者への危険(二次被害)も減らすことができます。
しかし、日本警察の場合は世界標準と異なり、貫通や跳弾が多いフルメタル・ジャケット(FMJ)弾を使用しています。FMJは拡張による大きな損傷を与えにくいため、「即死させるより行動不能にする」という建前に沿いやすいと考えられたようです。
軍用弾薬の設計

軍用の弾薬は、戦場で敵を確実に戦闘不能にし、行動を抑制することを目的としています。
主に使われるのはフルメタルジャケット(FMJ)弾で、安定した装填と飛翔、貫通力が備わっています。
ストッピングパワー(対象を即時無力化する力)よりも「戦闘を継続できなくする」ことを重視し、国際法(ハーグ陸戦条約)に従って着弾時に拡張する弾頭は使用されません。
狩猟用弾薬の設計

狩猟用の弾薬は、獲物を人道的かつ迅速に仕留めるために作られています。
ホローポイントやポリマーチップなどの拡張型が多く、命中後に拡張して大きな損傷を与え、苦痛を長引かせず短時間で倒すことができます。
獲物の種類に合わせて設計が最適化され、精度や弾道性能も重視されています。
まとめると、以下の目的で作られています。
警察・自衛隊のライフルとは?
警察のライフル

通常の警察官は回転式拳銃を使用しますが、SAT(特殊急襲部隊)や銃器対策部隊などではライフルが配備されています。
| カテゴリー | モデル | 弾薬 | 有効射程 |
|---|---|---|---|
| アサルトライフル | 89式5.56mm小銃 | 7.62mm M80 普通弾 | 約500 m |
| 狙撃銃 | 豊和M1500 | .308 Winchester (7.62×51mm NATO互換) | 約800 m |
| 狙撃銃 | AI AW | 7.62×51mm NATO | 約800 m |
| 狙撃銃 | H&K PSG-1 | 7.62×51mm NATO | 約1000 m |
日本警察におけるライフル運用は特殊部隊や狙撃班に限定されており、国産の豊和M1500(特殊銃I型)が標準的な狙撃銃として.308 ウィンチェスター弾を使用し、7.62×51mm NATO弾との互換性を持っています。これに加えて、ドイツ製のH&K PSG-1が7.62×51mm NATO弾を用いる高精度セミオート狙撃銃として採用され、さらにAccuracy International製のボルトアクション狙撃銃が7.62mm弾を使用して精密射撃に対応しています。
特殊部隊など市街地での制圧や近距離戦闘には、自衛隊と同型の89式小銃が配備され、5.56×45mm NATO弾を使用しています。総じて警察のライフル体系は、狙撃銃による精密射撃と小銃による即応性を組み合わせ、任務に応じて弾薬を使い分ける構造となっています。
また、M1500には以下の口径バリエーションがあり、.308ウィンチェスター以外の弾薬を使用している可能性もあります。
- .204 ルガー(5.2mm)
- .22-250 レミントン(5.7mm)
- .223 レミントン(5.7mm)
- 7.62×39mm
- .308 ウィンチェスター(7.62mm)
- 6.5mm グレンデル
- 6.5 クリードモア
- 6.5×55mm スウェーデン
- .270 ウィンチェスター(6.9mm)
- .30-06 スプリングフィールド(7.62mm)
- 7mm レミントン・マグナム
- .300 ウィンチェスター・マグナム(7.62mm)
- .338 ウィンチェスター・マグナム(8.6mm)
- .375 ルガー(9.5mm)
自衛隊のライフル

| カテゴリー | モデル | 弾薬 | 有効射程 |
|---|---|---|---|
| バトルライフル | 64式7.62mm小銃 | 7.62mm M80 普通弾 | 約400 m |
| アサルトライフル | 89式5.56mm小銃 | 5.56mm 普通弾 | 約500 m |
| アサルトライフル | 20式5.56mm小銃 | 5.56mm 普通弾 | 約500 m |
| アサルトライフル | HK416 | 5.56mm 普通弾 | 約500 m |
| アサルトライフル | コルトM4カービン | 5.56mm 普通弾 | 約500 m |
| 狙撃銃 | M24 SWS(A2) | 7.62mm NATO | 約800 m |
| DMR(陸自) | HK G28 E2 | 7.62mm NATO | 約800 m |
| DMR(海自) | H&K MSG90 | 7.62mm NATO | 約1000 m |
| 対物ライフル | バレットM95 | .50 BMG | 約1,800 m |
自衛隊のライフル運用は、64式に始まり89式、そして20式へと世代交代を重ね、国産小銃を主力としながら国際規格に適応してきました。
特殊部隊ではHK416やM4カービンなど海外製も併用し、狙撃銃はMSG90やM24、G28といった7.62mm系を中心に整備されています。さらにバレットM95のような.50 BMG対物銃も限定的に導入され、用途に応じて体系化されています。
バトルライフル、アサルトライフル、DMRの違いはこちらの記事で解説しています。
アサルトライフルがクマ狩猟に適さない理由
アサルトライフルでクマを倒せる?

