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レミントン社は倒産した? 老舗銃器メーカーの歴史と現状を解説

レミントン1858画像
レミントン1858 画像出典:Jacek Halicki, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

アメリカの老舗銃器メーカー、レミントン社の歴史は、光と影の連続でした。

創業から数世紀にわたり、アメリカの銃文化を支えてきた同社ですが、近年は経営難に直面しました。

この記事ではレミントン社の破産と現状、そして今後の見通しについて解説します。

レミントン社の破産

破産(1回目)

2018年の春、レミントンは初めてチャプター11を申請しました。

経営再建のため、資産と債務の整理が行われ、最終的にサーベラス・キャピタル・マネジメントが支配権を保持する形で再建されました。

しかし、この再建は一時的なものでしかありませんでした。

チャプター11(Chapter 11)破産は、アメリカで企業や一部の個人が経済的困難に陥った際に、事業を続けながら債務を整理できる制度です。資産をすべて売却する清算ではなく、再建を目指すのが特徴です。

  • 債務者が事業を管理しつつ、債務整理や契約見直しの計画を裁判所に提出します。
  • 申請すると債権者による取り立てや訴訟、差し押さえが一時停止され、再建の時間が確保されます。
  • どの債務をどう整理するか、事業の一部売却の有無などを明示した計画を提出します。
  • 主要債権者は委員会を形成して計画に賛否を示せます。裁判所が計画を公平と認めれば、反対意見があっても承認されることがあります。
  • 裁判所が事業運営を監視し、再建計画の妥当性を確認した上で破産手続きが終了します。

結果として、企業は再建計画に従って債務を整理し事業を継続できますが、計画が失敗すれば清算(Chapter 7)や手続きの終了に移行する場合があります。

手続きは数年かかることもあり、多くの関係者との交渉や公開情報の提出、裁判所の厳しい監督が伴います。

サーベラス・キャピタル・マネジメント(Cerberus Capital Managementは、アメリカに本拠を置く大手プライベート投資会社で、プライベート・エクイティやクレジット、不動産などの代替資産を専門に扱っています。1992年にスティーブン・ファインバーグとウィリアム・リヒターによって設立され、年金基金や大学基金、保険会社、政府系ファンドなどの機関投資家向けに約600~650億ドルを運用しています。

サーベラスは、財務的に困難な企業や資産に投資し、再建や価値回復を目指す「ディストレス投資」で知られています。過去にはクライスラー(2007年)、GMAC(ゼネラルモーターズの金融部門)、スーパー大手のアルバートソンズやセーフウェイといった大型案件で注目を集めました。また、レミントン・アウトドア・カンパニーの所有と再建にも関与し、2018~2020年の破産を経て投資を終了しています。

破産(2回目)

2020年の夏、二度目のチャプター11申請に踏み切ります。

裁判所監督の下で資産がオークションにかけられ、銃器部門と弾薬部門は分割されました。

弾薬と商標はビスタ・アウトドアが取得し、事業を継続。

一方、銃器部門はラウンドヒル・グループが取得し、「レムアームズ(RemArms)」として再編されました。

しかし、ニューヨーク州イリオンにあった歴史ある工場は閉鎖され、製造拠点はジョージア州へ移転。約270名の従業員が解雇されることになりました。

ビスタ・アウトドア(Vista Outdoor)はアメリカ・ミネソタ州に本社を置く、アウトドア用品とスポーツ用品を手がける企業です。弾薬や銃器アクセサリーをはじめ、アウトドアギアの設計、製造、販売に強みがあります。特に弾薬ブランドのフェデラル、CCI、そして2020年に取得したレミントンの弾薬ブランドを擁し、複数のブランドを統括する「ハウス・オブ・ブランド」として運営されています。

事業は主に「射撃スポーツ(弾薬・アクセサリー)」と「アウトドア製品(スポーツウェアや自転車関連)」の二つの分野に分かれます。2020年にはレミントン・アウトドア・カンパニーの弾薬・アクセサリー事業と商標を約8140万ドルで取得し、弾薬市場での存在感を強化しました。その後、アウトドア製品部門をリヴェリストとして分社化し、射撃製品部門(ザ・キネティック・グループ)はチェコのチェコスロヴァック・グループに売却するなど、戦略的な再編を進めています。

