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【カービン、PCC、アサルトライフルの違いとは?】定義とメリット・デメリットを詳しく解説

コルトM4A1ライフル画像
コルトM4A1ライフル Jackolmos, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ライフルの世界には「カービン(Carbine)」というカテゴリーがあります。

これは、標準的なライフルよりも銃身が短く、取り回しやすいモデルを指します。

カービンは、軍や警察の特殊部隊、車両乗員、さらには民間市場においても広く利用されており、その用途は多岐にわたります。

では、カービンとは具体的にどのような銃を指すのでしょうか?

その語源や特徴、アサルトライフルとの違い、PCCとは何か?など、カービンについて詳しく解説していきます。

カービンとは?

M4ライフル画像

カービンとは、元のライフルの銃身を短くした小型のライフルです。

小型で軽量なため、取り扱いやすく、移動の多い部隊や特殊部隊などで使用されました。

現代のカービンは、長いライフルの小型版、または威力の低い拳銃弾を使用するライフルであることが多く、軍用ではカービンの長さが標準的なライフルの長さとなっています。

コルトM4A1ライフル画像
コルトM4A1ライフル Jackolmos, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

例えば、この画像はアメリカ軍が採用しているライフル、M4カービン(正式名:Carbine, Caliber 5.56 mm, M4)です。

M16ライフル画像
M16A1 M16A2 M4A1 M16A4 Offspring 18 87, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

M4カービンはM16ライフルから発展したライフルで、元のM16ライフルよりも全長が短くなり、「カービン」となりました。

カービンの語源

カービンの名称は、騎兵の「カラビニエ」に由来します。

これはフランス語の「carabine」から来ており、さらに古フランス語の「carabin」(マスケット銃で武装した兵士)に遡ります。

その起源は定かではありません。

  • ある説では、「カラブレ」と呼ばれる古代の兵器に結び付けられています。
  • 別の説では、中世ラテン語の「Calabrinus」(カラブリア人)に関連付けられています。
  • 可能性は低いものの、スカラベ(フンコロガシ)に由来する「escarrabin」(墓掘り人)に結び付ける説もあります。

カラビニエ」とは、元々はカービンで武装した兵士を指す言葉で、フランス語の「carabinier」に由来します。

初期の頃は、騎兵が主にカービンを使用していたため、「カラビニエ」は騎兵を意味することが多くありました。

しかし、時代や国によってその役割は変化し、歩兵や警察任務を担う兵士も「カラビニエ」と呼ばれるようになりました。

  • 歴史的な背景
    • ナポレオン戦争の時代には、特にフランスの騎兵部隊が「カラビニエ」として名声を博しました。
    • 一方で、イタリアの「カラビニエリ」は、軍隊と警察の両方の役割を担う有名な組織として知られています。
    • また、チリやコロンビアなど、他の国々でも「カラビニエ」は警察や治安維持の役割を果たしてきました。
    • かつてスペインでは、国境警備隊としての「カラビニエ」が存在していました。
  • 現代におけるカラビニエ
    • 現代でも、「カラビニエ」という言葉は、軍隊、警察、治安部隊などで使用されています。
    • 特にイタリアの「カラビニエリ」は、現代においても重要な役割を担っており、その活動は多岐にわたります。
    • 現代においては、軍隊と警察の両方の役割を担う組織もあります。

カービンの歴史

16世紀、騎兵が乗馬しながら扱いやすいように、銃身を短くしたカービンが開発されました。初期のカービンは、携帯性に優れる一方で、通常のライフルに比べて精度や威力が劣るという課題がありました。

19世紀中頃、ライフルが普及するにつれて、カービンもライフルの短縮版として開発されるようになりました。アメリカ南北戦争では、スペンサーカービンのような連発式カービンが登場し、西部開拓時代にはレバーアクション式のウィンチェスターカービンが広く使用されました。イギリスでは、リー・エンフィールド・カービンが開発されました。

第一次世界大戦後、塹壕戦の経験から、各国で銃身を短くしたカービンの需要が高まりました。アメリカのM1カービンは、後方部隊向けに開発されましたが、前線でも使用されました。第二次世界大戦中、ドイツはStG44アサルトライフルを開発し、ソ連はAK-47を開発。イギリスは、リー・エンフィールドの短縮版である「ジャングルカービン」を開発しました。