「アサルトライフルでクマを倒せますか?」という質問を受けることがあります。
結論として、倒すことは可能ですが、狩猟に適した選択肢ではありません。
小口径弾でグリズリーを仕留めた歴史的な例や、近年アラスカで.223レミントン/5.56 NATOライフルを至近距離から複数発撃ち込み成功した事例は報告されています。.22ロング弾や.38スペシャル弾で急所に命中させて難を逃れた例もありますが、いずれも特殊な状況下での例外にすぎません。実際には、銃を所持していても使用できずに死亡したケースや、発砲してもクマを止められなかった事例が数多く存在します(個別事例は記事の最後で触れます)。
アサルトライフルの弾薬は本来、人間との戦闘を想定して設計されており、大型獣を即座に止めるための威力や貫通力には欠けます。そのため、クマ狩猟には.30-06スプリングフィールドや.338ウィンチェスター・マグナムといった大口径ライフルが推奨されます。
クマは時速40~50kmで走ることができ、50メートルをわずか3.6~4.5秒で到達します。人間の短距離走者を凌ぐ速度であり、遭遇時には一瞬の判断の遅れが命取りとなります。低威力の弾薬では迅速に行動不能にできず、反撃を受ける危険性が極めて高いといえます。特にヒグマやツキノワグマは厚い脂肪と強靭な筋肉を備えており、貫通力の不足する弾薬では致命傷を与えにくいのが現実です。
運動エネルギーが不足している問題

アサルトライフルに使用される5.56mm NATO弾(民間仕様の.223レミントンを含む)は、クマ狩猟には根本的に不適な弾薬です。
まず最も大きな問題は、運動エネルギーの不足です。一般的な55グレインの5.56mm弾は約1,200〜1,290 ft-lbfのマズルエナジーを持ちますが、300ヤードではわずか514〜561ft-lbfにまで落ち込みます。
これに対して、クマ狩猟に推奨される.308ウィンチェスターは150グレイン弾で初速2,648ft-lbf、300ヤード(約274m)でも1,600 ft-lbf前後を維持します。
.30-06スプリングフィールドはさらに強力で、180グレイン弾で2,820 ft-lbfを発揮します。
ツキノワグマには1,500 ft-lbf以上、ヒグマには2,500~3,500 ft-lbf以上のマズルエナジーが理想的であり、比較すると5.56mmは必要な水準に遠く及びません。
| 弾薬名 | 弾頭重量 (gr) | マズルエナジー (ft-lbf) | マズルエナジー 300ヤード地点 (ft-lbf) |
|---|---|---|---|
| 5.56×45mm NATO | 55 | 1,200〜1,290 | 514〜561 |
| .308 Winchester | 150 | 2,648 | 約1,600 |
| .30-06 Springfield | 180 | 2,820 | 1,700前後 |
着弾後の挙動と貫通深度の問題

クマのような大型哺乳類に対して問題となるのは、バイタル(心肺)までの深度に十分到達できるかどうかという点です。
角度にもよりますが、ヒグマの胸部では心臓や肺などの重要臓器までの距離が20〜45cmと非常に深く、鹿や人間に比べて筋肉や骨が厚く、脂肪層も重層的です。そのため、軽量な弾頭重量55〜77グレイン(約3.6〜5グラム)の5.56mm弾では貫通力が不足しやすくなります。
5.56mm NATO弾には多用な種類が存在し、それぞれ着弾後の挙動が異なります。自衛隊で使用している弾薬の性能が不明なため、今回は代表例として米軍の「M855」と「M855A1」を例に解説します。

M855はバリスティックゼラチン※で12〜18cmほど直進した後にヨー※を開始し、条件によってはフラグメンテーション※します。
これは人間の胸部のようにバイタルまでの距離が浅い場合には有効ですが、クマのように深い場合にはヨーが早期に発生することで直進貫通力が失われ、バイタルに届かない可能性が高くなります。