2024年度には売上高約27億ドルを報告しており、同年末まで上場企業でしたが、現在は非公開企業となっています。ビスタ・アウトドアは、高品質なアウトドア用品と射撃スポーツ製品を中心に、ブランド力を活かして事業を拡大している企業です。

ラウンドヒル・グループ(Roundhill Group)は、ペンシルベニア州とフロリダ州に本社を置く民間投資会社で、2020年10月にレミントンのチャプター11破産資産競売で銃器事業を取得しました。この取得には、レミントンの全ライフル、ショットガン、ピストル、銃器製造施設(歴史あるニューヨーク州イリオン工場を含む)、およびミュージアムやギフトショップが含まれます。

ラウンドヒル・グループのメンバーは銃器製造や技術、マーケティングに豊富な経験を持つ人物で構成され、多くは狩猟愛好家でありレミントンブランドの支持者です。彼らの戦略は、レミントンを象徴的なアメリカン・ハンティングブランドとして再生し、従業員を維持・育成しつつ、製品品質と収益性を向上させることにあります。

取得後は当面イリオン工場での生産を継続し、税制優遇や労働組合との調整で再稼働と雇用回復を図りました。同時に、ジョージア州ラグランジュに約1億ドルを投じた最先端の銃器製造施設と研究開発センターを建設し、長期的には生産拠点を移転する計画です。なお、レミントンの弾薬事業は別途ビスタ・アウトドアに売却され、ラウンドヒルは銃器事業のみを保有し、ブランド名はビスタ・アウトドアからライセンスしています。

ラウンドヒル・グループは、歴史あるレミントンブランドの復活を目指す銃器業界専門の投資会社であり、ニューヨークでの事業安定化を図った後、より事業運営に適したジョージア州へ生産拠点を移転する計画を進めました。

こうした変化の中、レミントンは法的課題にも直面しました。

特にサンディフック事件関連の集団訴訟や、過去の環境関連の負債は残り、会社の再建に影を落とします。

サンディフック(Sandy Hook)事件とは、2012年12月14日にコネチカット州ニュータウンのサンディフック小学校で発生した銃乱射事件です。犯人アダム・ランザは、レミントン製ブッシュマスターXM15-E2Sセミオートライフル(民間向けAR-15)を使用し、1年生の児童20名と教職員6名を殺害した後、自ら命を絶ちました。これはアメリカ史上最悪レベルの学校銃撃事件の一つです。

被害者家族は、後にレミントン・アームズを相手取り訴訟を起こしました。ブッシュマスターの販売や宣伝が若年層の問題を抱えた男性を狙ったものであり、消費者保護法に違反する過失であると主張しました。特に同社がライフルを「民間人向けの戦争兵器(weapon of war)」として宣伝していたことが問題視されました。

2022年、8年間にわたる訴訟とレミントンの破産申請の末、被害者家族との間で7,300万ドルの和解が成立しました。これは、アメリカで銃器メーカーが大量銃撃事件に対して金銭的責任を負った初めての事例として注目されました。和解では、レミントンの内部文書の開示も求められ、同社のマーケティング手法が明らかになりました。

レミントンは和解において法的責任を認めていませんが、損害賠償金の支払いに同意しました。本件は、銃器メーカーの責任、民間向けAR-15ライフルの積極的販売、2005年の合法銃器商取引保護法によるメーカー保護の限界などの課題を浮き彫りにしました。

