弾に使用期限があると聞いたことがあります、どう言う理由でどれくらいの期間ですか?
自衛隊では富士総合火力演習で使っている弾は使用期限が近いものを使っていますが、これは毎年やっているので、弾の使用期限は短いのでしょうか?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
弾薬には使用期限が存在しますが、軍においてはその期限は弾薬を保管する機関によって異なるため一概に言えません。
現代ではスモークレスパウダー(無煙火薬)が使用されていますが、ライフル弾等で使用されるスモークレスパウダーではニトロセルロースを基剤とするシングルベースパウダーが使用されており、これはダブルベースなどよりも吸湿性が高いため空気中の水分により劣化が早まり、分解が進みやすい特徴があります。
この分解を抑制するためにジフェニルアミンや炭酸カルシウムなどの安定剤(スタビライザー)を使用しますが、安定剤の量によって分解が進む速度が異なります。
安定剤の量が多ければ分解がより抑制される一方、弾薬の弾道学的な性能が低下するというデメリットがあり、装薬の種類によって製品寿命が異なると言えます。
安定剤もやがて効力を失い劣化しますが、弾薬は保存条件が良ければ80年でも使用可能で、戦時中に製造された弾が現在でも使用可能という例が多くあります。
しかし一般的には製造から30~40年、または50年未満は問題なく使用可能と言われています。
自衛隊では古い弾薬の劣化具合も調査されているものの、私が知る限り内容は機密のようですので詳細不明ですが、戦車などに使用される弾薬は理論上は小火器に使用される装薬よりも長持ちとも言えます。
ただ、保管コストと製造コストを比べると早く消費した方が安い場合もありますし、軍では長期保管して物理的な期限ギリギリまで保管することはないため、理論上保存可能な期限よりもかなり早いうちに消費されるのが通常です。
関連記事:弾薬の構造