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空に向けて撃った弾は、落ちてきても大丈夫?祝砲や威嚇射撃の危険性を徹底解説

空に向かって銃を撃っても安全なのでしょうか?

答えは、安全ではありません。危険な行為です。

空砲と異なり、実弾は落下時に致命的な速度に達することがあり、人に当たると死傷する可能性があります。

本記事では、空に向けた射撃によるリスクと、角度や弾の種類によって変わる落下速度を解説します。

また、各国の法律や規制、実際の事故例を通して、空に向けた射撃がどれほど危険かを詳しく掘り下げます。

参考資料は記事の最後にまとめています。

空に向けて銃を撃つと、どうなる?

ベレッタM9射撃画像

発射された弾は、高速で大きな運動エネルギーを持ちます。

運動エネルギーは、物体の質量と速度の二乗に比例するため、たとえ小さな弾でも大きな破壊力を持つことになります。

垂直に空に向かって発射された弾は、高速で上昇しますが、重力によって徐々に速度を落とします。

最終的には上昇が止まり、最高点に達した後、再び重力によって加速されながら落下します。

落下する弾は、空気抵抗を受けます。空気抵抗は、弾の形状、速度、断面積などに依存し、弾の落下速度を遅らせる要因となります。

垂直に発射された弾は、落下中にタンブリング(横転しながら落下)する傾向があり、空気抵抗が大きくなるため、終端速度※は発射直後の速度よりも大幅に遅くなります。

終端速度(Terminal velocity)とは、物体が自由落下する際に、空気抵抗と重力が釣り合い、以降速度が変わらなくなる状態のことを指します。この速度に達すると、物体は一定の速度で落下し続けます。

弾の自由落下速度と危険性

ライフル弾比較画像
5.45x39mm 5.56x45mm 7.62x39mm 7.62x51mm 7.62x54mmR

米陸軍のジュリアン・ハッチャー少将の研究によると、.30口径ライフル弾は終端速度として約200マイル毎時(約毎秒90メートル)に達するとされています。

また、別の情報では、落下する弾の速度は毎秒90〜180メートルに達すると報告されています。

プエルトリコでの調査では、空に向かって撃たれた「祝砲」による弾は毎秒200フィート(約毎秒61メートル)を超える速度で落下し、頭蓋骨を貫通するのに十分な力を持つとされています。

プエルトリコの事例では、落下速度が毎秒約61メートルを超える弾によって死傷者が発生しました。

研究によれば、「落下する弾による負傷者の多くは頭部に被弾しており、一般の銃創よりも死亡率が高い傾向がある」とされています。

研究では、1985年以降に治療された落下する弾による負傷者118人のうち、77%が頭部に被弾し、死亡率は32%と、一般的な銃創による負傷よりも有意に高いことが示されています。

参考:Spent bullets and their injuries: the result of firing weapons into the sky

以下は弾の自由落下速度を比較した一例です。

使用弾薬ベース(※1)
フィート/秒
ベース(※1)
メートル/秒
タンブリング(※2)
フィート/秒
タンブリング(※2)
メートル/秒
.22ショート168 fps51 m/s134 fps41 m/s
.22LR198 fps60 m/s142 fps43 m/s
.25ACP191 fps58 m/s146 fps45 m/s
.32ACP187 fps57 m/s158 fps48 m/s
.380ACP187 fps57 m/s
9mm219 fps67 m/s
.38spl237 fps72 m/s
.44マグナム249 fps76 m/s
.45ACP228 fps70 m/s
.223rem244 fps74 m/s141 fps43 m/s
7.62x39mm264 fps81 m/s158 fps48 m/s
.30-30282 fps86 m/s
.30-06294 fps90 m/s171 fps52 m/s
#4ショット134 fps41 m/s
00バック157 fps48 m/s
データはHaag L.C. 「Falling bullets」 1995 より
  • (※1) ベース:弾の底側から先に落ちる速度(弾頭は重心が後ろよりであるため)
  • (※2) タンブリング:弾が横転して落下する速度