第二次世界大戦のあと、近距離での戦闘を想定した、より小型で連射可能な銃が求められるようになりました。アメリカはM14ライフルを採用しましたが、ベトナム戦争の経験から、M16ライフルと5.56mm弾薬を採用。ソ連はAK-74と5.45mm弾を採用し、中国も独自の5.8mm弾を採用しました。

現代では、より小型で軽量なカービンが、近接戦闘や特殊部隊などで使用されています。兵士の装備重量が増加したため、軽量な武器の需要が増えており、また、車両やヘリコプターでの移動が増えたため、取り回しの良い小型の武器の需要が増えています。

カービンの特徴と用途

カービンは、狭い場所や移動中の使用に適しているのが大きな特徴です。

ライフルに比べると、長距離での精度や威力は劣りますが、サブマシンガンに比べると有効射程が長く、防弾性能の高い目標を貫通できる能力を持っています。

そのため、特殊部隊、空挺部隊、車両乗員、後方支援部隊など、様々な部隊で使用されています。

また、警察の特殊部隊(SWAT)でも、近接戦闘用にサブマシンガンと並んで使用されることがあります。

民間では、護身用や狩猟用として利用されるケースも見られ、拳銃弾を使用するカービンの場合は、ハンドガンと弾薬を共用できるという利点があります。

アメリカの法律では、カービン規制は銃身長とストックの有無によって大きく異なります。

  • ショートバレルライフル(SBR)の規制
    • 銃身が16インチ(約40.6cm)未満で、ストックが備わっているカービンは、「ショートバレルライフル」と分類され、規制されます。
    • ショートバレルライフルを所有するには、登録と税金の支払いが必要です。
  • 通常のライフルとしての扱い
    • 銃身が16インチ以上で、全長が26インチ(約66cm)以上のカービンは、通常のライフルとして扱われ、ショートバレルライフルほどの規制はありません。
  • ハンドガンからカービンへの変換キット
    • ハンドガンをカービンに変換するキットも存在しますが、銃身長と全長が規定を満たしていれば、ショートバレルライフルとはみなされません。

カービンとアサルトライフルの違い

ライフル射撃画像

アサルトライフルは「射撃機能」と「弾薬」で分類されますが、カービンは「サイズ」で分類されています。

アサルトライフルとは、以下の条件が揃っているライフルを指します。

  • セレクティブファイア(セミオート射撃とフルオート射撃を切り替えられる)。
  • インターミディエートカートリッジ(中間弾薬)※を使用。
  • 着脱可能なボックスマガジン(箱型弾倉)から弾薬を供給。
  • 300メートル(330ヤード)以上の有効射程距離を持つ。

インターミディエートカートリッジ(中間弾薬)とは、拳銃弾よりも強力ですが、フルサイズカートリッジ※よりも反動が小さいライフルやカービン用の弾薬です。これにより、フルオート射撃時の制御がしやすくなり、有効射程は300~600mに達します。その結果、アサルトライフルの発展が可能となりました。

最初に使用された中間弾薬は10.4×38mmRスイス弾(ヴェッテルリ銃)ですが、本格的に普及したのは7.92×33mmクルツ(StG 44)や.30カービン(M2カービン)など、第二次世界大戦末期のものです。戦後、7.62×39mm M43(AK-47)などの「近代的」な中間弾薬が開発されました。

現在では、5.56×45mm NATO(M16系)、5.45×39mm M74(AK-74)、5.8×42mm(QBZ-95)などの軽量・小型・高初速の弾薬が主流となっています。これにより、兵士が携行できる弾薬の量が増え、フルオート射撃時の精度向上も実現しています。

フルサイズカートリッジ(フルパワーカートリッジ)とは、弾道性能と単発射撃時の精度を重視し、重量や反動を考慮しない強力なライフル弾の総称です。第二次世界大戦前後のマシンガンやボルトアクション・セミオートライフル、バトルライフルに使用されました。

口径7.5mm以上・有効射程800m以上のものが一般的で、.30-06スプリングフィールド、7.62×54mmR、7.92×57mmマウザーなどが代表例です。冷戦期以降は、短いカートリッジ(例:7.62×51mm NATO)が主流となりました。