M855A1は強化されたペネトレーター(鋼製貫徹体)と「逆ジャケット構造」によって、18〜25cm以上の深い貫通を示し、障害物突破性能も備えています。
しかし、それでもクマのバイタルまでの20〜45cmという深度を確実に突破するには限界があり、ヨーや断片化が発生すると直進性が損なわれ、致命傷を与える前にエネルギーを失う可能性があります。
要するに、M855は貫通深度が浅く、M855A1はより深い貫通を示すものの、いずれもクマの厚い筋肉や骨格を突破してバイタルに到達するには不十分であり、即時無力化は難しいと言えます。
バリスティックゼラチンのテストでは、5.56mmNATOの狩猟用弾頭は30~45cm貫通します。このことから、「狩猟用5.56mmNATO弾ならクマのバイタル(深度20~45cm)に届くのでは?」と疑問を持たれるかもしれません。
しかし、バリスティックゼラチンは人間の柔らかい組織を擬似的に再現しているものの、残念ながらクマの頑丈な骨や筋肉を再現していません。そのため、実際にクマのバイタルに到達させるには、ゼラチン試験以上の強力な貫通力が必要となります。
| 5.56mmNATO弾種 | バリスティックゼラチン 貫通深度 | 着弾後挙動 |
|---|---|---|
| M855 | 12〜18cm | 直進後にヨー開始。 弾速によっては破片化。 |
| M855A1 | 18〜25cm | 着弾後早期に先端が破片化。 後部が深い貫通深度を達成。 |
| 狩猟用5.56mmNATO | 30〜45cm | 拡張しながら直線的に貫通。 |
5.56mm NATO弾のヨー発生距離は、同じ弾薬を使用しても銃ごとの特性によって変動します。これは「フリート・ヨー(Fleet Yaw)」と呼ばれる現象で、銃身長、ライフリングのピッチ、製造公差、摩耗などによって弾頭の初期姿勢がわずかに異なることが原因です。弾頭が銃口を出る際の角度や安定性が変わることで、組織内でヨーが始まる深さにばらつきが生じ、結果として終末効果にも差が出ます。
軍用弾の特徴「破片化(フラグメンテーション)」の限界
5.56mm弾は本来、高速度によるフラグメンテーション(破片化)を前提とした設計であり、軍事用途や小型獣への使用では効果的です。しかし、この特性はクマのような大型獣に対しては逆効果となります。
- 近距離での問題点
- 弾頭は脂肪層や外側の筋肉で破片化しやすく、重要な臓器に到達する前に分解してしまう可能性があります。
- 結果として、致命傷を与える前にエネルギーが散逸し、十分な貫通力を発揮できません。
- 遠距離での問題点
- 距離が伸びると弾速が低下し、破片化すら起こらず、細い貫通痕しか残さないことがあります。
- この場合、弾は臓器に届かず、クマのような厚い脂肪と筋肉を持つ大型獣に対しては致命性を欠きます。
- 総合的な欠点
- 5.56mm弾は「軟組織への破片化効果」という設計思想が、大型獣狩猟においては深い貫通力の不足という致命的な欠点に転じます。
- 結果として、クマ狩猟や護身用途には不適切とされます。
実際の狩猟経験と弾頭構造の問題
実際の狩猟経験でも、5.56mmの不適切さは繰り返し指摘されています。アラスカ州兵の指揮官は、.223で撃たれたクマが多数の弾を浴びても仕留められなかった例を報告しています。
また、より強力な.338ウィンチェスターでさえ致命傷を与えてもクマが突進してきた事例があり、5.56mmでは危険性がさらに高まると分かります。
弾頭構造の面でも課題があります。クマ狩猟に適した弾は、重量保持率が高く、直線的に貫通する設計が必須です。しかし5.56mm弾の主流は軍用フルメタルジャケット弾、精度重視のマッチ弾、小動物向けのバーミント弾であり、いずれもクマに必要な貫通深度を確保できません。
実際の狩猟経験からも、弾頭構造が成功率に大きく影響することが分かっています。詳しい弾頭の種類や特徴については、以下の記事をご覧ください。