これを時速に変換すると以下のようになります。

使用弾薬ベース
(時速)
タンブリング
(時速)
.22ショート184 km/h147 km/h
.22LR217 km/h156 km/h
.25ACP209 km/h160 km/h
.32ACP205 km/h173 km/h
.380ACP205 km/h
9mm240 km/h
.38spl260 km/h
.44マグナム273 km/h
.45ACP250 km/h
.223rem268 km/h155 km/h
7.62x39mm289 km/h173 km/h
.30-30309 km/h
.30-06323 km/h188 km/h
#4ショット147 km/h
00バック172 km/h

弾は球形ではなく横長の形状をしているため、横倒し状態で落下すると自由落下速度が遅くなります。

しかし、弾が先端や後端から落下すると速度が増し、致命的な速度になります。

以下は、「雨」や「ひょう」と比較した終端速度の違いを表しています。

落下物大きさ質量比重終端速度
0.5~6 mm0.0000654 g
~0.113 g
1.0 g/cm³25~36 km/h
ひょう5 mm0.06 g0.85 g/cm³36 km/h
鉄球10 mm4.1 g7.85 g/cm³47 km/h
ひょう10 mm0.45 g0.85 g/cm³50 km/h
ひょう50 mm56 g0.85 g/cm³115 km/h
ひょう70 mm153 g0.85 g/cm³140 km/h
9x19mm弾D:9 mm
L:13.9 mm
7.5 g10 g/cm³160~240 km/h

終端速度は、「形状」「重量」「空気の密度」に依存し、9mm弾が自由落下した場合は時速約160~240kmになります。

9mm弾は時速約1,300kmで発射されるため、これと比較すると低速ですが、それでも依然として危険な速度です。

頭部に当たった場合、重傷や死亡の可能性は否定できません。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC / Centers for Disease Control and Prevention)によると、弾頭の自由落下速度は61m/秒以上(時速約220km以上)となり、46~61m/秒以上の速度で人間の皮膚を貫通、これ以上の速度は頭蓋骨を貫通するとしています。

日本のエアガンは重さ0.2g~0.25gのプラスチック製BB弾を初速60~90m/秒で発射しますが、実弾(※)は重さ約7.5gの弾頭が67m/秒で落下し、BB弾の数十倍の重さの弾頭がエアガンの初速に近い速度で落下することがわかります。

※9x19mm 弾頭重量115グレイン(約7.5グラム)の場合

射角の違いによる影響とは?

Image courtesy of military.com

「垂直に近い角度で発射された場合」と、「斜めに発射された場合」で、弾の速度や安定性が異なることが様々な研究から明らかになっています。

弾が垂直に落下する速度(自由落下速度)は危険な速度ですが、実際に空に向かって撃った場合の落下速度はもっと危険な速度になります。

なぜなら、実際に空に向かって射撃した場合、90度の角度で真上に撃つケースは稀だからです。

銃の画像
画像出典:livebook.manning.com

もし射角が80度、70度と小さくなれば、弾は放物線を描いて飛ぶため、弾の飛翔高度が頂点に達しても弾速は高速を維持します。

この場合、高速の弾が数キロ離れた場所に落下し、人に命中すれば死傷する可能性が高くなります。

斜めに発射された弾は、垂直に発射された場合よりも射程が長くなり、発射地点から遠く離れた場所に落下します。

研究によれば、ほぼ完全に垂直に発射された弾が最も速度を失うのに対し、角度をつけて発射された弾は、皮膚を貫通する速度を維持する可能性があると指摘されています。

結論として、どんな角度であっても、空に向けて銃を発射する行為は非常に危険であり、避けるべきです。

祝砲や祝賀の目的であっても、空に向けての発射は人命を危険にさらす行為と認識するべきでしょう。

ディスカバリーチャンネルのテレビ番組「MythBusters」は、「空に向けて発射された弾 Bullets Fired Up(シーズン4エピソード7)」(初放送日:2006年4月19日)の回で、弾の自由落下の危険性を検証しました。

終端速度と同じ速度で発射されるエアガンを使用し、9mm弾と.30-06弾を豚の頭に発射する実験や、実際に砂漠で上空に向けて発射し検証した内容です。

タンブリング(横倒し)状態での9mm弾の自由落下速度は146 fps(時速約160km)、.30-06弾は151 fps(時速約166km)と計算し、この条件では致死速度以下になることを確認しました。しかし、実際に空に向けて撃った場合は、ライフリングによる弾の回転によって姿勢が維持され、致命的な終端速度で落下する可能性が高いと結論付けました。