現在もバトルライフル、マークスマンライフル、狙撃銃、汎用機関銃、狩猟用の銃で広く使用されています。最近では6.8×51mm弾が新規開発され、次世代小銃・軽機関銃用として試験が進められています。

M16A2射撃画像

M16ライフルはアサルトライフルです。

このライフルは銃身長20インチのライフルとして設計されており、「カービン」ではありません。

コルトM4A1ライフル画像
コルトM4A1ライフル Jackolmos, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

M4もM16と同様に「アサルトライフル」ですが、オリジナルのM16の銃身長を14.5インチに短縮させている「カービン」です。

ここで注意したい点は、カービンのカテゴリー分けは銃身長で分類できないということです。

例えば、ドイツのGewehr 98ライフルは銃身長29インチですが、同銃を短くしたカービンモデルであるKarabiner 98aは、銃身長23インチです。

Karabiner 98aはカービンですが、カービンではないM16ライフルよりも長い全長と銃身長を持ちます。

一般的なカービンの定義は、オリジナルのサイズに対する相対的なサイズから決定されています。

PCC(ピストルキャリバーカービン)とは?

ルガーPCカービン Image courtesy of Ruger

PCC(ピストル・キャリバー・カービン)は、ストック(銃床)が備わった拳銃弾を使用する銃です。

冒頭で「カービンとは、オリジナルのサイズから短縮されたライフル」と説明しましたが、近年では「コンパクトなライフル型の銃」を「カービン」と呼称するようになっています。

ウィンチェスター1886ライフル画像
ウィンチェスター1886 https://commons.wikimedia.org/wiki/User:Hmaag, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

初期には、当時の人気リボルバーの弾薬を共用できる銃として西部開拓時代に広く使用されました。ウィンチェスターやコルトなどの組み合わせが代表的です。

ルガーPCカービン画像
ルガーPCカービン Picanox, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

現代では、「ルガーPCカービン」や「ベレッタCx4ストーム」など、ピストルと共通のマガジンを使用するモデルが登場しています。また、「ケルテックSUB-2000」のように、折り畳み可能なモデルもあります。

PCCの主な利点は、コントロール性の高さです。ライフルと同様の肩付け射撃、長い照準線、4点支持(頬、肩、両手)により、命中精度が向上します。また、アクセサリーレールにより、光学機器やライトなどを装着可能です。

長い銃身により、弾速とマズルエナジーが増加し、有効射程距離が伸びる可能性があります。ただし、拳銃弾を使用するため、ライフル弾ほどの威力はありません。また、携帯性と隠匿性に劣るため、ハンドガンの利点を失うという側面もあります。

UZIカービン Image courtesy of impactguns.com

サブマシンガンのセミオートマチック版も広く生産されており、UZI、FN PS90、HK USCなどが例として挙げられます。これらの銃は、アメリカの民間市場において法的規制をクリアするために、銃身長を16インチまで延長しているモデルが流通しています。また、AR-15などのセンターファイアライフルのピストル口径変換キットも市販されています。

PCCの利点

SIG MPX PCC Image courtesy of Sigsauer.com
  • 制御しやすい反動: 長い銃身とストックにより、ハンドガンと比べて反動が軽減され、素早い連続射撃が可能です。
  • 高い命中精度: ピストルと比べて4点(頬、肩、両手)で支持できるため、安定性が向上します。
  • 高速な弾速: 長い銃身により、ハンドガンと比べて弾速と威力(終端性能)が向上します。
  • コスト効率: ライフル弾と比べて安価な拳銃弾を使用します。
  • 汎用性: ホームディフェンス、射撃競技、レクリエーション用途に適しています。

カービンの長所と短所

M1ガーランドとM1カービン Image courtesy of clapham-man.blogspot.com

カービンの主な長所と短所は以下の通りです:

カービンの長所

  • 取り回しの良さ: コンパクトで軽量な設計により、狭い空間や素早い動きが必要な状況で扱いやすい。
  • 機動性: 軽量設計により、長時間の携行や移動時の疲労が軽減される。
  • 素早いターゲット捕捉: 短い銃身と重量バランスにより、素早く標的を捉えやすい。
  • 安定性: PCCはハンドガンと比べて、より多くの接点(肩、両手)があるため、射撃時の安定性が向上する。
  • 汎用性: 様々な口径に対応可能で、狩猟、スポーツ射撃、ホームディフェンスなど、多目的に使用できる。