結論 5.56mm/.223はクマ狩猟に不適切である
結論として、アサルトライフルに使用される5.56mm NATO/.223レミントン弾はクマ狩猟に適した弾薬ではありません。 その理由は、エネルギー不足、貫通力の欠如、破片化による効果の減退、弾頭構造の不適合、さらに法的規制(地域によって最低口径が指定される)の存在にあります。これらの要因により、この弾薬は人道的かつ安全な狩猟の条件を満たしません。
経験豊富なハンターやガイドの共通認識も同じであり、クマ狩猟には大型獣専用の強力な弾薬を選ぶべきだとされています。アサルトライフルでクマを仕留めることは「不可能ではない」ものの、それは例外的な成功に過ぎず、失敗例が示すようにリスクは非常に大きいといえます。
したがって、クマ狩猟においては十分なストッピングパワーを備えた大口径ライフルを選択することが最も合理的で安全な判断です。
警察・自衛隊のライフルでクマ狩猟は可能?

以下の表は、警察や自衛隊で使用されるライフル弾のマズルエナジーと、ツキノワグマおよびヒグマに対する適性を比較したものです。
| 弾薬 | マズルエナジー (ft-lbf) | ツキノワグマ適性 | ヒグマ適性 |
|---|---|---|---|
| 89式 5.56mm 普通弾(B) | 1,254 | 不適 | 不適 |
| 7.62mm M80 普通弾(減装) | 1,881 | 不適 | 不適 |
| 7.62mm M80 普通弾(常装) | 2,469 | 不適 | 不適 |
| 7.62×51mm NATO | 2,588~2,629 | 条件付き適性 | 条件付き適性 |
| .308 Winchester | 2,648~2,743 | 条件付き適性 | 条件付き適性 |
| .50 BMG | 13,196~13,350 | 条件付き適性 | 条件付き適性 |
89式5.56mm普通弾(5.56mm NATO)

| 弾薬 | 弾頭重量 | 初速 | マズルエナジー |
|---|---|---|---|
| 89式 5.56mm 普通弾(B) | 4g 62 gr | 920 m/s 3,018 fps | 1,693 J 1,254 ft-lbf |
7.62mm M80 普通弾

| 弾薬 | 弾頭重量 | 初速 | マズルエナジー |
|---|---|---|---|
| 7.62mm M80 普通弾(減装) | 9.5g 147 gr | 731.5 m/s 2,400 fps | 2,542 J 1,881 ft-lbf |
| 7.62mm M80 普通弾(常装) | 9.5g 147 gr | 838.2 m/s 2,750 fps | 3,337 J 2,469 ft-lbf |
日本はハーグ諸条約の拡張弾禁止規定に批准していますが、これらの規定は国際的な武力紛争における対人使用を主たる対象としているため、仮に自衛隊が国内任務で行うクマの駆除のような非戦闘的な公務を実行する場合に関しては、必ずしも戦時の拡張弾禁止規定が直接適用されるわけではないと考えられます。したがって、法令や部隊の運用指針に従った上で、必要かつ適切と判断される場合にはフルメタルジャケット以外の拡張する弾頭やハードキャスト弾などを使用することが許容される可能性があります。
7.62mm NATO

| 弾薬 | 弾頭重量 | 初速 | マズルエナジー |
|---|---|---|---|
| 7.62mm NATO | 147~150 gr | 2,690~2,820 fps | 2,588~2,629 ft-lbf |
.308 ウィンチェスター

| 弾薬 | 弾頭重量 | 初速 | マズルエナジー |
|---|---|---|---|
| .308 Winchester | 150~168 gr | 2,620~2,820 fps | 2,648~2,743 ft-lbf |
.50BMG

| 弾薬 | 弾頭重量 | 初速 | マズルエナジー |
|---|---|---|---|
| .50 BMG | 647~750 gr | 2,800~3,044 fps | 13,196~13,350 ft-lbf |
先述の通り、豊和M1500ライフルには多用な口径バリエーションがあります。
以下に対応弾薬ごとのクマ狩猟適性をまとめました。
| 弾薬 | ツキノワグマ適性 | ヒグマ適性 |
|---|---|---|
| .204 Ruger | 不適 | 不適 |
| .22-250 Remington | 不適 | 不適 |
| .223 Remington | 不適 | 不適 |
| 7.62×39mm | 不適 | 不適 |
| .308 Winchester | 条件付き適正 | 条件付き適正 |
| 6.5mm Grendel | 不適 | 不適 |
| 6.5 Creedmoor | 条件付き適性 | 不適 |
| 6.5×55mm Swedish Mauser | 条件付き適正 | 不適 |
| .270 Winchester | 適正 | 条件付き適正 |
| .30-06 Springfield | 適正 | 適正 |
| 7mm Remington Magnum | 適正 | 適正 |
| .300 Winchester Magnum | 適正 | 適正 |
| .338 Winchester Magnum | 適正(大型獣対応) | 適正 |
| .375 Ruger | 適正(大型獣対応) | 適正 |
護身用銃器の限界と実例:成功と失敗

