H&K USAのCEOがハンドガン用の弾薬として満足できる性能が得られなかったと発言したことが公式の理由ですが、具体的にどの程度の性能を要求していたかは不明です。
ですが、恐らく弾薬の性能差と共にハンドガンの銃身長では5.7x28mmを超えたり匹敵するような弾道学的性能を得られなかったことが理由だと思われます。
NATOは2002~2003年に4.6x30mmと5.7x28mmを評価した結果、5.7x28mmの方が総合評価で優れると判断しました。
ドイツとベルギーによる評価を除くNATOによる信頼性の評価は、4.6x30mmが83点、5.7x28mmが96点です。
4.6x30mmの問題点の1つは、5.7x28mmと比較して高圧という点です。
高圧な弾薬は銃身の焼損が激しく銃身命数が短くなる他、強固な閉鎖構造が必要とされるためピストルには不都合です。
また、短い銃身長のピストルでは弾頭を高速まで加速させることが困難なため、大きなマズルエナジーを得るためには弾頭重量を重くする必要があります。
しかし、弾頭重量を得るために弾頭の全長を延長するには規格上の余裕が無いうえ、長い弾頭にはライフリングに強いツイストレートが必要になるため、より高圧になりやすくなります。
一方、5.7x28mmは4.6x30mmより口径が大きいため同じ弾頭重量を得るのに長い全長を必要としない規格上の余裕があります。
軽量高速弾とハンドガンの相性は悪く、5.7x28mmにおいてもFN P90よりファイブセブンの方が弾道性能が劣っています。
参考までに以下はグローバルディフェンスレビュー記事の結論部分(日本語訳)です。
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結果の総括とQRTの分析
第一段階として、QRTは3つの試験基準とそれぞれの重みを選択しました:有効性(80%)、弾薬費(15%)、銃身摩耗(5%)です。
QRTの分析結果(致死率の計算に関する競合他社の異なる指摘を考慮)によると、5.7mmは4.6mmよりも100mの距離でボディーアーマーを着用しないターゲットに対して27%有効(Pi/h)、同じ距離でCRISATボディーアーマー着用ターゲットに対して4.6よりも11%有効であることが示されました。
銃身浸食については、ETBS試験(5,000発)で顕著な浸食は見られなかったものの、4.6x30mm弾薬の設計は銃身浸食の潜在的リスクが大きいことを示唆しているというのがQRTの結論でした。
上記の分析に加えて、QRTは口径の可能性とその設計の成熟度も分析に組み入れました。
5.7x28mm は、その設計と製造プロセスの両方において 5.56mm NATO 口径に近いものである。したがって、5.56mmと同じ生産ラインで簡単に製造することができます。
5.7x28mmシステムは、4.6x30mmシステムよりはるかに成熟しています。
4.6x30mmピストルプロジェクトがペーパーコンセプトであるのに対し、5.7x28mmピストルファミリーは存在する。
結論
評価には若干の誤りが残っているものの、ETBSの完全な試験(6ヶ月間の集中試験、20種類以上の試験を実施)の結果、5.7x28mm口径がこの技術競争に勝ったことは明らかで、QRTが行った補足分析と試験によりその勝利は確認され、拡大されたのである。現在では、これらの結果や評価プロセスさえも疑問視する国もあるようだ。
この評価プロセスは、試験前に明確に定義され、すべての関係者、産業界、国家代表によって受け入れられていたことに留意する必要があります。残念ながら、NATOの政策では、何らかの決定をする前に、全体的なコンセンサスに達しなければならないことになっている。どの国も、納得のいく理由を提示することなく、いつでも意思決定に拒否権を行使できる。このようなプロセスでは、経済的、政治的な利害関係によって、プロジェクトは簡単に失敗に終わってしまう。
最後に、現在、ベルギー、フランス、オランダ、ポルトガル、アメリカなどのNATO諸国を含む世界中で、2万以上の5.7x28mmシステムが実際に使用されていること、そして、最終的には顧客の満足が成功の大きな要因であり、今後もそうであり続けることを忘れてはならないでしょう。