過去の環境関連の負債

レミントン・アームズ(Remington Arms)は、長年の製造活動により深刻な環境責任を抱えることになりました。主な問題点は以下のとおりです。

  1. ロードシップ(Lordship)工場
    • 鉛散弾による汚染が問題となり、米国環境当局(Clean Water ActおよびRCRAの規制下)から浄化措置を命じられました。
    • 数百万ドル規模の費用が見込まれる大規模な有害廃棄物処理が必要となりました。
  2. レミントン・パーク(Remington Park)跡地
    • 1910年頃から1989年まで弾薬製造と廃棄物処理に使用されていた施設。
    • コネチカット州環境保護局(CDEP)の命令で汚染された表面貯留池の閉鎖や地下水汚染の監視を実施。
    • 周辺の堆積物から鉛・水銀・亜鉛・銅・クロムなど高濃度の重金属が検出されました。
  3. EPA(米国環境保護庁)の調査結果
    • 複数の環境懸念箇所(廃棄物保管所、射撃場、廃棄場所)が特定されました。
    • 特に鉛や水銀を含む有害廃棄物の蓄積が深刻でした。
  4. 訴訟と規制措置
    • レミントンは公害対策や浄化義務をめぐり訴訟や規制当局の強制措置を受けました。
    • これにより長期にわたり法的・財務的な負担が発生しました。
  5. 労働者の健康被害(アスベスト)
    • ニューヨーク州の工場などではアスベストに曝露された労働者が中皮腫や肺疾患を発症。
    • 健康被害をめぐる補償請求が企業責任をさらに拡大させました。

レミントン社が破産した原因

レミントン社が破産した主な原因を以下にまとめます。

  1. 過大な負債
    • サーベラス・キャピタル・マネジメントの下で約10年間にわたり積極的な買収や財務操作を行い、その結果、レミントンは総額10億ドル近い負債を抱えました。この巨額の債務が財務を圧迫しました。
  2. 販売不振(トランプ・スランプ)
    • 2016年米大統領選挙前、銃規制強化を懸念した消費者による「駆け込み購入」で売上は一時的に増加しました。
    • しかし、銃規制に消極的と見られたトランプ大統領の当選後、需要が急減し、販売は大幅に落ち込みました。これが「トランプ・スランプ」と呼ばれる現象です。
  3. 製品不具合による評判失墜
    • 2017年、CBS番組「60ミニッツ」がレミントン・モデル700ライフルの重大なトリガー欠陥を報じたことで、レミントンは深刻な評判失墜に直面しました。この欠陥は引き金を引かなくても発射されるもので、多数の負傷や死亡事故に結びつきました。
    • 問題は旧式の「ウォーカートリガー」と新型「X-Mark Pro」に存在し、2013~2016年にかけて約2000件の苦情と150件の訴訟が提起されました。内部では1960年代から認識されていたとされますが、全面的なリコールは行われず、隠蔽体質が批判されました。
    • この報道により、利用者の信頼は大きく損なわれ、集団訴訟や和解につながり、最終的にレミントンの財務悪化と破産の一因となりました。
  4. サンディフック事件関連訴訟
    • 2012年のサンディフック小学校銃乱射事件で使用されたブッシュマスター・ライフルをめぐり、被害者遺族が「不適切なマーケティング」を理由に訴訟を起こしました。
    • 2019年、コネチカット州最高裁判所が訴訟継続を認め、保険会社による多額の和解金支払いにつながりました。
  5. 度重なる破産申請
    • 2018年3月:チャプター11を申請し、7億7500万ドル以上の債務を削減。しかし流動性不足は改善されませんでした。
    • 2020年7月:再びチャプター11を申請。裁判所の承認を経て、レミントンの事業資産は分割売却され、事実上解体されました。

レミントン社の破産は、「サーベラスによる経営下で積み上がった巨額の負債」「政治的要因による販売不振」「欠陥トリガー問題やサンディフック訴訟による信頼失墜と法的負担」といった要素が複合的に作用した結果です。

レミントン社の現状

現在はRemArmsとして生産中

レミントン社は2020年の破産と分割により、銃器事業と弾薬事業が別会社として運営されるようになりました。

現在は以下の2社に分かれています。

  1. レムアームズ / RemArms(Remington Firearms)
    • 公式サイト:https://www.remarms.com/
    • 事業内容:レミントンブランドの銃器製造を担当
    • 所有者:ラウンドヒル・グループ(Roundhill Group)/(RemArms, LLC)
    • 特徴:ビスタ・アウトドア(Vista Outdoor)からレミントンの名称をライセンスして使用。銃器生産に専念。
  2. レミントンアムニション / Remington Ammunition
    • 公式サイト:https://www.remington.com/
    • 事業内容:レミントンブランドの弾薬製造を担当
    • 所有者:ビスタ・アウトドア(Vista Outdoor)
    • 特徴:弾薬事業はビスタ・アウトドアに売却され、銃器事業とは完全に分離。