カービンの短所

  • 長距離性能: 短い銃身により、長距離での精度と有効射程が通常のライフルより劣る。
  • 弾速低下: 短い銃身のため、弾速が低下し、長距離での威力や貫通力が減少する。
  • マズルフラッシュと音: 短い銃身から未燃焼の火薬が高圧で排出されるため、マズルフラッシュや音が大きくなる傾向がある。
  • 反動: 軽量設計のため、同じ口径の通常のライフルと比べて体感する反動が大きくなる場合がある。
  • 銃身の過熱: 連続射撃時に銃身が通常のライフルより早く過熱する傾向がある。

カービンライフルは、機動性と取り回しの良さを重視する場合に適していますが、長距離射撃や持続的な火力が必要な状況では通常のライフルの方が適している場合があります。

過去のライフルが長かった理由

前装式ライフル射撃の画像

前装式ライフルは15世紀ごろから戦場で使用され始め、16世紀にライフルを装備した騎兵が存在していました。

前装式ライフルは、銃口から弾と火薬を装填し、1発ごとに発射と装填を繰り返すため、現代の連射可能なライフルと比べると非常に遅い発射間隔になります。

当時は銃身長が40インチを超えるライフルも多く、これには次の理由があります。

  • 長い銃身を利用することで弾速を向上させ、威力が得られる。
  • サイトレイディアス(フロントサイトとリアサイトの間隔)が長いため、精密に狙うことが可能。
  • 銃剣(バヨネット)を着剣し、リーチの長い槍として使用可能。(着剣された長いライフルは一般兵が敵の騎兵と闘う場合にも有効)
  • 前方の仲間を誤射する事故を防止。

当時、兵士たちは横並びに隊列を組み、号令と共に射撃していました。

仮に各兵士がバラバラに射撃と装填を繰り返すと、発射の間隔が長くなり火力の空白が生じます。

これを防ぐため、前列の兵士が発射し次弾を装填する間に、後列の兵士が発射し、後列が発射したら装填を終えた前列が再び発射するというサイクルを繰り返すことで、一定の火力を維持できます。

このとき、ライフルの全長が短いと後列の兵士が前列の兵士を誤射する恐れがあります。そこで長いライフルを使用することで後列の兵士の銃口が前列の兵士より前へ突き出る状態を維持し、安全が確保されます。

しかし、やがて機関銃の登場により、騎兵や隊列を組む戦術は効果を失いました。

まとめ

  • カービンとは?
    • 元のライフルの銃身を短くした小型のライフル。
    • 小型・軽量で取り扱いやすいため、特殊部隊や車両乗員に採用される。
    • 現代では標準的なライフルの長さが短縮され、カービンのサイズが一般的になっている。
  • カービンの語源と歴史
    • 語源はフランス語の「carabine」から派生し、騎兵が使用する短銃を指した。
    • 16世紀の騎兵用銃から始まり、19世紀には西部開拓時代のレバーアクション式カービンが普及。
    • 第二次世界大戦ではM1カービンやStG44などが登場し、戦後はM16などの短縮版が一般化。
  • カービンの特徴と用途
    • ライフルより短く機動性が高いが、射程や威力は劣る。
    • 近接戦闘や狭い空間での運用に適している。
    • 警察の特殊部隊やホームディフェンス用・狩猟用としても利用される。
  • カービンとアサルトライフルの違い
    • アサルトライフル:セレクティブファイア機能(セミ/フルオート切替)、中間弾薬、着脱可能なマガジンを備える。
    • カービン:サイズの分類であり、特定の射撃機能や弾薬による定義はない。
  • PCC(ピストルキャリバーカービン)とは?
    • 拳銃弾を使用するストック付きのライフル型銃。
    • 近年では「カービン」の定義が広がり、単にコンパクトなライフル型銃を指すことも増えている。
  • カービンの長所と短所
    • 長所:取り回しが良く、車両乗員や特殊部隊に適している。
    • 短所:長距離射撃能力や威力はフルサイズのライフルに劣る。
  • カービン規制(アメリカ)
    • 銃身16インチ未満のものは「ショートバレルライフル」とされ、規制対象となる。
    • 16インチ以上であれば、通常のライフルとして扱われる。