クマに対して推奨されない小口径弾や拳銃弾であっても、至近距離、精密な射撃、または幸運な命中という極めて特殊な条件下で、クマの攻撃を阻止した事例が存在します。以下はその一覧です。
成功例:特殊条件下での阻止
失敗例:防げなかった悲劇
しかし、これらの成功例はあくまで例外に過ぎません。実際には、推奨されない銃器(さらには推奨される銃器であっても)を所持・使用しても死亡、または重傷を負った事例が数多く報告されています。
これまで紹介してきた事例から分かるのは、小口径の銃器は護身の絶対的な保証にはならないということです。確かに、運や技術、そして極めて特殊な条件が重なれば、命を守ることができる場合もあります。しかし、それはあくまで例外的な成功に過ぎません。
狩猟の現場では、獲物を確実に仕留めることが求められます。中途半端な威力の銃では、獲物を苦しませるだけでなく、ハンター自身が危険にさらされる可能性も高まります。だからこそ、経験豊富なハンターやガイドが口を揃えて推奨するのは、.30-06スプリングフィールドや.338ウィンチェスター・マグナムなどの大口径ライフルとなっています。
結論として、小口径銃器は「最後の手段」としては役立つことがあっても、狩猟においては信頼できる選択肢ではありません。確実性と安全性を両立させるためには、大口径ライフルこそが最も合理的な選択だと言えるでしょう。
まとめ