破産によって生産終了した製品

レミントンの破産と事業分割により、いくつかの主要モデルが生産終了となりました。

ブッシュマスターAR-15シリーズは、サンディフック事件後の反発と訴訟リスクの高まりから2020年初頭に生産中止。ブランド自体は売却されましたが製造は停止しました。

ハンドガン(1911 R1、RM380、R51)も破産後に生産再開されることなく終了しました。

代表的なモデル700ボルトアクションライフルやモデル870ポンプアクションショットガンは継続されていますが、他の多くの派生モデルや製品ラインは大幅に縮小。

破産後、銃器部門はラウンドヒル・グループ(レムアームズ)に引き継がれましたが、製品の種類や生産量は破産前より大きく減少しました。

歴史あるニューヨーク州イリオン工場の閉鎖とジョージア州への移転は、事業規模縮小と旧来モデルの生産終了を象徴する出来事となりました。

現在のレミントンはボルトアクションライフルと一部ショットガンを中心に限定的な製品展開へと縮小しています。

今後の見通し

今後の見通しは三つのシナリオが考えられます。

  • 最良シナリオ:ジョージア州での生産が安定し、法的負債も速やかに解消
  • 標準シナリオ:訴訟リスクが続きつつも事業が緩やかに成長
  • 最悪シナリオ:追加の訴訟や規制の強化で再編を余儀なくされる可能性もあり

注目すべきは、法的リスクや規制の動向、そしてジョージア州での新しい生産体制の安定です。

これらの要素が、レミントンの未来を左右することになるでしょう。

レミントン社関連ブランド一覧

レミントン社は自社創業ブランド(E. レミントン・アンド・サンズ、レミントン・アームズ)を基盤とし、サーベラス資本下では持株会社(レミントン・アウトドア・カンパニー)を通じて数多くの銃器・弾薬・関連ブランドを買収しました。