実際の事例

拳銃弾比較画像
9mm 7.62x25mm 357SIG 10mm 45SW 45GAP 50AE

事実、海外では「祝砲」として空へ向けて発射された弾により、多くの死傷者が出ています。

以下はその事例です。

年月日死傷者数概要
1819年12月26日5人死亡インドネシアのタンジュンピナン島で酋長の結婚式を祝う発砲が原因でオランダとブギス族の戦争が勃発。
1859年12月1人死亡インドで、ある男性が遠距離からの落下弾によって死亡。
肩、肋骨、肺、心臓、横隔膜を貫通していた。
1950年7月4日1人死亡ニューヨークのジャイアンツ球場で観戦中の男性が流れ弾で死亡。
1994年12月31日1人死亡ニューオーリンズのリバーワークで観光中の女性が祝砲の流れ弾により死亡。
1999年1月1日1人負傷フィラデルフィアで新年を祝う銃撃の流れ弾により、男性が頭部に被弾し右半身不随に。
1999年6月14日1人死亡アリゾナ州で14歳の少女が流れ弾により死亡。
この事件を契機に祝砲の規制が強化された。
2003年7月22日20人以上死亡イラクでフセインの息子の死を祝う祝砲により20人以上が死亡。
2003年10月12日負傷者なしセルビア・ベオグラードで、結婚式の参加者が誤って小型飛行機を撃墜。
2005年1月1日1人死亡北マケドニアのスコピエで新年を祝う発砲で少女が流れ弾に当たり、二日後に死亡。
2006年にはIANSAが啓発キャンペーンを実施。
2007年2月25日5人死亡パキスタンの凧祭りでの流れ弾により、6歳の少年を含む5人が死亡。
2007年7月29日4人死亡
17人負傷
バグダッドでアジアカップ優勝を祝う祝砲により多数の死傷者が発生。
2008年1月7日負傷者なしモンテネグロのポドゴリツァ空港で着陸中のモンテネグロ航空機が銃撃を受け、尾部に弾痕が発見された。
銃撃の理由は不明だが、正教会のクリスマス祝賀で発砲された可能性がある。
2010年1月1日1人死亡ジョージア州の教会で4歳の少年が祝砲の流れ弾に当たり死亡。
2010年8月2人死亡
13人負傷
ヨルダンでのタウジヒの発表祝賀中に祝砲で死傷者が発生。
2012年7月4日1人死亡カリフォルニア州で女性が花火を観賞中に流れ弾により死亡。
2012年10月30日23人死亡サウジアラビアの結婚式で祝砲により電線が落下し、23人が感電死。
2012年11月21日1人死亡
3人負傷
イスラエルとの停戦後、ガザ地区での祝砲により1人が死亡し、3人が負傷。
2012年12月25日1人死亡パラグアイのアスンシオンで、3歳の少女が流れ弾により死亡。
2013年1月1日1人死亡メリーランド州で10歳の少女が花火観賞中に流れ弾に当たり死亡。
2013年6月6日1人死亡パキスタンで祝砲により42歳の女性が死亡し、19歳の姪も重傷。
2013年7月4日1人死亡バージニア州で7歳の少年が花火観賞中に頭部に流れ弾を受けて死亡。
2014年4月6日1人死亡レバノンのシドンで、隣人の結婚式からの流れ弾で20歳の妊婦が頭部に被弾し死亡。
2015年1月1日1人死亡テキサス州ヒューストンで男性が家族と共に花火を観賞中に流れ弾に当たり死亡。
2016年11月16日1人死亡
3人負傷
インドのハリヤーナー州で祝砲により新郎の叔母が死亡し、親族3人が負傷。
2017年1月1日1人負傷テキサス州の州議会議員が新年の祝砲により頭部を負傷。
2019年12月31日1人死亡テキサス州の看護師が新年の祝砲により死亡。
2020年1月1日負傷者なしフロリダ州セントピーターズバーグのレストランで、食事中の客が流れ弾に当たる。
2021年1月2日1人死亡レバノン・ベイルートの祝砲によりシリア人難民が死亡し、空港に駐機中の航空機も被害。
2021年9月4日17人死亡
41人負傷
アフガニスタンのカブールでタリバンがパンジシール渓谷占拠を祝う祝砲により多数の死傷者が発生。
2023年1月1日2人死亡ミシガン州ローレンスタウンシップでのパーティーで祝砲により2人が死亡、62歳の男が現場で逮捕。
2023年12月31日1人死亡テネシー州メンフィスで3歳の男児が祝砲による流れ弾により死亡。