この記事では、警察・自衛隊のライフル、特に主力である5.56mm NATO弾(.223レミントン)がクマ狩猟に適しているかを検証しました。その結果、5.56mm弾はツキノワグマやヒグマに対して運動エネルギーが不足し、厚い皮膚や骨格を貫通して致命傷を与える深度に達しないため、狩猟用途には「不適」と結論づけられます。
総じて、人命と安全を守りつつ人道的に獲物を仕留めるためには、大口径で重量保持性の高い弾頭を備えたライフルこそが、クマ狩猟における最良かつ唯一の推奨選択肢となります。
- マズルエナジー(Muzzle Energy):銃弾が銃口を出る瞬間の運動エネルギー。威力の指標となる。
- フルメタルジャケット(FMJ)弾:弾頭を金属で覆った軍用弾。貫通力は高いが拡張性はない。
- ホローポイント弾(Hollow Point):弾頭先端が空洞で、命中後に拡張し大きな損傷を与える弾。
- ソフトポイント弾(JSP):弾頭先端が露出した鉛で、命中後に拡張しつつ貫通力も確保する弾。
- 普通弾:自衛隊や警察で使用される標準的な弾薬。主にフルメタルジャケット構造で、戦闘や訓練用に設計されている。
- ボンデッド・コア弾:鉛芯とジャケットを強固に結合し、重量保持率を高めた狩猟用弾。
- モノリシック弾:単一金属で作られた弾頭。高い貫通力と重量保持率を持つ。
- バリスティックゼラチン:筋肉組織を模擬する試験材。弾の貫通深度や変形を観察するために使用。
- ヨー(Yaw):弾頭が進行方向に対して傾きながら進む状態。組織内で抵抗が増す。
- タンブリング(Tumbling):弾頭が組織内で完全に回転・転がるように進む現象。
- フラグメンテーション(Fragmentation):弾頭が標的内部で破片化し、複数の小片に分裂する現象。
- 終末効果(Terminal Effect):弾が標的に命中した後に組織内で示す作用や損傷の総称。
- フリート・ヨー(Fleet Yaw):銃ごとの特性差で弾頭の初期姿勢が変わり、ヨー発生距離にばらつきが出る現象。
- 対物ライフル:車両や装備を破壊する目的で設計された大口径ライフル。
- スラッグ弾:ショットガン用の単弾。大型獣狩猟に用いられる。
- 拡張弾禁止規定(ハーグ陸戦条約):戦場で拡張弾の使用を禁じる国際法規。
一般記事・報道・ブログ
- Bear Hunting Magazine. Grizzly with a .22 C. 2022年7月.
- Ammoland Shooting Sports News. Bella Twin: The .22 Used to Take the 1953 World Record Grizzly and More. 2017年6月.
- Sarco Inc. Blog. Honoring the Memory of Bella Twin and the Most Interesting Record You’ve Never Heard Of.
- Ammoland Shooting Sports News. Handgun Defenses Against Bears: 170 Documented Incidents, 98% Effective. 2023年11月.
- Facebook投稿. Bella Twin’s Grizzly Bear Shot in May 1953.
- Cowboy State Daily. Grandma Who Killed Huge Grizzly with One Shot from a .22 Still Amazes Wyoming Hunters. 2024年8月.
- Cowboy State Daily. Wyoming Hunter Says 10mm Pistol Saved Him and Dad from Grizzly Mauling. 2024年11月.
- WyoFile. 10mm Glock Fully Functional in Fatal Grizzly Attack. 2018年.
- Smithsonian Magazine. Deadly Grizzly Bear Attacks Changed National Park Service Forever.
- National Park Traveler. Grizzly Bear Shot and Killed by Hikers in Denali National Park. 2010年5月.
動画・オンラインコミュニティ
- YouTube. Documented Defensive Bear Shooting Cases.
- YouTube. Denali National Park Bear Defense Incident.
- YouTube. Alaska Bear Defense with .223/5.56.
- YouTube. Grizzly Defense with Handguns.
- Reddit. Could You Depend on 5.56 to Defend Yourself Against Bears?
- Reddit. Today I Learned of Bella Twin, a Tiny Grandma Who Shot the World Record Grizzly.
公的機関・政府資料
- National Park Service History. Denali National Park Incident Reports.
- National Park Service. Bear Attack in Denali, August 2021.
- National Park Service. Wrangell-St. Elias Fatal Grizzly Bear Attack Investigation.
- Alaska Department of Fish and Game. 「Kodiak Bear FAQs」
- Alaska Department of Fish and Game. 「Hunting Firearms」
- Alaska Department of Fish and Game. 「Bear Baiting and Shooting Regulations」
- Alaska Department of Fish and Game. 「Wildlife Regulations」
- Maine Department of Inland Fisheries and Wildlife. 「Bear Hunting Laws」
- Kentucky Department of Fish and Wildlife Resources. 「Bear Hunting Regulations」
- New Jersey Division of Fish and Wildlife. 「Bear Hunting Regulations」
- Virginia Department of Wildlife Resources. 「Black Bear Information」
- Maryland Department of Natural Resources. 「Bear Hunting Techniques」
- Missouri Department of Conservation. 「Bear Hunting Regulations」
- Michigan Department of Natural Resources. 「Bear Hunting Regulations」
- Washington Administrative Code (WAC). 「Bear Hunting Regulations」
- National Wildlife Federation. 「Grizzly Bear – Wildlife Guide」
- South Carolina Department of Natural Resources. 「Black Bear」
学術・研究機関
- National Center for Biotechnology Information (PMC). 「Ballistics Research Article」
- Wiley Online Library. 「Anatomical Study on Bear Vitals」
- American Journal of Roentgenology. 「Ballistics Imaging Study」
- Encyclopaedia Britannica. 「Grizzly Bear」
専門誌・業界メディア
- Outdoor Life. 10mm Glock Grizzly Bear Charge.
- Outdoor Life. Ed Wiseman Colorado Bear Attack.
- Outdoor Life. 「The Ultimate Rifle Cartridges for Grizzly and Brown Bears」
- Outdoor Life. 「.308 vs .30-06」
- American Hunter. 「Best Bullets for Black Bear」
- American Hunter. 「The Best Black Bear Cartridges」
- Mossberg Resources. 「8 Great Cartridges for Bear Hunting」
- Ammunition To Go. 「.308 vs .30-06」
- Remington. 「.308 Winchester vs .30-06 Springfield」
- Clear Ballistics. 「Inside the FBI Ballistic Gel Test」
- Hornady Law Enforcement. 「FBI Test Protocol」
専門サイト・技術情報
- Ballistic Studies. 「.223 Remington Knowledgebase」
- Backfire.tv. . 「Chart of All Rifle Calibers in Order and Their Power」
- その他、多数の資料
歴史的事件・百科事典
- Wikipedia. List of Fatal Bear Attacks in North America.
- Wikipedia. Sankebetsu Brown Bear Incident (三毛別羆事件).
その他、多数の資料を参考にしています。