しかし、2007年以降の急速な拡大と経営不振が破産につながり、2020年には資産が分割売却され、多くのブランドが他社へ移りました。

以下にレミントン社関連ブランドを一覧にしてまとめます。

  • E. レミントン・アンド・サンズ(E. Remington and Sons)
    • 創業ブランド:1816年にエリファレット・レミントンIIが設立されました。
    • 役割:銃器だけでなく、タイプライターやミシン、農機具なども製造していました。
    • 変遷:1888年に財務的問題で再編され、レミントン・アームズ・カンパニーへ移行しました。
  • レミントン・アームズ・カンパニー(Remington Arms Company)
    • 成立:E. レミントン・アンド・サンズの後継として再編されました(1888年以降)。
    • 役割:民間向け・軍用を含む主要な銃器製造企業として機能しました。
    • 変遷:1933年にデュポンが過半数株を取得するなどの変遷を経て、最終的に2020年の破産手続きに至りました。
  • パーカー・ショットガン(Parker Shotguns)
    • 移管年:1934年にパーカー社関連の権利がレミントンに帰属しました。なお、パーカー社自体は1932年に操業を停止しています。
    • 役割:高級水平二連ショットガンのヘリテージ/プレステージブランドとして位置づけられていました。
    • 変遷:限定生産などで名声を保ってきましたが、2020年の破産手続き時に資産が売却され、以後は投資家グループ(JJEキャピタル等)の下で管理されています。現状では量産は活発ではありません。
  • ストレン(Stren)
    • 移管:元はデュポンの製品で、1992年にレミントンへ移管されました。
    • 役割:釣り具分野への参入を担っていました。
    • 変遷:破産後の処遇は明確ではありません。
  • H&R(ハーリントン&リチャードソン)(Harrington & Richardson)
    • 買収関係:2000年にマーリンがH&Rを取得し、2007年のマーリン買収によりレミントン傘下となりました。
    • 役割:シングルショットライフルやショットガンの製造を行っていました。
    • 変遷:レミントンの経営問題と破産手続きで売却対象となりました。
  • ブッシュマスター・ファイアアームズ・インターナショナル(Bushmaster Firearms International)
    • 買収年:2006年にサーベラス/フリーダム・グループ傘下へ入りました。
    • 役割:AR-15系ライフルやカービン、アダプティブコンバットライフル(Adaptive Combat Rifle / ACR)などのタクティカル系ライフルを主力として、グループのタクティカル用ブランドを担っていました。
    • 変遷:2020年の破産手続きで商標・資産が売却され、クロタラスホールディングス(Crotalus Holdings / Franklin Armory)などによりブランドが再出発または再活性化されました。
  • レミントン・アウトドア・カンパニー(旧フリーダム・グループ)(Remington Outdoor Company)
    • 成立:サーベラスが2007年に設立した持株会社形態のグループです。
    • 役割:レミントンを含む複数ブランドを統括する持株会社として機能しました。
    • 変遷:2007年以降多数のブランド買収を行い、最終的に2018年および2020年に破産し、資産は分割売却されました。
  • マーリン・ファイアアームズ(Marlin Firearms)
    • 買収年:2007年にレミントンがマーリンを買収しました。
    • 役割:レバーアクションやリムファイアライフルを供給していました。
    • 変遷:2020年の破産手続き後、ルガー社(Ruger)などへ売却されました。
  • DPMS パンサーアームズ(DPMS Panther Arms)
    • 買収年:2007年にサーベラスがDPMSを買収し、フリーダム・グループへ統合しました。
    • 役割:AR-15/AR-10系ライフルを製造していました。
    • 変遷:2020年の破産手続きでJJEキャピタル・ホールディングスへ売却されました。
  • ダコタ・アームズ(Dakota Arms)
    • 買収年:2009年にレミントンが取得しました。
    • 役割:高級カスタムライフルを製造し、レミントンのカスタム部門的な役割を担っていました。
    • 変遷:破産後に売却されました。
  • アドバンスド・アーマメント・コーポレーション(Advanced Armament Corporation / AAC)
    • 買収年:2009年にフリーダム・グループ(後のレミントン・アウトドア)により買収されました。
    • 役割:サプレッサー(サイレンサー)やマズルデバイス、関連アクセサリーを製造し、NFA対応製品の中核を担っていました。
    • 変遷:2020年の破産手続きで資産が売却され、JJEキャピタル・ホールディングス等の傘下へ移り、独立したブランドとして継続運営されています。
  • バーンズ・ブレット(Barnes Bullets)
    • 買収年:2010年にフリーダム・グループが買収しました。
    • 役割:高性能弾頭を提供し、レミントンの弾薬部門に組み込まれました。
    • 変遷:破産時に売却されました。
  • TAPCO
    • 買収年:2012年にレミントンが買収しました。
    • 役割:銃のアフターマーケットパーツやアクセサリーを供給していました。
    • 変遷:破産後の動向は一部不明な点があります。
  • パラ・オーディナンス(Para-Ordnance)
    • 関係:カナダのピストルメーカーで、フリーダム・グループ傘下に組み込まれました。
    • 役割:セミオートピストルの設計・生産を提供していました。
    • 変遷:2012〜2015年頃に吸収され、パラのブランド名は廃止されました。
  • マウンテンカーキ(Mountain Khakis)
    • 買収年:2013年にレミントン・アウトドア(フリーダム・グループ)に組み入れられました。
    • 役割:アウトドア向けライフスタイル及びワークウェアを供給し、銃器以外の製品ポートフォリオ拡充に寄与しました。
    • 変遷:破産前にグループから切り離され、2019年頃までに独立ブランドとして分離・継続運営されています。破産時の主要資産リストには含まれない扱いでした。
  • ストームレイク(Storm Lake)
    • 買収年:2014年にレミントン・アウトドア(フリーダム・グループ)傘下に入りました。
    • 役割:ハンドガン向けの精密バレルを製造し、アフターマーケットおよびOEM供給の両面でグループ製品を支えていました。
    • 変遷:2020年の破産手続きで資産が売却され、JJEキャピタル等の投資家グループの下で独立して事業を継続しています。

レミントン社とレミントンランド社の違い

レミントン社(Remington Arms)とレミントンランド社(Remington Rand)は、起源に共通点があるものの、事業内容や歴史的経路が大きく異なる別個の企業です。