※参考:Celebratory gunfire(英語)

TVドラマなどでは警官が空に向けて威嚇射撃をするシーンがありますが、これは非常に危険な行為といえます。

アメリカの多くの法執行機関は独自のポリシーとして威嚇射撃を禁止しているものの、まれに(または偶発的に)威嚇射撃を行った例があります。

しかし、そういった場合は空に向けてではなく、跳弾を考慮しながら安全に弾が停止する場所(地面など)に向けて発射されることがほとんどです。

各国の規制

女性裁判官のイメージ画像

空への発砲は各国で規制されています。

例えば、アメリカの多くの州や地域では空に向けて射撃する行為が「Reckless Discharge(無謀な発砲)」として違法行為に該当する場合があります。

  • アメリカ合衆国:
    • ロサンゼルス市議会は1989年に、空に向けて銃を発砲することを禁止しました。その後、大晦日前の弾薬の販売も禁止されました。
    • 1994年の研究では、祝砲を防止するための法律が制定されているものの、より多くの教育と法の執行が必要であると述べられています。
    • プエルトリコでの2003年の祝砲による負傷に関するCDCの報告書では、これを防ぐためには既存の法律の教育と執行が必要であると指摘されています。

  • トルコ:
    • 研究では、銃器免許審査の強化、弾薬販売のより厳格な管理、法執行機関による夏季や祝祭イベント時の取り締まりの強化、無許可の銃器使用に対する罰則の見直しが必要と指摘しています。
    • 落下する弾による死亡事件に関して、トルコの最高裁判所は、加害者を未必の故意による殺人罪で処罰するというアプローチをとっています。
    • 落下する弾による死亡事件は、潜在的な計画的殺人として分類できると提言されています。

以下は各国の法律と罰則一覧です。

法律および罰則
北マケドニア祝賀で銃を発砲した場合、最長10年の懲役刑が科される。
イタリア刑法703条により、居住地またはその近辺での無許可の銃発砲は最大103ユーロの罰金、混雑した場所での発砲は最大1ヶ月の懲役。
花火やロケット、熱気球などの「危険な発火と爆発」にも適用。
パキスタン刑法第144条により、祝砲で被害が発生した場合には通報が可能。
多くの発砲事件は報告されていない。
アメリカアリゾナ州:1999年の流れ弾による14歳死亡事件を受け、シャノン法により発砲が軽犯罪から重罪に引き上げられた。
カリフォルニア州:空中への発砲は重罪であり、州刑務所での3年の懲役。流れ弾で死亡事故が起きた場合は殺人罪適用も。
ミネソタ州:墓地や公共交通車両内外での発砲が違法。地域自治体も発砲規制が可能。
オハイオ州:公の場所での発砲はクラスB軽犯罪で、最大180日の禁固刑および最大2,000ドルの罰金。
テキサス州:無差別発砲はクラスA軽犯罪で、最長1年の禁固刑および最大4,000ドルの罰金。流れ弾による死傷者が発生した場合は重罪適用も。
ウィスコンシン州:「危険な武器による安全危険行為」から死亡事故の場合の「無謀な殺人」まで適用され、9ヶ月から最長25年の懲役刑。

質問と回答(Q&A)

