8mm南部は.380ACPに近い弾薬です。
同等の弾速やマズルエナジーを持つ.380ACPは現在でも護身用やホームディフェンスに利用されており、対人用として効果があることは間違いありません。
新拳銃とその弾薬の研究が始まった明治三十二年(1899年)当時、海外のピストルの購入を始め、明治三十五年(1902年)には当時最新であるベルグマンの他、ブローニングやボーチャードピストルを購入し参考としていますが、9mmパラベラム(1902年~)が開発される以前の時代では8mm南部弾の性能は軍用ピストルとして常識的な範囲内の威力を持つ弾薬として評価できます。
大正十一年(1922年)、新型拳銃(十四年式拳銃)に必要な条件として「威力は距離100メートルにおいて精確に命中し、人馬に対して殺傷力があること」という条件が定められましたが、8mm南部は試験の結果、条件を満たしていると判断されています。
現代の基準では軍用ピストルとして.380ACP並みの弾速やマズルエナジーは非力に感じられますが、当時は反動が軽く命中精度の高いピストルが求められており、8mm南部は当時の日本人にも扱いやすい弾薬でした。