レミントン社は1816年にエリファレット・レミントンが設立したE. Remington & Sonsを起源とし、ライフルやショットガン、ハンドガン、弾薬の製造・販売を中心に発展してきました。創業以来、民間、警察、軍向けに銃器を供給し続け、20世紀以降も銃器メーカーとしての地位を維持しています。タイプライター事業に短期間関わったことはありますが、1886年以降は銃器と弾薬に専念しています。

一方、レミントンランド社は、レミントン社のタイプライター事業を起源に1927年に設立されました。主力はタイプライターや計算機、オフィス機器、後にはコンピュータであり、銃器製造は第二次世界大戦中の政府契約で一時的にM1911A1ピストルを製造した例のみです。それ以外では銃器メーカーとしての活動は行っていません。

レミントン社の歴史

レミントン・アームズ社は、アメリカでも最も歴史の長い銃器メーカーの一つです。

1816年、ニューヨーク州イリオンでエリファレット・レミントン2世がフリントロック式ライフルを製作したことから始まりました。評判を得てガンスミスとしての道を歩み、1828年にはイリオンに工場を構えました。

社名を「E.レミントン・アンド・サンズ」とし、1888年にマーセラスハートレーらに売却され「レミントン・アームズ社」と改称しました。この時期にはライフル銃身やパーカッションロックを生産し、南北戦争では「ズアーブ・ライフル(Zouave)」やリボルバーを供給しました。また、アメリカ海軍に最初期の後装式ライフルを納入するなど、軍需でも重要な役割を果たしました。

銃器以外にも1870年代から1890年代にかけてミシンやタイプライターの製造に進出し、特にタイプライターは成長を支える事業となりました。

20世紀に入ると、第一次世界大戦と第二次世界大戦で軍需生産を拡大し、スプリングフィールドM1903A3などを製造しました。大恐慌期にはデュポン社の傘下に入り、弾薬工場の拡張など政府契約を通じて成長しました。また、ナイフやチェーンソーといった民生品にも手を広げましたが、主力は常に銃器でした。

レミントンはモデル700ライフルやモデル870ショットガンなどの名銃で知られ、200年以上にわたりアメリカ銃器史に深く関わってきた存在です。近年の経営難を経てもなお、そのブランドは銃器業界において大きな影響力を持ち続けています。

出来事
1816年エリファレット・レミントン2世が創業。
フリントロック式ライフルを製作
1828年工場をニューヨーク州イリオンに移転(現工場の起点)
1863~1875年ニューモデルアーミー・リボルバーを製造
1867年ローリングブロック・カービンを製造開始
1886年タイプライター部門を分離
(のちのレミントンランド社)
1888年マーセラスハートレーらに売却。
「レミントン・アームズ社」に改称
第一次世界大戦軍需に深く関与。
銃器・弾薬を大量供給
1930年代デュポン社が買収。
ペターズ弾薬会社を併合
1932年パーカー社が操業停止
1934年パーカー・ショットガンの権利がレミントンへ移管(高級水平二連ショットガンとして継続)
1940年代米政府要請で弾薬工場を建設・運営。
M1903A3を製造
1956年Mall Tool Company買収。
チェーンソーなど民生品事業に進出
1962年モデル700ボルトアクションライフルを発表
(M24狙撃銃の基礎)
1969年アーカンソー州ロノークに弾薬工場建設。
弾薬生産を集約
1986年コネチカット州ブリッジポートの弾薬工場を閉鎖
1992年デュポンから釣り糸ブランド「ストレン」を移管
1993年デュポンが投資会社CD&Rへ売却
2000年マーリンがH&R(ハーリントン&リチャードソン)を買収
2006年ブッシュマスター・ファイアアームズがサーベラス/フリーダム・グループ傘下に入る
2007年サーベラス・キャピタルがフリーダム・グループ設立。
レミントンを中核ブランドとして統括。
マーリン・ファイアアームズ買収(H&Rも傘下に)。
DPMS パンサーアームズを買収し統合
2009年アドバンスド・アーマメント社を買収(サプレッサー事業)。
ダコタ・アームズを買収(カスタムライフル事業)
2010年バーンズ・ブレット(弾頭メーカー)を買収
2012年TAPCO(銃アクセサリー)を買収
2012~2015年頃パラ・オーディナンスを吸収、ブランド廃止
2013年マウンテンカーキ(アウトドアウェア)を買収
2014年ストームレイク(精密ハンドガンバレル)を買収。
アラバマ州ハンツビルに新工場建設
2018年破産申請(チャプター11)。
債務削減後に再建
2019年マウンテンカーキが独立ブランドとして分離・継続
2020年再び破産申請、事業を分割売却。
弾薬部門:Vista Outdoorへ
銃器部門:ラウンドヒル・グループへ
マーリンはルガーへ、DPMSはJJEへ、バーンズは別資本へ売却。
パーカー・ショットガンはJJEキャピタル傘下へ。
ブッシュマスターはクロタラスホールディングス等で再始動。
AAC、ストームレイクもJJEキャピタル傘下で独立継続。
2022年サンディフック事件遺族と和解、保険金から7300万ドルを支払い