9mm弾の画像
Q
真上に撃つと、弾はどうなるのでしょうか?
A

真上に弾を撃つと、弾は上昇し、やがて重力と空気抵抗によってその速度が遅くなります。

最終的には、最高点で速度がゼロになり、弾は自由落下を開始します。

降下中、空気抵抗が大きく影響し、落下速度は発射時とは大きく異なります。

Q
垂直に落下する弾は危険ですか?
A

はい、致命傷になりえます。

以下の理由で危険です。

  • 高速で落下し、90〜180m/sに達する可能性があります。
  • 60m/s未満でも頭蓋骨を貫通することがあるという医師の見解があります。
  • 頭部への被弾が多く、死亡率が高いとされています。
Q
落下する弾による被害者には女性や子供が多い?
A

はい、女性や子供の割合が多いという報告があります。

女性や子供が関与する暴力事件が少ないため、相対的に女性や子供の割合が多くなります。

プエルトリコでの調査では、祝砲による負傷者のうち15歳未満の子供が21%、女性が37%、39.6%が17歳以下の子供でした。

Q
真上に撃った場合、空気抵抗で速度がゼロになるのでしょうか?
A

はい、最終的に上昇しきった時点でその速度はゼロになります。

その後の自由落下では空気抵抗が影響し、最終的に弾は高速で落下します。

しかし、少しでも角度がずれると上昇しきっても速度がゼロにならず、放物線を描いて高速で飛翔します。

Q
雨や霰が落ちてきても人を傷つけないのはなぜですか?
A

雨や霰は非常に軽くて柔らかく、落下速度も低速なため、重大な被害を与えることはありません。

これに対して、鉛弾のように密度が高く硬い物体は、落下速度が速く、人体に致命傷を与えるリスクが大きいといえます。

Q
仮に氷や水の塊が弾と同じ速度で撃ち出された場合、危険なのでしょうか?
A

はい、氷や水の塊が弾と同じ速度で落下すれば、それも一定の脅威になる可能性があります。

例えば、「ひょう」のような氷の塊が落下すると、直径5mmで時速約36km、直径70mmで時速約140kmに達することがあります。

しかし、鉛弾の方が質量と速度が大きく、より危険です。

Q
真上に撃つのは難しいのでしょうか?
A

はい、実際に完全に真上に撃つことは非常に難しいです。

わずかでも角度がずれると、弾は放物線を描きながら落下します。

仮に銃が完全に垂直だったとしても、発射された弾の個体差によって重量バランスや空気抵抗の不均衡が現れ、厳密には同じ弾道を飛ぶことはありません。

この場合、弾は射撃時のエネルギーに加えて、放物線を描くことでさらに危険性が増します。

そのため、放物線を描きながら落下する弾は依然として高い殺傷能力を持つ可能性があります。

Q
雨の落下速度はどのくらいですか?
A

雨の落下速度は時速25~36km程度とされています。

これに対して、鉛弾の落下速度ははるかに速く、場合によっては時速200km以上にもなります。

Q
ガリレオの実験により、物体の重さは落下速度に影響を与えないのでは?
A

ガリレオの「ピサの斜塔の実験」によると、物体の重さは自由落下の加速度に影響を与えません。

しかし、この実験は空気抵抗を無視しています。

実際には、空気中では空気抵抗が影響を与え、質量が大きい物体ほど終端速度が速くなります。

(空気抵抗のない真空中では、鉄球と羽毛は同じ速度で落ちます)

弾は比重が重く、流線形をしているため空気抵抗が少なく、雨や霰よりも高速で落下します。

ガリレオ・ガリレイは1589年から1592年の間、ピサの斜塔から異なる質量の物体を同時に落とし、落下時間が質量に依存しないことを示したとされています。この実験で、物体は同じ加速度で落下し、アリストテレスの重力理論が誤りであることが証明されました。しかし、実際に行われたかどうかは不確かで、多くの歴史家はガリレオの実験が実際の実験ではなく、思考実験であったと考えています。現代の物理学では、空気抵抗を除いた真空中で、物体は質量に関係なく同じ加速度で落ちるとされています。参考:Galileo’s Leaning Tower of Pisa experiment

まとめ(結論)

