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高精度ライフル銃身の製作と残留応力について質問です。

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  • このトピックには3件の返信、2人の参加者があり、最後にポルポルにより7年、 1ヶ月前に更新されました。
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    投稿
  • #59927
    シミズ
    ゲスト

    よろしくお願いします。

    質問1

    知人からの又聞きなのですが、彼が以前に読んだスナイパーを書いた小説(タイトルも著者も忘れたそうです)のなかに、精度に良くない影響をおよぼす何かを銃身から除くために材料を何年間?か寝かせるという記述があったそうです。(「枯れさせる」という表現だったそうです)

    そういうものを除去するというはなしだと、残留応力くらいしか思い浮かばないのですが、それなら焼きなましで応力除去できると思うのですが。

    現実のカスタム銃身製作の現場では、精度向上を目的として材料を数年寝かせるということは行われているのでしょうか。

    質問2

    銃身の加工方法は
    a.フック
    b.ブローチ
    c.ボタン
    d.冷間鍛造
    などがあると思いますが。

    冷間鍛造はもっとも残留応力が付くので精度最優先の選択にはよろしくないとされていると思います。しかし、加工硬化が生じるので寿命は長くなると聞きました。

    ボタンによる加工も、「削る」というイメージに近いフックやブローチと異なり「押し通る」というイメージで、銃身へのストレスもフック/ブローチと比べると多いと聞きました。しかし、ボアへの加工硬化は強く付きそうに感じます。

    ボタン対フック あるいは ボタン対ブローチ で、精度に有意な差はあるのでしょうか。

    残留応力が精度にもたらす影響について解説をお願いします。

    質問3

    加工後の銃身に応力除去焼きなましを施すことは有効でしょうか。

    加工硬化も残留応力の一種であるように、残留応力にも好ましいものと好ましくないものがあるのだと思いますが、好ましい硬化を残しつつ好ましくないヒズミを除去する といった虫のいいことは可能だったりするでしょうか。

    熱を加えずに振動で応力除去する方法もあるようですが、こちらはどうでしょうか。

    #59928
    ポルポル
    キーマスター

    >質問1

    数年寝かせるという話は耳にしたことがありません。
    時効硬化にしては数年単位は長すぎると思うので、仰る通り応力除去かもしれませんが、スナイパーライフルであれば銃身は恐らくステンレス鋼でしょうから、寝かせても意味が無い気もします。

    小説の時代設定が中世だったりファンタジーの世界だと、他の金属を使用して長期間で時効硬化させる・・・というのも有りかもしれませんが。

    >質問2
    >ボタン対フック あるいは ボタン対ブローチ で、精度に有意な差はあるのでしょうか。

    応力が残りやすいのは圧縮してライフリングを切る方法です。
    ボタンとハンマー(冷間鍛造のハンマーフォージング)は素材を圧縮するので応力が残り、カット(フック)とブローチは素材を削ってライフリングを切っているので残留応力の影響が少ないといえます。
    しかし、現在ではカットやブローチを利用するメーカーは僅かであり、殆どのメーカーはボタンやハンマーを利用しているため、応力除去焼鈍し(ストレス・リリービング)作業が必須です。

    精度については、素材に関わらず安定して高精度で製造しやすいのはカットです。
    ですがカットは製造に時間が掛かるうえ、作業を行う技術者の腕次第で精度に差がでます。
    (これはブローチも同じです)

    ハンマーフォージングはコストが安く大量生産向きですが、素材に大きなストレスを与えて製造されているため、精密バレルに使用されることは殆どありません。
    また、カスタムバレルメーカーは中小企業が多いので、コストの掛かるハンマーフォージングの機材を持ち合わせていません。

    ・・・ということで、現在では精密カスタムバレルにはボタンが多く利用されています。
    ボタンで製造する場合も技術者の腕や工程によってグレードが異なり、内容によって製品の精度が差別化されています。

    また応力の変化は射撃によって銃身が加熱すると大きくなりますが、ポリゴナルライフリングや肉厚の銃身は応力の変化に耐性があります。

    >質問3
    >加工後の銃身に応力除去焼きなましを施すことは有効でしょうか。

    バレルメーカーでは実際にライフリングをカットした後に応力除去焼鈍し作業を行っています。
    専用のオーブンや真空炉を利用し、24時間掛けて500~600度の温度で加熱と冷却を行います。

    #59931
    シミズ
    ゲスト

    解答ありがとうございます。

    加工硬化について追加の質問です。よろしくお願いします。

    冷間鍛造の銃身は加工硬化が生じているのでブローチなどで加工した銃身より寿命が長い という説があるのですが、それは正しいのでしょうか。

    加工硬化が残っているということは、やはり焼きなましはしていないのでしょうか。(24時間もかかるのなら量産メーカーはやりそうにないですが)

    ボタン加工もボアに加工硬化が付きそうな工法ですが、焼きなましをやると無くなってしまうでしょうか。

    あと、
    寿命&耐久性に関連した別の質問ですが、

    マッチグレード銃身にはクロムメッキはNGという説を聞いたことがあります。膜の厚さが均一にならないので精度に悪影響がある というのですが、本当でしょうか。

    #59932
    ポルポル
    キーマスター

    >冷間鍛造の銃身は加工硬化が生じているのでブローチなどで加工した銃身より寿命が長い という説があるのですが、それは正しいのでしょうか。

    加工硬化によるというよりも、冷間鍛造によって組織が微細化するため耐摩耗性が強くなります。

    >加工硬化が残っているということは、やはり焼きなましはしていないのでしょうか。

    加工硬化による歪を除去するために焼なましが必要になります。
    硬度が高いのは高密度の組織が熱処理によって再結晶化し微細化しているためです。

    >(24時間もかかるのなら量産メーカーはやりそうにないですが)

    量産メーカーはピストルからハンティングライフルまでハンマーフォージングを利用しているので、所有する巨大な炉で焼なましを行っています。

    >ボタン加工もボアに加工硬化が付きそうな工法ですが、焼きなましをやると無くなってしまうでしょうか。

    ボタンはハンマーよりも加工量が小さいので加工硬化も小さいですが、熱処理によって硬度を調整できます。

    >マッチグレード銃身にはクロムメッキはNGという説を聞いたことがあります。膜の厚さが均一にならないので精度に悪影響がある というのですが、本当でしょうか。

    クロムメッキの銃身は耐熱性に優れることから銃身命数を延ばすことが可能となると同時に、クリーニングが容易になるメリットがありますが、命中精度が劣ります。
    その理由は、ボアにはライフリング加工時についた微細な加工痕があり凸凹していますが、クロムメッキによって凸部が厚く強調されてしまうことと、ライフリングのエッジが緩やかになるため命中精度に悪影響があります。
    ですが、クロムメッキバレルとノーマルバレルを比較したときの精度差は1/4MOA以下ですので、アサルトライフルやハンティングライフルでは実用上問題ありません。
    1/4MOAの差が問題となる場合のみ考慮が必要になります。

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