Q&A よくある質問と回答

Q
レミントン社の歴史や創業年は?
A

レミントン社は1816年にエリファレット・レミントンによって創業されました。米国最古の民間銃器メーカーの一つであり、当初は個人の依頼による銃器製造から事業を拡大しました。

Q
破産や経営状況の変遷は?
A

レミントンは2018年と2020年に破産申請を行いました。破産後は、資産が複数の企業に分割売却され、商標権や製造事業は新しい体制に引き継がれました。

Q
代表的な銃器の種類やモデルは?
A

代表的なモデルには、高い命中精度を誇るボルトアクションライフルのM700、世界的に有名なポンプアクションショットガンのM870があります。セミオートピストルのR51もかつて製造されていましたが、現在は生産が終了しています。

Q
レミントンの銃がなぜ有名なのか?
A

レミントン製の銃は、西部開拓時代や両世界大戦など、米国の歴史とともにありました。その長い歴史の中で、優れた性能と信頼性から軍や警察、そして一般の狩猟愛好家に広く使用されたため、高い知名度があります。

Q
レミントン製の弾薬やその特徴は?
A

レミントンは銃器だけでなく、弾薬製造でも知られています。レミントン-ピーターズ社の頭文字である「R-P」は、レミントンの弾薬に刻印される商標です。

Q
日本国内でレミントン銃を購入できるのか?
A

日本国内でレミントン製の銃を購入することは可能です。銃砲店を通じて、銃刀法に基づいた手続きを経て購入できます。M700やM870は、日本でも狩猟や射撃スポーツ用として流通しています。

Q
レミントンの狙撃銃や法執行機関への採用状況は?
A

M700は、米陸軍がM24、米海兵隊がM40として採用しました。これらのモデルは、法執行機関でも広く使用されており、日本の陸上自衛隊もかつてM24を採用していました。

Q
レミントンの銃の価格差や性能差は何か?
A

レミントンの銃は、使用される素材や仕上げ、グレードによって価格に差があります。性能面では、特にM700シリーズで、スタンダードモデルと競技向けの高精度モデルとの間に性能差があります。

Q
レミントンの新製品やラインナップの現状は?
A

破産を経て事業が再編されたため、ハンドガンの製造は終了しました。しかし、M700やM870といった主力モデルの製造は継続され、現在も販売されています。

参考文献

  1. CNN, “Remington Arms files for bankruptcy”
  2. NPR, “Remington Gun-Maker Files For Bankruptcy”
  3. Business Human Rights, “Bankrupt Gun Maker Remington Outdoor to be Broken Up and Sold”
  4. Pew Pew Tactical, “Who Owns Remington”
  5. Fox Business, “Blue-collar town rocked by Remington closure”
  6. Vista Outdoor Press Release, “Acquisition of Remington ammunition and accessories assets”
  7. USA Today, “Remington: America’s oldest gun maker files Chapter 11”
  8. Huntsville Municipal Updates on Remington Bankruptcy
  9. PACER, ND Alabama Bankruptcy Dockets
  10. SEC Archives, Remington Asset Purchase Agreement
  11. その他多数の資料