落下する弾丸イメージ画像

空に向けて銃を撃つ行為は、いかなる場合であっても非常に危険であり、避けるべきです。

その理由は以下の通りです。

  • 落下速度の危険性:
    • 空に向けて発射された弾は、重力と空気抵抗の影響を受けながら落下し、その速度は致命的なレベルに達する可能性があります。
    • 研究によれば、落下する弾の速度は毎秒60メートルを超えると頭蓋骨に致命的な損傷を与える可能性があり、実際に多くの死傷事故が発生しています。
    • 毎秒60メートル未満でも頭蓋骨を貫通する場合があるという医師の見解もあります。
  • 射角の影響:
    • 垂直に近い角度で発射された場合よりも、斜めに発射された場合の方が、弾の速度や射程が大きくなり、広範囲に被害を及ぼす可能性があります。
    • 放物線を描く弾はライフリングによる弾の回転を維持しやすく、致命傷となる高速で落下します。
  • 実際の事故例:
    • 世界中で「祝砲」などとして空に向けて発射された弾による死傷事故が多数発生しています。
  • 各国の規制:
    • 多くの国や地域で、空に向けて発砲する行為は違法とされており、その危険性が認識されています。

祝砲や威嚇射撃など、いかなる目的であっても、空に向けて銃を発射する行為は、人命を危険にさらす可能性があり、絶対に避けるべきであると結論付けられます。

主な研究と調査結果のまとめ

  • アメリカにおける研究:
    • 1985年以降に治療された落下する弾による負傷者118人を特定した研究では、77%が頭部に被弾し、死亡率は32%でした。
    • これは、同じ医療センターで治療された一般的な銃創による負傷よりも有意に高い死亡率です。

  • プエルトリコにおけるCDCの調査:
    • 2003年の新年の祝砲による銃撃を調査したCDCの報告によると、2日間で19件の負傷(うち1件は死亡)が確認されました。
    • 主に真夜中の12月31日に、特定の公営住宅地で発生し、子供や女性に多いという特徴がありました。
    • 報告書は、空に発射された弾は、人間の頭蓋骨を貫通し、重傷または死亡を引き起こすのに十分な速度(200フィート/秒以上)で落下する可能性があると指摘しています。
    • 2012年以降、プエルトリコでは啓発キャンペーンにより、祝砲による流れ弾による新年の死亡事故はなくなったとのことです。

  • トルコにおける研究:
    • 2014年から2023年の10年間に、トラブゾンとイスタンブールの3つの病院で治療された祝砲に関連する負傷(CGRI)を遡及的に分析した研究では、合計48件のCGRIが特定され、そのうち8件(16.7%)が死亡しました。
    • 負傷者の64.6%が男性、39.6%が0-17歳の子供であり、最も一般的な負傷部位は頭頸部顔面(39.6%)でした。
    • 事件の87.5%が農村部で発生し、発生頻度は6月から8月に多い傾向がありました。
    • 特定できた事例では、銃発射の理由として結婚式が最多です。
    • 2013年から2022年の間にトラブゾン法医学グループ議長室で行われた銃創による剖検695件のうち、9件が落下する弾による死亡事例と特定されました。
    • これらの事例では、7例が頭部、1例が眼、1例が鼠径部に被弾が認められ、8例で弾道が上から下に向かっていました。
    • 2022年1月から2023年6月までのトルコの全国紙ウェブサイトの調査では、落下する弾に関連する54件の事件が報道され、そのうち23件が負傷、16件が死亡、15件が物的損害につながりました。
    • 負傷部位は頭部、背中、肩、首、胸、手、腕、脚など多岐にわたり、住宅街、庭、テラス、バルコニー、祭り、結婚式、遊び場など様々な状況で被害が発生していました。
    • トルコでは、落下する弾による死亡事件において、最高裁判所は加害者を未必の故意による殺人罪で処罰しているとのことです。

  • 落下する弾の物理的特性:
    • 医師の見解によると、使用済みの弾は90〜180メートル/秒の速度で地上に落下し、60メートル/秒未満でも頭蓋骨に致命的な損傷を与える可能性があります。
    • 米陸軍少将ジュリアン・ハッチャーの実験では、標準的な.30口径の弾を垂直に発射した場合、約2743メートルの高さまで上昇し、落下時の終端速度は約91.4メートル/秒になると計算されています。
    • 別の報告では、.30口径弾の終端速度は約89.4メートル/秒(200マイル/時)であり、ほとんどの場合で皮膚を貫通するのに十分であるとされています。